こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、「鮨みずかみ」さんと僕の出会いは、ある一冊の本でした。
それは、宝島社から2018年8月に刊行された『寿司を極める』と言うムックです。
「美味しい寿司との出会い方」と言うテーマで執筆依頼を頂いたのですが、他の特集記事から特に心が惹かれたのが「鮨みずかみ」さんでした。
「鮨みずかみ」さんのオープンは2018年3月。
オープン時点で既に味の完成度は高く、それにも関わらず世の多くの人が他の予約困難店や新規店に流れる現象に小首を傾げた次第です。
味は超えているのに、と。
以来、応援すべく機会を見つけて足を運ぶに至っています。
訪問する度に惚れる稀有な鮨。
個人的に、米酢のシャリの鮨店の最高峰です。
その後、2022年には、noteの連載のため毎月お伺いしました。
▶note:鮨カレンダー ~鮨みずかみの1年~【一括購読パック】
1年を通して読んで頂ければ、魚の旬や鮨について異常に詳しくなれます!
2023年以降は訪問ごとにアップしていませんが、最新情報として追記します。
直近の2024年4月の訪問については、お米の変更と酒肴の格段な改良が強く印象に残りました。
握りの完成度については、言わずもがなです。
タップできる目次
それでは、「鮨みずかみ」さんの魅力をご紹介します。
親方の水上行宣さんは名店「すきやばし次郎」で修業された職人です。
「すきやばし次郎」はミシュランの三ツ星を長年キープしつつも、余りにも予約が取れないため、星を解除された数少ないお店です。
それはもう厳しい事で知られる名店ですが、水上親方は本店と六本木店で合計16年もの修行をされました。
鮨職人としてのスタートは川崎市の鮨店で、そちらでも7年間修行されていたので、合計23年もの修行期間です!
水上親方は「出来が悪いもので」と昔気質のご謙遜をされましたが、長年の修行は水上親方に技術だけでなく粋を授けました。
そう、水上親方は鮨職人として突出した色気や気風の良さ、すなわち「粋」をまとっている方です。
「粋」と「いなせ」については、江戸時代において男性に対する最高の誉め言葉であり美意識です。
そのような風格と雰囲気を持ち合わせている水上親方に握って頂いていると、江戸から続く鮨を頂く魅力を心から感じ、美味しいだけでなく気持ち良いと感じる程です。
美味しくて、清々しいのが水上親方の握りです。
水上親方の握りは米酢のシャリで、他に無い味わいです。
米酢のみの白いシャリは系譜を感じさせる味わいと大きさで、非常に存在感があります。
即ち、酸味と塩気を利かせた端正な味のシャリ。
しかし、「すきやばし次郎」や小野 二郎さんのお弟子さんである「青空」さんとも異なり、水上親方の味があります。
水上親方は修行先や他の親方よりも意識的に塩気を抑えておられます。
よって、塩気よりも酸味を特に感じやすいシャリなのですが、白身魚の妙味も殺さない点が美点です。
絶妙な塩梅で、系譜らしさを感じさせる仕事。
一言で述べると「硬派」と言う言葉がフィットするシャリです。
ただ、何回か訪問するとシャリを微調整されている事が分かります。
修行歴が長くとも、修行先が名店中の名店であっても、シャリを更に美味しくされていると言うのは、鮨好きは勿論、若手の職人さんの心も刺激してくれるように思います。
また、シャリのみならず仕事の方向性やタネの構成も硬派です。
脂が多いタネや旨味が強いタネを中心に構成する事はありません。
例え、金目鯛や黒ムツのような脂が多い魚を使うとしても、脂を全面に出さない仕事を施されます。
あくまでも水上親方が用いる仕事はストレートな江戸前のそれであり、「すきやばし次郎」で学ばれたことの延長線上にあります。
「王道」の美学を感じさせてくれる鮨です。
ちなみに、僕が訪問の都度唸るタネは小鰭と鯖です。
〆の仕事が高位安定していて、シャリとの相性も抜群。
これぞ腕の立つ鮨職人の証左。
そして、鮪仲卸の「結乃花」さんから仕入れる鮪も他の仲卸とは異なる味があり、魅力の一つです。
全くひけらかすことなく、サラッと美味い鮪を出す点が粋です。
…僕はどうしても、仲卸推しの鮪の提供には慣れません。
「鮨みずかみ」さんのコースの詳細をご紹介します。
コースはおまかせのみで、以下の価格設定になります。
- 昼:握りのみ い:¥20,000
- 昼:握りのみ ろ:¥27,000
- 昼:つまみ付 は:¥28,000
- 昼:つまみ付 に:¥37,000
- 夜:握りのみ ろ:¥27,000
- 夜:つまみ付 に:¥37,000
最近の鮨店は酒肴が多く、握りは8貫程度である事もありますが、みずかみさんは20貫近くあり、これも次郎流。
満足度は非常に高く、生粋の鮨好きであれば堪りません。
なお、お昼は夜よりも廉価ですが、握りの貫数が少ないだけなので、手抜きなどは全くありません。
初めて訪問される方もご安心ください。
そして、個人的に提供のテンポの良さも魅力です。
18貫前後と、椀、玉子が1時間半ほどで提供されます。
しかし、決して速すぎると言う事はありません。
水上さんはリズム、緩急を付けられているので、速いとは全く思わず、じっくりと鮨に向き合う事が可能です。
僕は鮨のおまかせの所要時間は1時間半から2時間が適正範囲だと実感します。
2時間を超えると、鮨と言うジャンルにおいては間延びする可能性があります。
もちろん、コースの構成力が高く、2時間オーバーでも飽きさせない職人さんもいらっしゃいますが、センスが問われる離れ業であるのは言うまでもありません。
2024年4月上旬に頂いた内容です。
春の香りと出汁の塩梅が粋な組み合わせ。
ホタルイカは富山県産で、赤貝は閖上産。取り合わせに加えて、蕗の薹柚味噌が傑作だ。京都の八百三の柚味噌を魅力的に活用されている。香りに季節の香りを乗せる試みが粋ではないか。
針魚は〆てみちみち、ぶちぶちと気持ち良い食感。完全に烏賊で作る真砂和えの上位互換だ!タラノメは以前から酒肴で用いておられ、香ばしさとホロ苦さが魅力的だ。
素揚げした桜海老は頂く前から香りが良く、マッシュポテト状の新じゃがいもの甘味と共に素朴に嬉しくなる取り合わせ。
調理の面において、付け焼き刃的に日本料理の調理を用いる鮨店とは次元が異なると実感する(京都「浜作」さんの料理教室で学ばれているだけあると過去よりも強く実感した)。
大間。この度は初手でシャリの酸味を実感する。咀嚼回数を増やす事で他に無い味わいになる点が魅力的で、鮃の香りや味も活きてくる。お伺いするとお酢の分量には変更が無く、お米の品種を変えた為だそうだ。
真子鰈と共に春からの季節の変化を強く実感させるタネ。墨烏賊と全く異なる味わいで、ごわ、むち、とろりとした食感。そして、強い甘味。故に酢橘も併用しスッキリと提供しながら決して嫌味にならない。
沼津。コクがあり、余韻も長い赤身。酸味が高まる時期に差し掛かるが、シャリによって緩和される方向性。
三宅島。脂のコクが強く、シャリの酸味で切る中トロ。
沼津。時期らしさを感じる。脂が強く、噛みしめると香りも高まる。
大ぶりなナカズミを半身半分に切りつけて提供。酸味のキレが強く、それでいて香りや味がある小鰭。シャリの酸味と相まって、此度は古典を感じる。
安定感が抜群。厚みも甘味も紛れも無くトップクラスで、これは北海道を超える。クセや苦味は皆無。
むちむちで歯切れが良い鯵だ。脂はこれからかもしれないが、食感と香りが実に良い。ネガティブな要素は皆無!
徳島。香りがあり、味も強い黒鯛。
いつものことながら、甘味が強く、香りも良い。しっとりした食感で、甘味が続く点が良い。
甘味が強く、噛みしめると香りが高まり爽快だ。温度が高まる春らしい。
これは独創性があり、旨い仕事。〆、炙りからの寝かせで凝縮させている。
浜中。かなり濃密でクオリティの高いバフン。
肉厚で、煮ツメの甘味にシャリの酸味が奏功する。
コクとスモーキーフレイバーに多大な魅力がある仕事。
北寄貝出汁の吸い物で、本体の北寄貝のみならずこれも格別。
何度伺っても安定感が抜群だ。
あまりん、せとか。
2023年11月下旬の訪問時に頂いた内容です。
この度頂いた日本酒
- 日日 亀の尾 AUTUMN
- 乾坤一 特別純米辛口
- 大山 特別純米酒ひやおろし
- 大山 大吟醸 清正公
【日日 亀の尾】は頂けて心底嬉しい銘柄だった。
初手からマスカット、軽いラムネの香りを感じさせ、酸味がありつつ旨味とキリッとした苦味が味わいを引き締める。
生麩はもっちりした食感で、香ばしい。
甘味を付けていて、ほんわかと温まる味わいだ。
湯がきたてて提供。
とろんと柔らかく、濃密な味わい…
晩秋の定番の食材だが、問答無用で美味く、香りも良い!
水上親方の牡蠣のオイル漬けは旨い。
香りも良い。
そして、予想外に【日日 亀の尾】と相性が抜群であった。
香りが合い、日本酒の酸味が牡蠣の後味を軽く切りつつ同調して、その後、牡蠣の余韻を再び強く感じる。
つまり、牡蠣の印象が強まるペアリングとなった。
甘味を付けず、酸味のある餡でキリッと食べさせる。
本当に良い手法だ。
鮟肝の素直なコクを楽しませる提供方法。
白子にしても鮟肝にしても出す人が多い食材は、明白な違いが必要だ。
シャリと同じく端正な酸味と塩気のガリ。
食感も然り。
明石産。
身をみっちりと凝縮させており、噛み締めると香りと旨味が力強く込み上げる。
仕事がバシッと効いている。
白身で旨い!と感じさせるのは鮨職人の粋だ。
名刺代わりの一貫目が白身魚の職人さんは本質的に素晴らしい方が多い。
シャリと魚の仕入れと仕事に自信があるからこその白身魚だと感じる。
コリッコリから、とろ~りとした食感。
隠し包丁を入れぬ事で食感だけでなく甘味も楽しませる両立的な仕事だ。
八戸産。
旨味が強く、香りが直線的ではなく放射状に広がる赤身。
どっしりとしていながら、それでいて丸い余韻は芳醇で力強い。
酸味は極めて穏やかで、季節の変遷を強く実感できる赤身だ。
脂も強いが、コクが強い中トロ。
甘味が残る。
脂が強く、濃密な味わいだ。
決して大味ではなく美味い脂。
大トロは外国人のお客さんが絶賛しがちだが、これは「ほぼ和牛」だから刺さるのだと感じる。
しかし、和牛とは異なり魚なので後味はスッキリ。
まして水上親方の酸味が効いた米酢のシャリなので、後味が上品だ。
実に旨い!
秋口よりも明らかに味が強くなっていて、脂と旨味を楽しませてくれる。
香りも良い。
気持ち良く鼻に残り続ける香りを残す小鰭の仕事は決して多くは無い。
肉厚で甘い!
水上親方が仕入れる北寄貝は全国の鮨店でもトップクラスと言うかトップだ。
甘味が強烈なので、シャリの酸味と実に合う。
そして、裏面をほのかに炙った香ばしさが途中から高まる。
旨味があり、清涼感を感じさせる香りの鯵だ。
脂に寄せない鯵の選択は、いつお伺いしても実に良い。
そして、水上親方の握りは、お腹がすく鮨だと再認識する。
肉厚で、みちっと〆ている。
噛みしめるほどに旨味と香りが高まる。
特に香りが良く、甘味が余韻として喉に残る。
肉厚で甘く、味噌も美味い。
故にシャリの酸味が良き相性である。
昆布〆でバシッと決めた凝縮感と後から込み上げてくる脂が時間差の妙味を味わわせる。
いきなり脂が舌を覆いつくす金目鯛とは全く異なるアプローチ。
クリアーな味わいで、雑味が無くて甘い。
香りも良い。
海胆が弱い時期であるもののネガティブゼロの海胆を楽しませて頂けるお店はありがたい。
肉厚で旨く、煮ツメとのバランスも良い。
北海道産の鰤は、すっかり安定感ある頼れる味わいとなった。
昔、初めて頂いた時は「えっ、北海道の鰤!?」と極めて珍しく感じたものの、温暖化に伴い定番の産地となっている。
肉厚で香りが良い!!!
甘味は勿論の事。
蝦蛄は実に江戸前鮨らしい魅力的なタネだと実感する。
この実感は美味しいお店で頂かないと決して得られない。
抜群に良い塩梅のスモーキーフレーバーは「すきやばし次郎」らしい仕事で、そこから鰹の旨味と酸味が力強く広がる。
鰹で鮮烈なパンチとキリッと感を与えてくれる職人さんは珍しい。
ホロッホロで、香りが高まる穴子の仕事。
北寄貝出汁。
まさかのトロ鉄火!
初めて頂いた。
脂が強くともシャリの酸味が引き締めるトロ鉄火で、これは他のお店や砂糖入りの米酢のシャリ、あるいは赤酢のシャリでは表現できない味わいと余韻だと、しみじみ実感した。
水上親方は玉子焼きも常に美味しい。
本当に「常」なのが凄い。
山梨県産の柿。
果実で季節を感じさせてくれるのが、みずかみさん。
2021年2月末の訪問時に頂いたものです。
菜の花とうるいのお浸し
上品に季節感を楽しませてくれる粋な一品目。
針魚とタラの芽の鱈子和え
意外性のある二品目で、遊び心があって素敵だ。
タラの芽はサッと素揚げされていて、香ばしい。
〆た針魚のむっちり感や切り付けの幅など、細部のバランスが良い。
鮹
香りが複雑に変化する見事な仕事。
そして、繊維がしっとりとほどける。
塩を使わずに長時間もみ込む仕事で蛸の魅力を引き出す。
鮃
青森産。
もっちり感の後に、甘みがこみ上げてくる。
こう言った味わいの鮃は頂くと癒される。
墨烏賊
バツッと弾けて、甘みと共にとろっととろける。
メジマグロ
赤身の漬け。
酸味が心地良く、上品な漬けの塩梅のお陰で旨味が余韻として残る。
鮪赤身
勝浦産。穏やかな酸味だが、鉄の香りがあって良い。
余韻としての香りも強く、飲み込んだ後も楽しめる赤身だ。
鮪中トロ
脂がしっかり乗っていて、シャリと抜群に合う。
同時に酸味もあるので満足度が高い。
小鰭
肉厚な小鰭をみしっと強めに〆て旨味を凝縮させ、サッパリ感で締める。
北寄貝
裏側を炙りにしている点が粋。
炙りの香りを時間差で楽しませ、北寄貝の強い甘みと軽い苦味がシャリに合う。
厚みもあるので食感も良い。
鯵
初春ながらに脂がしっかり乗った鯵!
車海老
肉厚で甘みと香りが強い車海老。
しっとり感がある火入れは、以前よりも更に美味しくなっていると実感。
いくら軍艦
旬以外にいくらが出てくると、すきやばし次郎感がある(笑)
サッパリしているが、意外性があり嬉しい。
トリ貝
じゃくじゃくと噛みしめると甘みと香りが高まり、春の訪れを感じさせてくれる貝。
海胆軍艦
浜中産。濃厚な甘みの中に香りもある海胆。
メジマグロ
すきやばし次郎直伝の藁炙り。
素晴らしい仕事!
濃密な脂と藁のスモーキーフレイバーが抜群の相性。
サッパリした酸味もあるので、後味が爽快で粋。
藁炙りの鰹とは異なる魅力があり、今だからこそ楽しめて嬉しい。
穴子
しっとりホロホロとほどける穴子。
蛤 追加
甘みのある漬け込みに煮ツメ。
火入れは優しい。
蛤の味が濃くなっている事を実感する。
鯖 追加
みずかみさんで必ず追加する鯖。
脂が乗った鯖をしっかり〆て、抜群の凝縮感を楽しませてくれる。
脂がとろりと滲み酸味の利いたシャリと合致する。
椀
昆布出汁で、一番摘みの海苔を使用。
洗練された味わいで、非常に美味しい。
玉子
しゅわっ!と溶けるような玉子は、いつ頂いても美味。
べったら漬け
水菓子
あまおう、せとか。
旬のブランドフルーツたち。甘い。
2020年12月下旬に頂いたものです。
今回は「握りで出されないタネの酒肴2品+握り」でお願いしました。
賀茂鶴・季節限定「四杜氏四季酒」純米しぼりたて、黒竜・純吟50
先付け
定番の先付け
千葉県産の生ヒジキ、紅東。
煮蛸
切っている時から香りが良い!
このような煮蛸に出会うと、鮨店に来て良かったなあと本当に思う。
味の方も申し分無く、噛み締めた後に蛸の香りが炸裂する。
みしっみしっときしむような食感も良い。
下ごしらえは塩を使わずに一時間揉むそうだ(塩を使うと格段に楽だが、塩気が入るデメリットがある)。
鮟肝ポン酢
鮟肝の周りを藁でスモークしている点が良い!
鮟肝の脂、旨味に媚びない端正な仕事。
ガリ
シャープな酸味を甘みが支える。
薄切りで食感はシャクシャクと気持ち良い。
鮃
ぷりっぷりっな食感だが、甘みを強く感じさせる。
シャリの酸味と塩気、香りも良い。
墨烏賊
バツバツな食感をひたすら楽しませてくれ、とろけるまでの時間が長い。
そして、香りも良い。
墨烏賊で久々に笑顔になった。
シラカワ(甘鯛)
昆布〆で身は引き締まり、昆布の香りと旨味が浸透している。
シラカワ相手に妥協しない攻めの〆仕事が嬉しくなる。
鮪赤身
旨味主体で迫り、最後に血の香りが来て、酸味が高まる赤身。
鮪中トロ
脂の融点が低く感じ、すぐに溶けて赤身寄りの酸味と香りを楽しませてくれる。
余韻として、香りが長く持続する。
小鰭
しっかり〆て、酸味も浸透させている小鰭。
冬の小鰭ゆえに少し強めに〆ているように感じる。
鰤
シャリと合わせる事で他店に無い味となる鰤。
これは何処にもない味の鰤!
敢えて詳細は割愛する。
北寄貝
隠し包丁が奏功し、歯切れが良い。
甘みがしっかり。
しかし、シャリの酸味が甘みに流れず抑制する。
鯵
冬だが脂が中々乗っている。
個人的に鯵は夏~初秋に限っても良いとは思う。
車海老
長崎産。
甘みが非常に強い車海老!
みっしりした身は、噛むごとに甘みと香りが高まる。
噛みしめて幸せが高まる大グルマ。
鰆
香りの強い鰆で、食感が独特。
噛み締めるとみしっ、そして、しっとり、ほろりとほどけてゆく。
塩と酢で〆て3日寝かせてから炙っているそう。
仕事で珍しい食感と香りに仕上げている。
海胆軍艦
噴火湾産。
甘みが強すぎず、香りも楽しませてくれる海胆。
鯖 追加
絶妙!
脂が強い鯖で、脂が溶けつつ、身はみしっとしているので食感的なコントラストが面白く、咀嚼の喜びに満ちている。
脂が強くとも上品な食後感なのは〆の仕事のため。
蛤 追加
甘みのある漬け地に穴子の香りが強い煮ツメを合わせる。
穴子
しっとり、ほろり、香りのある穴子。
椀
鯛と昆布の出汁で、吸い口は柚子、葱。
玉子
しっとり…の後にしゅわっ!と溶けるかのような食感。
べったら漬け
水菓子
ルレクチェ。
香りが抜群。
2020年4月に頂いた【ばらちらし】です。
修行先のすきやばし次郎さんの系譜だと、他に【ばらちらし】を出されているお店を聞いた事がありません。
コロナ禍で編み出された御料理ではありますが、すきやばしの系譜のシャリで頂く【ばらちらし】は格別です!
開けた瞬間、いや、容器が素敵なので開ける前から嬉しくなります。
さらに、可愛らしい石鹸が付いており、心遣いがありがたい。
コロナの拡大に伴い人の心がどんどん荒んでいますが、人への心遣いが自身の平穏に繋がるもの。
ネットを含む周りの人間がどうであれ、他者への心遣いを忘れたくはありません。
そして、肝心の味については、ビックリ。
「すきやばし次郎」の仕事と、酸味が利いた酢飯によって織りなされる【ばらちらし】がここまで美味しいとは驚きました。
【ばらちらし】の重要な味覚的構成要素は甘み、酸味、塩味。
それらの味覚を巧くバランシングする事が必須です。
その意味においては、水上さんの【ばらちらし】は酢飯が緩衝材にもアクセントにもなり、素晴らしいバランスです。
玉子、オボロ、椎茸、穴子の甘みや風味を、酢飯の酸味と香りがしっかりと受け止める。
干瓢は甘過ぎず、椎茸も甘みだけでなく風味を活かしており、仕事が細かい。
そして、【ばらちらし】であっても我ら鮨好きが「待ってました!」と欣喜雀躍する小鰭。
香りと旨味がしっかりとアクセントになり、「鮨を食べた」と言う満足感を味わわせてくれます。
【ばらちらし】の最も重要な要素は上記の味覚の調整だと思いますが、鮨好きとしては【ばらちらし】であっても小鰭に止めを刺しますね(笑)
そして、他の全ての食材についても、個々に異なる仕事が施されています。
ホタルイカは甘みを利かせつつ、柔らかな火入れで、肝がとろーんととろける。
漬け込みの塩梅が優しい。
帆立は古典的な煮帆立状ですが、ごくごく弱く火を入れて、しっとりとした艶めかしい味に仕上げており、モダンです。
玉子はお店で頂くものよりも甘みを強め、さらに柔らかく焼き上げている印象。
春らしいコゴミを出汁で炊いているのは、涙モノでした。
懐石料理では一般的ですが、鮨店ではこのような細部にセンスと心配りが表れますね。
バランスが良い上に、個々の具材から意外性を感じさせてくれる【ばらちらし】です。
同じく2020年4月の訪問時に頂いたおまかせの内容は、下記のとおりです。
先付
鯛
寝かせて旨味を引き出し、ねっちりした食感の鯛。
噛みしめると甘みが溢れるが、即座に酢の酸味が引き締めて爽やか!
シャリの酢が勝ちすぎないのは、鯛に施す仕事の精度の高さ故。
白いか
ムチムチした白いか固有の歯応えを楽しませる。
そして、甘みが溢れ出る。
ボラ
鮨店では「下魚」もしくは「カラスミのもと」程度に見られがちなので、大変珍しい。
しかし、味は良い。
河口で獲れるボラは泥臭さが気になる事もあるが、本質的には身は繊細で鯛にも負けない旨味があるもの(と個人的に思う)。
本日頂いたものは鳴門の沖で獲れたボラ。
旨味が大変強く、そしてボラ自体の香りが上品に鼻孔をくすぐる。
思わずお代わりしたくなる味であった。
春子
しっとり柔らかく〆つつ、昆布の旨味はしっかりと浸透。
昆布の香りは余韻として上品に香る。
鮪赤身
三宅島産。
爽やかな酸味が持ち味で、上品だが確かな香りも魅力。
冬、夏とは異なる春の鮪としての味をバッチリ楽しませてくれる。
鮪トロ
主張しすぎぬ脂を、シャリの酸味が引き立てる。
小鰭
安定感抜群の美味しさ!
バッチリ〆つつ瑞々しさも感じさせてくれる。
鰤
少し時期外れだが、予想以上に美味しい。
脂がとろっととろけ、旨い。
一週間の熟成と包丁仕事が奏功している。
そして、鰤の香りは穏やか。
北寄貝
非常に肉厚で、甘みが強い!
炙りも丁度良く、甘みを引き出し、香ばしさを付加。
鯵
ぶちっと千切れる音と食感が心底快感。
北寄貝の後に一度リセットされる。
次が車海老なので、北寄貝→車海老だと甘みがボヤけていただろう。
車海老
大型の車海老を茹で上げで提供。
実に美味しい。
トリ貝
兵庫産。
これは旨い!
かなり大ぶりで、食感、甘み、香りの全てが良い。
高温の湯でサッと火入れを行い甘みを引き出し、ぬめりを除去している。
海胆軍艦
凡庸なテレビの食レポじゃないけど、とろける〜!と素直に感じた海胆。
温度が低いが、すぐに溶けるので甘みを楽しませてくれる。
この時期の海胆としては印象深い味わい。
メジマグロ
藁炙り。
炙りによって凝縮した皮下の食感とスモーキーフレイバーが抜群の相性。
そして、脂がとろけゆく。
小野二郎氏が編み出したとされる「藁火での炙り」だが、鰹とは異なる味わいを今回楽しませて頂いた。
鰹や鰆は今や普及した仕事であるが、メジは全く異なる面白さがあった。
穴子
とろりととろける穴子。
針魚 追加
昆布をバシッッ!と利かせた針魚。
ここまでの昆布〆は少数派と言える。
しかし、野暮ッたくはなく、仕事の塩梅もさる事ながら、昆布も上質だから成立する〆だと感じた。
蛤 追加
漬け込みがしっかりで、深い余韻を楽しませてくれる。
椀
出汁は北寄貝で、心が和む味わい。
玉子、オクラの漬物
ご馳走様でした!
お店は皇居や吹上大宮御所に近い半蔵門の一等地にあり、極めて閑静です。
お店の目の前は駐日イギリス大使館。
そして、内装と雰囲気もまた立地にピッタリ合う上質な空間です。
細部に気をかけておられるのが分かる凛々しい意匠。
まぶしいばかりの白木のカウンターと壁、天井。
キリッとしていながら緊張感が次第にほどけていくような温かみがあります。
しかし、それ以上にピッタリなのが、親方の水上さんと二番手の根崎 正実さん、そして女将さんの織りなす雰囲気です。
軽やかでスマートな雰囲気は中々出せないように思います。
そして、女将さんのお手製のコースターやお手洗いの石鹸など、高級鮨店では珍しい女性的な心遣いも嬉しい限りです。
ちなみに、次郎マインドを継承する「熱々のおしぼり」も、鮨好きとしては外せない萌えポイントです(笑)
「鮨みずかみ」さんの予約については、お電話のみとなります。
営業時間を外し、余裕を持ってお電話するのがベターです!
店名:鮨みずかみ
シャリの特徴:米酢のみを使用し、酸味が強めで、塩気は穏やか。食べ疲れない米酢のシャリ。
予算の目安:ランチ20,000円〜、夜27,000円〜
最寄駅:半蔵門駅から250m
TEL:03-3230-0326
住所:東京都千代田区一番町3-8 大宮ビル1F
営業時間:11:30~14:00、17:30~21:00
定休日:日曜
noteの連載記事
▶note:鮨カレンダー ~鮨みずかみの1年~【一括購読パック】
言わずと知れた小野 二郎親方の名店「すきやばし次郎」
「すきやばし次郎」ご出身の「青空」さん
すしログ No. 153 青空@銀座「すきやばし次郎」ご出身 で独自路線を貫く「ます田」さん
青山で復活!「すきやばし次郎」出身で独自路線を貫く「鮨 ます田」水上さんの弟弟子・岡崎亮さんの「鮨あお」
すしログ No. 349 鮨あお@青山水上さんと親交がある、林ノ内勇樹さん(「水谷」出身)の「常盤鮨」
遠方から通う価値のある抜群に美味しい鮨!横浜関内の「常盤鮨」
生涯通い続けたいと思う、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事はNo. 327、No. 315、No. 258、No. 247を統合し、最新の情報を加えています
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