若手ながらに香川で注目を浴びている職人さんがいる…と聞いて、かなり期待して訪問しました。
それと言うのも、ネットで見る握りの写真が端正だったので。
しかし、伺ってみて、期待を遥かに超える満足度で、驚嘆を覚えました。
【再訪記事もございます】すしログ No. 201 鮨舳@高松市(香川県)
まず素晴らしいのが、店内の香り。
実は、都内の高級店でも香りに乱れがあるお店はザラにありますが、こちらは清浄な空気に酢の香りが滲み、大変気持ち良い。
次に素晴らしいのは、お茶の差し替えのタイミング。
こちらほど正確にお茶を替えられるお店を、僕は他に知りません。
決して差し出がましくなく差し替えて頂けるのですが、さりげなく、きめ細かい。
特に、強い味わいのタネの後、確実に新しいお茶に替えて頂けるのは気持ちが良かった。
そして、肝心の握りの方も面白い。
シャリは、前半は米酢のもの、後半は赤酢のものと使い分けられるのですが、違和感無く、両方のシャリの完成度が高い。
2つのシャリを使われて違和感が無いお店は少ない。
ご主人の握りは精確で、捨てシャリをする事は無く、手元に乱れがありませんでした。
仕事の方も瀬戸内の素材を江戸前の枠組みで解釈されており、独自の世界観を提示してくれます。
なお、シャリは口に入れるや否や鳳仙花の如く米が弾ける。
硬めに炊き上げ、握り加減が良い。
味付け的には、酢がやや強めで、現代的な味わいです。
赤酢のシャリの方は、ヨコ井の酢を使用されているそうです。
最後に、山葵の管理も良かった。
こまめにすりおろされ、乾かぬよう慎重に皿を返す。
…とどのつまり、全てにおいて「もてなしの心」が顕れた稀有な鮨店だと感じました。
ガリ
甘みが無くスッキリした味わい。
真鯛
歯応えがあり、香りが強く、抜群の甘みを楽しめる。
一貫目で確信を覚えるタネのクオリティ。
アイナメ
昆布で〆ているが、塩梅が良い。
昆布の香りと旨味を移し過ぎず、アイナメの魅力を高めている。
エボダイ
珍しい、酢橘〆。
酢橘は抑制が利いており、上品な香りを残す。
ハリイカ
江戸で言う墨烏賊。
厚みのある切り付けだが、歯切れは良く、甘みたっぷり。
鮃
昆布〆だが、鮃の香りは非常に強い。
聞けば青森産との事。
噛みしめると滲む甘みは鰈とは異なり、季節の移ろいを感じる。
鮪赤身
漬け時間は1分程度(計りましたw)。
ここから赤酢のシャリに変わります。
産地は大間ですが、特にこだわりは無く、一番美味しいと思うものを使うとの事。
甘みの引き立て方が巧く、食感はねっちり、シャリとの相性が抜群。
小鯵
小鯵とは珍しい。所謂ジンタか。
程良い酢加減で〆ており、合わせた調味料が良い。
葱とすりおろした生姜をペースト状にしたもの。
ミル貝
ミル貝も赤酢とは驚いたが、甘みを引き立てている。
いくら軍艦
浅い漬け加減で、粒たちは爽やかに溶ける。
上品な口当たりと広がりのある余韻。
カマス
炙ってあり、とにかく懐かしい香り。
鯖
脂、香り共に中々時期を考慮してか〆加減は弱めで良い。
鰆
漬け。甘めの煮キリを使用しており、面白い。
鮪中トロ
温度の戻し加減が良い。
小鰭
皮目の食感は瑞々しく、酢をそれなりに用いつつ香りを活かしている。
シャリは米酢の方で。
蛤
煮ツメは濃い口でタイプ。
赤海胆
淡路産で、訪問の翌日から禁漁になるとの事でラッキー…
苦味が無く非常に美味しい。
真鯛のあら汁
車海老
茹で上げ。肉厚ながらに甘みを活かす良い火入れ。
鰆
今度は軽く炙ったもので、皮はとろとろ、脂が滲む。
穴子
ふんわり柔らかな仕上げ。
玉子
良質の練り物のような食感。甘く無い。
非常に満足度の高い内容だった上、トータルで19貫(+椀、玉子)なので、お会計を待つ間、「覚悟」しておりました。
しかし、お会計は14,000円。
タネのクオリティを考慮すると圧倒的なコストパフォーマンスです。
味わい、サーヴィスを兼ね揃えた名店である事は間違いありません。
全国で鮨を食べておりますが、個人的に三ツ星クラスの地方江戸前鮨店かと思います。
店名:鮨舳(すしとも)
シャリの特徴:タネに合わせて、米酢(白)と赤酢を駆使。硬さ、ほどけ加減ともに抜群のシャリ。
予算の目安:14,000円~20,000円
最寄駅:瓦町駅から150m
TEL:092-726-6289
住所:香川県高松市瓦町2-8-17
営業時間:お昼12:00~14:00(基本的に二人以上から)、夜18:00~22:00
定休日:日曜、祝日