こちらは京都にあって古い江戸前の仕事を継承するお店です。
昔から食通の間では有名なお店で、「名店」とも「伝説のお店」とも評されてきたそうです。
お店は錦市場から少し歩いた場所にあり、カウンター6席ばかりのこぢんまりとした空間です。
しかしながら、カウンターは200年物の欅を数十年掛けて乾燥させたものとのことで、小体ながらも歴史を感じさせる内装です。
(当店は2000年半ばに移転したそうですが、内装はそのまま移したとか)
ご主人は「老練」という言葉が似合う方。
かと言って、圧迫感は皆無で、すぐに寛ぐことが出来ます。
「京都の老舗」と聞いて構える必要は皆無です。
こちらのシャリは柔らかく、甘い!
東京の感覚すると驚くことは必至です。
人によっては、「江戸前と違う」=「NG」と感じるかもしれません。
しかし、ご主人の仕事を施されたタネと頂けば、驚くほどの一体感を味わえます。
僕は硬めで、シャープな味わいのシャリが好きなのですが、真逆を行くのにもかかわらず美味しかったです。
それと言うのも、仕事が独特でありながら完成度が高いためだと思います。
鮪はシャリに合う温度にぴったりと合わされ、〆ものは酢と塩をばっちり利かし、ツメは味醂と酒をアグレッシヴに使う。
この一体感は個性的で、唯一無二かと思います。
また、酢橘や木ノ芽を使うところは、京都に来たなあと感慨ひとしお。
【鯖の棒寿司】や【ひよこ】などはこちらならではな、スペシャリテでしょう。
京都では珍しい、京都らしい味わいの江戸前鮨と言えるかもしれません。
蛸の桜煮
非常に柔らかく煮ておりますが、旨味が強く、吸盤は強い食感を保持。
もろみ味噌で頂く冷えた胡瓜が、まだ蒸し暑い京都で滲んだ汗を和らげてくれました。
中トロ海苔巻き
紀州勝浦産とのことですが、東京で頂いた勝浦産とは旨味の質が微妙に異なりました。
脂も濃厚ですが、さらりとしており、クドさは残らず、余韻がたなびきます。
烏賊
食感と甘みが良い塩梅で、木ノ芽が香しく漂う。
鮑
甘めに、柔らかく仕上げている。
鮑の肝
非常にパンチのある一貫。
濃厚な鮑の肝を、濃厚なツメでまとめ上げる。
味のもたつきが無いのが不思議です。
車海老
オボロも使っておりますが、甘めの味わいでシャリに合います。
針魚
絶妙な〆方に圧倒されました。
酢、塩、昆布をバシッと利かせながら、食感は柔らかく、針魚の味わいも残す。
繊細な針魚を華やかに仕立てた逸品。
鯖の棒寿司
まさにスペシャリテだと感じさせる一貫。
シャリと最も合っており、一気に頂いてしまいました。
穴子(塩)
穴子(煮ツメ)
東京のようにふんわり柔らかく煮るのではなく、穴子自体にしっかりと甘めの味を付けております。
ツメとの相性が抜群。
ツメは穴子の骨だけではなく、穴子まるまる一本煮詰めているそう。
玉子
ひよこ
ひよこは卵の白身にオボロを仕込んで握った変わり種。
相当古い江戸前仕事の鮨です。
ただ、はんなりとした甘みがあり、何処と無く京都らしい味わいです。
ネギトロ巻
海苔を二重に巻き、日本酒に合うように仕上げているそうです。
こちらの握りは、古い江戸前の仕事を独自の解釈で完成させた、ここでしか頂けない鮨だと感じます。
江戸と京都のハイブリッド。
シャリの味わいは穏やかですが、握り全体で考えると、確かに通好みなのかもしれません。
ただ、京都にあって長らく食通に愛されたお店。
ご主人のお話も面白く、季節を変えてまた伺いたいと思うのです。
※敢え無く閉店されてしまいました
店名:松鮨
シャリの特長:柔らかく、甘い。セオリーを無視したシャリだが、こちらの仕事には不思議と調和。
予算の目安:20,000円~25,000円
最寄り駅: 烏丸駅から427m
TEL: 075-221-2946
住所: 京都府京都市中京区蛸薬師柳馬場西入十文字町432-1
営業時間:13:30~19:00
定休日:木曜
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1975年か76年頃に一度だけ伺ったことがあります。当時はまだそれほど仕事に執着したところもなく、ただ漠然と何を頂いた記憶もなかったのですがふとしたことで人に話したことでブログを拝見、感ずるところあり綴っております。より多くの情報を得たくご連絡しました。ご連絡頂ければ幸甚です。
コメントを頂きまして、ありがとうございます。
私が訪問してから結構時間が経過してしまったので、ブログ以上の情報をお伝えできるか自信がありませんが、今でも仕事は記憶に残っています。
閉店される前に頂いて良かった…と痛感する名店でした。