(No. 345をリライトしました)
2017年2月に初めて訪問して以来、結構なペースで定期訪問している銀座のやまださん。
店主の山田裕介(やまだゆうすけ)さんがお店を開いたのは2012年7月です。
僕はオープンから4年半ほど経ったタイミングでの訪問だったわけですが、ここ3年の進化だけみても目覚ましいほどです。
鮨マンガ「江戸前の旬」に多数登場されているので、見た人も多いのではないでしょうか?
記事は多数書いていますが、改めて魅力をまとめよう!と思った次第です。
初めて訪問される方にも、ファンの方にも楽しんで頂ければ幸いです。
鮨処やまださんの魅力
- 酒肴のみならずガリすら無く、握りのみ15貫で勝負する鮨店
- 東京では珍しい魚も江戸前の仕事で江戸前鮨に仕上げるセンス
- 魚の香りも含めた魚味(ぎょみ)を重視する職人
- 熟成仕事の巧さ
- 小鰭が旨い!
※お店の表記については、「鮨處」が正式ですが、一般的な表記「鮨処」で記載いたしております
「鮨処やまだ」さんの立地と雰囲気
銀座7丁目の「第26ポールスタービル」の3階にあります。
お店は銀座、有楽町、新橋のいずれの駅からも徒歩圏内です。
EVでビルの3階に上がり、右手に進めば、一番奥に暖簾がかかっているので分かります。
店内はカウンター8席ほどになり、小ぢんまりとしています。
気取ったところがないので、「銀座の鮨」と構えなくても大丈夫です。
ただ、荷物を置くスペースが限られているので、大荷物でないほうがベターです!
「鮨處やまだ」さんとは?率直な魅力は?
なにはともあれ、シャリ(酢飯)です。
鮨の生命線であるシャリ(酢飯)は初めてお伺いした時よりも美味しくなっていて、炊き加減や温度など、現時点ではブレがありません。
使用しているお米は宮城県登米産のササニシキで、お酢は横井醸造(ヨコ井)の與兵衛と白寿のブレンド。
少量の砂糖を用いて、赤酢のクセや強い旨味を穏やかにまとめた万能型のシャリです。
山田さんのシャリの使い方で特徴的なのは、タネによってシャリの温度帯を変えるところです。
おまかせのタネ数はデフォルトで15種類で、追加は最低15種類ほど。
かなりのタネ数で、しかも冒頭の「魅力」で挙げた通り変わった魚も使用されます。
それを毎日異なる組み合わせで提供されるので、タネを構成するにあたりセンスが問われます。
多品種で魅力的なコースに仕上げておられるのは、親方の味覚と完成度の高いシャリがあってこそです。
僕は硬派な江戸前鮨店や老舗の江戸前鮨店も好きですが、個性派のお店としては、比類ない魅力がある一軒だと思います。
その心とは、個性的だったり創作的だったりするものの、ベースは紛れもない江戸前仕事で、〆や煮るなどの基本的な仕事が徹底している為だと確信します。
例えば、鮑。
実は3年間通って今回初めて頂いたのですが、他のお店とは違う仕事で、山田さん固有の火入れを実感しました。
具体的に言うと柔らかすぎない仕上がりで、噛むと鮑の旨味と香りが高まる煮仕事です。
咀嚼の喜びがある鮑で、意識的に他店とは異なる味に仕上げていると感じました。
鮑は非常に柔らかいものが流行っていますが、噛み締めて旨味と香りを高める仕事も楽しいものです。
山田さんが魚の香りと食感を重視していることが分かります。
それは旨味と引き換えに香りと食感を弱める可能性がある熟成を巧みに操る点からも分かります。
今回の訪問時には1貫目に鮃(ヒラメ)が登場しましたが、これは珍しく寝かせておられました。
通常、山田さんは1貫目の白身魚は寝かせずに出される事が多いのですが、理由は3貫目に食感が非常に特徴的な魚、メイチダイを出すためでした。
鮃は寝かせて旨味を引き出していて、しっとりした食感。
メイチダイは他の白身魚には無い食感で、もっちもち。
この食感のコントラストは面白いプレゼンテーション。
また、1貫目に旨味の強い鮃を出した後、立て続けにメイチダイを出すのではなく、あえて2貫目に新イカを挟むことでメイチダイの旨味も感じやすくするタネの構成をされていて、見事でした。
このようなタネごとの味覚の変化、タネの構成力まで楽しむ事がモノホンの鮨通だと感じます。
ネット上やメディア上で鮨通を気取っている人の大半は、このあたりが抜け落ちています。
「鮨処やまだ」さんでしか楽しめない握り
圧倒的にオススメなタネは小鰭(コハダ)です。
〆の仕事で効果的に脱水して旨味を引き出しているのに、食感は柔らかい小鰭です。
〆に失敗すると生じる特有の匂いも感じた事はありません。
全国の色々なお店で小鰭を吟味していますが、ナカズミサイズの大きめの小鰭でも食べやすく〆る手腕には驚きます。
逆に、新子(1枚目の写真)であっても〆の仕事で旨味を引き出されます。
新子なので旨味は淡いものの、〆の仕事で魚の良い部分を引き出し、旨味、香り、食感を仕事で食わせてくれます。
また、鮨店としては珍しく、低温調理を行い、それを酒肴でなく握りで出される点も魅力的です。
60℃で20分火入れした、鮪はとろけるような食感に鮪の香りと酸味を楽しませてくれる新しい仕事。
温かい状態で供される鮪自体が珍しいと思いますが、味覚が合っているので、違和感を感じさせません。
オーソドックスなタネとしては、山田さんのところで頂く鰹は印象的なものが多いです。
江戸ッ子が女房を質に入れても食べたいと言った春の初鰹に始まり、晩夏から初秋に掛けての戻り鰹、あるいは季節外れの迷い鰹。
それぞれシーズンごとの持ち味が活かされていて、鰹の旨味、酸味、香り、食感などが絶妙です。
今回頂いたのは気仙沼の戻り鰹。
戻り鰹としては酸味優先の爽やかな味わいで、炙った皮の香ばしさがアクセントになっています。
シーズンごとに異なる味の鰹を楽しませてくれる鮨店は意外に少ない気がします。
また、面白いところでは、炙り〆鰯。
日本人なら誰しもが食欲を刺激される青魚の脂が焦げる香りをまといつつ、〆ていることでサッパリと頂ける独特の鰯です。
独創的なタネを挙げていくとキリが無いのですが、昔から出されていて誰もが好きであろうタネは叩いた甘エビや…
叩いた鮟肝などがあります。
鮟肝は昔は下記のような状態だったので、洗練されました(笑)
インパクトは過去の方が上ですが、味は現在ものが上です。
手巻きにする事で海苔の味わいとのコントラストが強まり、海苔も変えられたのか、歯ごたえや香り、旨味が向上しています。
以上、ご紹介したタネはごくごく一部です。
なにせ引き出しの多い親方なので、出会えるかどうかは運も重要かと思います。
ただ、いつ訪問したとしても、今までに頂いた事の無いタネを楽しませてくれるのは間違いありません。
それが、山田さんに通う理由だと言えるでしょう。
過去の記事は下部にリンクを張りますので、ご関心のある方はご参照ください。
「鮨処やまだ」さんの予約方法・予算について
WEB予約については、一休経由で可能です。
予約については必須ですが、一人ならば比較的直前でも取れる可能性があります。
しかし、二人客が多いお店なので、好きな日に訪問するならば、余裕を持って2週間〜1ヶ月前に予約される事をオススメします。
予算については、過去の記事が上位表示される事も多く15貫10,800円(税込)となっていますが、現在は15貫16,500円(税込)となります。
そして、こちらは15貫頂いた後に追加できるシステムで、希望の(食べられる)貫数を申請するのですが、目安としてはプラス10貫頂き、お酒を割と飲んで30,000円弱となります。
お腹の空き具合に合わせて追加されるのが良いでしょう。
全国で数多くの鮨を頂いてきましたが、こちらと同じお店はありません。
圧倒的な個性を求める鮨好きの方ならば是非とも訪問してみてください!
【過去の訪問記事】
「鮨処やまだ」さんの店舗情報
店名:鮨處(すしどころ)やまだ
シャリの特徴:赤酢2種類をブレンドし、砂糖を用いつつ、多くのタネと調和する硬めのシャリ。
予算の目安:16,500円~
最寄駅:新橋駅から350m、内幸町駅から450m
TEL:03-3572-7534
住所:東京都中央区銀座7-2-14 第26ポールスタービル3F
営業時間:18:00~21:30
定休日:日曜、祝日