こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
愛媛県松山市の「鮨かわなか」さんは、2019年9月にオープンされた鮨店です。
松山は御存知の通り「江戸前鮨激戦区」となっているところ、「鮨かわなか」さんは食べログのスコアが3.66になっています。
訪問してその理由に納得。
親方のお人柄、雰囲気、味、個性など全てのバランスが絶妙で、居心地の良い鮨店です。
鮨には親方の松山愛・愛媛愛があふれています。
創作的な調理も加え、モダンな方向性の鮨を楽しめます!
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「鮨かわなか」の親方である川中 航勇さんは、生粋の愛媛県人です。
松山で生まれ、松山で修業し、松山で独立された方。
僕は初めて松山を訪れた時から現在まで松山が好きなので、お気持ちは分かります。
良いところなんですよね…
過ごしやすく、文化があり、食材も豊かな土地なので。
対岸の広島出身の僕でも、愛媛・松山の魅力を常々感じます。
親方の鮨にはその経歴が活きているようで、愛媛の魚を多用されるとともに、東京の有名店など既存店の枠組みに収まらない個性的な仕事も用いておられます。
そして、鮨の生命線たるシャリは米酢と赤酢の2種類を併用。
2種類併用とは言え相互に違和感があるわけではなく、味覚の同心円で調味を設計されている点が素晴らしいと感じました。
端的に言うと、以下のとおりです。
赤酢の方は、赤酢でありながらまろやかな方向性で、酸がスッと軽やかに切れて、旨味が味わいを支える。
お酢はヨコ井の與兵衛に江戸丹念酢、ミツカンの三ツ判山吹をブレンドされています。
そして、米酢の方は穀物酢と米酢のブレンドで、甘味を付けているところが特徴です。
大変嬉しい事に食後にシャリの食べ比べをさせて頂いたところ、米酢のシャリには意外なほど砂糖の甘味が付けられていましたが、タネと頂くと見事に馴染んでいます。
また、お米については「蒸しかまど」で炊かれています。
「蒸しかまど」は、かの有名な鮨マンガ『将太の寿司』で「究極の炊飯方法」と紹介された炊き方。
江戸時代から続く伝統的な炊飯法で、メーカーとしては「小田製陶所」さんが有名です。
ただ、使用しているお店は決して多くはなく、鮨店ならば浅草の「鮨 一新」さんで頂いた事があります。
熱源がガスや電気ではなく炭なので、家庭で常用するのは中々大変です。
よって味わわせて頂けるお店は貴重です。
しかも「鮨かわなか」さんのシャリは加水、炊き加減、保管がバッチリなので、道具を使いこなしていると感じました。
羽釜、土鍋、銅鍋、バーミキュラ、カーボングラファイト…様々な炊飯器具がありますが、モノに使われては本末転倒ですよね。
そして、仕事については江戸前の古典的な仕事を押さえられています。
しっかりと光り物を出され、〆の仕事を楽しませてくれるところが素晴らしい。
「松山から出たことがない」と仰る割に江戸前の仕事を徹底されているのは、親方のセンスと食べ歩きの賜物でしょう。
東京の職人さんとの繋がりがある方で、精力的に食べ歩いておられるので、今後も良いところを吸収され更に美味しくされていくはずだと実感しました。
なお、「江戸前の古典的な仕事」と言いましたが、親方は創作的な要素も採り入れておられます。
例えば【イサキの焼霜造り】にオリーブオイルを用いたり、【煮穴子の米粉揚げ】を出されたり。
ちょっとした調理で江戸前の仕事にプラスを加えている点も「鮨かわなか」さんの特徴です。
ちなみに、最後に追加で【干瓢巻き】を頂こうと思ったところ、ご用意がないとのことでした。
理由が切なく、仕込んでも全然出ないためとのこと…
昨今東京でも【干瓢巻き】の不人気っぷりを感じます。
しかし、【干瓢巻き】こそが江戸前鮨の「巻物の主役」だと思います。
干瓢と頂くことでお店のシャリの特徴も分かります。
江戸前鮨店では、是非とも【干瓢巻き】を食べましょう!
それでは、実際に頂いた御料理をご紹介します。
「鮨かわなか」さんのランチのおまかせは9,000円です。
夜のおまかせも12,000円と15,000円なので、現在の鮨業界では非常にリーズナブルな価格設定です。
それでいて内容は充実しているので、コストパフォーマンスは高いと言えます。
海苔の香りが良く、厚みがあり、パリッと弾ける食感。
そして、鮪の酸味を感じるトロたくで、これは好印象。
安易な「脂巻き」ではなく鮪を味わわせてくれるトロたくだ。
殊の外サッパリな食後感。
瀬戸内のカニと言えば、ワタリガニ。
故に頂けて嬉しかった(不漁のため価格も上がっているところ)。
味付けは土佐酢のジュレ。
ワタリガニの甘味と内子の食感の中で、枝豆のコリッとした食感と香りがアクセントになる。
土佐酢のジュレがキリリと味を引き締める。
甘味に加えて、強い辛味があるガチ。
クラシックな方向のガリに辛味を付けたガリ。
肉厚でみちっとした食感の後に、くにゅっとしながら香りとコクが広がる。
魅力的な〆加減の春子。
6日熟成。
こちらは米酢のシャリに切り替えて握る。
熟成により、ねっちりした食感の身には脂が回っていて、とろりととろける。
旨味を先行させる仕事。
皮目を炙り、オリーブオイルと塩で供す変則的な仕事。
ねっちりした身にオリーブオイルの香りが嫌味ないアクセントになる。
江戸前の仕事で甘く炊いた穴子に、米粉をまぶして揚げる意欲的な酒肴。
米粉のお陰でせんべい的な香ばしさが斬新だ。
岩手県で育てられている、夏場に美味しい貝だ。
この貝を使われる時点で、豊洲も使われている事が分かる。
筆者はこの年初のエゾイシカゲガイで、松山で頂くとは感慨深かった。
頂いた貝は肉厚で甘味が強い。
そして爽やかな磯の香りが立つ。
やはり美味い貝だと実感する。
今治市宮窪(大島)産の海胆を添えて。
海胆は爽やかな香りと強いコクがあり、美味。
殻から剥いて使用されているそうだ。
愛媛の海胆は他の産地も含めて味が良い。
千葉県産。
酢を浸透させ、キリッと〆た鰯を用いた棒寿司だ。
白板昆布の食感強くて、これは面白い試み。
八幡浜産。
鱧だけでなく百合根も使用されている。
塩竈、63キロの小型の鮪。
夏らしい酸が走り、旨味がじわっと高まりながら鉄っぽいニュアンスと共に喉に余韻として残る。
夏鮪らしい爽快感だが、香りは上品。
なお、鮪の仕入先は僕も推している仲卸「結乃花」さんである。
しっとりした食感の〆加減で、包丁も相まってホロッとほどける小鰭。
塩気、酸味、香りの全てが上品で、まろやかに小鰭の魅力を伝える。
松山の他店と明らかに違う〆で面白い。
土地柄、初めて小鰭を食される方も訪問されるだろうが、間違い無く「小鰭の鮨って美味しいんだ」と感じさせてくれるだろう。
トロの後の提供ではないので、鮪の脂や風味を切る方向性で〆ていないためだ。
オボロ昆布〆故に昆布のアタックが非常に穏やかで上品。
海老の甘味と旨味が調和し、食感も違和感無し。
塩竈、100キロ。
こちらは何と24日熟成。
酸味と共に旨味、脂の味わいが高まりつつ、やはり酸で後味はスッキリ。
これは旨い熟成だ。
地物との事で嬉しい限り。
煮ツメが旨味主体で、砂糖によるとろみを付けていない。
煮ツメコクと本体の仕事の甘味を合わせる設計の穴子だ。
蜆は宍道湖産。
旨い。
臭みは全く無く、下ごしらえが良い。
「蜆に臭いなんて無いでしょ」と思う人もいるかもしれないが、1年に1回ほど人気店でも蜆の臭いが気になる事がある。
職人さんも消費者も気付いておらず不思議に感じる事がある次第。
下がプリン状で、上はしっとりとカステラもしくはスポンジ生地的な玉子焼き。
「鮨かわなか」さんは、ホットペッパー経由でWEB予約が可能です。
店名:鮨かわなか(すしかわなか)
シャリの特徴:米酢の白シャリと赤酢の赤シャリを併用し、ともにまろやかな方向性。
予算の目安:ランチおまかせ9,000円、夜12,000円・15,000円
TEL:089-943-3665
住所:愛媛県松山市一番町1-11-9
最寄駅:大街道駅から200m
営業時間:水〜日12:00〜14:00、17:30〜23:00、火17:30〜23:00 ※夜は最終入店21時
定休日:月曜
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愛媛の鮨を盛り上げたい、すしログ(@sushilog01)でした。
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