こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
この度、宮崎で人気を高めている鮨店があると聞いて訪問しました。
こちらは「一心鮨 光洋」で修業された上村亮介さんが2022年1月にオープンしたお店です。
オープンから1年半も経たないうちに食べログのスコアは3.99!
「一心鮨ブランド」の強さを実感します。
よって、余裕を持って予約を行い、楽しみにお伺いしました。
結果的に期待を大きく上回る内容で、人気の理由に納得です。
ただ、握りの数は少ないので、お酒を飲む人の方がヒットするように感じました。
タップできる目次
宮崎の「ひとつ」さんは、「一心鮨」の姉妹店として2022年1月にオープンしました。
漬け場を任されている親方は上村亮介さん。
ご出身は宮崎県日向市で、大阪で10年間修業した後に、「一心鮨」で7年間修業されたそうなので、筋金入りの叩き上げの職人さんです。
店内は10席と広めですが、皆に目を配れるコーナーにまな板を配置する設計なのが好印象。
親方の的確な調理とフレンドリーな接客が威力を発揮する設えです。
そして、漬け場で気になるのが鎮座する中華蒸籠の存在。
さらに、コースの一品目は油もの。
しかも、料理には黒胡椒やミモレットを使うなど創作色を強く盛り込んでいます。
しかし、基本的な江戸前の仕事が徹底していて味覚調整にもセンスがあるので、嫌味なく楽しめます。
鮨店における創作性は賛否が分かれるところ。
特に古典原理主義者には否定する方が多いのが事実ですが、個人的には確かな素地があるならば創作性はウェルカムです。
創作的な志向でありながら味覚的に破綻しているお店は散見されるので、敢えて高度な試みを行って奏功している職人さんがいるならば応援したい次第です。
創作性や想像力無くして進歩はあり得ないので、安易に否定する人は進歩を止めた化石だと言えます。
上村親方が使用する魚の多くは、産直で漁師から相対取引で入れるものばかりです。
鹿児島の「のむら」さんと同じく、これでこそ地方でお伺いする価値のある仕入れだと感じます。
親方は釣り好きとの事なので、魚愛を感じます。
使用されているタネは力強い味わいのものが多く、宮崎の地魚の多様性を伝えてくれます。
そして、鮨の生命線であるシャリについては、力強い魚に合う味わいです。
当初頂いた時に酸味が少し強めかと思いきや、タネとともに噛み締めると馴染みます。
酸味だけでなく塩気もやや強めに用いつつタネと頂くと馴染むシャリ。
炊き加減は硬すぎず、もっちりした食感を楽しませ、パラっとほどけ、タネとの一体感も高いです。
お酢については、「一心鮨」と同じく飯尾醸造さんのお酢を使用。
ただ、「一心鮨」が赤酢プレミアムを用いるところ、こちらは富士酢と富士酢プレミアムのみ(米酢のみ)で調味されています。
その心は、「一心鮨」が熟成仕事を多用する反面、「ひとつ」は長期間寝かせない為だそうです。
このコンセプト分けは非常に好感が持てます。
山葵は言うまでも無く本山葵の良いものを使用されていて、焼きものの熱源は炭火と抜かりありません。
日本酒のペアリングもソムリエさんが素晴らしいご提案をしてくださるので、満足度が非常に高いコースになっています。
そのため、ランチにお得なコースを提供されていますが、お酒好きならば夜がベターかも知れません。
夜のおまかせは酒肴7品に握り6貫なので、酒肴が主体のコース設計です。
この点については、握り原理主義者の自分としては握りを増やして酒肴を削って欲しいと感じます。
鮨店は握りを頂く為のお店なので、10貫は欲しいなと常々思う次第。
とは言え、日本酒ペアリングをお願いすれば、コースの連続性や構成などに全く違和感はありませんでした。
故に、個人的には、日本酒ペアリングを頼んで完成するコース設計だと感じました。
なお、お店の話ではありませんが、回転制・一斉スタートのところ10人中4人が遅刻された事には驚きました。
最後の男性に至っては25分も遅刻されるに留まらず、店内で着メロON&電話応対をされていてお里が知れました。
鮨店のカウンターとは、人間の本質を映す鏡である事を痛感します。
品性はお金では買えません。
「ひとつ」さんは昼も夜も非常にリーズナブルです。
- 昼限定の握りコース 9,900円
- 夜の酒肴と握りのコース(おまかせ) 14,300円
また、日本酒ペアリングについても、良心的な価格設定です。
- 3種2,970円
- 5種4,950円
- 7種6,930円
1種類あたり100mlずつなので、お酒を飲める方は5種がオススメです。
昨今、料理に合わない味のプレミアム酒を出して1杯2,000円以上取るお店や、5勺(90ml)にも満たない少量で1合なみの価格を取るお店が増えていますが、日本酒の価格は良心の指標です。
日本酒の価格はご主人の良心や気概が数値化された値だと言えます。
酒蔵さんは良心的な価格で素晴らしいお酒を出していますからね…
まずは、ペアリングで頂いた日本酒を紹介します。
銘柄 | 酒米・精米歩合 | 酵母 | 合わせる料理 |
紀土 -KID- 純米酒 | 麹:山田錦・五百万石(50%)、掛:一般米(60%) | 7号 | ぐじの松笠揚げ、ジャガイモの茶碗蒸し、 |
みむろ杉 純米吟醸 | 山田錦(60%) | 9号 | 真鯛の刺身、椀(トリ貝)、ヒラマサの真子、酒肴盛り合わせ、 |
菊姫 吟醸あらばしり | 山田錦(55%) | 煮鯨、ノドグロ丼 | |
上喜元 純米吟醸 完全醗酵 超辛 | 五百万石(50%) | 自社 | 小鰭、穴子、アカス海老 |
天吹 生酛純米大吟醸 | 雄町(40%) | シャクナゲ | タイラギ、海胆軍艦、太刀魚 |
【紀土 -KID- 純米酒】は、メロン、グレープフルーツ、キリッとした酸が柑橘的な印象を与える。
一品目の油ものに対してマスキングペアリングを行う方向性。
香り3、甘味2、酸味4、苦味3、余韻3。
【みむろ杉 純米吟醸 山田錦】は、メロン、ラムネ、純吟ながら米感が高まるように感じるのは山田錦ゆえか。
しかし、これも酸で切る方向性で、後にコクが広がる。
ラムネっぽさがありつつコクが強い。
香り3、甘味3、酸味3、苦味4、余韻4。
【菊姫 吟醸あらばしり】とは素晴らしい選択で、多くの鮨店では出会わないペアリングだ。
酒肴盛り合わせと鯨のタイミングで、マスキングと補完を行う方向性。
香り2〜3、甘味3、酸味4、苦味4、余韻4。
【上喜元 純米吟醸】は「辛口のお酒をこう使うか〜」と納得。
小鰭に合わせられる事を実感し、同調の方向性を取れる。
辛口であってもしゅわっと感があり、抜栓直後であるのが嬉しかった。
香り2、甘味1、酸味3、苦味4、余韻2。
【天吹 生酛純米大吟醸 雄町】は、シャクナゲの花酵母で生酛造り!しかも酒米は雄町!とテンションが上がるが、味わい的には硬かった。
1品目が揚げものとはパワフルだ。
出始めの甘鯛との事で嬉しい。
味の良さは甘鯛なので言わずもがな。
塩の塩梅が良く、甘鯛の味を満喫出来る。
ジャガイモ!?と思ったが、食欲をそそる香りだ。
そこに黒胡椒が馴染む。
海胆は味わいよりも香りがアクセントになる使い方。
1品目の後に塩気を高めて、メリハリがある構成。
茶碗蒸しは勿論滑らか。
サクの状態で巨大で、魚体は4キロ。
上が腹側。
1日寝かせて脂を回しているため、これ凄いパンチだ。
刺身の前に上述の2品を出しても問題ない理由が分かる。
肉厚な切りつけながら身はねっちり、しっとりとほどけ、皮目の食感も楽しませてくれる。
背側についても、香り、脂ともに力強い。
実に印象深い刺身であった。
米粉入りの結晶塩も相性が良い。
椀種はトリ貝、冬瓜、木ノ芽。
トリ貝は山口県産で、肉厚で甘い。
出汁はまろやかな方向性で、トリ貝に軽く火が入る設計だ。
ヒラマサの真子、唐津産の黒海胆、子持ち昆布、佐土原茄子、アスパラガス。
ヒラマサの真子はしっとりしていて、きめ細かい口どけだ。
この酒肴セットをやっつけている時に、シャリ切りをされる。
部位は畝須。
ホタルイカの炭火焼きを混ぜた地味噌ペーストで頂く。
非常に濃密な脂。
これはお酒が無ければ太刀打ちが出来ない。
【菊姫 吟醸あらばしり】の酸と苦味で味と脂を切りつつ甘味を乗せるペアリング。
ちなみに、九州産の鯨は唐津に行くそうだ。
切りたてのシャリ、ミモレットと共に。
脂がノリノリで、ミモレットも全く違和感無し。
切りたてシャリの酸味も奏功していると感じる。
寝かせる前のシャリなので食感的にも味覚的にも馴染むのだろう。
甘味と酸味が広がり、ピリ辛と旨味がじんわりと広がる。
握りのお皿は有田の村上玄輝さんのもの。
塩気を浸透させて、酢はじんわりと広がる。
酢〆の塩梅よりも寝かせの方で小鰭を活かしていて、小骨を溶かして、ほのかにとろり、しっとりとほどけシャリに馴染む
宮崎の地物で、ナカズミサイズだ。
小鰭は宮崎で非常にレアらしい。鮨神様に感謝。
握りのワンツーが小鰭、穴子とは予想不可能な流れ。
笹の葉の上で炙り、青柚子の皮を噛ませている。
ふわんふわん、ホロッホロな方向性の穴子の美味しさを伝える味付けだ。
笹の香ばしさは控え目。
実にメリハリのある仕事と構成。
これも珍しいタネとの事。
昆布〆で脱水を行い、ぷっちり弾けて、ねっちりトロトロ。
昆布の旨味も香りも力強く乗せつつ、海老の甘味が強いので噛みしめると魅力が増大する仕掛け。
咀嚼回数を増やす事で仕事が活きる。
今季最後のタイラギとの事。
炙り無しの生で供されるため、ピュアな甘味とタイラギ本来の香り、そしてじんわりと広がるかすかな苦味を楽しませてくれる。
これは炙り無し故の魅力か。
産地は有明海。
唐津の赤海胆。
甘味がありつつ、香りが爽快!
余韻に上品な甘味が印象的。
地物で、非常にブ厚い。
脂が凄いがピュアで、香りも良い。
厚みがあるのでテクスチャーに艶めかしさもある。
しっとりさの中に極軽くぷりっとした食感が。
アオサ、軽く山椒を使用。
コクと香りと軽い酸味のある熟成味噌を使用している。
卵の香りが強く、層がぷりっとしている。
「ひとつ」のお店情報・予約方法
「ひとつ」さんは独自のシステムでWEB予約が可能です。
店名:ひとつ
シャリの特徴:飯尾醸造の米酢2種類をブレンドし、力強いタネに合うシャリ。温度や硬さはバッチリ。
予算の目安:ランチ【昼限定の握りコース】9,900円、夜【酒肴と握りのコース(おまかせ)】14,300円
TEL:090-2113-0111
住所:宮崎県宮崎市橘通東3-4-3 Bricks MBビル1F
最寄駅:宮崎駅から850m
営業時間:ランチ金土日12:00~13:30、夜18:00~20:00・20:30~22:30
定休日:第1・3水曜、木曜
すしログ No. 197 一心鮨光洋@宮崎(宮崎県)
地方独自の鮨の進歩を心から応援したい、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事のリンクには広告がふくまれています。