
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
2019年8月にお伺いした「鮨いの」さん。
その後、お弟子さんのお店を巡り、「愛媛は全国トップクラスの鮨県になる!」と確信した次第です。
そして、応援したところ、なんと食べログのスコアが大幅にアップ。
「鮨たか山」さん(2018年6月に独立、4年間修業)は、3.11から3.65に、「山本進一郎」さん(2022年11月に独立、7年半修業)は3.21から3.65に飛躍されました。
「鮨いの」の猪野親方は松山の鮨文化に貢献されているのは間違い無いので、改めて訪問しよう!と今回お伺いしました。

結果的に、過去にお伺いした時よりも更に美味しくバージョンアップ!
お弟子さんだけでなく、親方ご自身が進歩を止めない姿勢に、職人魂を感じて感慨を覚えた次第です。
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松山の「鮨いの」さんは松山で早々にミシュランを獲得した鮨店です。
親方の猪野 祐介さんは松山市の「江戸前 一朗」さんで4年間修業された後、2014年11月に独立されました。
実力派のお弟子さんを輩出されているのは冒頭に書いた通り。
親方ご自身も仕事と仕入れ力を高められていて、間違い無く松山の食のレベルを向上されています。
実は、猪野親方は特集記事を書いた「愛媛食材研究会」の発起人のお一人。
今治「しの田」の篠田 悠介さん、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの「くるますし」高平 康司さんとともに、飲みの席でアツく話した内容が今の素晴らしい研究会に結実されています。
親方が仕入れる魚と施す仕事は、ワイルドでパンチがあります。
鮨好きならば頂いてすぐに、タネのパンチが凄い!と感じるはず。
愛媛県の魚の強さを実感させてくれます。
故に、大ぶりのシャリがバランス良く調和し、食べ応えがあって嬉しい握りです。
…ただ、「ワイルド」と書きましたが、決して大味ではなく繊細な配慮に基づいているので、力強くとも下世話ではありません。
東京のお店でもここをはき違えているお店は多々あるので、鮨で「力強い味わい」を実現するためには繊細さは必須です。
親方は鮨目的で全国を旅する鮨旅行をされているそうです。
様々なお店を巡る事で、ご自身の修行やお店では得られない刺激や着想を得て、仕事をアップデートされているのは明らかです。
そして、「鮨いの」さんのシャリは2種類併用スタイルですが、硬さも温度もバッチリです。
切り替える際に違和感がありません。
2種類併用スタイルで最もダメなのが、加水率や炊き加減、温度のギャップが大きい事と、酸味と塩気の乖離が大きすぎる事です。猪野親方は共にクリアされています。
赤酢のシャリは記憶よりもまろやかな印象。
赤酢のシャリには程良い甘味を付けて、パンチがあるタネと調和させる方向性です。
かつては米酢のシャリの甘味がより強く、双方の硬さも硬めに感じたので、より「上品かつまろやか」な方向性に調整されているように感じました。
お酢については、飯尾醸造の「富士酢プレミアム」、ヨコ井の「與兵衛」、ミツカンの「白菊」を使用されているそうです。
なお、鮪の仲卸は豊洲の「結乃花」さん。
僕も推している仲卸さんで、横浜の「常盤鮨」の林ノ内親方が早期から仕入れておられ、同じく推しの「鮨みずかみ」の水上親方や、同じく松山だと系譜の「鮨たか山」さんに加えて「鮨かわなか」さんも仕入れています。
一般の方はイメージしづらいかもしれませんが、美味しい鮨店の背後には美味しい仲卸が存在します。
それでは、頂いた内容のご紹介に入ります。
お昼は完全予約制で【握りのみ】8,800円と【つまみと握り】18,700円を提供されています。
そして、夜は二部制で【握りのみ】13,200円と【つまみと握り】18,700円を提供されています。
僕は2回ともお昼の訪問ですが、隣の方が頼まれている日本酒の種類の多さに目を引かれました。
どうやら猪野親方は日本酒好きらしく、50種類ほど常備されているそうです。
これは、次回お伺いするならば夜が良いな…と感じました。あるいはお昼に車ではなく徒歩でお伺いしなければ!と。
そして、僕が頂いたドリンクは【シャンピン烏龍茶】550円×2杯です。

私事となりますが、かつてお金が無い若い頃は、緑茶のみを頂く事も少なくありませんでした。
しかし、時を経て、気概のある職人さんのお店では無料の緑茶以外に2杯くらいはソフトドリンクを頼むようにしています。
若い方はお会計にビビッて鮨店に行かなくなるくらいなら、(若き日の自分のように)無料の緑茶を飲んで鮨店に行く事をオススメしますが、ある一定の年齢を超えた人間が終始無料の緑茶のみと言うのも無粋に思う次第です。
…明らかにお酒の値付けがおかしい、東京などの高級店では緑茶一択でOKですけど。
お酒の価格はお店の良心のバロメーターであると同時に、お客の気概を示すバロメーターでもあります。
時と場所を考慮して振舞うのがお互いの為ですね。
余談が長くなってしまいましたが、「鮨いの」さんのお昼のおまかせ握りの詳細をご紹介します。
2023年9月にお伺いした際に頂いた内容については、以下のとおりです。

瀬戸内らしいワタリガニがたっぷりと使用されている。
走りの百合根と緑色の新銀杏が嬉しい取り合わせだ。
銀杏の香りとホロ苦さがアクセントになる。

甘味を付けつつ爽やかな酸味で、スッキリ味のガリ。
辛味は穏やか。

シャリは赤酢。
これは旨い!脂と旨味が滲み出る小鰭だ。
特に皮目から滲む脂が印象的で、シャリの酸味に合う。
そして、余韻が長い。
良い〆の仕事である。

極薄切りからの細切りで握る。
愛媛らしい剣先烏賊の強い甘味に、赤酢の香りとコクをぶつける。
やはり、「鮨いの」さんの握りは松山でインパクトがあると実感する。

愛南町、一日、軽い漬け。
ばっつりと快感とも言える食感のアタックから、ジワジワと柔らかく脂を滲ませ、味を強めてゆく。
香りもどんどん強くなる。味わい深く、印象に残る味わいのイサキだ。

八幡浜。
握る前に皮目を軽く温めて提供される。
非常に肉厚で、香りも甘味も力強い白甘鯛だ。
嬉しくも厚みのある切り付けなので、脂を溶かすための温めが奏功している。
これは誰もが「旨い!」と思うはずの魚と仕事だ。

愛南町、四日。
パツッとしてから、トロトロとろける。
力強い味わいの鯵なので、当たり葱が良いバランスである。

漬け、山葵に加えて和芥子も使用。
ねっちりとした食感で、味わいも濃密だ。
味わいと香りが次第に高まる。
味付けに甘味を用いつつ、最後は鰹の酸味でキリッと締まる。

生と半熟のハーフ&ハーフとは妙案!
半熟により濃密な卵黄感を与えつつ、生の部分で皆が期待するいくらの味わいや風味を両方楽しませる!
温か目のシャリも実に良い。

大間の延縄で、仲卸は前述のとおり結乃花。
濃密な味わいがあり、酸味は相当穏やかで、香りがじんわりと広がるフィニッシュだ。

今治の天然モノで、茹で上げ。
二番手さんが1尾ごとばらして握るスタイルで、提供時のお客間タイムラグを短縮している。
提供温度は温か目。
食感はしっとりしていて、香りも良い車海老。

漬け込みの下味は穏やかで、穴子の脂と香りを楽しませてくれる。煮ツメに山椒を使用。

赤出汁。
貝類の旨味が強く、蜆だろうか。
コクがあり、まろやかな味わいの味噌も土地の味を感じる。

松山の鮨店で〆が干瓢巻きとは良いな~としみじみ実感。
山葵使用の鉄砲だ。
海苔も上質で、巻かれる時に既に香る。
干瓢の醤油は穏やかで、甘味は程良いながらやや強めに付けている。
干瓢はしっとりとほどけつつ、軽くコリッ!とした食感もある。

海老と大和芋を用いつつスフレ状に仕上げている。
ふわん、しゅわん、とろりと、多様な食感の変化を楽しませてくれる。
2019年8月にお伺いした際に頂いた内容については、以下のとおりです。

糸もずく、土佐酢。
暑い日に爽やかな先付。

今津産の蛸と、北海道・余市の鮟肝。
蛸はみっちりした身質で、さっくりと切れる。
皮はトロトロ。
味付けはやや甘みが強め。
鮟肝は非常にとろ〜りとした仕上げ。
これも甘みが強いので、山葵が良い仕事。

大洲市長浜町のもの。
噴火湾産の毛蟹の餡とともに。
餡は日本酒の香りがしっかり目。
写真失念!
弓削島の海苔、甘鯛の出汁。
具は海老、椎茸、穴子、烏賊などゴロゴロ入っている。
個人的に茶碗蒸しは具がシンプルな方が好みであるが、これは松山の郷土寿司である松山鮓のインスパイアか?と解釈。

甘みのあるクラシカルタイプだが、辛味もある。

むっちりと肉厚で、香りの強い鰈。

5日寝かせて、強めの昆布〆。
昆布〆が強くても香りと旨味をしっかり感じられる。

八幡浜産。
鯵の香りが爽快で、脂もしっかり。
美味。

甘みのあるアオリなので、シャリとの相性が良い。
強めに山葵を用いている点も良い。

1週間熟成させたもの。
甘みが強く、寝かせても食感はバツバツ。
しかし、ねっとりととろけシャリの酸と乳化する。
熟成仕事であるが、香りも楽しめる点が良い。

安定の味わい。

甘い!
津和地島産との事で、濃厚な味わい。

やま幸仕入れの岩手産。
境港のまき網鮪でなくて胸をなでおろす。
酸味がしっかりしており、穏やかな血の香りが漂う鮪。

生を手で割いたものなので、食感が良い。
煮ツメで提供する点はクラシカルで魅力的。
帆立と煮ツメの甘みが、シャリの酸味と合う。

薄切りのガリを噛ませて。
小鰭はさっぱり風味で、〆加減はしっとり。

むっちりと肉厚で、ふわふわに煮ている。
下味は意外にも上品。

海鮮出汁がたっぷりで、雑味は無い。

「鮨いの」さんは松山の中心地である二番町のビルに入っています。
繁華街のビルですが、店内は広々しており、席の感覚も広めです。

EVを降りてすぐの暖簾の先には奥行きのある白木のカウンターが鎮座。
店内には切った後のシャリの香りが漂い、キリッとした空気感です。
実は、猪野親方が握るメインカウンター10席に加えて、二番手さんが握るカウンター個室8席もあるようです。
「鮨いの」さんは、TableCheckでWEB予約が可能です。
店名:鮨いの(すしいの)
シャリの特徴:米酢と赤酢の2種類のシャリを併用しつつ違和感なし。パンチのあるタネに合うシャリ。
予算の目安:お昼【握りのみ】8,800円【つまみと握り】18,700円、夜【握りのみ】13,200円【つまみと握り】18,700円
TEL:089-948-9986
住所:愛媛県松山市二番町1-10-9 MITUWA320 3F
最寄駅:勝山町駅から400m
営業時間:お昼(火曜以外)11:30~14:00、夜18:00~24:00
定休日:月曜
お弟子さんのお店2軒
「鮨たか山」さん

「山本進一郎」さん

愛媛の鮨を盛り上げたい、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事はNo. 294に最新情報を加筆しました
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