![鮨松看板](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/584488eb8c3b5f4896b6ebd793f07b47-1024x683.jpg)
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
筆者は常々、広島の鮨が盛り上がって欲しい…と感じています。
理由としては、お隣の岡山は言わずと知れた鮨目的で旅するグルメが多い県ですが、広島はお店が非常に少ないためです。
また、広島県農林水産局の仕事を受けて、地魚について調べたところ、水揚げが厳しい状況を実感しました。
![すしログレポートアイキャッチ03](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/419e56bb16d09dd74a53abc9c678527f-160x160.jpg)
ただ、県産の地魚が厳しい状況であっても、頑張っておられる職人さんはいます。
既に定評あるお店としては「魚喰い切り 壮士」さんが有名で、更には近年、「鮨 稲穂」さんが急速に味を向上されています。
そして、今回ご紹介する「京橋 鮨 松」さんは2021年11月にオープンされた気鋭の鮨店です。
食べログのスコアは未だ3.07ながら、広島では快調の人気を博していて、既に予約を取りづらくなっている模様です。
![小鰯](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/f268b0d0144cecf8629faebb7b2334c1-1024x683.jpg)
予約を取ってくれた、広島の凄腕経営者の友人であり先輩に多謝!
![すしログ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/bfff16286f71f92772bdffbe98056593.png)
今回お伺いして、広島の食好きに愛される理由に納得しました。
広島の地魚を駆使して、洗練された鮨へと昇華されています。
刺激を受けた若手の鮨職人さんが広島で開業され、さらに広島の鮨シーンを盛り上げてくれる事を願っています!
![すしログライブラリー_アイキャッチ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/910017e372204aeb3368ce8ca768f40c-160x160.png)
タップできる目次
「京橋 鮨 松」の親方、松﨑 崇さんは所謂「有名鮨店」での修行経験は無いそうです。
鮨職人として修業された後に福岡の海鮮居酒屋「柳町一刻堂」に入り、2021年11月に独立されたとの談です。
しかし、有名店の修行歴が無くとも鮨の完成度が高い事は人気が証明しています。
広島の「魚喰い切り 壮士」の佐谷親方も「鮨 稲穂」の三原親方も「有名鮨店」での修行歴はありません。
しかし、瀬戸内の魚を独自の表現で美味しく鮨に表現されているので、「鮨職人は100%センス」だと感じます(これは敬愛する東京の職人さんのお言葉で至言だと思います)。
![すしログ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/bfff16286f71f92772bdffbe98056593.png)
独自のセンスで突き抜けようとする職人さんが多い点は、有名ロック歌手を多数輩出している広島らしくてロックな印象を覚えますが、いかがでしょうか?笑
松﨑親方の握りは、何よりも生命線のシャリが良い。
広島としては甘味が非常に控えめで、塩気をキリッと効かせた赤酢のシャリで個性を表現されています。
東京のトレンドに寄せていて、広島では斬新です。
ただし、赤酢を用いつつ酸味と旨味は穏やかで、多くのタネに合う方向性です。
使用するお酢は、ヨコ井の琥珀とミツカンの三ツ判山吹、広島のセンナリ株式会社の純赤酢との事です。
センナリさんは静置発酵でのお酢造りを行う、意識の高い広島市安佐北区のメーカーです。
【純赤酢】は原材料が酒粕のみで、アルコールは無添加。
いやあ、素晴らしい志です。
かつて京都のお酢で「昔の製造方法で造りました」と謳いつつ醸造アルコールで科学的に造ったお酢がありましたが、それを著名な料理研究家や料理評論家が絶賛されていたので、本物の価値は分かりづらいものなのだと実感しました。
地元の真っ当な生産者を応援できる料理人は貴重な存在です。
最後に、タネは広島県ならびに近県の魚介類を駆使し、瀬戸内の魅力を打ち出されています。
瀬戸内を江戸前鮨を表現するお店は中国地方にはまだまだ少ないので、意識的なアプローチは心から応援したくなります。
しかも、ただ使うのではなく独自性のある仕事を施されている点が良いです。
仕事無くして鮨ではなく寿司となりますので。
今後の為に敢えて述べるならば、〆の仕事と煮る仕事を増やせば、より江戸前鮨としての魅力が向上すると感じました。
鮨はタネよりも仕事が第一で、江戸前鮨の醍醐味は〆と煮の仕事に収斂されます。
結論として、広島で非常に貴重な江戸前鮨店の登場に嬉しくなりました。
「京橋 鮨 松」のおまかせコースは、13,200円と非常にリーズナブルです。
この度頂いた日本酒
- 杉井酒造 杉錦 エドノハルザケ 山廃純米にごり酒(玉栄70%)
- 寺田本家 自然酒 五人娘 生酛(雪化粧・美山錦70%)
- 木下酒造 玉川 特別純米酒 2018BY(五百万石60%)
- 柄酒造 9代目於多福 純米吟醸 すずかぜ(お町50%)
- 月の井酒造店 和の月80 純米酒 生酛原酒 2021BY(美山錦80%)
この通り、提供される日本酒は素晴らしいラインナップです。
客単価を上げるためにプレミアム酒を思考停止で出す予約困難店とは意識のレベルが違います。
1杯目から山廃造りで白麹を使用している非常に面白いお酒を選択され、テンションが上がりました。
![杉錦](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/3a348932dd61d58720a7e46d4bee65ec-1024x683.jpg)
なお、今回は日本を代表する名杜氏の石川達也さんとご一緒させて頂きました。
伺ったお話をの中で印象深いお話は多々ありますが、中でも心に響いたのが「生酛の酒の特長は緩衝力にある」と言うお言葉。
生酛造りのお酒は味覚やアルコールの刺激を和らげる力が速醸酒母よりも強く、それ故にあらゆる食事に合わせられる、と言う意味合いです。
「飲みやすさなど考えなくても、本当に美味しいお酒は飲みやすいもの」
日本酒のペアリングを考える者として、大いに刺激になりました。
![アオリイカのエンペラ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/de7593e9f3b17abcc86cb0c6b4fa1ead-1024x683.jpg)
生姜、あおさ海苔とともに。
エンペラなのでコリコリとした食感が魅力で、アオリイカらしい甘味も楽しめる。
山芋のシャキシャキした食感も魅力。
夏の先付に清涼感と強い食感があると暑さを流してくれるものだ。
酢はキリリとやや強めに効かせている。
![鰈とイサキ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/0b031afab1ad3ca8d5e825db0439b0f9-1024x683.jpg)
廿日市産の鰈と、山口県周防大島産のイサキの炭火炙り。
鰈はぷりぷりした食感で、脂がしっかりと乗っている。
イサキも脂がしっかりと乗っていて、炙り香がイサキの香りを邪魔しない範疇なのが良い。
![蛸](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/a9b67eee9ff1f2ee269df5d3c1c34037-1024x683.jpg)
江田島産。
ぶちりと強い食感の初手に妙がある。
その後、しっとり、ホロホロときめ細かくほどける。
周囲はとろりとしている。
甘味を付けつつ、蛸の香りを楽しませ、媚びない範囲の調味であるのが好印象だ。
![鮎の茶碗蒸し](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/735c037b6833d8169e579f0a389c224d-1024x683.jpg)
濃密な鮎ペーストを合わせた茶碗蒸しで、荒木町の「わたなべ」さんを彷彿させる。
ただ、鮎ペーストは上ではなく中に仕込まれていて、後から風味、味わいが広がる設計だ。
![ガリ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/809d19e5f70ae946d6eeabf7a05611db-1024x683.jpg)
甘味がありつつ、辛味と酸味がじんわりと広がる、モダンな方向性のガリ。
![血鯛](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/5139eff9693daf1dd9c8747664bfa7ec-1024x683.jpg)
広島県産。
脂が乗っている血鯛を寝かせて、身はしっとりさせつつ、皮のぷりっとした食感と旨味を効果的に合わせる。
白身魚で印象的な名刺代わりの一貫目だ。
ご当地の江戸前鮨だと名刺代わりの一貫目に白身魚を選ぶ事が少ないので、白身魚で勝負を掛ける姿勢に魅力を感じた。
消費者の多くは鮨は味のみで味わいがちだが、タネや構成に込められたメッセージを読み解くと鮨が更に美味しく楽しくなる。
![小鰯](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/f268b0d0144cecf8629faebb7b2334c1-1024x683.jpg)
夏の広島を代表する魚が小鰯だ。
広島県民に愛される小型のカタクチイワシ。
足が早いので夜営業のお店で使うのは結構難しい。
松﨑親方は巧みに用いている。
ぷりっぷりで、ホロ苦い。
これは他の鰯に見られない魅力だ!
しかも、〆を意識的に選択せず、仕事を控えめにしている点が引き算の江戸前仕事と感じる。
間には浅葱を噛ませているが、上品な範疇。
![太刀魚](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/73b2e94ed2b06037bb97a18130ee422d-1024x683.jpg)
非常に独創的な表現だ。
熱を加えて脂を溶かしつつ、身はぷりぷり、パツパツ。
独自性の高い食感に魅了されていると、太刀魚の香りが力強く広がる点も魅力だ。
食感、香りの二重奏に魅せられる仕事。
![姫さざえ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/cec46f3c27b0fc9a1bcd0b9b400aa162-1024x683.jpg)
さざえの肝ソースは苦味と旨味が堪らない。
![ニシガイ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/8918a4bdb4f0eb6478b417d458675d8c-1024x683.jpg)
ニシガイは甘味が強く、コリッコリと気持ち良い食感。
広島らしい貝だ。
もずくは山口県産。
握りの合間の酒肴が油脂系でない点にセンスを感じる。
![鱚](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/df3c33b4e50de58453c86605741c89f2-1024x683.jpg)
昆布〆。
昆布の旨味をやや強めに乗せつつ、鱚を殺さない範疇に収めている。
包丁による繊維のほどけ方も良い。
![赤海胆](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/073cf7c42d6e7499f471d1df82bca21b-1024x683.jpg)
山口県柳井産。
甘味が強く、松葉様の香りが立ち、キリリと苦味でフィニッシュする海胆。
![ノドグロの味噌漬け焼き](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/80a9f80630136dfba533075814e3f81f-1024x683.jpg)
ノドグロの強い脂に味噌の香りや焦げが混ざる。
個人的にはノドグロ(アカムツ)にコストを掛ける必要はないと感じる(親方にお伝えした)。
調理法も多くはない魚であり、和食の炭火焼きの焼きものが一番美味しい魚だと思うので、それを圧倒的に超える仕事でなければ鮨店で出す必要性は無い(例えば麻布の「朔旦冬至」さんなどは秀逸な焼き物を出される)。
脂と柔らかい食感を好む現代人らしい嗜好の魚だが、味が分かるお客さんに食材をアジャストした方が職人さんの未来の為となる。
![枝豆](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/fa106eb58d00fd2b1a943ab04a55855c-1024x683.jpg)
広島県産。
冷製で非常に良いタイミングで提供され感動。
鰹出汁の餡仕立てなど繊細な配慮がされている。
![タイラギ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/f3e4b4084a93eb3dc4d54c23d46394f3-1024x683.jpg)
酢橘塩で。
これについては、包丁が細か過ぎると感じた。
タイラギは柔らかくほどけるよりも、僅かにジャクリとする凝縮感が解放されるような食感があると更に良い。
しかしながら炙りを加えていない点は魅力を上げる選択だ。
炙りも当然美味しいが、使用するお店の方が多いので、引く事で独自性に転換できる仕事である。
![鯵](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/fe450de5d52ec9e9e48d7fdb9f9dba59-1024x683.jpg)
食感が非常に魅力的で、ぶりぶり、ばっつりと力強い弾力と歯切れだ。
脂がしっかりと乗っていながら、鯵らしい香りと酸味があり爽やかに感じる。
明らかに日本海側ではないので産地をお伺いしたところ、広島の豊島産であった。
![ケンサキイカ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/e090e63561bb8da1b1b7d23897bfac2d-1024x683.jpg)
意表を突くタイミングでイカが登場する。
![カイワレ](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/f73001fc5c9f79c5fbb3a10dd4d89063-1024x683.jpg)
カイワレはシャッキシャキと気持ち良い食感で、苦味がありつつ爽やかに香る。
群馬県の名店「鮨おばな」さんのオマージュかと思いきや、昆布〆とは違う仕事で野菜寿司の魅力を表現している。
カイワレの原価は魚の数100分の1であるが、アクセントとして面白い。
![車海老](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/706f65f9fd6f437e229267cada9b6bf5-1024x683.jpg)
茹で置きで甘味を感じさせる仕事。
特にシャリの酸味によって甘味が引き立ちつつ、後味はキリリと終わる。
![うなきゅう巻き](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/31c9d03bbf90386ae3a7737d8c6ac4f6-1024x683.jpg)
厚みのある海苔に負けない程に味わい深い鰻だ。
鰻とキュウリの相性の良さを実感させる。
キュウリの瑞々しさと香りは実に爽やかだ。
![椀](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/f6434f25ab34c67bbc16e2045b9e051b-1024x683.jpg)
強いコクのアラ汁ベースの味噌汁だ。
ゼラチン質がたっぷりと滲んでいる。
![即席のいなり寿司](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/14a921b4903519b65b81315ba1a66bdc-1024x683.jpg)
干瓢巻きを出される事もあるようだが、リピーターの友人が予約を取ってくれたお陰か、意外性のある稲荷寿司が供された。
作り置きではなく、即興で作られるものなので、ソフト。
これはこれでアリだと感じた。
![玉子焼き](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/8d5c9f8fba6bbfd71928640ac2871e9f-1024x683.jpg)
表面が非常に香ばしく、塩味も強めに付けた、ふんわりカステラ玉子。
「京橋 鮨 松」さんは、お電話のみの予約となります。
受付時間は10時〜16時(毎月1日に2ヶ月後の予約が解禁されるシステム)。
期間に余裕を持ってお電話し、空いているお日にちを伺った上で訪問するのがベターなようです。
店名:京橋 鮨 松(きょうばし すし まつ)
シャリの特徴:3種ブランドの赤酢のシャリで、広島としては甘味抑えめで酸味を立たせたシャリ。
予算の目安:おまかせ13,200円
TEL:082-569-5171
住所:広島市南区京橋町8-11
最寄駅:稲荷町駅から270m、JR広島駅から750m
営業時間:18:00~23:00(20:30までの入店)
定休日:月曜
広島でオススメの鮨店
![小鰭](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/29c333026d67b7bce31ff0339e45ed9c-160x160.jpg)
![針魚](https://sushi-blog.com/wp-content/uploads/6c4c5400ebd26e937c333cd898c70a08-160x160.jpg)
広島の鮨・地魚を応援し続けようと決心する、すしログ(@sushilog01)でした。
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