こんにちは、職人技が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
さて、僕は鮨ほどに天麩羅を食べ込んではいませんが、同じ江戸料理として天麩羅も大好きです。
好きな理由は味だけでなく、調理が極めて属人的な職人技だから。
人間の人生の足跡が技として光る職人芸の料理には心が動かされます。
銀座の「てんぷら 近藤」さん、京橋の「てんぷら 深町」さん、門前仲町の「みかわ是山居」さんと系譜の名店・築地「なかがわ」さん…
天麩羅は鮨と同様に、同門であっても異なる味わいなのが面白い。
今回ご紹介する宮崎台の「美かさ」さんは、全国で最も訪問したかった天麩羅店です。
予約を取れないので諦めていましたが、友人のお陰で念願の訪問!
結果的に何処の誰とも異なる天麩羅で、期待を遥かに超える美味しさに感動しました。
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宮崎台「美かさ」の魅力とは?
宮崎台の「美かさ」さんの魅力は、どこの系譜にも属さない唯一無二の揚げの仕事です。
土肥親方の仕事は他の全ての系譜と異なります。
鱈子、蕎麦がき、数の子など「変わり種のタネ」を使用する点が着目されがちですが、本質はそこに在らず。
土肥親方の本質は揚げ方に在り、つまり天麩羅でしか出来ない表現として衣と温度をコントロールされる点に在ります。
老練の技術で食材ごと、部位ごとに火入れを巧みに調整するのは、あたかも当然の如く。
超絶技術をさらりと用い、衣は非常に薄いのに強い存在感を示します。
薄いのにサクサク感が強い衣で、タネごとに香りの強弱を付ける点も独特です。
詳細については後ほどタネごとに読んで頂ければ、土肥親方の凄さが伝わるかと思います。
ちなみに、油は太白胡麻油、胡麻油、サラダ油のブレンドで軽やかに仕上げられ、胡麻油の比率は60%ほどであるそうです。
魚介類のクオリティは非常に高く、鮨を食べ込んでいる人でもうなるはず。
ハゼを活きた状態でさばいて揚げるスタイルは圧巻で、もちろん車海老や穴子も活きを用います。
詳細はタネごとのコメントから徐々に把握して頂きたいので、概観は敢えて詳述しません。
土肥親方の天麩羅は、コースの構成、ストーリーテリングも素晴らしいので!
「美かさ」のおまかせコースの詳細
「美かさ」さんのコースは、現在18,500円となります。
過去には非常にリーズナブルだったようですが、僕は妥当性のある金額だと感じます。
いや、技の凄さを踏まえると、寧ろ現在もリーズナブルだと思います。
こちらはタネごとに塩もしくは天ツユかの指定があり、理に適っています。
天ツユは、鰹出汁が強めで、甘味は極弱い。
キリッとした味わいの天ツユです。
この度頂いた日本酒
- 八海山 純米吟醸 1,500円
- 桂月 特別純米 1,200円
刺身
個人的に天麩羅店で刺身(生の魚)は蛇足だと考える。
しかし、鮪は天種に適さないため生で楽しんで欲しい、と言うおもてなしの気持ちがあるのだろう。
クオリティも中々で、山葵も申し分無く本山葵。
とは言え、やはり天麩羅のみを頂きたいと感じる次第である(笑)
むかご、ぎんなん、クルミ、トマト、車海老の頭、レモン!
非常に魅力的なタネの組み合わせだ。
それを酒肴的に先付として出す点が嬉しい心配りではないか。
こちらの天麩羅は薄衣で、本当にサクサクと軽妙だ。
むかごはホックホクで、香りが強い!
とろっとした食感は天麩羅らしい表現で、野趣ある香りも爽快だ。
トマトは脱水によって甘味と旨味が引き出されている。
見事!
車海老
海老の強い甘味と香りを感じて、衣の香りと食感がアシストする。
食感はレア感がありつつ、繊維質に粘度があり、ねっちりと柔らかく絡んでいる感じである。
これは極めて独特な火入れだ。
天麩羅は車海老の火入れで技量が現れる。
車海老
2尾目は海老味噌付きとの事。
ユニークなワンツーの提供方法である。
海老味噌のコクは言わずもがな、そこにしっとりと折り目正しくほどける繊維質が1尾目とのコントラストを楽しませてくれる。
アスパラガス
野菜天を巧く揚げられる職人は間違い無いだろう。
土肥親方は食材の火入れのみならず、衣の香りを強める揚げ方をされていて凄い。
穂先は巧みに脱水して凝縮感がある。
根本は脱水されていながら、ざっくりとした食感があり、瑞々しいエキスが溢れる。
香りを立てる穂先、甘味と香ばしさを楽しませる根本と言った印象で、ともに味わいが明確に異なる点が面白い。
冒頭にアスパラガスを出す構成も、天麩羅を食べている人間ならば「おお!」と思うストーリーテリングだろう。
鱚
天ツユで頂く。
かなり高温で絶妙な揚げ方。
瑞々しさを残しつつ、ホロホロさせない揚げ加減だ。
鱚はホロッホロに、あたかも淡雪のように揚げるスタイルが浸透しているが、それとは異なる。
繊維1本1本ではなく、まとまったパーツ単位に分解させて、最後にホロッとほどけさせる時差が個性的だ。
椎茸と鱈子
椎茸に鱈子でサプライズと香りを付加する仕事。
椎茸は凝縮感の後に、プルプルと気持ち良い反発を楽しませ、香りがグイグイと高まる。
松葉蟹の大葉巻き
これは魅力的な組み合わせ!!
しかも、松葉蟹がトロッととろける点に驚愕を覚える!!
実に面白い食感である。
蟹の甘味と半生の食感を両立させているのは天麩羅でしか出来ない表現であり、タネの選択に必然性がある。
新規性を目当てに変わり種を揚げる昨今の若手職人とは志の点で一線を画す。
ハゼ
レンゲの形に揚げているそうで、これは天ツユをすくうように食べてもらうためだそう。
繊維はホロッホロにほどけ、野趣が上品にふんわりと漂い持続する。
4口から5口ほどで頂くとリズムが作られ、尻尾の時点で香りが最高潮になる。
これは先の鱚を思い出し、違いを強く実感する良いストーリーテリングだ。
京人参
実に強い香り。
そして、素晴らしい点は、強い香りに調和させるセミハードの食感だ!
香り、食感の後に甘味が広がり、フィニッシュを迎える。
香りと甘味が余韻として残り、印象深い野菜天。
人参で甘味を出し過ぎないところが実に粋だ。
蕎麦がき
これまた意表をつく天種だ。
中心はぬるく、表面は温度が高め。
故に、蕎麦の甘味を強く感じさせる設計だ。
使用する山葵は本山葵で、当然のように抜かり無い。
数の子
サプライズが続く。
両脇から火が入っていて、食感のかすかなコントラストが面白い。
塩気を抜きすぎず、油と合わせる点に持ち味が宿る。
海老芋
和食で頂くよりもトロットロな食感で、これは天麩羅らしさがある。
出汁含めた海老芋を天ツユで頂く点も天麩羅ならではな食べ方。
海胆の山芋巻き
一般的な大葉ではなく、山芋を用いている点に驚嘆を覚える。
山芋のシャクシャク感が良きアクセントで、海胆を封じ込めながら熱を加えつつ生っぽい海胆の甘味と香りを活かす!
なんと、親方は理想的な山芋の桂剥きを生み出すのに一年を要したそうだ。
これぞ職人技。
ミョウガ
口直し的な存在のミョウガ。
香りとホロ苦さだけでなく、軽やかな甘味を引き出している点は、天麩羅の火入れらしい。
穴子
活きを直前にさばくスタイルで、7分弱揚げる。
衣の香ばしさからに魅了された後、噛み締めるとしっとりした食感の穴子が現れる。
これは脱水の妙だ。
しかし、穴子の皮の香ばしさも立てるところに、土肥親方の衣と揚げ方が活きている。
天丼
きめ細かくともサクサクなかき揚げ。
終始衣の食感をハイレヴェルに楽しませてくれるのは素晴らしい。
タレの量や掛け方も計算されている。
そして、天丼のみならず赤出汁や香の物も申し分ない。
なお、僕が天茶よりも天丼を頼む確率が高いのは、タレを楽しみたい気持ちとともに、赤出汁を頂きたい欲求に抗えない為だ。
水菓子
ゆべし入りの焼き芋の金団。
チョコレートも合わせていて、面白いバランス。
創作的だが、バッチリ美味しい。
「美かさ」のお店情報と予約方法
「美かさ」さんは、現在新規予約を停止されています。
土肥親方の体調を見ながら営業されているそうです。
なので、訪問する場合は僕と同じく予約されている友人、知人を探す他ありません。
店名:美かさ(みかさ)
予算の目安:おまかせ18,500円
TEL:044-853-1819
住所:神奈川県川崎市宮前区宮崎2-9-15
最寄駅:宮崎台駅から150m
営業時間:17:30~21:30
定休日:水曜
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