
こんにちは、個性的な料理を求めて東奔西走、すしログ(@sushilog01)です。
うるま市に完全予約制・住所非公開のイノベーティブレストランがあると聞いて興味を惹かれました。
そのミステリアスな業態に加えて、使用する食材が全て沖縄県産との談だからです。
沖縄のグルメシーンは年々楽しくなっていて、沖縄市の「アレコ」や「エッフェ」、那覇市の「あーすん」など、興味深いお店が増えています。
今回お伺いした「Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)」は想像以上に、いや想像できないほどに魅力的な御料理ばかりで、すぐに世界観に惹き込まれました。


個人的に、日本に数あるイノベーティブレストランの中でもトップクラスだと確信しました!

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「Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)」は、沖縄県うるま市にあるカウンタースタイルのレストランです。
オーナーシェフの小島圭史さんは東京、パリ、マルセイユで修行した後、2008年に沖縄にて出張料理店『名前のない料理店』を開業。
その後、2021年にレストランとしてオープンされたそうです。
僕は信頼するグルメな方が早々に訪問されていて、興味を惹かれました。
店名の”Mauvaisee herbe”は、フランス語で「雑草」を意味するそうです。

お店の魅力を挙げると以下のとおりです。
- 食材の「再発見」
- 乳酸発酵の巧みな活用
- 卓越した提供スピード
- 満足度の高さに反比例する食後感の軽さ
- サステナビリティ
まず、知られざる沖縄食材に出会えるばかりでなく、沖縄食材を魅力的な形で調理されるため沖縄食材の知られざる味わいに出会えるところが魅力です。
簡単に言うと、サプライズがある食材の選択と調理です。
そして、発酵を巧みに用いておられ、乳酸発酵の液体で食材をマリネするなど、発酵好きな自分としては感動しました。

御料理の味わいは複雑であっても、調理自体はシンプルです。
味を足す調理よりも、食材の魅力を引き出しつつ食材の味わいを広げるために足し算を選択されているように感じました。
また、提供テンポも秀逸です。
ワンオペなのに食べ終わりまでで2時間!
しかも、塩気や油脂だけでなく香りの使い方もバランスが良いので、食後感が軽いです。
最近、満足度の高さは食後感で計れると感じます。
個々の美味しさだけでなく、食後の印象がお店の余韻となるのだと思うばかりです。
最後に、小島シェフは食材のサステナビリティも強く意識されていて、害獣をジビエとして料理されたり、未利用魚を仕事で美味しく仕上げたりされるところも強みであり魅力です。
高級食材や人気食材をバンバン使うような東京でトレンドとなっている料理の対極にある料理かもしれません。
故にアンチテーゼとしての魅力を持ちうるので、都会の料理人の方にこそ訪問して小島シェフのお話を聞いて頂きたいと感じました。
…とは言え、難しいことは決してなく、純粋に美味しさとして楽しめるレストなんなので、僕は「季節を変えて再訪しよう!」と強く感じました。
「Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)」は住所非公開のため、外観写真は掲載できませんが、うるま市のある場所にあります。
予約して住所をお伝え頂かなければ、絶対に分からない場所にあります。

店内には小島シェフ謹製の発酵ドリンクや調味料の大きな瓶が並んでおり、奥には肉の熟成庫があります。
博物館や古書店を彷彿させる雰囲気があり、想像力や好奇心を刺激される雰囲気です。
「Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)」のコースについては22,000円一本で、おまかせのドリンクを選ぶスタイルです。
アルコール、ノンアルコールでお値段は変わらず、4種6,600円、6~7種11,000円となります。
僕はドライバーなのでノンアルコールの4種を、妻はアルコールの6~7種を頂きました。
ノンアルコールドリンクは「沖縄素材の自家製発酵・蒸留ボワソン(=飲み物)」との事で、個人的に大ヒットでした。
ノンアルコールドリンクはアルコール(多くの場合、ワイン)以上にペアリングのセンスと味覚、嗅覚が求められると実感します。
同一方向の味覚が続くとすぐに飽きてしまい、料理との味覚的な調和あるいは相互作用が無いとつまらなく感じます。
その点において小島シェフのノンアルコールドリンクは料理と合わせる意義を感じるもので、いたく感銘を覚えました。
この度頂いたコースの内容です。
- 根
- 玉葱、ミルク
- 島山羊
- 琉球猪、くいまーる豚
- マベ
- 車海老
- 南洋武鯛
- 玉ねぎ酵母のパン
- あやはし牛
- 琉球猪
- フロマージュブラン
- カヌレ
この度頂いたノンアルコールドリンクの内容です。
- カーブチーの皮とワタを使った乳酸発酵ドリンク
- カモミール、レモンバーベナ、レモングラスのハーブティー
- いぐさの生葉を低温抽出したドリンク
- 山ももを酵母発酵させたドリンク

1杯目のドリンクが甘味無しとは素晴らしい!ノンアルペアリングで1杯目の甘味が強いと大味に感じるので、好感を抱く。カーブチーの香りと乳酸の上品な酸味が魅力だ。

これはハーブや「とう」がたった野菜の根をサイフォン抽出した飲み物。乾燥や発酵させて保存されていて、訪問日は13種類の野菜やハーブの根を使用されているとの談だ。一見するとお茶のように見えるが、「スープ」として成立させている点が素晴らしい。旨味や甘味などが渾然一体となり舌を魅了する。甘味が強く、根菜を思わせるコクが楽しめる点が面白い。

1ヶ月前に収穫して、畑の上で放置して脱水および熟成させた新玉ねぎを使用。「放置」と言っても途中で土を掛けて保湿したりして旨味を上げているそうだ。その玉ねぎの中に大里村のミルクのチーズを仕込んでローストしている。乳酸発酵酢を掛けた白菜、伊江島ナッツ
チーズは密度が高いテクスチャーでヨーグルトのような酸味を持っている。よって、玉ねぎのロースト香と甘味と馴染み味わい深い。また、玉ねぎはとろりとしつつ、シャキッとした繊維の食感も持っているので食感的にも冗長でない。一体感の高い一品だ。
器が素敵なので、思わず食後にパシャリ。


沖縄の山羊はほぼ100%が交配種のところ、在来種の山羊との事!在来種の島山羊は40キロくらいにしかならないため、交配種によって淘汰されつつあるそうだ。最大の特徴としては臭みが無い点。

その島山羊のもも肉と首皮でタルタルに仕立て、沖縄の小麦を島米酵母で発酵させて焼いたコカの上に乗せて提供。下の葉はオキナワニッケイの葉と名護のご友人が育てているオールスパイスの葉。、島山羊は旨味が強く、山羊の香りをふんわりと上品に楽しめる。オキナワニッケイの強いスパイス感も魅力。生地は香ばしくカリッカリで、食欲を刺激してくれる!

ハーブティーは香りを添えて油脂を切るペアリング効果がある!

国頭産の猪、循環型農業によって育まれている三元豚のくいまーる豚、2種類の肉を用いたパテ・アン・クルート。部位はもも肉、顔(チラガー)、前脚中心。クルート生地は身体への油脂のインパクトを減らすため菜種油も使用されているそう。付け合わせは、白菜酢に漬けたローゼルのガク、芥子菜のタネ、琉球よもぎの粉末。琉球よもぎは猪の生息域近くに自生しているものを採集したそうだ。香り良く、コクがたっぷりのパテ・アン・クルートで、これは旨い。そして、香りが本当に良い。仰るとおり油脂が軽く、肉の旨味と香りを楽しませてくれるパテ・アン・クルートである。

この御料理の提供まで45分弱と驚異的なスピード。「マベ」は沖縄の二枚貝でタイラガイに似ている。小島シェフは未利用資源の貝をわざわざ依頼して獲ってもらっているそうだ。沖縄でも本州と同様に漁獲量が減少しているので、それに対応するためである。貝柱以外はスープの出汁に使用されていて、2個分を一人に使っているとの談。ソースはうずら豆の豆乳、島ニンニクのピュレ、モリンガオイル。

甘味と旨味が強い貝柱で、ほのかな苦味も味わいとして楽しい。ニンニクの香りの使い方が魚味を壊しておらず、思わず心の中で「これこれ!」と喝采を送る。有名店「バカール」の【夜光貝のジェノベーゼパスタ】は貝の味わいを遥かに凌駕するほどニンニクと塩気、脂分が強かった。よって、小島シェフの貝類の活かし方にしみじみと感動する。

久米島産の車海老。ハーブはイーチョバー=沖縄在来種のフェンネルで、右下のピュレは海老。この生地についてもパテ・アン・クルートと同じく、バター以外に菜種油のシートを重ねている様子だ。さっくりと香ばしい生地で、海老の甘味と香りを活かす調理!海老のソースも行き過ぎていない旨味と塩気で自然と馴染む。

香りが素晴らしい。これも甘味なしなので、ノンアルコースドリンクは全て甘味無しとなる。ノンアルペアリングは甘味と酸味が極めて重要であると実感した。

白眉!南洋武鯛は沖縄名「イラブチャー」。自生しているルッコラ、アマランサスとともに。今回の魚体はイラブチャーの中でも「ゲンナー」と呼ばれる頭にコブがある個体で、雌の中でも強い個体が4歳オーバーで性転換したものだそう。勉強になる。16日前に水中銃で撃ち、シェフが神経締めを行ったもの。そして、海水程度の立て塩に一瞬通しただけだそうで、非常に魅力的な調理である。身はピュアに旨く、脂も乗っている。面白いことに白身魚だがコハク酸を感じる。香ばしく焼き上げているのに魚の味わいがバッチリで、塩の使い方についても秀逸だ。

クラストは細かく砕けてサックサクの食感。そして、玉ねぎの甘味と旨味がこみ上げてくるパンで、玉ねぎの香りも香ばしい。

14歳で11回出産した経産牛の再肥育。部位はイチボで、熱源は炭火。白菜酢を塗って仕上げ焼きされていて、塩すら添えない硬派なスタイル。噛みしめると香ばしさがこみ上げてくる。そして、旨味と血の香りや味わいも広がる。肉自体の旨味と酸味が実に魅力的!食感はタフだが、決して硬いとは思わず、噛みしめると繊維がほどけてゆく。そして、舌と喉に甘味が残る。表面には薫香と白菜酢の甘味を感じる。食材の本質的な味わいを伝える調理、調味に惚れ惚れした。

国頭の山に住む猪。訪問日の3週間ほど前に獲ったものだそう。ライフルでキルショットした雌で、4歳半くらいの個体との談。南仏の魚料理に使うクリーム仕立てをアレンジしたスパイス煮込みで、名護のご友人のスパイスを用いている。

カレーリーフ香がふわっと漂い、他のスパイスもたっぷり香る。これまた塩気は極めて穏やかで、油脂も実に軽い。ホロホロとほどけ、旨い肉だ。旨味だけでなく血を感じさせる野趣も時折ある点が良い。

猪の餌の山ももを合わせるとはテロワールを意識した魅力的なペアリングだ。酸味があり、マスキングの方向性で活きる。

チーズになる手前のホエーを用いているそうで、掛けられているのは紅芋の粉末。乳酸発酵の序盤で発酵を止めて酵素を壊さすことなく乾燥させたそうだ。アイスクリームはみっちりしていてコクが強いが、重たくない。これは甘味をかなり落としているためだ。

フレッシュとドライを併用しているそうで香ばしく複雑な香りだ。ドライの香ばしさとフレッシュの清涼感のハイブリッドと言った感のハーブティー。カヌレとの相性も抜群!

8ヶ月熟成させたチーズを削って加熱したクリーム状のソースを添えて。カヌレはカリカリ感は無く、とろとろ、むっちりしたテクスチャー!とろとろ感を追求したカヌレであるため、チーズの酸味と旨味が素敵なソースになっている。
「Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)」の予約については、公式サイトの予約フォームより可能です。
Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)公式サイト
店名:Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)
予算の目安:コース22,000円+ドリンクペアリング4種6,600円 or 6~7種11,000円
TEL:なし
住所:沖縄県うるま市
最寄駅:なし
営業時間:ランチ12:00〜、ディナー18:00〜
定休日:不定休
※完全予約制となります
沖縄県の魅力的なレストラン



沖縄食材のポテンシャルと魅力を実感する、すしログ(@sushilog01)でした。
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