こんにちは、滋賀が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
さて、大津にある「自然坊たなか」さんは、僕が大好きな京都の名店「草喰なかひがし」ご出身で、長らく訪問したかった日本料理店です。
過去に2度トライしたものの、タイミングが悪くて訪問を逃していました。
その後、お店を移転されてリニューアルオープン。
悲願の訪問となったわけですが、期待を超える満足度でした。
食べログでは3.22ですが、明らかにおかしいです(笑)
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「自然坊たなか」の田中大将は前述の通り京都の名店「草喰なかひがし」ご出身です。
10年ほど前に独立されたそうです(2024年2月時点の談)。
どこまで中東さんの影響があるのか楽しみに訪問したところ、換骨奪胎に長けており、実に良い塩梅でした。
中東さんの枠組や要素を活用しつつ、自己の表現を成し遂げておられ、敢えて訪問すべきお店だと実感。
滋賀には「徳山鮓」や「湖里庵」などの滋賀発酵文化を鮮烈に打ち出すお店もあれば、「行楽庵」のような京料理の色合いが強いお店、「魚石」や「湖香六根」のようなモダンな感性を採り入れたお店などなど、素晴らしいお店が点在しますが、「自然坊たなか」さんは何れのお店とは異なる唯一無二の個性を宿しています(たなかさん以外、敬称略にて恐縮)。
御料理は日本料理の要と言うべき椀の吸い地が秀逸で、八寸も中東流の影響が色濃く出ていて美しく美味しい。
炭火の扱い方も絶妙で、キャリアと確かなセンスを感じる和食です。
手がかけられた素晴らしい御料理をたっぷり満喫させて頂き、お値段は非常に良心的。
都会から訪問すると感動しかありません。
ちなみに、田中大将は中東さんのように冗談を言いません(笑)
修行中も真面目だったそう。
しかし、「パリ」も「ニューヨーク」もあるので、「草喰なかひがし」さんは是非とも!
(分からない方は「草喰なかひがし」の記事をご参照ください)
「自然坊たなか」さんは昼も夜もコースのみで、それぞれ2つ用意されています。
お昼は4,500円、6,000円で違いは近江牛イチボ焼きの有無。
夜は7,000円、9,000円で違いは甘鯛松笠焼きなどの有無のようです。
僕は県外からの訪問なので、6,000円のコースを頂きましたが、牛肉にこだわりがない人ならば4,500円のコースでも大満足できるはずです。
なんてコストパフォーマンスの高さなんだろうか。
頂いた御料理の内容
- 八寸
- 椀:白味噌、海老芋
- 焼きもの:モロコ、野洲産吉川ゴボウの漬け焼き
- ヨコワの漬け、菜の花ソース
- にえばな
- 鰆の幽庵漬け蒸し、蕪、粕汁
- 近江牛イチボの炭火焼き
- お食事、香の物
- 水菓子:金柑のシフォンケーキ
お酒については滋賀県内のものをそろえておられ、食事に寄り添うものばかりです。
この度頂いた銘柄
- 喜多酒造(東近江市):六方 純米吟醸 別誂え
- 岡村本家(豊郷町):金亀 緑 60 純米酒
- 福井弥平商店(高島市):福のしずく 純米
五目豆、巻き寿司、鯖の燻製、椿赤蕪、ブロッコリーの唐墨和え、鰯の奉書焼き、出汁巻き玉子。
系譜らしい美しい八寸だ。
そして、季節感(二十四節気の雨水、節分の要素)を採り入れつつ、創作性を上品に加えている。
五目豆は大豆出汁で炊いているそうで、実に美味。
豆の甘味が活きていて、豆自体も甘くて香りが良い。
ブロッコリーには出汁を含ませていて、唐墨との相性が高い。
椿赤蕪には炒り卵、干し柿、柚子を合わせていて、酸味を効かせた椿の中からとろんと干し柿の甘味が溢れて、これまた実に良い!
お店定番と言う鯖の燻製や鰯の奉書焼き、アオサ入りのトロトロ出汁巻き玉子など、全てが美味しい。
この時期に白味噌を用いるのも系譜あるいは京都の影響を感じる。
椀種は海老芋で、クリームチーズ、蕪、人参と合わせている。
白味噌の甘味が前面に出ない端正な出汁の使い方に感嘆!
そして、クリームチーズの使い方も巧く、酸味とコクが合う。
全く下世話に感じない。
モロコは流儀に則って焼かれる。
お分かりだろうか?
なかなか壮絶な絵面だが、これこそが琵琶湖のモロコの焼き方だ!
モロコは香り良く、ホロ苦くて甘い。
余韻の香りが良いなあ…喉から美味しさと郷愁がこみ上げてくるようだ。
焼きものに湖魚を用い、しかも小魚なのが琴線に触れる。
野洲産吉川ゴボウの漬け焼きも味わい深い。
ヨコワ(東京で言うメジマグロ)を五分漬けにして、菜の花のソースと合わせる粋な提供方法。
鮪の幼魚でありながら中トロの趣のある部位。
胡麻油の香りが食欲を刺激して、菜の花のホロ苦さと香りが良い。
菜の花ソースに芥子を用いている点も嬉しい。
胡麻油は山田製油のもの。
まず、香りが良い。
そして、味わいも甘くて瑞々しい。
それでいてぱらりとアルデンテに仕上げているにえばなで、これは美味しい。
にえばなを提供する料理店を巡っている方ならば、「おお!」と思う筈だ。
酒粕を前面に出さず、出汁の旨味や風味を活かして粘度はさらりとしている。
故に上品。
鰆の幽庵漬け蒸しを用いているのも良いが、椎茸、金時人参、芹に加えて、皮ごと素揚げした蕪を使用しているのが楽しい!
守山産の蕪は甘い!
鰆はしっとり感を残す火入れで、幽庵地から移した味わいも活きてくる。
調理法の組み合わせの妙にセンスを感じる。
酒粕は【喜楽長】の喜多酒造のものだそう。
牛肉の火入れが良い。
ソースにも工夫が光り、リンゴのソースを用い、干した山椒の素揚げと辛味大根を添えている。
近江牛の安定感ある美味しさは言わずもがなで、干した山椒の素揚げに感銘を覚えた。
牛肉料理で牛肉以外の油脂を用いていない点が好印象である(日本料理店なので)。
お米は予想外にもミルキークイーン。
もっちりしていて、甘い…が、ぱらり!と炊かれている。
炊飯の技術と一志郎窯の素晴らしさを実感する。
そして、余韻の香りや甘味が強くて長い。
一志郎窯の土鍋を愛用し、紹介記事を書いている人間として嬉しい限りの美味しさだ。
おかずは、ホタルイカと大根の炊いたん、ヒジキなめこお揚げ人参、菜っ葉とお揚げの炊いたん。
ご飯のおかわりは卵かけご飯、自家製エノキ添え。
「パリ」は、ミルキークイーンで作るとパンチが非常に強い。
女将さんお手製の金柑のシフォンケーキ、金柑ジャム、ドライ金柑、とちおとめを添えて。
女将さんとの二人三脚が素敵である。
接客についてもお二人の掛け合いが温かい気持ちになり、素敵な時間を過ごさせて頂いた。
ただ、個人的には植物性の生クリームは外してしまっても良いかと思う。
最後はコーヒーでキリッと。
ご飯のタイミングでお茶も提供されるが、お店によっては和食であっても最後にコーヒーはアリだと思う。
「自然坊たなか」さんは大津の市街地、アーケード街から少し外れた場所にあるので、静かで落ち着いています。
近くには琵琶湖疏水、観音堂があり、ちょっと行けば三井寺です(今や予約を取れなくなった鰻屋さん「う嵐」さんのそばです)。
お店の外には食欲をそそる炭の香りがふんわりと漂い、お伺いする前から期待が高まります。
店内は誰もが緊張感を抱くこと無く、それでいて御料理にじっくりと向き合える上質な雰囲気です。
「自然坊たなか」さんのお店情報は下記のとおりです。
予約については、お電話のみとなります。
ご夫婦お二人でされているので、営業時間外がベターだと思います。
店名:自然坊たなか(じねんぼうたなか)
TEL:077-526-4555
住所:滋賀県大津市長等2-7-22
最寄駅:京阪石山坂本線・三井寺駅から350m、JR大津駅から1.2km
営業時間:12:00~15:00(入店は12:30まで)、18:00~22:30(入店は18:30まで)
定休日:火曜
文中で言及した素晴らしいお店たち
「草喰なかひがし」
日本が誇る「摘草料理」の名店!京都の至宝、草喰なかひがし「徳山鮓」
すしログ日本料理編 No. 120 徳山鮓@余呉(滋賀県)「湖里庵」
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精緻な包丁と美しい八寸に酔いしれる日本料理店!滋賀大津の「行楽庵」「魚石」
すしログ日本料理編 No. 153 魚石@安土(滋賀県)「湖香六根」
滋賀食材の魅力を伝えてくれる美しき和食!東近江・五個荘の湖香六根(うかろっこん)「う嵐」
すしログ日本料理編 No. 197 う嵐@大津(滋賀県)
滋賀県が大好きな、すしログ(@sushilog01)でした。
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