こんにちは、いぶし銀の職人さんがタイプなすしログ(@sushilog01)です。
こちらは東京を代表する天麩羅の名店の一つです。
天麩羅を食べ込んでいる方の評判も良いですし、僕も何の疑問も挟む余地がありません。
職人歴50年超の親方、深町正男さんの積み上げてきた技を実感するとともに、息子さんの深町一真さんが技を継承されている粋を感じる事が出来る、素敵なお店です。
天麩羅職人、深町正男さんの足跡と技
深町正男さんは天麩羅の名門・「てんぷらと和食 山の上」にて34年間勤められた職人さんです。
「山の上」と言えば、もう一人の名人、近藤文夫さんの勤務先でもあり、現在もスキルの高い職人さんを輩出しています。
ちなみに、深町正男さんと近藤文夫さんの経歴を並べてみると、興味深いです。
- 近藤文夫さん:1947年生まれ、1966年に山の上ホテルに就職、1970年に23歳で料理長に就任、1991年に独立
- 深町正男さん:1949年生まれ、1967年に山の上ホテルに就職、1976年に27歳で料理長(和食部門)に就任、2002年に独立
近藤文夫さんは天麩羅を独学で学び、「山の上」の地位を向上された方。
そして、深町正男さんは「山の上」を確固たる名門の地位に固定された方。
今でこそ「山の上」は天麩羅の5大流派として数えられていますが、お二人がいらっしゃらなければ、天麩羅の名門にはならなかったのではないかと思います。
ちなみに、天麩羅の「5大流派」は以下の通りです。
- 天庄(創業1909年)
- 天一(創業1930年)
- 天政(創業1936年)
- 京星(創業1947年)
- 山の上ホテル(創業1954年)
深町さんの天麩羅を特徴づける点としては、「山の上」流のふんわりした衣を駆使して火入れを繊細にコントロールされる点。
車海老については2尾で完全に異なる火入れを実現されていて、これには誰もが驚嘆するでしょう。
また、今回頂いた帆立についても天麩羅でしか表現できない火入れで、強く印象に残りました。
また、季節を強く感じさせてくれる野菜の天麩羅も絶品です。
野菜ごとに香りや食感などを絶妙に引き出し、天麩羅の奥深さを野菜を実感します。
魚介類と野菜が巧みに織り交ぜられたストーリーには、一度席につくと没頭し続けることは必至。
揚げの技術のみならずタネの構成についても経験に裏打ちされたセンスがあると感じました。
ベテラン職人さんの中でも、腕を高レヴェルで維持している抜きん出た方だと思います。
さらに、着目すべき点は息子さんの存在でしょう。
2代目の深町一真さんは職人らしさとフレンドリーさを合わせ持つ好漢。
揚げの技術も名人の御父上直伝だけあり、繊細な揚げ分けを行っておられます。
1978年生まれとの事で、著者の数年先輩ですが、若々しくて格好良い職人さんだと惚れ惚れしました。
良いお父様であり師匠を持たれ、将来が非常に楽しみな職人さんです。
接客の柔らかさについてもお父様ゆずりで、リラックスさせて頂けます。
てんぷら深町の立地と雰囲気
お店は京橋が最寄り駅となり、宝町、東京駅からも徒歩圏内です。
大通り(中央通り)から少し脇に入った道路に面していて、都心にありますが、ひっそりとした温かみのある雰囲気です。
外観は控えめで、店内も決して広くはありません。
カウンター席は11席で、2人がけのテーブルが2台です(コロナのため間引き営業をされています)。
しかし、親方との距離感も近く、ご家族を中心に営んでいるため、大変寛げる雰囲気です。
清掃は行き届いており、ダクトはピカピカで、店内の空気も清浄そのもの。
鮨店と同じく天麩羅店も扱う食材の香りを入店時に感じさせないことが一流の証だと思います。
てんぷら深町の天麩羅の詳細
メニューについては、お昼は4つ、夜は3つご用意されています。
お昼の一つは【野菜定食】8,000円で、車海老×2、野菜×10で構成されます。
野菜種を数多く揃えている点は正に「山の上」と感じさせます。
そして、お昼のコースの基本となるのが【No. 1】8,000円です。
お昼の【No. 1】の構成
- 車海老×2
- 魚×3
- 野菜×5
- ご飯、赤出し、香の物
【No. 2】10,000円は【No. 1】のご飯が天丼、天茶、天バラのいずれかに変更可能。
【No. 3】13,000円は【No. 2】に生海胆(海胆の大葉挟み)が追加されます。
夜の【天ぷら定食】15,000円はお昼の【No. 2】に魚が1品追加。
夜は他に【さしみ付き天ぷら】17,000円、【おまかせ天ぷら】20,000円があります。
僕は【No. 2】に、「山の上と言えば」な【丸十(サツマイモ)】を追加しました。
【丸十】は50分ほどかけてじっくり揚げるタネなので、入店時にオーダーするのがセオリーです。
ちなみに、お値段は1,000円とリーズナブルでした。
お昼のコース【No. 2】の詳細(実際に頂いたもの)
根来塗のお盆に用意されているのは、カボス、天ツユ、塩(沖縄県糸満の海塩)、大根おろし、殻入れ。
天ツユは鰹の風味の後に甘みを感じ、非常にまろやかだがタネを殺さない優しい味わいだ。
天ツユの醤油は「山の上」と同じ島根県の太鼓醤油で、揚げ油は生絞りの太白胡麻油(一番絞り)。
湯葉
急激に血糖値が上がらない気の利いた先付。
車海老の頭
香ばしく食感を高めるスタート。
車海老
衣は薄さの中に柔らかさがあり、軽やかで、さくりとほどける。
海老の香ばしさが食欲を刺激し、甘みも楽しめる秀逸な揚げ加減。
ふんわり、しかし香ばしくカラッとした衣は見事で、甘みを弾き出すミディアムレアの火入れだ。
車海老
二尾目はレア寄りの火入れで、揚げ分けは見事!
異なる食感を楽しませる趣向であるが、深町さんの海老は違いが明白で、誰しもが分かるはず。
筍
鹿児島の早掘りで、香りが凄い!
そして、甘みも強く、これは下ごしらえが奏功している印象。
蕗の薹
走りの野菜種が2連続で、新年に春の息吹を先取りさせてくれる。
走りを好んだ江戸ッ子的なおもてなしの心意気を感じさせ、しかも野菜と言うのが上品ではないか。
これまた鮮烈な香りで、苦味も非常に爽やか。
鱚
サクッと弾けて、ホロホロほどけゆく。
サラサラのほどけ加減を志向していないので、王道の揚げ方をハイレヴェルに実行している鱚だと感じる。
空豆
鹿児島産。香りが良く、甘みも頬をほころばせる。
帆立
非常に独創的な火入れだ。
見た目通りの生っぽさや艶めかしい食感があるものの、熱が入り繊維質がホロホロとほどけ、強い甘みが余韻として残るところが実に嬉しい。
帆立が衣の中で蒸されている点に加えて、軽やかな香ばしさを与えている点に紛れも無い天麩羅の妙味を味わう。
クワイ
土のような木のような香りに、芯の通った力強さを感じ、魅了される。
そして、ほっこりする甘みや、ほろりと崩れる栗のような食感。
新年らしいタネを、ここでしか頂けない天麩羅の姿で味わう幸せ。
ちなみに、これはアオクワイで、中華料理で用いられるシロクワイとは異なる。
アスパラガス
決して硬くはなく、しかしコリコリとした食感が弾けたと思えば、ひたすらジューシィ。
香ばしさに酔いしれていると、甘みが舌を甘やかせ、ホロ苦さがキリッと引き締める。
根本寄りは更にジューシィで、終始素晴らしい揚げの技術だと実感する。
穴子
香りが良い小型の穴子だが、産地は対馬とのこと。
穴子はサイズにはこだわらず、モノの良さで仲卸が選別しているそうだ。
衣はカリカリで、中はしっとりきめ細かい。
この好対照は腕利きの天麩羅店でしか味わえない。
丸十(サツマイモ) 追加
品種はシルクスイート。
香りが抜群で、余韻が強い。
50分かけて揚げているサツマイモだが、それにしてもトロトロで、クリーミーな火入れだ。
衣がガリッと崩れた途端、濃密な甘みが瞬時に広がる。
ある程度食べられる方であれば、是非とも頼むべきだと個人的に推奨する。
天丼
衣が細かく軽快なかき揚げ!
小柱も入っているが、海老が多め。
タレはクドくなく、しかし、天丼を食べた!と言う満足感を楽しませてくれる味付け。
香の物は美味しい糠漬けで、どうやら「山の上」から糠床を受け継いでいるそうだ。
赤出汁もバッチリ出汁が利いていて、軽く山椒を利かせた端正な味わい。
やはり、天丼と糠漬け、赤出汁は至福の組み合わせである。
天茶も美味しいが、この組み合わせには抗いがたい魅力がある。
水菓子
林檎のシャーベット。
これが美味しい!
香りが林檎そのもので、自然な甘みや酸味を楽しませてくれる。
強い甘みや香料に慣れている人は味が薄いと思うだろうが、妙味必淡なシャーベットだ。
てんぷら深町のお店情報と予約方法
予約はお電話のみとなります。
3週間以上前に取るのがベターです!
店名:てんぷら深町(てんぷらふかまち)
予算の目安:おまかせコースはお昼8,000円〜、夜10,000円〜
TEL:03-5250-8777
住所:東京都中央区京橋2-5-2 A・M京橋ビル1F
最寄駅:京橋駅から40m
営業時間:火~金11:30~13:15、17:00~ / 19:30〜の二部制、土・日・祝12:00~ / 13:45〜 の二部制、17:00~ / 19:30〜の二部制
定休日:月曜、第1・3日曜
【関連する記事】
同門「山の上」で新たな天麩羅を生み出した近藤親方
天麩羅名人として知られる早乙女親方の「みかわ是山居」
早乙女親方の元で修行された天麩羅名人
本記事のリンクには広告がふくまれています。