南紀(和歌山南部)を代表する郷土寿司と言えば、【秋刀魚寿司】が挙げられます。
秋刀魚と言えば、北海道や宮城県、岩手県のイメージが強いので、「何故和歌山で秋刀魚の寿司??」と思われる方は多いのではないでしょうか?
しかし、熊野地方では1500年以上の歴史を誇る寿司であり、秋刀魚と言う回遊魚の特性を活かした寿司となります。
秋刀魚は回遊魚であるので、8月中旬から親潮に乗り、北海道より南下を開始します。
北海道生まれの個体が和歌山に辿り着いているかどうかは少々謎に包まれているようですが、和歌山南部で獲れる秋刀魚は適度に脂が抜け、身が引き締まっているところが特徴となります。
故に、塩焼きには適さないものの、寿司にしたり干したりするには最適と言えます。
痩せた魚を干物にして旨味を凝縮する方法は分かりますが、寿司にして本当に美味しいの?と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、答えとしては、美味しい。
単に〆るのではなく、半ば「塩漬け」にして保存性と旨味を高める伝統的な仕事が奏功しているように感じます。
南紀には【秋刀魚寿司】を名物とするお店が幾つかあるようですが、こちらは新宮で1950年(昭和25年)に創業されたお店。
駅前で異彩を放つ外観は決して見落とさないでしょう!
【秋刀魚寿司】の姿は否応なしに目につきます。
なお、店名の「徐福」とは中国の伝説上の人物に由来します。
秦の始皇帝に使えた徐福は「東方の三神山に長生不老(不老不死)の霊薬がある」と言って、
天台烏薬を見つけ、戻らなかったと言う人物ですが、
新宮には徐福伝説にまつわる史跡が数多くあります。
歴史民俗資料館にも展示がありました。
話を戻しますと、こちらは熊野灘産の秋刀魚を10日~1ヶ月も漬けるそうです。
そして、脂と旨味が強い腹の部分を活かすため、手間のかかる背開きで処理するところに妙があります。
ただ、悲しきかな秋刀魚は大不漁が続いているため、ここ10年以上「大漁」が無いそうです。
伺った際に頂いた秋刀魚も、日本海側を巡り長崎で揚がったものとの事でした。
※秋刀魚の不漁については様々な理由が挙げられておりますが、温暖化による海流の変化が主要因であるとされております。ただ、旬以外の時期に伺っても、今は冷凍技術が進歩したので、こちらの技を感じさせる秋刀魚寿司を頂く事が出来るのは嬉しいところです。
さんま姿寿司650円
流石にしっかりと漬けられており、力強い食感。
噛みしめると旨味が広がり、秋刀魚の風味も漂います。
塩抜きは丁寧に行われており、塩辛いと言う事はありません。
酢飯は甘みが付けられており、優しい味わい。
和歌山県古座川産の柚子酢が用いられております。
秋刀魚の仕事、酢飯の味付けのバランスが良い秋刀魚寿司だと感じました。
気候の変動によって郷土料理にも影響が出てくるのは、
日本人だと殊更寂しく感じますね…
店名:徐福寿司(じょふくずし)
予算の目安:さんま姿寿司650円など
最寄駅:新宮駅から50m
TEL:0735-23-1313
住所:和歌山県新宮市新宮7050
営業時間:10:00~17:00
定休日:木曜
本記事のリンクには広告がふくまれています。