名店の技法を深化させる、俊英の天麩羅職人!日本橋「天ぷら浅沼」

天ぷら浅沼暖簾

こんにちは、職人系の料理が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。

日本橋にある「天ぷら浅沼」さんは、2022年9月16日のオープンながら、早くも食好きの心をつかんでいます。

僕はシンガポールから来日した読者さんから聞いて、耳の速さに驚いたものです。

今回、嬉しいお誘いを頂き、4月上旬に訪問しました。

結論として、他店とは異なる天麩羅の表現を実感し、またお伺いしたい!と強く思った次第です。

耳が早いグルメ友達に感謝です。

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日本橋「天ぷら浅沼」の魅力とは?

「天ぷら浅沼」の親方、浅沼 努武さんは、名門「銀座 天一」のご出身です。

帝国ホテル店、日本橋高島屋店で研鑽を積まれました。

山形新庄市出身の浅沼親方は、実は天麩羅が嫌いだったそうです。

美味しい天麩羅に出会ったことが無いため。

しかし、恩師の茶道の先生に言われて、「銀座 天一」を訪問したところ感動するに至り、天麩羅を志す事にしたとの談です。

 

頂いて感じたお店の特徴としては、衣とコース構成に妙があります。

衣は全般的にカリッカリで香ばしく、決して「エアリー」ではありません。

端的に「天麩羅を食べる醍醐味や満足感」がある衣です。

それでいて、重くなく、最後まで食べ続けたくなる美味しい衣です。

 

お話をお伺いしたところ、予想通り小麦粉を超低温保管されているそうですが、温度はマイナス24℃でした。

もっと低温で保管されている方もいますが、浅沼親方には現状ベストと考える温度だそうです。

さらに低い温度でも試みた上での結果との事です。

 

また、衣に空気を多く含んでいるため独特の食感と、満足度は高くとも軽やかな後味を実現しているのだと感じます。

理由については、恐らく卵白をメレンゲ状にしている為のようです。

天麩羅の衣は、鮨におけるシャリに等しい。

意識的に向き合い、可能性を広げる職人さんは崇高な存在です。

 

そして、コースの構成については個性的で、野菜を多用され、他の職人さんが使わないタネにもチャレンジされています。

天ぷら浅沼野菜

春であっても「山菜祭り」にしていないのは、親方が独自性に向き合っている為でしょう。

天麩羅好きは春に山菜をたっぷり食べる事になりますし、より独自の表現を出来るタネを中心に組み立てようと考えての結果かと思います。

 

衣、揚げの技術、だけでなくタネの仕込みの時点で独自性の高い仕事をされています。

お若い職人さんですが、隙が無い配慮をされている、と感じました。

今後が大変楽しみです。

 

最後に、調味料については、塩が2種類と、たっぷりの天ツユ。

天ぷら浅沼塩

塩は、奥が旨味を含む「ろく助の塩」で、手前が岩手県野田村の「のだ塩」。

ともに自宅にある塩なので嬉しく思いました。

「ろく助の塩」については、自然由来の旨味が凝縮されていて、もの凄い塩です。

天ツユは、鰹出汁が香り良く、味醂の甘味がまろやかに広がり、醤油が主張しすぎずコクと塩味を加えます。

天ツユの味覚設計も巧いですが、ツユに負けない衣を纏わせているために成立するのは明瞭です。

「天ぷら浅沼」のおまかせコースの詳細

「天ぷら浅沼」さんのコースは一本で、【おまかせコース】16,500円のみとなります。

鮨だけでなく天麩羅も価格高騰が続いているので、非常に魅力的な価格設定だと感じました。

天ぷら浅沼酒器

この度頂いたお酒

  • 「杉勇蕨岡酒造場」純米くくみ酒(美山錦、60%、山形酵母)
  • 「杉勇蕨岡酒造場」すみだ川(美山錦、55%、山形酵母16-1,KA)
  • 「一宮酒造」楚々として参 純米大吟醸 生原酒(改良八反流、50%、HA-11)

くくみ酒

くくみ酒

「酒道庵阿部」のオリジナル日本酒があるとは驚いた。

酒屋さんが山形県の「杉勇蕨岡酒造場」に頼んで造っている委託醸造のお酒だ。

一口頂き、これは旨い、と実感する。

常温で確かな存在感を上品に提示してくれる良き酒だ。

しかも、天麩羅に合う。

 

すみだ川

すみだ川

冷酒向けの銘柄。

穏やか系のリンゴ様の香り。

甘味がありつつ酸味が引き締め、苦味はじんわりとしていて良いバランス。

 

楚々として

楚々として

お酒を出される順番もバッチリで、最後まで飲み疲れせずに頂ける。

ハトシ

ハトシ

「えっ、長崎の郷土料理!?」と思って親方の出身を伺ったところ、長崎にはゆかりが無いそうだ。

カリッ、サクッ!と弾け、香ばしい。

香りだけでなく、海老の甘味とプリプリした食感も存分に楽しませてくれる。

セオリー通り車海老本体から出さないところに、コースの組み立てに意識的に向き合っておられると感じる。

海老頭

海老頭

まずは頭から提供され、カリッカリで香ばしい。

【ハトシ】からストーリーを自然に繋ぐ。

かなりカリッと揚げていて、軽やかだ。

海老

海老01

衣がきめ細かく、周辺は鋭角的なテクスチャーでサックサク。

衣自体は軽いが、良い意味での油感があり、旨い。

海老本体はみちっとした食感で、脱水が奏功しているため、噛み締めて旨い火入れだ。

海老

海老02

2尾目は、ぷりっとした食感を表現し、中心をしっとりに揚げていて、ジューシィ。

こちらはツユで、とのことで、納得だ。

菜の花

菜の花

京都産。

カリッと弾けて、香ばしさとホロ苦さを楽しませる。

鱚

鱚の模範的な火入れと言える「ホロッホロな食感」よりは火を入れている。

しっとりしつつ、ホロり。

そして、鱚の香りが強く広がるところが非常に魅力的だ。

久世茄子

久世茄子

京都産の伝統野菜。

香りが良く、トロッと甘い。

ツユにたっぷり漬けても衣が死なず、温度が調和して旨い。

ホタルイカ

ホタルイカ01

ホタルイカの天麩羅は意外に珍しい。

ホタルイカ02

スチームものを揚げていて、香りが良く、肝が安定の旨さ。

これは面白い試みだ。

蛤01

立塩で〆てから、一日寝かせているため、味わいが凝縮している!

さらに衣が蛤のエキスを吸収していて、旨い。

蛤らしい旨味と苦味を満喫させてくれるのは、みちっとした衣と仕込みのお陰。

蛤02

表現が実に斬新で、蛤はみちっとしつつ中心がジューシィでありながら水ッぽくない。

新タマネギ

新タマネギ

淡路島産。

とろっとろで甘い。

それでいて玉ねぎの繊維質を楽しませる。

甘味と香りが余韻としてひたすら残る。

白魚

白魚

白魚は頭と尾、ワタを落としてから揚げる。

香りとホロ苦さを最大化する仕事だ。

空豆

空豆

ねっちりと濃密な味わい。

香りと甘味、軽い苦味や旨味が広がり心地良い。

タラノメ

タラノメ

香りよく、ホロ苦い。

トロッととろけるような食感で、余韻も良い。

タラノメは山菜でありながら強烈な旨味があるので、後半に配置する理由に納得する。

海老詰め椎茸

海老詰め椎茸

「銀座 天一」らしい一品で、ぷりっぷりでコリッコリな椎茸に海老が甘味と香りのアクセントとなる。

揚げ方が鮑へのアンチテーゼのような椎茸で、高級食材主体でなくても楽しめる事を実感する。

下品な高級志向に走って、ノドグロや牛肉を揚げるよりも遥かに素晴らしい試みだ。

行者ニンニク

行者ニンニク

皆が大好きな香りは勿論、繊維質が縦にトロッととろけるのは天麩羅ならではだ。

天麩羅でタネを使う必然性を感じさせる。

穴子

穴子

サクッサクッと軽妙な食感の衣を食わせ、しっとりな穴子と合わせる仕事だ。

過脱水を加える「みかわ」一門の仕事とは完全に異なる穴子。

個人的には穴子の香りを立たせても良いかも知れないと感じたが、繊細さを重視する選択肢である事は理解する。

それまでのコースで親方の表現されたい事が分かるので、一連の連続性の中では上品な穴子も一興。

天丼

天丼01

多くの天麩羅屋さんと同様に【天茶】か【天丼】を選べるが、赤出汁欲しさに後者を頼んでしまう性分。

出汁がキリッと効いた赤出汁は、出汁の天茶以上に天麩羅の後味を引き締めてくれるような気がするためだ。

天丼02

かき揚げは揚げ込んで香り良く、むぎゅっとした衣とみちっとした海老の組み合わせが独特だ。

野菜を多用される構成だが、(もともと野菜を使わない)江戸前天麩羅を強く意識されていると実感する。

香の物

「天ぷら浅沼」の立地と雰囲気

天ぷら浅沼暖簾

立地については至便で、日本橋の駅からすぐのビルに入っています。

内装、意匠は落ち着いているので、肩肘を張らずに寛げる空間です。

最大6名しか入れないそうなので、席の間隔もゆったりです。

「天ぷら浅沼」のお店情報と予約方法

「天ぷら浅沼」さんの予約については、お電話のみとなります。

人気が高まるのは必至なので、本記事を読んで気になった方は、早めの訪問をオススメします(2023年4月時点)。

 

天ぷら浅沼(食べログのリンク)

店名:天ぷら浅沼(てんぷらあさぬま)

予算の目安:おまかせコース16,500円

TEL:03-4400-5977

住所:東京都中央区日本橋2-10-11 ordin日本橋ビル6F

最寄駅:日本橋駅から150m

営業時間:12:00~15:00、18:00~22:00

定休日:水曜

 

天麩羅の進歩からも目が離せない、すしログ(@sushilog01)でした。

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