こんにちは、天麩羅も大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
こちらは東京の天麩羅店の中でもトップクラスに数えられる名店です。
親方の近藤文夫さんは高校卒業後に、天麩羅の名門である「山の上」に入店されました。
そして、僅か5年後の23歳で料理長に就任されたと言う出色の職人さん。
なんと独学で天麩羅を学ばれ、「常識からの脱却」を掲げ、江戸前天麩羅では軽視されていた「野菜の天麩羅」を多用された功績が世に知られています。
今でこそ「野菜の天麩羅」が市民権を得ており、みかわの早乙女親方の系譜でも野菜を重視されていますが、常識を脱却するためには確かな技が必須だと思いますので、近藤親方のご尽力は天麩羅史における大きな功績だと言えるでしょう。
著作の『天ぷらの全仕事「てんぷら近藤」の技と味』は天麩羅に関する書籍の中でも名著中の名著です。
家で天麩羅を揚げずとも、天麩羅が好きな方なら必携の一冊!
なお、現在「名店」と言われる天麩羅の系譜を整理すると、主に3つとなります。
- 天一(1930年創業、銀座)
- 天政(1936年創業、丸の内)
- 山の上ホテル(1954年創業、御茶ノ水)
そして、各々出身の有名店については、下記の通りです。
- 天一:天冨良いわ井(銀座)、天冨良よこ田(麻布十番)
- 天政:逢坂(虎ノ門)、天孝(飯田橋)
- 山の上ホテル:近藤(銀座)、深町(京橋)、下村(新御徒町)
ちなみに、みかわ是山居の早乙女哲哉親方は天庄(1909年創業、湯島)ご出身です。
鮨も同様ですが、こう言った系譜は意外にも広く知られておらず、食通を自称する人でも無頓着なので、自分は敢えて記載したいと思います。
近藤さんの天麩羅の概観
近藤親方は現在70歳を超えておられますが、揚げる所作はかくしゃくとしていて洗練されています。
淀み無い動きで、天種を衣液に漬け、放り込むように揚げ油にリリースします。
「放り込むようにリリース」と言う点がポイント。
全く恭しくなく、雑とも思える所作なのですが、長年の経験に裏付けられた洗練を感じます。
一切の乱れが無い動きは、お弟子さんでなくとも注視せざるを得ません。
そして、近藤親方の天麩羅は衣のふわっと感とタネの瑞々しさを両立させているところが特徴。
サクしゅわっと軽やかな衣の天麩羅がモダンかもしれませんが、それを考慮すると、クラシカルな衣と言えるかもしれません。
勿論タネによって揚げ方を変えられるのでサクッとした衣も表現されていますが、モダンとの比較の上ではこのように感じる次第です。
油は「山の上」流にマルホン胡麻油の太白胡麻油と太香胡麻油をブレンド。
上品に胡麻の香りを纏ったまろやかな衣です。
厚みは薄い衣なのに、まろやかな印象を与える衣。
そこから熱々で瑞々しいタネが香りと共に現れ、天麩羅を食べる醍醐味を感じさせてくれます。
全体的に「懐かしさ」と「上質さ」を同居させた天麩羅だと思いました。
使用する塩は山口県下関の「最進の塩」。
海水100%のミネラル分が豊富な塩で、特徴的な「多段式平釜製法」で煮詰めて作られます。
塩味のカドが無く、まろやかさがありながらキリッと引き締める塩なので、お野菜の天麩羅との相性もバッチリだと感じました。
ツユは鰹出汁がしっかりで、醤油もキリッと強めに利かせ、穏やかな甘みが脇を固める味わい。
ほぼ塩で頂きましたが、ツユも時折頂くとアクセントになって美味しいです。
なお、コースの時間は17時から1時間刻みで設定されていて、所要時間は1時間半弱です。
鮨も含めてコースは料理部分で1時間半~2時間が理想だと思いますので、大変テンポが良いです。
また、予約については結構な人気を誇っているため、3週間以上前に押さえた方が良いように感じました。
お昼よりも夜の方が評判が良いので、初訪問ならば夜が絶対オススメです。
ちなみに、名物の【丸十(サツマイモ)】はコースに入っておらず、揚げるまでに1時間くらい掛かるので、着席時点で頼む必要があります。
サイズが大きいので、2人で1つで問題ありません。
てんぷら近藤さんの【藤(ふじ)】の詳細(夏)
頂いた詳細については、下記のとおりです。
先付
夏らしい茶豆。
車海老頭
車海老は活きたものを直前にさばかれている。
頭は香りが良く、甘みと共に食欲を刺激する。
カリカリに揚げられているが、衣はふんわり。
車海老×2
サイマキよりマキに近いサイズ感。
最初のものは食感がむっちりとしていて、衣がふんわりしゅわっと優しく軽やか。
二尾目はより柔らかく、しっとり。
ホワイトアスパラガス
おお〜!前半から野菜!
北海道の契約農家のもの。
頂く前から香りが卓上に広がり、至福の笑みをもたらす。
噛み締めると甘みの強い水分が止めどなく溢れる。
一般的な時期としては遅いタイミングであったが、頂けて嬉しかった。
天麩羅通の知人いわく職人の腕はアスパラガスの火入れで判る…とのことだが、成程と納得する味わいであった。
大きいサイズなのに瑞々しく、他の料理では表現できない火入れである。
ヤングコーン
しゃくっとした食感の後、柔らかな青い香りを残す火入れ。
香ばしい衣のコントラストに妙があり、衣が香辛料のよう。
鱚
江戸前の鱚で肉厚。
繊維質はホロッとほどけ、ふんわりした衣とのバランスが絶妙。
しっとりサラりとほどける鱚とは異なるが、鱚は衣とのバランスが妙味だと認識した。
ピーマン
北海道産。大変瑞々しく、香りが良い。
強い甘みのあるピーマン。
かつて夏の北海道でスープカレーを食べた際、野菜の美味しさに感動したが、同じ感動を頂いた。
瑞々しさを引き出す上で天麩羅はこの上ない調理である。
賀茂茄子
秀逸!トロトロに火を入れた賀茂茄子は甘みが強く、フルーティーと感じさせるほど。
そして、香ばしさを纏った衣が良い!
皮は全く気にならなず、頂いた後に皮ごと揚げていたことに気付く。
直接醤油を掛けて頂くスタイルも破天荒で面白い。
甘鯛
衣の中で蒸されていて、ホロホロ。香りも良い。
ゼラチン質が全体に浸透している。
山葵と塩で頂くが、山葵は甘みのある本山葵。
蓮根
茨城産。瑞々しさよりも凝縮感のある火入れ。
甘みの余韻があるレンコン。
穴子
江戸前!梅雨の時期に最も嬉しい食材の一つ。
衣はカリカリで、身はしっとり、ホロホロ。
みかわの系譜ほどには脱水させていない穴子。
脂は穏やかで、香りに妙のある穴子。
江戸前の穴子は対馬のものとは異なり、厚みや脂ではなく、風味で食べさせる。
丸十(サツマイモ) 追加
焼き芋的な甘みとみっちり感があるが、とろりとしたペースト感は非常に少なく、ホロホロほどけてとろりと一体化する。
天茶
サックサクな小柱たっぷりのかき揚げは絶品!
一番出汁で淹れた焙じ茶を自分で掛けて頂くスタイル。
これは素晴らしい完成度の天茶。
北大路魯山人先生が大好物であったそうだが、近藤親方の天茶を頂ける時点で先生よりも幸せだと言えよう(笑)
香の物
水菓子
大変甘いスイカ。
前評判以上に野菜の天麩羅の魅力を感じました。
人によっては「原価率が…」と言うのかもしれませんが、親方の技術を考慮すると妥当性のある価格だと感じました。
老境でも技術を向上させる職人さんの姿勢は格好良く凄みがあるなと再認識しました。
季節を変えて再訪したいと思います。
てんぷら近藤のお店の情報
WEB予約は一休より可能です。
店名:てんぷら近藤(てんぷらこんどう)
予算の目安:夜のコースは藤13,000円〜
TEL:03-5568-0923
住所:東京都中央区銀座5-5-13 坂口ビル9F
最寄駅:銀座駅から130m
営業時間:12:00~13:30、17:00~20:30
定休日:日曜、月曜が祝日の場合休み
※昼は12:00~、13:30~、夜は17:00から1時間刻みで20:00開始まで
ちなみに、冒頭でご紹介した『天ぷらの全仕事「てんぷら近藤」の技と味』を持参したところ、サインをして頂きました!
すしログ
江戸料理に目がない、すしログ(@sushilog01)でした。
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