こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、今回、愛媛県の鮨店を巡り、あることを確信しました。
それは即ち、愛媛・松山は1〜2年以内に「鮨を目的に旅行する人が急増するだろう」と言う確信です。
このように考える理由は以下の5点です。
- 純粋に鮨と魚のレヴェルが高い
- 愛媛でしか食べられない鮨を頂ける
- 鮨店が増加しつつも各店の個性が確立されている
- 生産者さんの食材の手当が素晴らしく、料理人と連携している
- お店間で情報共有を行っている
これら全ての要素を兼ね揃えている地域は稀有。
そして、上記を支えているのが「愛媛食材研究会」と言う活動です。
昨年、僕は広島県からアドバイザーとして受託した「瀬戸内じざかな日和」プロジェクトのレポートで、「地域グルメを活性化する方法」を提言しました。
「瀬戸内じざかな日和」レポートNo. 3:広島の江戸前鮨の現状と地域グルメを活性化する方法その上で、「愛媛食材研究会」の活動は「正に我が意を得たり!」と強烈なシンパシーを抱いた次第です。
間違いなく、「愛媛食材研究会」の活動は全国の料理人さん、生産者さんに希望を与えてくれるでしょう。
「愛媛食材研究会」の活動は掛け値なしに素晴らしいと感じます。
記事公開時点(2023年8月)では未だメディアに掲載されていませんが、いち鮨好きとして黙って見ていられません。
そして、素晴らしい活動を応援せねば!と言う想いで筆を執りました。
鮨好きは、今こそ愛媛に訪問すべし!と、力強くオススメします。
本記事が、すべての鮨好き、食好き、生産者さんに届くことを!
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それでは、本題に入ります。
本記事を読み終えた時には、愛媛で鮨の食べ歩きをしたくなっているはずです。
人によってはフライトを予約しているかもしれません。
その点はご了承ください。
最初に、「愛媛・松山の鮨がアツい理由」について、お話します。
この度、愛媛で鮨店を5軒巡りました。
お伺いしたお店は下記のとおりです。
松山を超えて西日本トップクラスの鮨へ!「くるますし」 松山愛あふれる親方が編み出すバランス抜群の鮨!「鮨かわなか」 松山で仕入れ力とセンスを兼ね揃える端正な鮨店!「鮨たか山」 松山でリーズナブルに楽しめる江戸前鮨店!「山本進一郎」 名漁師・藤本さんとのタッグで生み出される唯一無二の鮨!今治「あか吉」これらのお店を訪問して驚いたのが、冒頭で書いた「個々のお店の個性が確立している」点です。
これは当たり前に思われるかもしれませんが、決して当たり前のことではなく非常に珍しいことです。
筆者「すしログ」は昔から全国の鮨店を開拓してきましたが、いわゆる「鮨激戦区」になっているエリアでも、立て続けに5軒も巡るとお店の類似性を感じました。
地魚であっても使用するタネが被りに被ったり、そのタネに施す仕事が被ったり、と言う類似です。
よって、個々のお店に対して失礼なので、立て続けに鮨店を巡ることを封印しました。
鮨は和食よりも調理表現の選択肢が限られているジャンルです(和食自体が西洋料理に比べると少ないところ更に)。
制限された枠組みの中で深化と進化を求められるストイックなジャンル。
ひとたび枠組みを出ると「江戸前鮨」ではなく「創作寿司」の範疇となり、これ即ち安易な味付けの世界に入ってしまいます。
理を料る料理ではなく、味を調える調味だけでは余りにも安易。
限られた範囲内で自己表現をしなければならないからこそ、鮨の料理人は「板前」ではなく「職人」であると感じます。
僕が好きなマンガ『HUNTER×HUNTER』の言葉を借りるなら、江戸前鮨とは「誓約と制約」に基づく料理ジャンルだと思います。
それ故に鮨職人は他店との差別化が難しいのですが、愛媛県の鮨職人さん達は見事に差別化を図っていました。
しかも、過度に創作的な手法を採らずに差別化している点が素晴らしい。
主に都会で人気なお店であっても、食材の旨味を重ねたり味付けを濃くする(魚味を蔑ろにする)、高級鮪や高級海胆を多用する(江戸前の仕事と向き合う前にお金で解決する)、キャヴィアなどの海外産の食材を使用する、「映え」優先の提供を行う…と言った職人の本質から外れる付け焼き刃の手段で差別化を図ろうとするお店がありますが、それらは全て本質的には江戸前鮨ではありません。
あくまでもエンタメで、需給が成り立っているならば悪く言う権利は僕にはありませんが、付け焼き刃で差別化を試みた料理で心から美味しいと思ったことはありません。
要は心が動かない料理です。
愛媛県の鮨職人さん達が素敵なのは、ご自身の仕事と魚に向き合った上で他店を意識している点です。
その上で、「愛媛食材研究会」で他の職人・料理人さんや生産者さんと情報共有を行うことで目覚ましいレベルアップを果たしているのが、愛媛の今の鮨シーンであり魅力だと思います。
そして、愛媛の鮨と食材はポテンシャルが凄い、としみじみ感じ、その試みに心が動かされます。
「鮨好きは、今こそ愛媛に訪問すべし!」と宣言する理由は、このような変化のダイナミズムを感じて欲しいが為です。
既に有名なお店やミシュラン店、100名店だけをスタンプラリー的に巡るのではなく、是非ともこれから伸びるであろうお店も訪問して、県全体としての魅力・凄さを感じて欲しい。
既存の予約困難店や鳴り物入りの新規店をスタンプラリー的に巡る行為は世間では「フーディー」として称賛されがちですが、僕に言わせると「木を見て森を見ず」です(※決して悪いとは言っていません、信仰の違いです)。
今回、立て続けに鮨店を巡る封印を解いた理由はコロナの影響で訪問リストが長くなった為ですが、結果的に最善であったと感じます。
個性が確立されているエリア・お店ならば、何軒巡っても飽きないのが鮨だと思い出させてくれたので。
愛媛県の職人さんたちに深く感謝いたします。
そして、自身のミッションは、まだ人気になっていない真面目なお店を開拓して、盛り上げることだと実感しました。
その先に、生産者さんにも日が当たる世界があれば望外の喜びです。
それでは、愛媛の食のレヴェルを引き上げている「愛媛食材研究会」について、簡潔にご紹介します。
僕が「愛媛食材研究会」の存在を知ったきっかけはグルメな方からの伝聞です。
愛媛県では料理人が集まり、地産食材と調理法の研究を行っている、と。
そして、今回現地で職人さんたちにお話を伺い、取り組みが奏功していることを実感しました。
「愛媛食材研究会」が発足したのは、2020年コロナ禍の折。
「飲食業界にとって厳しい状況だからこそ、飲食店は力を合わせなければいけない」との思いから立ち上げられたそうです。
会の発起人は今治「しの田」のご主人・篠田 悠介さんで、「鮨いの」の猪野 祐介さん、「くるますし」の高平 康司さんとの会談によって動き始めたそうです。
また、「道後 海舟」のご主人・坂本 紀征さんが会長を勤めておられ、Instagramで「愛媛食材研究会」についてポストされています。
参加者には料理人、鮨職人だけでなく、酒蔵「石鎚酒造」さんや名漁師の藤本 純一さんもいらっしゃいます。
藤本 純一さんについては、グルメな方ならば知らない人はいないと思いますが、素晴らしい仕立てで魚を扱う方です。
僕は1県に1人のスター漁師 or 仲買人(魚屋さん)がいればパラダイムシフトが起きると確信しています。
そう確信させてくれた方の一人が、藤本さんです。
激減する漁獲量の中、エリート魚をエリート飲食店におろすエリート生産者がいなければ、日本の食文化は先に進めません(漁業の実情については世間の「グルメ」な人たちの多くが恐ろしいほどに無頓着なので、早く関心を抱いて頂きたい)。
一人のエリート生産者と生産物の魅力を最大化する腕利きの料理人が数人いれば、地域の食文化は向上し、第二、第三のエリート生産者が生まれてくるものです。
ちなみに、藤本さんの扱う魚は、一般人でも「一里木マルシェ」にて購入可能です。
さらに、「愛媛食材研究会」は外部講師の方を招聘されて各々の仕事に向き合っている点も凄い。ガチです。
例えば、三重の「月山義高刃物店」3代目であり、飲食業界で高名な藤原 将志さんも包丁研ぎの講師として講演されています。
藤原さんの講演については、僕も京都の「飯尾醸造」さんで開催された「世界シャリサミット」で拝聴しましたが、本邦随一の研ぎ師の一人であり、「包丁で魚の味が劇的に変わる」と言う日本料理の本質に向き合っている方の一人だと瞬時に感じ取り、感銘を覚えました、
【40人超が集結!】鮨職人による鮨と酢飯と魚の祭典「世界シャリサミット2022」レポート(於 飯尾醸造)得てして、地方の料理人というのは、色々な意味で「孤独」になる可能性があります。
あるいは「孤独」に陥らなくとも、付き合いのある料理人・生産者の範囲で世界が完結してしまうことで、表現の幅が次第に限定されていく現象は津々浦々で実感します。
一人の力で地域の食シーンを変えるスター級の料理人もいるものの、そのような方は稀有。
飲食以外のビジネスと同じく、知識と時間の共有こそが現代においては成功の近道ではないでしょうか。
一昔前は、知識やコネクションは人と共有するものではなく、自分だけで使うものと言う認識が強かったと思います。
しかし、今後は「他者と共有し、他者に向けて発信すること」が活路に繋がるでしょう。
特に地方においては東京などの大都市よりも威力を発揮すると確信しています。
僕は料理人、生産者、消費者の好循環こそが食の世界の理想郷だと思います。
モノだけでなく情報も好循環させることがより良い未来に繋がるはず。
故に、そのような取り組みを行い、地域の食文化を向上させようと言う「愛媛食材研究会」の活動に希望を感じる由。
「愛媛食材研究会」は大いに注目されて然るべき活動です。
次に、「愛媛食材研究会」に参加している飲食店については、下記のとおりです(2023.08現在)。
市町村を記載していない場合は、松山市となります。
活動を知ることで、参加されている飲食店さんには鮨以外もお伺いしよう、と決心しました。
全国的に鮨職人と和食の料理人は交流が薄いことが多いものの、交流すれば明らかにWIN-WINですからね…
よって、鮨のみならず和食や他のジャンルについても、愛媛県が今後飛躍するのは間違いない!と思います。
最後に、「愛媛食材研究会」で特筆すべきことがあります。
それは日本酒。
会と県内の飲食店のために愛媛を代表する酒蔵さんが専用酒を造られたことです。
酒蔵は前述の「石鎚酒造」さんで、銘柄の名前は【石鎚 純米大吟醸 愛】。
これは愛媛県内の飲食店限定酒です。
言うまでもなく、お酒と食は表裏一体。
体質的に飲めない方にはごめんなさい!ですが、日本酒は日本料理に無くてはならないものであり、食と同じく旅する目的になるものです。
よって、「県内の飲食店でしか飲めないお酒」は旅の強烈なインセンティブになると同時に、旅の過程での体験価値=感動を増幅するアイテムになります。
しかも、【石鎚 純米大吟醸 愛】はバッチリ美味しくて、料理に寄り添う美酒です。
率直に申し上げてしまうと、昭和・平成の飲食店や旅館ではラベルだけ変えた「限定酒っぽいOEM商品」も散見され、しかも料理に全く合わない味であるケースが多々あります。
これでは目的と手段が逆転した本末転倒。
本当にお客さんの体験価値を考えるならば味が第一です。
他県でも、有力な酒蔵さんと組んで味本位の日本酒が生まれ続けて欲しい!と強く感じます。
石鎚酒造の杜氏・越智 稔さんは大の鮨好きとして有名です。
僕が敬愛する山同 敦子さんの名著『めざせ!日本酒の達人』(筑摩書房・2014)でも、「趣味は鮨の食べ歩き」と紹介されていて鮨キャリアの長さを感じます。
(余談になってしまいますが、こちらの書籍は時を経た今でもトップクラスに使える日本酒入門書です)
鮨好きな杜氏さんが造られた、料理に合う日本酒…鮨好きならば絶対に飲みたくなりますよね!
「愛媛食材研究会」が与えてくれる示唆は日本酒にもあります。
最後に、松山でオススメのお店を紹介します。
本当は全てのお店をオススメしたいのですが、文章の都合上、厳選してお届けします。
ただし、訪問して感銘を覚えたお店については、随時追記してまいります。
若くして愛媛を代表する職人となった高平親方のお店。
同業の職人さんからの信頼も厚く、お人柄とセンス、探究心を兼ね揃えています。
松山を超えて西日本トップクラスの鮨へ!「くるますし」すしログが訪問時点でネット上のスコアは低いものの、確実に伸びると確信した鮨店です。
仕入れ力とセンスを両立されています。
松山で仕入れ力とセンスを兼ね揃える端正な鮨店!「鮨たか山」松山らしさを実感できる素敵な鮨店です。
味だけでなく、高級感がありつつリラックスできる雰囲気、接客も素晴らしい!
松山愛あふれる親方が編み出すバランス抜群の鮨!「鮨かわなか」「愛媛食材研究会」には参加されていませんが、他店とは異なる明確な仕事を持つ鮨店です。
派手さはありませんが、鮨好きならば感じるところがあるはず…
すしログ No. 309 鮨まえざわ@松山(愛媛県)かなり個性的なお店ですが、味と食材力は抜群です。
僕が訪問した時は食べログのスコアも低く「隠れた名店」でしたが、訪問後にスコアが急騰し、今では3.99にもなり、100名店となったためスタンプラリー系の方々が訪問しています。
必ずやサプライズを与えてくれる、素晴らしきミクソロジーBARです。
中性ヨーロッパをコンセプトにした内装は雰囲気があり、特にスクウェアのゲーム好きに刺さります(笑)
愛媛県酒造組合が運営する角打ち酒屋さん。
リーズナブルにテイスティング出来るので、日本酒好きなら大満足確実。
▶食べログのレビュー ※文章は無し
混ぜもの無しのじゃこ天を頂けます。
香り、味、食感の全てに惚れる。
「和製マシュマロ」と言うべき銘菓【つるの子】が秀逸な街の和菓子屋さんです。
住宅地にある雰囲気も素敵。
すしログ和菓子編 No. 74 西岡菓子舗@松山(愛媛県)素晴らしい醤油を造られている醤油蔵です。
僕は一つの県に行く際に土地で造られている発酵調味料を調べるようにしているのですが、ピンと来るものがあり訪問したところ大ヒット。
松山空港から近いので、フライト前に立ち寄る事をオススメします。
なぜか松山市内の料理店で使用する料理人さんが少ないようなので、是非とも使って欲しい!
以上をもちまして、「愛媛食材研究会」と愛媛・松山の鮨についてのご紹介を終えます。
本記事が愛媛旅行のきっかけになり、愛媛の食材・美食との出会いに繋がれば望外の喜びです。
一度訪問した人が、すぐにまた行きたい…と思うのが愛媛。
食材、お店、人、雰囲気、文化、全てが人を惹きつける土地だと思います。
瀬戸内の食を盛り上げたい、すしログ(@sushilog01)でした。
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