こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、筆者すしログは「鮨好きは、今こそ愛媛県に行くべし!」と感じています。
一躍全国区のスターダムに躍り出た「くるますし」さんの名は皆さまの頭に浮かぶかと思いますが、他にも未だ無名ながらに確かな実力を持つお店が急増しているためです。
そして、各店のタネ(魚)のクオリティを上げている立役者が、愛媛県・来島海峡の大島の名漁師、藤本 純一さんです。
また、伯方島には藤本さんが最も愛されている鮨店「あか吉」さんがあります。
この度、藤本さんとお会いするべく「あか吉」さんを訪問しました。
結果的に、藤本さん選りすぐりの魚の味わい深さに感銘を覚えると共に、「あか吉」の赤瀬親方の力強い仕事に圧倒された次第です。
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「あか吉」さんの魅力は、親方である赤瀬 淳治さんと藤本 純一さんの二人三脚に尽きると感じます。
赤瀬親方が今治市伯方島に「あか吉」をオープンしたのは2001年末との事。
そして、その後、藤本さんと出会い、魚の研究を続けてこられたそうです。
お会いする前に見た藤本さんの言葉で印象的だったものを2つ挙げると、以下になります。
血は臭みの原因にもなるが、旨味の一部でもある
魚の雑味や酸味は、魚のストレスの味である
僕も魚から完全に血を抜くと個性が無くなってしまうのではないか?と感じていたので、お言葉には勇気づけられました。
「魚のストレスによる酸味」は現在のところ判別できませんが、鮨を極めるために今後意識的に向き合おうと感じています。
赤瀬親方のシャリは、米酢のみで、酸味と共に甘味も利かせた瀬戸内らしいシャリです。
お酢はミツカンのブレンドとの事。
砂糖を使用し、赤酢を用いない理由は「白身に合わせるため」との談です。
これについては鮨を頂いて実感しました。
全体的にタネの味が強いパワフル系の鮨なので、赤酢のシャリだと食べ疲れる可能性があると感じます。
親方は「田舎のシャリですよ」と笑いながら仰っていましたが、僕は前々から主張している通りシャリには土地の味があって然るべきだと考えています。
そして、「あか吉」さんで特徴的な点は、鮨店でありつつ油を多用されるところです。
揚げ物を多数使用され、酒肴では中華料理店(香港料理店)顔負けの【清蒸(チンジョン)】を出されて驚きました。
ルールにとらわれず、自由に調理を駆使されるからこそ、都市から離れた島でもお客を呼び寄せられるのだと思います。
なお、「タネの味が強いパワフル系」と言っても、当世流の脂が強い深海系の魚を多用したり、熟成を掛けたりする「パワー」ではありません。
魚の味わいを引き出す手当てと仕事によって生み出されるパワーです。
このような魚を頂くと、鮨のみならず漁業にはまだまだポテンシャルがあるのだと痛感します。
日本においては全国で「獲れるだけ獲って手当てはおざなり」…と言う漁業が長く行われていますが、漁獲量が激減する状況下では、スター漁師、スター仲買人、スター鮮魚店たちこそが日本の魚食文化を変えてくれると信じています。
僕も鮨のメディアを運営する者として状況に悲観するのではなく、頑張っておられる方々を応援して社会の進歩に寄与したいと考えています。
ありがたい事に、藤本さんから「今度は漁に是非」と言って頂きました。
美味しいものを食べるだけでなく漁業と鮨職人の現場に立ち、勉強し続けて情報発信をしていこうと痛感します。
それでは、「あか吉」さんで頂いた御料理と握りの詳細をご紹介します。
「あか吉」さんはおまかせコース一本で、内容については海の状況次第となるようです。
比較的安定的に多くの魚が入る豊洲とは異なり、海の影響がダイレクトに表れるように感じました。
ネブトは一般的に「テンジクダイ」とも呼ばれる小魚。
愛媛県、広島県、岡山県の瀬戸内海沿岸で愛されている魚で、小魚であっても旨い。
身は繊細で、ホロホロとほどけてはかない食感だが、実に旨い!
今回頂いたものは、朝に揚がったものだそうで感動がひとしおだ。
藤本さんの「シグネチャー・フィッシュ」と言えば、真魚鰹ではないだろうか。
当日頂いたものは夜に獲れて、当日入ったばかりの真魚鰹。
上質な魚の頭を様々頂けるとは嬉しい限りだ。
都会の一流店では出す部位ではないものの、ご当地のお店では魅力となる。
2種類の海老を楽しめるシンプルな塩茹で。
「夏フグ」と称されるオコゼはゼラチン質が豊富なので、汁がとろっとろ!
鱧は身だけでなく浮き袋も使用されていて、烏賊、海老も加えているため、多様な食感を楽しめる。
出汁がたっぷりで非常に滑らかトロトロだ。
標準和名はキジハタで、瀬戸内でトップクラスの高級魚。
まさかの中華料理として登場!
甘味があり、辛味もあるクラシック方向のガリ。
細かい飾り包丁によって、独特の食感と甘味を表現している。
飾り包丁が細かい烏賊は食感を失い、烏賊の本質的な魅力を毀損している事もあるが、赤瀬親方の包丁は寧ろ魅力を引き出している。
白眉!
むっちむちで、ぷちりと弾ける身。
そして。甘味と白板昆布の旨味が広がる。
〆は白板昆布を当てるだけで、立て塩も当てていない。
ご当地の魚を活かす工夫は全国各地で職人さん達が励んでいるが、小魚で表現されるとマニア心をくすぐられる。
特に瀬戸内は小魚を愛食する文化があるため、江戸前鮨の伝統的なタネに通じるポテンシャルがあると感じる次第だ(江戸前鮨で最古のタネとして小鰭と白魚が有名)。
瀬戸内で「ベラ」とも呼ばれ、関東では「キュウセン」として知られる。
みっちみちの食感の後に、しっとり、ほろりとほどけ、旨味が広がる。
オコゼらしいみっちりと力強い食感が魅力的。
それでいて肉厚ながら繊維が細く切れていくところが面白い。
まさかの揚げ物の鮨が登場。
油と酢で微乳化する。
生の蛸で、力強い食感。
しっかりと丹念に噛み締めると、香ばしい香りが広がる。
加熱とは異なる香りを楽しめる。
軽く火を入れたもので、こちらは一般的な蛸らしい香りが強まり、旨味も強まる。
鮨で頂くなら矢張り加熱した蛸がベストだ(と藤本さんと話した)。
アラ汁ベースの味噌汁で、ゼラチン質がたっぷりと滲んでいる。
部位は腹側。
よって非常に濃密な脂だが、ピュアな味わいで、爽やかに感じる点が不思議な魅力だ。
甘味が非常に強い。
通常、ここまで脂が乗っていて味が濃いと、脂の香りが鼻を衝くものだが、それが一切無い。
偏見無しに藤本さんの手当ての凄さを感じたタネだ。
(数日間寝かせていないようで)食感が強いものの、やたら旨い!
真魚鰹のような味わいが強いタネの後でも、強い旨味によって存在感を力強く示す。
強い脂と共にイサキらしい香りが広がる。
1日とは言え軽い寝かせによって、身はとろりとシャリに馴染む。
産地は松山沖との事。
4日寝かせているだけでなく、海域も異なり、地元のもの。
濃密な脂と強い旨味、余韻が圧巻だ。
頂い後に濃厚な味わいが持続する。
珍しい地物の小型の海老の生の鮨。
このような小型の海老は食運も無いと中々頂けない。
少しネガティブな香りも混ざっていた(とこれも藤本さんと話した)が、東京の「江戸前芝浜」さんで頂く生の芝海老のような嬉しさを感じさせて頂いた。
天むすならぬ天寿司で提供。
小さくとも甘味の強い海老で、存在感バッチリだ。
また、海苔についても美味。
厚みあり、歯切れと香りが実に良い。
生産者さんを伺ったところ、広島が誇る「三國屋」さんであった。
「三國屋」さんの海苔は各種常備していて、【うみべのしおのり】のような加工海苔も格別だ。
2貫目の真魚鰹は漬け。
ここまで変わるのか!と言う変化が非常に面白い。
ねっちり、とろりとしたテクスチャーで、味わいも更に濃密に感じる。
頂いてから最後までずっと力強い甘さだ。
湯引きにした鱧で、皮目はむっちり、身はホロホロで、強い旨味がある。
皮目のぷるんとした食感と、そこから滲む旨味が舌に残る。
やはり長物は皮目の活用が味に影響する。
超巨大で驚いた。
1尾で4貫くらい取れそうなサイズ感だ。
地物との事で、このサイズ感は天然モノだろう…。
そして、独特の火入れが光る。
なんと中華鍋で熱した油で一気に火を入れる。
結果的に、表面はぷるっと凝縮しつつ、中はしっとりとレアに仕上がる。
香りも甘味だけでなく、食感も楽しめる豪胆な仕事だ。
この巨大な車海老、通常の茹で方だと魅力を損なうだろう。
地ものの海胆。
これ一つで丼料理になりそうなサイズ感だ(笑)
文字通り圧巻。
地物の海老を頂いたところ、巨大車海老の握りと揚げ物の後でも味わいに魅了される。
しっとりした身で、甘くて美味。
ワイルドな車海老の後だからこそ、繊細さを実感できる。
半熟状の出汁巻き玉子にシャリを詰める個性的な提供。
あたかもTKGのような印象の玉子だ。
「あか吉」さんは、お電話のみの予約となります。
店名:あか吉(あかきち)
シャリの特徴:米酢の酸味を利かせ、甘味を用いたシャリ。
予算の目安:25,000円前後
TEL:0897-73-0627
住所:愛媛県今治市伯方町北浦1203-8
最寄駅:なし
営業時間:12:00~(お昼の営業は要相談)、18:00~22:00
定休日:火曜
※完全予約制、キャンセルは予約日の3日前まで
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愛媛の鮨を応援したい、すしログ(@sushilog01)でした。
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