こんにちは、滋賀をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
2019年に初めてお伺いした、滋賀県東近江市の湖香六根さん。
オープンして月日が浅いにも関わらず光るものを感じました。
そして、時を置いて再訪したところ、魅力を更に上げておられ、感慨深く感じました。
すしログ
パンデミックの影響があるとは言え、食べログのスコアは未だ3.3ほど。
これぞ隠れた名店の典型!だと感じ、改めて魅力をお伝えしたいと思います。
今後人気が高まるのは間違いないはずです。
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湖香六根(うかろっこん)の立地と雰囲気
御料理の魅力をお伝えする前に、雰囲気面での魅力をお伝えします。
湖香六根さんは戦国時代から栄えた商人の町である東近江の五個荘にあり、類まれなる雰囲気を味わわせてくれるので。
お店は築180年超の商家を改修されているので、贅をつくした魅力があります。
とは言え「豪奢」ではなく「堅実」の中に凄味がある家屋なので、瞬時に落ち着く事が可能です。
席をおろしてしばらくすれば、都会では味わえない時間軸に癒されてゆきます。
建物はもともと茅葺き屋根だったそうですが、近年増加する強烈な台風を配慮して加工されています。
お部屋は個室、半個室、広間があります。
▲広間
前回は半個室、今回は個室で頂きましたが、それぞれ異なる景色を味わえ、優雅な時間は変わりません。
▲半個室
目の前には庭があり、風にそよぐ葉は爽やかで、葉脈は輝きの軌跡を描きます。
そして、冬に伺えば雪に抗う梅花の蕾が実に健気。
この度の個室はお座敷で、正月明けの訪問には特別感がひとしお感じられました。
すしログ
湖香六根(うかろっこん)の魅力とは?
大将の杉本宏樹さんは近江八幡生まれで、京都の嵐山で修行されたそうです。
オープンは2017年6月なので、初訪問時にはweb上の情報はあまり見当たりませんでした。
しかし、御料理の写真を拝見したところ、以下の魅力に気付きました。
- 滋賀県産の食材を多用している
- 繊細な調理技術
- 地に足の着いたアレンジ
料理写真から、これらが一体化していると感じて訪問したのですが、実際に間違いありませんでした。
そして、再訪して精度が上がっていることを実感し、今後更に人気を高めるお店だと確信した次第です。
細やかなアレンジセンスも向上させつつ、基礎的な包丁も繊細になっておられました。
「イワトコナマズ」などの新たな食材も積極的に使用されているので、今後が楽しみです!
杉本さんは滋賀県愛を感じる食材を用い、創作的な御料理に仕上げられます。
「創作的」と言っても西洋食材を借用して下世話にしてしまうような創作性ではありません。
滋賀の食材を、あくまでも日本料理の範疇で表現されています。
その上で、アクセントしてスパイスや薬膳を用いられている点が美点です。
魚、肉、野菜は全て滋賀県産で、野菜については東近江と安土の野菜です。
もともと滋賀は「京都の台所」として機能した、秀逸な食材の宝庫と言える場所。
戦国時代、江戸時代から気候は大きく変わったとは言え、滋賀の食材の魅力は未だに全国でも突出していると感じます。
すしログ
実は、僕は広島県出身なのに、滋賀についての講演もしたことがあるほど滋賀好きな人間です(笑)
杉本さんの試みは、未来の滋賀に貢献する素晴らしい試みだと信じています!
それでは、実際に頂いた御料理についてご紹介していきます。
湖香六根(うかろっこん)のコースの詳細
お店は完全予約制になっており、2つのコースを用意されています。
【昼の部】(2022年10月1日より)
- 湖国のコース 6,600円
- かまどでご飯のコース 6,600円
【夜の部】
- 湖花のコース8,800円
- 湖月のコース13,200円
今回は【湖国のコース】を頂きましたが、充実した内容と幅広い表現に感嘆が漏れました。
2022年1月に訪問した際の記事
2022年1月に訪問した際の御料理はこちらの通りです。
- 先付:滋賀県産大豆の温かいお豆腐
- 八寸
- 椀:スッポンの養生スープ
- 鮎のナレズシ
- 琵琶鱒の味噌幽庵焼き
- 山の白和え
- 七草粥
- 鯛の龍皮巻き
- 諸子の佃煮
- 似鯉ニゴイの天麩羅
- 自家製干し柿茶
- 近江牛の焼きもの
- お食事:近江牛の糠漬けの出汁茶漬け、香の物
- 水菓子
湖香六根さんのソフトドリンクは全て自家製の果実ジュースで、非常に多くの種類があります。
無添加の梅ジュース
美味しいだけでなく、550円と良心的な価格が嬉しいです。
先付
滋賀県産大豆の温かいお豆腐。
松前漬け、スジエビ、銀杏を添えて華やかなところが新年らしい。
また、1品目からスジエビという「琵琶湖八珍」の一つを用いている点も嬉しいところだ。
お豆腐は大豆の香りが濃く、甘い。
茶碗蒸しのように出汁や餡を用いず素朴かつ上品に構築している点が潔い。
冬の初手に心が温まる先付だ。
柚子胡椒を少量用いてアクセントにしている点も楽しい。
八寸
滋賀県のお節を表現した八寸。
早生のメロン、くわい、永源寺産鹿の干し肉、赤こんにゃく、紅白なます、割干し大根、絹さや、鰊の昆布巻き、うなじろう、けんじん。
「お節」と聞くとある意味家庭的な印象を覚えるかもしれないが、腕利きの料理人が作るお節は別物だ。
甘味、酸味、塩味などの味覚のメリハリが利いていて、包丁技も光る。
亀甲に仕上げたおめでたい形のくわいはホクホクと良い食感で、甘い。
鰊の昆布巻きにはトマト出汁を用いていて、ごく軽い酸味が良きアレンジ。
また、近江八幡名物の赤こんにゃくには生姜を軽く利かせて、塩梅が良い。
けんじんには、くるみとレーズンが用いられていて、穏やかに洋風エッセンスを取り入れていて洒脱。
早生のメロンはスッポン型に飾り切りされていて、スッポン料理も得意とする杉本さんらしい愛嬌がある。
スッポンの養生スープ
杉本さんはスッポンを年中使用されている方で、スッポン使いが巧みだ。
ご自慢の【養生スープ】は実に滋味深い味わい!
旨味が強くて、ひたすらに美味しい。
強いキノコの香りを感じさせると思えば、漢方の利かせ方はふんわりと優しい点など、椀の中で多様な楽しみを提供してくれる。
お餅がスッポン型であるところも愛敬良し。
雑煮らしく大根、人参、里芋が用いられていて、全て柔らかく炊かれている。
素材の説明をラミネート加工されていて、分かりやすい!
鮎のナレズシ
なんと初物とのことで嬉しい!
濃密な旨味と鮎の香りをふんわりと楽しませ、柔らかくしっとりで美味しいナレズシ(早馴れ)だ。
臭みは皆無。
敢え無く山葵は混ぜ山葵であるものの、ナレズシの完成度が高いため気にならず。
思わず、こりゃあ良い!と心のなかで叫んだほど。
添えている野菜はシーアスパラと、面白い。
琵琶鱒の味噌幽庵焼き
あしらいは地物の黒豆と栗カボチャ。
琵琶鱒はしっかりと漬け込んで脱水しつつ、しっとりと焼き上げている。
刺身で頂いても抜群に美味いが、古典的な食べ方でも旨い魚であると実感させられる。
栗カボチャは酸味を付けていて、全体的な味覚のバランスが良い。
山の白和え
初物のタケノコ、つるむらさき、ムカゴ、山クラゲと山の素材を用い、庭のキンカン、クコの実、インゲンをあしらっている。
濃密な白和えながら具材の味と食感でメリハリがある。
特に、ムカゴの溌剌とした香りには安らぎを覚えるだろう。
器が、僕の好きな割れ山椒であるのも密やかに嬉しかった。
七草粥
旅先で頂けるとは、実に嬉しい。
スッキリと上品に仕上げている。
「根付くように」と、根っこ付きである点も可愛らしい。
鯛の龍皮巻き、諸子の佃煮
伝統的な京都のお節料理の一つ。
しっとりした〆加減で旨い。
中心には甘みが無いガリを巻いている。
諸子はあっさり味の佃煮で、諸子の風味を満喫させてくれる。
添えられたもち麦はトマト出汁で炊き、もっちりとした食感。
黄人参、や繊細な蛇腹のキュウリなど、見た目も美しい。
似鯉の天麩羅
ニゴイの他にはサツマイモ、クロアワビタケで、あしらいはノロロッサ、ビタミン大根の鬼おろし。
衣の内側の黒い部分には、食用の竹炭を使用しているそう。
皮のモチモチ感や柚子と金胡麻を合わせている点などに、工夫がある。
これはコイに抵抗感がある人でも美味しく感じ、イメージが変わるはずだ。
出汁が利いた鬼おろし、少量用いられた乾燥させた梅干しのフレークなど、調味料も良い。
自家製干し柿茶
シナモンや生姜が利いていて、身体に良さそうな甘いお茶。
近江牛の焼きもの
付け合わせは芽キャベツ、叩いた焼き万願寺唐辛子、原木椎茸、ヒラタケ、信長ネギ、ロマネスコで、ソース代わりに梅味噌を。
お肉はしっとりと柔らかく、脂がじゅわっと滲み、近江牛らしい。
しかし、酸味もある部位なのが個人的に嬉しい。
付け合わせも全て美味しい。
お食事:近江牛の糠漬けの出汁茶漬け
香の物は大根のどぼ漬け、赤蕪の三五八漬け、昆布。
使用するお米が前回のミルキークイーンから変わっていて、工夫を実感する。
使用しているのは赤米、緑米、黒米、キヌヒカリの新米で、煎ったハトムギをあられ代わりにまぶしている。
これも前より更に美味しくなっていて、近江牛は糠床の香りがしっかりと浸透しつつ、脂が上品にじゅわりと滲む。
それを強めの昆布出汁がまろやかにまとめ、煎ったハトムギが香ばしさのアクセントになる。
醤油漬けの実山椒も爽やか。
なお、前回の教訓を活かしてサイズは大・中・小から「小」を選択したが、個人的にはベストのサイズであった。
水菓子
61%カカオを使用したガトーショコラ、イチゴ(章姫あきひめ)、ローゼルと冬瓜ジャムを添えたキウイ、落花生、くるみの飴がけ、生姜。
濃密でテリーヌ的な、美味しいガトーショコラ。
イチゴ(章姫あきひめ)はマンゴーで炊いて香り付けをしていてユニーク。
2019年9月に訪問した際の記事
初回訪問時の2019年9月は、上記よりもリーズナブルなコースを頂きました(当時の価格帯で5,000円のもの)。
頂いたコースの内容
- 先付:自家製チーズ豆腐
- 八寸
- アメノウオ(ビワマス)、桃味噌、ビワマスの子の塩漬け
- アメノウオの冷製薬膳スープ
- 口直し:黒米のうどん、永源寺の鹿のスジ肉
- 鼈の春巻き
- 永源寺の鹿肉のソテー
- 近江牛糠漬けのおにぎり茶漬け
- 水菓子:焙じ茶プリンと甘夏ジャム、無花果・梨・葡萄・白玉に発酵カボチャペースト
自家製すだちサワー
先付
「胃を動かす一品」との事で、自家製チーズ豆腐。
いきなり変化球が登場して、期待が高まる。
素麺カボチャにはぶどう黒酢を使用し、リンゴを混ぜ、スベリヒユをあしらう。
黒酢の塩梅が少し強めながらに、リンゴの甘みがバランサーとして機能。
残暑の残る秋なので、爽やかに頂いた。
八寸
枝豆、黄色ズッキーニ、琵琶湖産小鮎、茎セロリ、赤蒟蒻、自家製梅味噌、近江牛生ハム、無花果と梨のジャム挟み、イサザ佃煮、ピクルス。
小鮎が大変面白く、陳皮や丁字などの中国系スパイス7種類で香りが付けられている。
同時に肝の香りと旨味を殺さぬ塩梅。
ピクルス類は酢の当て方が上品。
自家製の近江牛生ハムは持ち味の強い旨味とジャムの香りや甘みが合う。
大変個性的な八寸なので、いっそのこと枝豆は除いてしまって良いかと思う。
見た目的にも大衆的な印象を与えてしまうので…(味としては大好きですが)。
創作的な現代日本料理における八寸は「ここでしか頂けないもの」が集まっていればいるほど面白い。
アメノウオ(ビワマス)、桃味噌、ビワマスの子の塩漬け
「アメノウオ」とは滋賀におけるビワマスの古い名前。
野菜はターサイ、つるむらさき、オクラの花、ダビデの星(オクラ)、太キュウリの昆布〆、ビワマスの下には茄子。
桃味噌とは魅力的な自家製調味料。
単体で頂くと風味が強く、ビワマスと合うか不安になるが、杞憂に終わる。
ビワマスの香りと脂が超えてきて、桃味噌がビワマスに異なる魅力を与えてくれる。
個々の野菜も仕事が施されており美味しい。
はじかみは新生姜を用いており、酢漬けではなく生なのが良い。
辛味がキリッ!と引き締める。
まぶされたトマトパウダーも一興。
桃味噌と良い、調味料を自作される料理人こそ、今後新たな料理を創り出す方だろう。
アメノウオの冷製薬膳スープ
ビワマスの骨出汁のスープで、他に鼈、高麗人参、野ナツメなど20種類以上の薬膳食材を使用。
さらっとマニアックなものを出され素敵(笑)
口直し
黒米のうどん、永源寺の鹿のスジ肉、白黒キクラゲ。
料理、食材ともに意表を突いてくれる。
甘みのあるツユに、むっちり且つつるるんとした食感のうどん。
鹿スジ肉はホロホロに炊いている。
鼈の春巻き
野菜は万願寺、カボチャ、シャドークイーン、空芯菜。
春巻きには2ヶ月発酵させた白菜を使用されているそう。
中華の知識がある方ならば、そろそろ「あれ?」と思われるかも知れない。
僕自身、もしかして中華の勉強をされているのか?と感じたのだが、実際に定期的に聘珍樓で勉強されているそうであった。
冒頭の小鮎の仕事に始まり、今回の発酵白菜は中国では北京から東北にかけて好まれている「酸菜(スァンツァイ)」だ。
しっかりと発酵の旨味と酸味が利いており、完成度が高い。
クロアワビタケの食感、赤山椒の香りを付けたチーズなど、脇を固める素材にも配慮、工夫が見られる。
しかも、トマトを使用したピリ辛サンバルソースを使用されている。
和食としては創作性が非常に高いが、コースの中でバッチリ美味しい仕上げ。
永源寺の鹿肉のソテー
野菜は黄色ズッキーニ、大黒ホンシメジ。
鹿肉はしっかりした火入れで、噛みしめると旨味と香りが高まる。
美味しいのだが、美味しいだけに、火入れはもっと軽めで良いと感じる。
鹿肉の火入れについては、日本伝統のマタギ料理よりもフランスのジビエ料理の方が一日の長がある。
また、中華においてもフランスの火入れが勝る。
調理法として採り入れてみても良いかと感じた次第である。
近江牛糠漬けのおにぎり茶漬け
おにぎりのサイズは大・中・小から選べ、中が「コンビニサイズ」との事だったので、大を選択。
結構なサイズ感だったので中がバランス的には良いかも(笑)
お米はミルキークイーンと、赤米、緑米、黒米。
近江牛の糠漬けは旨味が凝縮されており、脂が多い近江牛であってもサッパリと頂ける良き調理。
お米の炊き加減は柔らかめで、恐らくお茶漬け用かと思われ、出汁に馴染む。
香の物はキュウリの佃煮、大根の醤油漬け、昆布。
水菓子
焙じ茶プリンと甘夏ジャム、無花果・梨・葡萄・白玉に発酵カボチャペースト。
プリンには無農薬の焙じ茶を使用。
発酵カボチャペーストが秀逸で、発酵による酸味が生の甘い果物に、あくまでも爽やかに寄り添い、引き立てる。
軽いシナモンの香りを付けている点がお洒落。
湖香六根(うかろっこん)のお店情報と予約方法
WEB予約については、ヒトサラより可能です。
店名:湖香六根(うかろっこん)
予算の目安:【昼の部】湖国のコース6,600円、かまどでご飯のコース6,600円、【夜の部】湖花のコース8,800円、湖月のコース13,200円
TEL:0748-43-0642
住所:滋賀県東近江市五個荘川並町713
最寄駅:五箇荘駅から3,000m
営業時間:お昼11:30〜16:00 (LO 14:30)、夜18:00(要予約)
定休日:火曜、水曜
今後も足を運び続けようと決心する、すしログ(@sushilog01)でした。
※本記事はNo. 184に大幅加筆し、最新版の情報にした記事です
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