すしログ No. 115 天寿し(京町)@小倉(福岡県)

f:id:edomae-sushi:20151016220201j:plain2015年10月訪問

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。

こちらは小倉にあって「九州前」の鮨を伝える、全国区の人気店です。

「九州前」を編み出したのは先代・天野時夫さんで、現在はご兄弟が仕事を継承されております。

お兄さんが営まれているのが天寿し・魚町店で、こちらは弟さんのお店です。

 

先代がお店を開かれたのは1939年(昭和14年)との事ですので、ここまでの人気を誇るまでにかなりの歳月が流れたという事になります。

或いは、ネットの普及によってスターダムに躍り出たとも言えるかもしれません。

何れにせよ当代・天野功さんの努力、試行錯誤が一つのジャンルを完成形に持って行った事は間違いないでしょう。

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お店は小倉駅からかなり近い場所にあり、ガレージのような入り口がざっくばらんで意外です。

しかし、お店に入ると僅か5席のプレミアムシートが迎えてくれて、つけ場のご主人と相対する形となります。

トークも上手いご主人なので、このキャッチボールもお店の魅力と言えます。

 

ちなみに、こちらは1ヶ月前の1日から予約が解禁となるのですが、女将さんの電話応対が非常に丁寧で安心を覚えました。

人気店となると、電話で雰囲気・人柄が伝わるものです。

人気店で辛酸を舐めることは多々有りますので(鮨店に限らずとも)…。

 

天野功親方の握りは徹底的に足し算を駆使する。

江戸前の仕事とは異なるアプローチながら、味覚のバランスは高く、野暮ッたさが無い点に、多くの人が惹かれ続けるのだと思います。

 

また、シャリは甘みがあり、柔らかめながら、タネとのバランスが良い。

昔ながらの鮨店の味わいを感じさせるシャリながら、今の時代でも通用するのは、仕事とのバランスならびに温度管理の良さだと感じます。

全体的に「調理」と「想像力」を活かした鮨の表現だと思いました。

 

こちらも天寿し・魚町店と同じく、キュウリからスタート。

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違いとしては、キュウリにカボスがふんだんに掛けられている点、塩の粒子が細かい点となります。

ちなみに、キュウリはお代り自由…

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ガリはこちらも天寿し・魚町店と同様に甘め。

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鮪大トロ

大間の140キロ。

地方で一貫目に大トロを出すお店は極めて珍しい。

ご主人が都内で食べ歩きをされている事が奏功しているのかと思われます。

名刺代わりとしては十二分にインパクトの有る一貫。

天寿し赤いか

赤烏賊

甘みが強く、食感はねっとり。

繊細な切り付け、カラフルな胡麻、綺羅びやかな飛子は否応無しに目を奪う。

いささか仰々しいフォルムながらに味の均整が取れているのは流石です。

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海老

エクセレント。

ベリーレア弱の火入れは噛み締めた時に頬を喜ばせる。

天寿し・魚町店の海老も素晴らしく感じましたが、こちらの仕事は上を行きました。

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〆た後に炙る仕事。

炊いた羅臼昆布を乗せ、冥加を噛ます独特の仕事。

甘みがふわっと香り、やや強めの〆加減によりキリッと着地する。

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帆立

生の帆立に濃厚な煮ツメを合わせる。

古典的な江戸前仕事だと煮るのが一般的であり、最近の仕事としては生+塩が一般的なので、斬新です。

ただ、これに関しては個人的には「こてこて」すぎる仕事で、生の帆立以上に魅力を引き出していないという印象。

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鮃の旨味の後に、肝の濃厚な甘みが輪郭を強調し紅葉おろしでまとめる。

見た目はやや不格好だが、味わいは整っている。

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太刀魚

梅肉添え。何よりも素晴らしいのは、火入れ。

あたかも煮たような柔らかさがシャリと合致。

女性職人さんが火を担当されており、この後も体感するが、加減が絶妙。

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鮪中トロ

煮キリではなく、出汁に漬けたトロ。

甘みの強い出汁なので一瞬面食らうが、噛みしめると魅了される。

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酢で〆た鱚を炙り、柚子胡椒を噛ます。

鱚は酢に強めに当てているが、シャリと妙に合致する…

ひとえに炙り加減に妙があるためだと痛感。

柚子胡椒が好みを分けるポイントか。

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粉醤油、生姜、胡麻。

粉醤油は嫌みなく、鯵の香りは柔らかで上品な印象。

やっぱり鯵は煮キリ、生姜、浅葱がベストだと思うが、変化球としては完成度が抜群。

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真鯛

ガス火で炙った後に炭火で香りを付ける。

鯛は適度な弾力があり、炙り加減も良いものの、胡麻の風味が多少煩いか。

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サザエ

なんと、オクラと合わせており驚くも、単なる創作寿司ではないところが素晴らしい。

生だと舌に障るサザエに適切な火を入れており、噛みしめると磯の香りが充満し、オクラのとろみが包括する。

豊穣の海を想起させる一貫。

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赤海胆

甘みとコクがあり、雑味と苦味は皆無。

海苔も美味い。

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穴子

帆立では空転した煮ツメが面目躍如。

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鉄火巻き

なんと、海葡萄と合わせる。東京の何処かの一門のよう。

海葡萄の塩気で食べる仕事のようだが、醤油ほどには鮪の旨味と香りを引き立てず。

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玉子

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水菓子

メロン(笑)

全体的に、「創作寿司」の範疇を超えて確固たる個性と味の一体感を創り出しているところが魅力だと感じました。

価格は高価ですし、一部正統江戸前仕事の方が魅力的なタネの扱い方もありましたが、芸術的な仕事なので費用対満足度は十分に高いかと思います。

先代の「九州前」に江戸前を独自の解釈で掛け算し、高みに昇華させておられるのは間違いない。

再訪し、さらなる発展を見たいと思います。

なお、お酒無しというのは心から好感を覚えます。

鮨に最も合うのはお茶で、東京には飲み寿司化した鮨店が多過ぎる気がします。

 

店名:天寿し 京町(てんずし きょうまち)

シャリの特長:米酢を立たせたシャリで柔らかめ且つ甘めながらに、仕事がシャリの不足を補う。

予算の目安:20,000円〜

最寄り駅:小倉駅から230m

TEL: 093-521-5540

住所: 福岡県北九州市小倉北区京町3-11-9

営業時間:12:30~15:30、17:00~21:00

定休日:月曜

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