![義心暖簾](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/8fd8cbf0df0e5e0461ed232ecdbd7fc2-1024x576.jpg)
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、和歌山県は「郷土寿司王国」で、非常に古いスシであるナレズシも現存している極めて貴重な県です。
過去に訪問したスシ店としては、弥助寿司(和歌山市)、なれずしの和広(紀伊宮原)、うを為(岩出)、じゅげむ(紀の川市)、九和楽(九度山)、鉄砲寿司(橋本)、赤玉食堂(有田川町)、まさや(那智勝浦)、徐福寿司(新宮)、柿乃肴(新宮)など…。
ただ、この通り江戸前鮨のお店はありません。
しかし、この度お伺いした和歌山市の「鮨 義心」さんは「紀州前」を掲げるご当地江戸前鮨のお店です。
![すしログ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/bfff16286f71f92772bdffbe98056593.png)
和歌山で初めて江戸前鮨を頂きましたが、江戸前の仕事と創作性、さらに郷土性も感じる素敵な一軒でした!
![すしログライブラリー_アイキャッチ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/910017e372204aeb3368ce8ca768f40c-160x160.png)
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「鮨 義心」さんは2014年に和歌山市で開業された鮨店です。
大将である奥村 義延さんは、大阪南森町にある「寿し芳」さんで修業されたそう。
「寿し芳」さんは創作寿司の方向性なので、奥村大将が江戸前鮨で勝負されている点は少し意外です。
ただ、お話を伺うと試行錯誤してこられた事が分かります。
王道の江戸前鮨を経て現在の「紀州前」、ご当地江戸前鮨の方向にシフトされたとの談。
もともとは王道の江戸前鮨のタネ主体だったそうですが、徐々に独自の色を出して今に至ります。
これは素晴らしい心意気!
奥村大将なりの工夫は、現在の酒肴と握りに確かに表れています。
ちなみに、後になり大阪淡路にある「千成寿司」さんと同門であると知って驚きました。
そして、大将の試行錯誤を最も実感出来るのがシャリです。
酸味が効いていて、塩気は程良い塩梅。
このシャリが創作的な仕事から繊細な味わいのタネまで幅広くカバーしており、研究を重ねてこられたのが明瞭です。
使用しているお酢については、和歌山らしく九重雜賀のお酢2種類に横井醸造の與兵衛をブレンド。
昔は與兵衛100%で、お米は「アルデンテ」に仕上げていたそうなので、当時の東京の流行りを採り入れていた形です。
これについても脱却されて良かったと実感します。
そのように思う理由としては、やはり九重雜賀の存在が大きいです。
九重雜賀は全国的に珍しい自社の酒粕で赤酢を醸すメーカーです。
このような造りをされている蔵は他に京都の「飯尾醸造」くらいです。
意識の高い蔵があるならば、是非とも地元の鮨職人さんには使って頂きたい!と感じる次第です。
そして、全ての鮨店が東京の流行りのお店の二番煎じでは鮨業界がつまらなくなりますので。
また、何よりも東京と同じシャリとタネでは表現の幅が狭くなるので、職人さん自身の首を絞める結果となってしまいます。
なお、奥村大将がブレンドされているお酢2種類は【雑賀 吟醸赤酢】と【九重酢 常磐】でしょうか。
これらのお酢は酒粕を3年以上熟成させた上で、木桶を用いて120日以上の発酵・熟成を行っているそうです。
地元流通用の調合酢も造られていますが、鮨好きが入手すべきお酢はこれら2種類だと思います。
最後に、使用されるタネは王道の江戸前鮨のタネに関西から瀬戸内の魚、北海道などの魚を組み合わせています。
和歌山の人も県外からの人も共に楽しめる設計です。
さらに特徴的な点が仕事。
非常に独創的かつ関西らしい仕事を随所に採り入れておられます。
全体的に酒肴も握りもたっぷり頂く内容なので、お酒を飲める方はペアリングでお願いするのがオススメです!
「鮨 義心」さんは1回転のみの営業で、18時から1時間刻みで予約が可能です。
価格については、クラフトビールを1本頂き、おまかせにペアリングを付けて3万円ほどです。
この度頂いたお酒
- NOMCRAFT Rock Monster
- 雑賀 純米吟醸原酒 COOL DOWN
- 三井の寿 純米吟醸酒 +14
- 而今 特別純米おりがらみ生
- 紀土 純米酒 あがらの田で育てた山田錦低精米八十%
- 吉村秀雄商店 車坂 純米酒
而今のようなプレ酒も出されていますが、ペアリングの提案としては非常に秀逸です。
一般的な鮨店では選択しないような流れもあり、燗酒を組み込まれている点は印象的でした。
味わいや香りのメリハリがあるので、和歌山のお酒の魅力を幅広く知る事が可能です。
![真ツブ貝](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/e071fce4f039a0ba42b5ed2966a578b0-1024x683.jpg)
新海苔と土佐酢と共に。
実に味わい深く、旨味、甘味が強い!
歯を入れるとシャクッと弾けて、味わいと香りがふわっと広がる。
![伝助穴子](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/eb4a56bd48d2ccb38484860a448a9786-1024x683.jpg)
関西らしい一品で嬉しくなる。
新玉葱と木ノ芽と共に。
身はぷりっぷりで、骨切りはバッチリだ。
全く当たらず、旨味も甘味もたっぷりと堪能出来る。
ツユの甘味の付け方が巧い。
香りも楽しむ事が出来る良き調理法である。
![雑賀 純米吟醸原酒 COOL DOWN](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/365c012b61950b301b2dd203cf061db2-1024x683.jpg)
![鮑](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/e7c47985dfa68366d283f5e994acdf82-1024x683.jpg)
酒蒸しでの提供。
添えられた地物のアスパラガスは香ばしく、美味。
鮑はむっちりしているが、繊維質の歯応えを少し残す火入れが魅力的だ。
肝ソースと野菜は珍しい取り合わせだが、センスを感じる。
黒胡椒も嫌味の無い使用法。
![鮑のスープ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/7885cd29bbffc45389c0ac42a2874bf6-1024x683.jpg)
初手からパンチがあるわけではなく、じわじわと高まる旨味が良い。
これは過剰な味付けを行っていない事が奏功しており、鮑自体から滲み出る塩気のみである為だ。
![海胆](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/9553cced51b420a911f546089e73467d-1024x683.jpg)
徳島県産の紫海胆。
瀬戸内らしい香りの海胆だ。
上にあしらわれた白物体は「鮑の軟骨」との事。
コリッ!と弾ける食感が面白い。
![三井の寿 純米吟醸酒 +14](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/8e307e3b47f4bdb75e12880558b43189-1024x683.jpg)
![ガリがわりのキャベツ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/5affd83a56a6d5d43e4e53ff33d10bbd-1024x683.jpg)
ガリは新生姜で作られているそうだが、時期的にまだ先なので、キャベツで作られているそう。
意表をつかれるが、これが実に良い。
生姜の辛味は無く、酸味の浸透も穏やかであるが、キャベツらしい食感と甘味が活きている。
ガリの役割である「口直し」の効果も十分ある。
この後、握りに移行する。
![ケンサキイカと海胆](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/d5277117526b14b7ae3078c8fa604631-1024x683.jpg)
相互が調和し、途中から海胆の香りとコクが高まる設計だ。
鹿の子包丁と塩、酢橘の塩梅が良いための調和だ。
烏賊+海胆で感心する事は非常に少ないが、これは初めてに近いヒットであった。
![鱚](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/20f25f7df252f60a4ed3ac18f515c10e-1024x683.jpg)
半熟の黄身酢オボロで〆る独特の仕事。
鱚の繊細な旨味は感じにくくなるが、黄身のコクが鱚の食感と調和する設計の仕事。
鱚に淡い味わいを求め、そこに季節の変化を感じる事を一義にする方には響かないが、古典的な黄身酢オボロの再解釈としては面白い仕事だ。
![小鰭](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/4c2fab5a7ce4157306b85c43c4ecc16e-1024x683.jpg)
みしっとした食感で、クラシカルに〆ている。
塩気が程良く、酸味もスッキリと塩梅が良い。
皮目は軽くペースト的にとろけ、〆た後の寝かせ方が良い。
それでいて香りはふんわりと漂い、上品な範疇に制御している。
![稚鮎](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/fbdc0ac1929b85ef398ccb1fb06e2d65-1024x683.jpg)
シャリの温度を上げて提供。
小鰭の後の鮎で温度を上げるとは意欲的だ。
この試みは白眉。
肝の香りがぶわっと漂い、これは良い。
旨味とホロ苦さがすぐに調和し、身はみちっとした〆加減なので、噛み締めてじっくり味わう設計だ。
![而今 特別純米おりがらみ生](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/095e34d9091eed3c375f2ba783860c58-1024x683.jpg)
![北寄貝](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/512a6e0b2cdbb95128e0ddff9cb37b1e-1024x683.jpg)
これも温かめのシャリで提供。
肉厚な見た目通り甘味が強く、火入れはほぼほぼ生。
それでいて臭みは全く無い。
![北寄貝の貝柱と紐](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/7f079b4ef5d228bf795e906728c0cbcf-1024x683.jpg)
火の入れ方が良い焼き物。
鮨種の「副産物」を酒肴で出すクラシカルなスタイルは琴線に触れる。
![鮪赤身](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/88ee89f11ba27a4087ae8d52c6eb6afd-1024x683.jpg)
やま幸仕入れの133.6キロ、舞鶴、定置網。
旨味が穏やかに広がり、酸味は弱めの赤身だ。
シャリ温を高めて提供される。
![紀土 純米酒 あがらの田で育てた山田錦低精米八十%燗酒](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/287fa9860edd1ef270b13707583e866d-1024x683.jpg)
ここで【紀土 純米酒 あがらの田で育てた山田錦低精米八十%】の燗酒を出される点にシビれた!
素晴らしい!
![紀土 純米酒 あがらの田で育てた山田錦低精米八十%](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/d756ebc729bf53c00d9d92d06935de01-1024x683.jpg)
![鮪中トロ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/ac4f80dd2704e653541df14deb87cd48-1024x683.jpg)
仕事は漬け。
脂がとろっととろける中トロ。
味醂多めの煮キリを合わせ、タネによる調整を行っている。
![鮪トロ(はがし)](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/75be7adc8bdd122c23988636586d6008-1024x683.jpg)
旨味と香りが高まり、酸味が引き締めるトロ。
とにかく香りが良い。
![車海老の笹寿司とノドグロの棒寿司](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/ea8bd98100ee5afed10450968350419b-1024x683.jpg)
関西寿司のアレンジを出される点が素晴らしく、さらにシャリを使い分けている点が魅力的だ。
米酢のみで甘味がある関西風のシャリ。
![車海老の笹寿司](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/713968bace87e7c12f78b8e1d3de80b1-1024x683.jpg)
車海老は茹で置きで旨く仕立てていて、見た目や関西らしい提供方法が素敵。
ノドグロ(アカムツ)はスモーキーで脂がノリノリ。
個人的にはこれら2種類を同時に提供する事は味覚と香りの両面において同意しかねるため、大将にお伝えさせて頂いた。
とは言え、消費者の圧倒的多数は脂過多な深海魚や魚卵、あるいは味が濃い調味料を好む傾向が強い。
消費者が喜ぶ提供をされているのだろう。
昔からの鮨好きとしては、消費者が分かりやすい脂よりも魚の深い味わいに気付く事を願うばかりだ。
![吉村秀雄商店 車坂 純米酒](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/161becefb96340cbc394df42d7f01ed6-1024x683.jpg)
![穴子](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/380ad21fd6769d424b35e5cd786d7f03-1024x683.jpg)
握りに用いるのは、200グラム程度のサイズ。
身はみっちり、むっちりしつつ、繊維質がしっとりとほどける。
そして、甘味が穏やかである点が良い。
骨抜きも申し分無し。
![椀](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/7d1440be9bcbc51ca4f1a193491d0ade-1024x683.jpg)
潮汁ベースの味噌汁で、味噌もコクがあるためバランスが良い!
椀種は【龍神生しいたけ】。
![干瓢巻き](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/6a3d1b354772eecb5ff03a27a1fb317a-1024x683.jpg)
海苔を二重に巻くスタイルが斬新だ!
干瓢との食感の調和がしっかりあり、醤油を効かせた味に山葵もバシッと効かせる鉄砲だ。
![玉子焼き](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/b5bf7a5348f8d5d129fa60535240ac02-1024x683.jpg)
しゅわしゅわ、ふわんふわんな伊達巻き。
これまた意外性がある。
奥にあるのは食用ほおずき。
![鮨 義心外観](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/36fc755a395f6448c44a13155f4853a1-1024x576.jpg)
「鮨 義心」さんは駅から少し離れた場所にあり、落ち着いた外観と寛げる内装です。
駅から離れた場所にあるので、喧騒とは無縁。
リラックスして、じっくりと鮨を楽しむ事が出来ます。
大将と女将さんの二人三脚の接客も魅力的です。
「鮨 義心」さんは、お電話のみの予約となります。
店名:鮨 義心(すし ぎしん)
シャリの特徴:和歌山らしい九重雜賀のお酢2種類に横井醸造の與兵衛をブレンドし、全般に合う方向性のシャリ。
予算の目安:お酒を飲んで3万円ほど
TEL:073-427-3312
住所:和歌山県和歌山市畑屋敷東ノ丁6 第二中村ビル1F
最寄駅:和歌山駅から1,100m
営業時間:18:00~21:30 ※18時から1時間刻みでの入店が選択可能
定休日:不定休
同門の大阪・千成寿司さん
![](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/2020/10/20190611201120-1-160x160.jpg)
和歌山の郷土寿司のお店:、弥助寿司(和歌山市)、なれずしの和広(紀伊宮原)、うを為(岩出)、じゅげむ(紀の川市)、九和楽(九度山)、鉄砲寿司(橋本)、赤玉食堂(有田川町)、まさや(那智勝浦)、徐福寿司(新宮)、柿乃肴(新宮)
和歌山らしい江戸前鮨との出会いに興奮する、すしログ(@sushilog01)でした。
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