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前に、今や貴重な江戸料理を頂けるお店としてご紹介した太華さん。
今の東京だからこそ一層輝く、質実剛健な御料理たちが魅力です。
今回は広島県・安芸高田産の猪と鹿を用いたコースを求めて訪問しました。
現在、「鹿」と言うとエゾジカが一番有名だと思いますが、安芸高田のニホンジカは非常にクオリティが高く、美味しいです。
鹿自体のパワーも勿論理由の一つですが、現地のハンター・古門正文さんの腕が卓越している事が理由である模様。
正確にヘッドショットを決めて、1時間以内に食肉処理を行うからこそ、鹿特有の匂いを「臭い」ではなく「香り」として楽しませつつ、鹿が本来持っている旨味と爽やかな酸味を味わわせてくれます。
そして、鹿のみならず猪も上質との事。
期待に胸を躍らせ訪問したところ、期待を超える美味しさに興奮した次第です。
なお、獣肉料理のクオリティと独創性の高さもさる事ながら、海原流の解釈が光る前半部分の江戸料理も大変魅力的です。
獣肉だけでなく、江戸料理との組み合わせだからこそ、感情の起伏を生み出し、最後まで興奮して楽しませてくれるのだと感じました。
御料理の構成力=ストーリー性も素晴らしいお店だと思います。
この度頂いたお酒
東京港醸造・江戸開城純米吟醸、森戸酒造・尚仁沢無濾過生原酒(斗瓶採り)、宗政酒造・宗政特別純米、右田本店・宗味生もと純米、剣菱酒造・瑞穂黒松剣菱(純米)
今回の特別コースの内容
・ガンクイ豆
・百合根
・鹿のスープ
・ポテトサラダ
・葡萄のおろし和え
・伊勢湾のひじき
・ハゼの塩焼き
・椀:芝海老真薯
・刺身:血鯛
・刺身:芝海老
・猪もも肉の江戸味噌煮
・鹿の江戸味噌煮
・茹で鹿すね肉
・猪ロース肉の炙り
・猪の沢煮
・お食事
・水菓子:ガンクイ豆
タップできる目次
太華さんの猪鹿コースの詳細
ガンクイ豆
岩手県産。江戸で昔使われていたと言う由来で使用。
硬めに仕上げており食感が気持ち良く、香りが食欲を刺激する。
百合根
蒸しており、甘い。
ホクホクとほどけ、ねっちりと軽く跳ねる食感は、素朴ながら心も跳躍させる。
鹿のスープ
鹿の野趣ある香りとともに、上品に仕上げた旨味を楽しませる。
複雑な旨味なので調味料を伺ったところ、酒と水、塩と醤油との事でビックリ。
鹿の部位はすね肉のみ。
和風のコンソメとも言える味わい。
フレンチのコンソメはより複雑な旨味だが、和食ならばこのような素材の活かし方が魅力だ。
塩気もバッチリ。
ポテトサラダ
大変スッキリしたポテサラで、玉ねぎの香りと食感を活かしている。
葡萄のおろし和え
これまた面白い一品。
1733年(享保18年)に仙台藩の料理人・橘川房常が上梓した『料理集』に因る料理。
付け合わせも晩秋らしくて嬉しい組み合わせ。
銀杏、蓮根、内藤カボチャ。
内藤カボチャには大徳寺納豆のような醤感を感じる。
伺ったところ、江戸味噌を挟んでいるそうだ。
蓮根は塩のみで調理し、香りを満喫させてくれる。
一見普通なのに、味覚で意表をつく料理だ。
単に組み合わせの奇抜さだけではない。
なお、前述の『料理集』を確認したところ、下記の通り。
「肉汁をとり精進膾に仕候 おろし大根くりせうが取合等よく候」
栗を他の秋野菜に置き換え、生姜を不使用とする点が海原さんのアレンジとなる。
伊勢湾のひじき
ひじきは磯臭さが出るギリギリまで茹でているそうで、大変味わい深く柔らかい。
同時に出汁と香りが強く滲み、舌と鼻を楽しませる。
乾物の面白さを表現したい、との事で、試みが独特で素晴らしい。
ハゼの塩焼き
江戸時代には東京で大量に獲れたハゼ。
今は宮城県産との事だが、嬉しくなる焼き物だ。
身はしっとりで、頭と骨はガリッガリ。
柔と剛のコントラストととも、強い香りや苦味が魅力。
椀
芝海老真薯。これは前回同様に感動。
鰹出汁のみの吸い地は素晴らしい完成度。
真薯はもろっと、ほろっとほどけ、海老の甘みと香りの権化と言える。
刺身
淡路島産の血鯛(春子)。
塩と柑橘由来の酸味を感じる〆の仕事。
山葵と関ヶ原醤油との一体感が素晴らしい。
芝海老
鮮度が良い時しか出せないとの事。
食感はプチプチ、ねっとりで、甘い。
深海性の海老とは異なる食感が面白い。
猪もも肉の江戸味噌煮
白眉!和製ローストビーフ…否、ローストボウとも言える逸品!
25分だけ煮てこの火入れ、食感とは恐れ入る。
歯切れが良く、旨味を満喫できる。
そして、江戸味噌の使い方も良く「味噌煮」という名を裏切る味わい。
味噌のコクと風味が実に良い。
鹿の江戸味噌煮
鹿の酸味と鉄分が爽やかで、癖は皆無。
そして、食感や歯切れが独特で、これは調理によるところが大きい。
茹で鹿すね肉、にんにく味噌
すね肉らしいゼラチン質と旨味を引き出している。
身はホロホロだが、鹿の酸味と鉄分が残っており、鹿らしさを活かしているのが素敵。
尚、ニンニクは江戸時代にも使われていたそう。
調べてみたところ、確かに武士の祝い膳に使用されていたそうだが、面白い点が他の薬味であるネギ、ニラ、ラッキョウは忌避されていた点。
仏教では「五葷」の代名詞であるが、武家ではネギやニラよりも香りの強いニンニクが大丈夫であったとは、理由が気になる。
江戸料理研究で必読とされる『料理物語』(1643年、寛永20年刊行)において既に鹿汁の吸い口として記述が見られるので、
戦国時代からの食文化が残ったのかもしれない。
猪ロース肉の炙り
熱源は炭で最後にサラマンダーで仕上げ。
表面はカリカリで、脂が旨い。
炭の燻香も魅力的。
猪の沢煮
昔は漁師が沢で作ったとされる煮物。
これは猪肉の良いところを痛感する料理。
脂が旨く、良い意味での野趣がある。
三ツ葉、牛蒡、舞茸と、鉄板の素材が脇を固める。
お米はササニシキの新米で美味しい。
今回は香の物ではなく、切り干し大根。
ガンクイ豆
一品目と同じ豆を用い、柔らかく、甘く炊いている。
最初と最後が同じと言うのは粋である。
食事 太華さんのお店の情報
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WEB予約はヒトサラから可能です。
店名:食事 太華(しょくじ たいか)
予算の目安:おまかせ7,500円ほか、猪鹿コースは要相談(仕入れによりますので)
最寄駅:芝公園駅から210m
TEL:03-3453-6888
住所:東京都港区芝2-9-13
営業時間:18:00~24:00(最終入店 22:00)
定休日:水曜
※コースは完全予約制となります
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