東京で伺うべき日本料理店!芝公園「江戸前料理 芝浜」

江戸前芝浜外観

こんにちは、江戸料理応援隊の、すしログ(@sushilog01)です。

さて、僕が「東京で訪問すべき日本料理店」の筆頭として挙げるお店、「江戸前料理 芝浜」さん。

かつては「太華」と言う屋号でしたが、2021年6月に移転リニューアルされて生まれ変わりました。

江戸前芝浜芝煮

リニューアルオープン時に更に美味しくなっていて驚いたものですが、2023年3月に再訪したところ、またまた美味しくなっていました。

こちらの魅力である良い意味での「渋さ」を維持した上で、より広い層に訴求する食材の取り合わせを行っている点に感服します。

今まで「渋そうだな…」と思って敬遠していた人も、きっと「これは美味しい!」と新体験の味覚に舌鼓をうつはず。

 

ちなみに、海原さんの土鍋炊きご飯は日本3指に入る美味しさです(未だにキープ)。

江戸前芝浜お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ

なお、食べログのスコアは3.75まで上がりましたが、なんとレビュアーアワード受賞レビュアーで訪問しているのは自分のみ。

あとは、プロの柏原光太郎さんと、他8名ほどのレビュアーさんになります。

世間の評価に惑わされずに食べ歩きできる人が如何に少ないかを実感します。

【2023年4月追記】

→100名店を取った後にミーハー系のレビュアーさんが訪問されていて、分かりやすいなと感じました。

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「江戸前料理 芝浜」の魅力とは?

「江戸前料理 芝浜」というお店の凄さを一言で表すのは、簡単です。

なんと、ご主人である海原大かいばらひろしさんは、江戸時代の文献を読んで江戸料理を研究されています。

しかも、現代人の味覚で「美味しい」と感じる御料理に仕上げられている点が凄いです。

温故知新の極みでしょう。

 

まして、江戸料理は絶滅危惧の状態に陥って久しい料理ジャンルです。

志が高い。

京料理を中心とした関西料理(上方料理)が席巻した都合上、東京の江戸料理は極端に少なくなりました。

江戸料理を謳い、コースに仕上げているお店は、ほぼありません。

今残る江戸料理は鮨、鰻、天婦羅、蕎麦など単一の調理に集約され、一品料理をコースとして構成するお店は無くなっています。

 

江戸料理をコースで供するお店としては、かつて大塚に「なべ家」と言う名店がありましたが、2016年に閉店してしまいました(奇しくも「太華」のオープンは2016年)。

ご主人の福田浩さんは『豆腐百珍』や『完本大江戸料理帖』、『料理いろは包丁』という名著を上梓された江戸料理の大家です。

料理好き、和食好きであれば、これらの著書は必読です。

このような名著をしるされた福田さんは今もご健在で、海原さんを始めとする中堅の料理人の方と親交を深められています。

文化が死滅せずに継承されているのは本当に嬉しい事です。

すしログ

僕個人としては、キャヴィアやトリュフを用いる節操無しの日本料理よりも、温故知新による革新を試みる料理の方が好みに合い、江戸時代の書物をひもとき自身の世界観を模索する海原さんにこそ、未来の可能性を感じる次第です。

「芝浜」のご主人・海原大さんについて

ご主人・海原さんの探求心と表現力には目をみはるものがあります。

料理や食材を本当に愛している人には響くはず…

本質を求めるグルメな方にこそ、海原さんの御料理を味わって頂きたい。

 

海原さんは25歳の頃に料理の道に入られたので、料理人としては遅いスタートです。

そのために「京都での修行は気が引けて止めた」との事で、奥ゆかしい限りです。

葉山の名店「日影茶屋」(江戸時代中期1700年~1750年頃に創業)を経て、白金「心米」や上野松坂屋の「銀座鳴門」(鰻屋さん)などで修業されました。

ただ、料理人を志すきっかけは、実はイタリアンレストランであったところが意外です。

 

現在、海原さんは『料理物語』などの江戸時代の名著をひもといたり、福田浩さんの薫陶を受けたりされながら、ご自身が考える江戸料理を作られています。

僕も江戸時代の文献を読むことがありますが、読んだところで美味しい料理を作れるわけでは決してありません。

海原さんは探求心や熱意があるばかりでなく、想像力と調理技術に長けた方。

それゆえに「江戸料理の美味しい再構築」が奏功しているのは間違いありません。

「江戸前料理 芝浜」の御料理の特徴

僕は通常コース以外に【広島県・安芸高田産の猪と鹿を用いたコース】や【タイラガイ(タイラギ)のコース】なども頂いたことがあります。

その上で感じている特徴は以下の通りです。

  • 江戸料理らしく昆布を用いず鰹のみで巧みに出汁を引く
  • 食材の持ち味に寄り添う出汁と塩の使い方
  • 誰もが知っている食材に秘められた、誰もが知らない魅力を引き出すセンス
  • 〆の土鍋炊きの白ご飯が抜群に美味しい

海原さんの鰹出汁の美味しさについては、日本トップクラスです。

僕が「お店のスペシャリテ」と考える【芝海老真薯の椀】は本当に素晴らしい椀です。

芝海老と鰹出汁を調和させ、他に無い表現で食べ手を感動に導いてくれます。

江戸前芝浜椀:芝海老真薯02

御料理の全体的な特徴としては、いわゆる「引き算」ですが、伝統調味料や薬味を効果的に足す事もされます。

薄味志向ではありますが、物足りなさはありません。

 

「誰もが知っている食材に秘められた、誰もが知らない魅力を引き出すセンス」とは、ちょっと抽象的な表現ですが、具体例を挙げると芝海老が分かりやすいです。

芝海老は江戸前鮨の玉子の原料に使われたり、安価なものが居酒屋の揚げ物で出てきたりするイメージだと思います。

 

しかし、海原さんが仕入れる芝海老は状態が非常に良く、サイズも大きくて、味わい深いです。

それを幾つもの調理法で出されるので、サプライズがあるわけです。

なんと小鰭を天麩羅で出されたのには、心から驚きました!

江戸前芝浜小鰭の天麩羅

最後に、〆のお食事は土鍋炊きの白ご飯とストイックです。

お米の甘みと香りが引き出され、瑞々しさを感じるお米は、それだけで贅沢。

脂過多なハラスご飯やトリュフ卵かけご飯などとは真逆の美学を感じる秀逸なご飯です。

 

僕もかつては南部鉄器の羽釜で炊き、今は一志郎窯の土鍋で炊いていますが、お米を炊く行為は、それだけで一つの料理を作る程に技術が必要なもの。

ある意味、魚の焼きものや炊き合わせよりも難しいのが炊飯だと思います。

なので、白ご飯で出せる方は完全におとこです。

ちなみに、一志郎窯の「味事飯鍋」は技術不要で美味しく炊けるチート土鍋なので、土鍋に興味のある人に心底オススメしています。

▶参考記事:すしログ御馳走帖 味事飯鍋

 

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「江戸前芝浜」のコースの詳細

メインのコースは16,500円の「芝浜」で、他に鍋のコースも用意されています。

意欲的なご主人は食材を指定した特別コースなども作ってくださるので、独自のコースを組み立てて頂くことも可能です。

「江戸前芝浜」のお酒

頂いたお酒の一例を紹介します。

江戸前芝浜酒器

  • 石川酒造、多満自慢 純米大吟醸
  • 豊島屋本店、金婚 しぼりたて無濾過生原酒
  • 石川酒造、多満自慢 ササニシキ熟成古酒

お酒は1合1,000円と良心的な価格設定です。

いや、価格以上に面白いのが、品揃え。

東京の酒蔵の日本酒を集めています。

江戸前芝浜お酒

思えば、各県にはお国自慢の日本酒を揃えるお店が多々ありますが、東京は東京の酒蔵に絞るお店が極端に少ない状況です。

これは東京は全国の逸品が集う場所であることと、江戸時代には東京のお酒が低品質だとみなされていたことが理由だと思われます。

江戸時代には、大坂や京都などの「上方」からの「下り酒」」こそが最上とされていました。

しかし、時は流れ、酒造の技術は変わりましたし、何よりも消費者の味覚の幅が広がりました。

現在では、東京のお酒はスッキリしていて美味しいので、是非とも試してみてください。

 

ちなみに、焼酎類も充実していて、特に伊豆諸島の青ヶ島で造られる【青酎】はイチオシです。

芝浜青酎

各種ワインもあり、日本ワインを選択されている点が素晴らしいです。

 

では、御料理のご紹介に移ります。

2023年3月下旬に頂いたコース

この度頂いたお酒

  • 末廣酒造 猫魔の雫 純米吟醸無濾過生原酒
  • 豊島屋本店 純米無濾過原酒 十右衛門
  • 秋鹿 純米 あらごし生酒
  • 月の井酒造店 純米「彦市」

猫魔の雫

先付:大豆

大豆

「えっ、大豆?」と思いきや、あまりの美味しさに笑顔になるのが芝浜さんの魅力だ。

白魚と大根、蕗の薹味噌、鮟鱇のはんぺん

白魚と大根、蕗の薹味噌、鮟鱇のはんぺん

秀逸な組み合わせで感涙だ…

白魚

白魚はホロ苦さ、食感、香りの全てが素晴らしい。

そして、鮟鱇ではんぺんを作られるとは!

鮟鱇のはんぺん

はんぺんは、魚肉のすり身に山芋を混ぜて、気泡を多く含ませて作る「茹で蒲鉾」である。

塩分濃度は0.5%程度で、鮟鱇の身に含まれる塩味を活かし、鮟鱇の甘味を最大限表現する素晴らしい仕事。

味を足すのではなく引く事で味を引き立てられる料理人は決して多くは無い。

蕗の薹味噌も甘味を抑え、蕗の薹の苦味を活かす味付けなのが素晴らしい。

江戸味噌の甘味とコクで蕗の薹の苦味と合わせる。

これは春を大満喫する珠玉の小鉢たち!!

椀:蛤とウド

椀

蛤とウドの吸い物。

吸い地に蛤の鮮烈な旨味が滲み、ウドの香りが爽やかに調和する。

蛤本体は甘い!

この味覚的なコントラストには感動した。

桜鱒

桜鱒

桜鱒は脂がノリノリで、同時に香りが鮮烈だ。

ハマボウフウ、和芥子との相性も非常に良い。

小鰭と芝海老のなめろう

小鰭と芝海老のなめろう

これまた面白い組み合わせだ。

〆て酸味の効いた小鰭と、寝かせて旨味が強い芝海老を合わせる。

芝海老は日を置く事で珍味的なニュアンスが高まるため、少量のネギを薬味にして干渉する。

…マニア心をくすぐる一皿だ。

むきみ切り干し

むきみ切り干し

穴子入りに調整されていて、より幅広い層に訴求する御料理となった。

切り干し大根を炊く出汁は蛤出汁。

取り合わせが実に良い。

鮟肝

鮟肝

鮟肝自体は味付けを行っていない。

そこに、江戸甘味噌と酢を溶いたものを添える。

非常にチャレンジングで、下手に甘い味付けをした鮟肝よりも美味しい。

同じ挑戦を出来る料理人は、日本で何人いるだろうか。

筍

出汁は鰹節で江戸料理らしく、筍は見事に旨い!

甘味とホロ苦さが魅力的で、季節の喜びを感じさせて頂く。

産地は熊本県。

使用されている花山椒の量が程良い。

花山椒に関しては「多ければ多いほど良い」風潮が続いているが、もはや量に歓喜する姿は残念ながら食への無知を表すバロメーターになってしまっている。

鮟鱇の潮汁

鮟鱇の潮汁

白眉。

ここまでピュアな鮟鱇料理には出会った事が無い。

旨味とゼラチン質が凄い。

塩気は身から滲んだ塩味のみ。

身はホロッと崩れて、しゃくっしゃくと意表を突く食感を楽しませてくれる。

頭の頬あたりの肉か?と思って尋ねたところ、そのとおりであった。

鮟鱇鍋

鮟鱇鍋

打って変わって味が濃い鍋へ。

とは言え、こちらは芝浜さん。

「味が濃い」と言っても塩味も甘味も、味噌の香りでさえコントローラされている。

鮟鱇鍋01

「鮟鱇の七つ道具」を堪能。

鮟鱇鍋02

味覚のバランスが良いので、何杯頂いても飽きない秀逸な鮟鱇鍋である。

お食事

まずは名物の白ご飯。

ご飯

冒頭に書いた通り日本トップクラスの美味しさを誇る白ご飯だ。

お米は小粒でパラッパラ。

粘度が低くて、それでいて甘味が強い栃木県産のコシヒカリ!!

わらび

香の物のチョイスが何とも…最高だ。

ここで、ご飯に鮟鱇鍋を乗せて頂く。

鮟鱇ご飯

生きていて良かった、と思う味わい。

雑炊でない方が圧倒的に美味しい調理だ。

水菓子:胡麻味噌よもぎ団子

胡麻味噌よもぎ団子

味噌を合わせる水菓子とは、最後までブレが無い。

写真の見た目の通り官能的な食感で、ヨモギの香りが心地良く、味噌の塩味と風味がお酒を飲んだ後の水菓子としてしっくり来る。

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2022年5月上旬に頂いたコース

この度頂いたお酒

  • 江戸開城 純米吟醸 原酒 雄町
  • 屋守おくのかみ 純米中取り 無調整生
  • 菊正宗 特撰 生もと 本醸造
  • 久保田 純米大吟醸 黒
  • 上川大雪 純米大吟醸

御料理の内容

  • 先付3種類:豆、ワラビ、タケノコの煮付け
  • 初鰹のタタキ
  • 天抜き
  • 真子鰈の刺身
  • 番付皿
  • サクラマスの焼きもの、コシアブラ
  • サクラマスの肝煮
  • 鹿のすね肉の味噌煮込み
  • お食事:土鍋炊きご飯、香の物
  • 水菓子

 

先付3種類

芝浜先付3種類

豆、ワラビ、足利産タケノコの煮付け。

豆は相変わらず甘くて、香り豊かだ。

これを頂くと「江戸前 芝浜さんにお伺いした」という実感が強まる、癒しの先付である。

ワラビも香り良い。

エグみは皆無で、ぬめっとした特有の食感と共に季節を感じられて良い。

色こそ濃いものの、味付けは穏やかだ。

芝浜タケノコ

タケノコもホロ苦さをピュアに楽しませてくれる。

味付けに甘みを一切排除していて、潔い。

総じて、3品全ての調理で甘みと脂を排除している点が素晴らしい。

かと言って薄味と言うわけでもないので、印象に残る。

 

初鰹のタタキ

芝浜初鰹のタタキ

白眉!

これは本当に素晴らしい鰹料理であった。

鰹を厚めに切りつけて、皮目には塩を強めに当てて、しっかりと焼き込んでいる。

皮のサクサク感と香ばしさを引き締めて調和するのが薬味入りのおろし。

お酢の酸味が利いていて、薬味の爽やかな香りが堪らない。

これらの味付けに負けない初鰹の味わいは、否応なしに江戸ッ子への憧憬を喚起する。

切り付け、酸味、香りなど全てのバランスが良い。

 

天抜き

芝浜天抜き

定番の芝海老真薯の椀ではなく、意表をつかれる。

しかし、これがまた秀逸だ。

いつもより強い鰹出汁の吸い地はキリッと端正で、芝海老とウドの天麩羅が絶妙に馴染む。

全く重たくなく、それでいて油が適度に食欲を刺激してくれる。

しかし、ウドの香りや出汁がスッキリとまとめる。

 

真子鰈の刺身

芝浜真子鰈の刺身

大分産とのことなので、ブランドの「城下鰈」かもしれない(「城下鰈」とは、大分県速見郡日出町の日出城址の目前の海で獲れる鰈だ)。

旨味があり、にゅるっコリコリと食感を楽しませる厚めの切り付け。

そして、付け合わせの煎り酒が白眉。

魚味を全く壊さない煎り酒だ。

塩気や梅の酸味や日本酒のコクなどが穏やかに調和している。

過去に頂いた煎り酒の中でも問答無用に一番美味しい煎り酒であった。

 

番付皿

芝浜番付皿

これはネーミングも構成も良い。

江戸時代の料理番付の料理を合わせた一皿で、見た目は渋いが、味は考えられていて楽しくなる。

むきみの切り干し大根、田作と青柳入りのきんぴら牛蒡、玉子焼き。

きんぴらに田作が入ることで、苦味みと香りがアクセントになる。

青柳とは珍しいが、甘みと旨味が実に良い。

これは『日用惣菜爼』(1836年)に登場する料理で、きんぴらに青柳を入れるとは面白い発想だ。

現代人には思いつかないので、温故知新を地で行く再構築である。

玉子焼きは芝海老の甘みと香りで食わせる玉子焼きだ。

甘みを付けていないので玉子と芝海老の甘みが印象深い。

食感や味覚のバランスが良く、今後の名物になるであろう一皿であった。

 

サクラマスの焼きもの、コシアブラ

芝浜サクラマスの焼きもの

付け合わせは木ノ芽酢。

時期的に「トキシラズ!?」と思うほどの脂の乗ったサクラマスであった。

炭火で香ばしく焼き上げていて、美味しい。

コシアブラはサッとゆがいただけで、これは面白い試み!

香りが良く、軽い苦味がサクラマスの脂をサラッと流す。

 

サクラマスの肝煮

芝浜サクラマスの肝煮

苦味と香りが良い。

臭みは無く、実に魅力的な酒肴だ。

 

鹿のすね肉の味噌煮込み

芝浜鹿のすね肉の味噌煮込み01

柔らかく仕込んだ鹿のすね肉を、じっくりと味噌出汁で煮詰めて提供される。

芝浜鹿のすね肉の味噌煮込み02

次第に濃密になってゆく光景に食欲を刺激される。

芝浜鹿のすね肉の味噌煮込み03

いざ頂いてみると、味わいは決して濃くなく、江戸味噌と鹿の軽い酸味が後を引く。

芝浜鹿のすね肉の味噌煮込み04

海原さんの鹿使いと江戸味噌使いには学ぶところが多々ある。

 

土鍋炊きご飯、香の物

芝浜土鍋炊きご飯

久々にお伺いすると、他店とはレヴェルが異なる美味しさであることがハッキリと分かる。

冒頭に書いた通り、日本3指に入る美味しさの土鍋炊きご飯だ。

芝浜土鍋炊きご飯02

最後に【鹿のすね肉の味噌煮込み】を掛けて頂く。

甘みも脂も極控えめなので、見た目とは裏腹にスッキリと頂ける。

 

水菓子

芝浜水菓子

「小豆を煮ただけ」とのこと。

しかし、魅力的な水菓子で、重たくなく、印象深い。

ホロッと炊いて、甘みを極控え目にしている。

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2021年9月上旬:スッポンを使用したコース

次に、9月上旬に頂いたスッポンを組み込んだコースをご紹介します。

江戸前芝浜

スッポンオンリーのコースではなく、部分的にスッポン料理を組み込んだ魅力的なコースです。

 

コース内容の概要については、こちらです。

  • 先付:煮豆、江戸甘味噌
  • 焼き茄子
  • 蓮根、銀杏
  • コチの天麩羅
  • スッポンのコンソメ
  • コチの造り
  • 椀:芝海老
  • スッポンの煮ざまし
  • スッポンのスープ
  • スッポンと葱
  • 鯛の香の物寿司
  • 【追加】芝海老真薯と盛り芋
  • お食事:ご飯、鶏の唐揚げ、芝海老と穴子の出汁巻き玉子
  • 留椀、香の物
  • 水菓子:利休卵

前回と重複するお料理は割愛いたします。

 

焼き茄子

江戸前芝浜焼き茄子

茄子の甘みを引き出している。

食感はトロトロで、皮の焦げた香ばしさが上品に移っている。

 

蓮根と銀杏

江戸前芝浜蓮根と銀杏

走りの銀杏をほんのりと冷えた状態で提供するのが面白い。

甘みともっちり感があり、苦味の余韻が酒肴になる。

 

コチの天麩羅

江戸前芝浜コチの天麩羅

マゴチの天麩羅は珍しいが、厚みがあり旨い。

 

スッポンのコンソメ

江戸前芝浜スッポンのコンソメ

スッポンを使用している割に意外にもスッキリ味で、正に「コンソメ」。

スッポンの香りは強めで、冷製ながらに野趣があって面白い。

味わいは上品に、香りはワイルドに、攻めている料理。

 

コチの造り

江戸前芝浜コチの造り

出汁酢頂く。

天麩羅と明らかに異なる味を楽しませてくれるのが嬉しい。

 

椀:芝海老

江戸前芝浜椀:芝海老

この度は芝海老しんじょではなく、そのまま使用!

吸い地に海老の旨味、甘み、香りが出て、まろやかな印象になっている。

バランスの良い秀逸な椀。

 

スッポンの煮ざまし

江戸前芝浜スッポンの煮ざまし01

これは白眉!

冷製ながらに「肉」っぽい繊維質とトロトロ感を両方楽しませてくれる。

臭みは皆無。

造り以外だと温かい料理が多いスッポンで、新たな表現に成功されていて感銘を覚える。

合わせる「味噌たまり」との相性もバッチリ。

江戸前芝浜スッポンの煮ざまし02

以前、鹿肉の調理でも感じたが、海原親方は煮汁を用いた火入れと冷ました際の食感の表現に非凡なセンスをお持ちだ。

 

スッポンのスープ

江戸前芝浜スッポンのスープ

ゼラチン質が溶ける前の温度帯で作ったスープ。

よって、トロトロ、ペタペタ感は無い!

スッポンの旨味のみ抽出されていて、これも印象深い。

前半のスッポンのコンソメとの対比が印象を強める。

 

スッポンと葱

江戸前芝浜スッポンと葱

最後のスッポン料理は、いかにもスッポン!な小鍋仕立て。

スッポンのゼラチン質が抽出されたツユは「スッポンを食べたな〜」と言う満足感を急激に高めてくれる。

それでも味付けが良く、スッキリした食後感。

 

鯛の香の物寿司

江戸前芝浜鯛の香の物寿司

バシッと〆た鯛と香の物を合わせた寿司で、郷土寿司的な味わいがある。

香の物のバリエーションで味がガラリと変わりそうで、面白い。

 

【追加】芝海老真薯と盛り芋

江戸前芝浜芝海老真薯と盛り芋

盛り芋はマヨネーズを用いない、お酢で作るポテトサラダ。

シンプルな中に味わい深さがある。

芝海老真薯も甘みがジューシィに横溢する

 

お食事:ご飯、鶏の唐揚げ、芝海老と穴子の出汁巻き玉子

江戸前芝浜ご飯、鶏の唐揚げ、芝海老と穴子の出汁巻き玉子

「江戸前芝浜さんらしさ」は無いけれど(笑)、問答無用に美味しい唐揚げ。

移転前はこれを求めてくるお客さんもいたとか。

未食だったので頂けて嬉しい。

素晴らしく美味しい海原さんのご飯と、芝海老の出汁巻き玉子と頂く喜び。

 

水菓子:利休卵

江戸前芝浜利休卵

砂糖を加えることで水菓子(デザート)に仕上げている!

胡麻の香りがしみじみと余韻に浸らせてくれる。

 

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2021年8月上旬:スズキの丸焼きコース

8月上旬に頂いた【スズキの丸焼きコース】について、ご紹介します。

【スズキの丸焼きコース】の概要については、こちらです。

  • 先付:煮豆、瓜の糠漬け、江戸甘味噌
  • 蓮根の海苔酢和え
  • 小茄子の南蛮煮
  • 鮑の薄造り
  • 鮑の肝とキュウリ
  • 椀:芝海老真薯
  • コチの湯洗い
  • 白瓜の山椒和え
  • 茄子の椀
  • 鱸(スズキ)の丸焼き
  • お食事:コチ飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ
  • 水菓子:梅甘露煮

前回と重複するお料理は割愛いたします。

 

蓮根の海苔酢和え

蓮根の海苔酢和え、小茄子の南蛮煮

軽い酸味が蓮根の甘みを引き立たせ、見事!

このような素朴な調理、調味で、「家庭っぽさ」を排除して「プロの味」に仕上げている点が海原親方の凄みである。

【小茄子の南蛮煮】については、南蛮=青唐辛子を用いたピリ辛味の含ませ方が巧い。

行きすぎない辛味が青唐辛子らしく、日本の夏を感じさせる。

夏はカレーも食べたくなるが、あの辛味は日本の夏の辛味ではないのだ。

絶妙な味なのに、親方は「お酒、醤油、青唐辛子で煮ているだけです」といつも通りの朴訥としたご返答!(粋)

 

鮑の薄造り

江戸前芝浜鮑の薄造り

これは素晴らしい。

中心部は薄く切っていて、非常に柔らかい。

周辺部には生鮑らしいコリコリ感がある。

つまり、包丁で柔らかく仕上げつつ、生らしい食感も活かす切りつけ。

そして、香りとゼラチン質の両方を感じさせる切りつけと温度帯で、秀逸。

こう言った調理法こそ、プロの料理人の方に知って欲しい。

「鮑を柔らかくする方法」と言えば「加熱」が正義の世の中。

生でありながら柔らかく、香りとゼラチン質を満喫させる包丁の仕事は海原親方の非凡なセンスを感じさせてくれる。

 

鮑の肝とキュウリ

江戸前芝浜鮑の肝とキュウリ

これまた涙が出そうになった。

素晴らしい取り合わせである。

香りの妙があり、肝を爽やかにまとめてくれるのがキュウリと言う潔さ。

肝に油脂を加えることが一般化されているところ、真逆を行く、実にケレン味の無い調理で実に爽快だ。

 

コチの湯洗い

江戸前芝浜コチの湯洗い

切りつけと軽い火入れによって、コチのしっとり感とむっちり感の両方を活かしている。

淡白な白身魚の魅力を引き出せる料理人は、凄腕ではなかろうか?

薬味は梅干し、針生姜、大葉。

和えている梅干しと針生姜についてはコチの香りを決して殺さぬ配慮がされている。

調味料は自家製の煎り酒で、言わずもがなの相性だ。

 

白瓜の山椒和え

江戸前芝浜白瓜の山椒和え

白瓜、蒟蒻、ミョウガを和えて爽やかに。

 

茄子の椀

江戸前芝浜茄子の椀

蕎麦汁で食べさせる茄子とは、嬉しい。

 

鱸(スズキ)の薬味和え

江戸前芝浜鱸(スズキ)の薬味和え

2キロの鱸を串打ちして、炭火焼きされていて、ワイルドすぎる。

身をほぐし、皮や浮き袋なども混ぜて、蓼酢と和える。

江戸前芝浜鱸(スズキ)の薬味和え02

こうすることで蓼酢とスズキの脂が程良く乳化する。

しかし、あくまでも爽やか。

スズキで乳化が強いと、あまりにも無粋ってもん。

蓼酢とスズキの相性に驚く。

ほぐし身ながらスズキらしい身の肉感と脂ならびに香りを楽しませてくれる。

炭の香ばしさも得も言われぬ媚香。

骨一本も当たらず、労作である。

 

お食事:コチ飯、コチの出汁スープ、薬味

江戸前芝浜コチ飯

【コチ飯】は、コチのそぼろに山葵と味噌を合わせている。

最初はそのまま頂き、途中、出汁スープを掛けてサラッと頂く。

いやあ、旨い!

 

おかわり

江戸前芝浜おかわり

削りたての本枯節ご飯。

 

水菓子:梅甘露煮

江戸前芝浜梅甘露煮

梅甘露煮は甘み、酸味、香りが絶妙なバランス。

 

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2021年6月下旬:芝海老と白鱚のコース

6月下旬に頂いた【芝海老と白鱚のコース】について、ご紹介します。

コースの内容

  • 先付:むきみ切り干し、煮豆、瓜の糠漬け
  • サザエの梅肉和え
  • サザエの肝
  • 椀:芝海老真薯
  • 鰹の下駄造り(タタキ)
  • 白鱚と芝海老の薬味和え、小茄子、芝海老の玉子焼き
  • 芝海老の肝
  • 小鰭の天麩羅
  • 白鱚の天麩羅
  • 芝煮
  • お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ
  • 水菓子:山桃、白玉

 

むきみ切り干し、煮豆、瓜の糠漬け

江戸前芝浜むきみ切り干し、煮豆、瓜の糠漬け

【むきみ切り干し】は貝の出汁で炊く切り干し大根。

前述の「江戸料理番付」では、「関取」だ。

この度は浅蜊の出汁で炊かれている。

頂くと、歯ごたえと香りが良く、確かにコハク酸特有の旨味を感じる。

煮豆は大きな大豆が嬉しく、甘くて香りが良い。

糠漬けも爽やかな香りで、美味しい。

実に嬉しくなる先付。

派手な先付よりも、一見すると地味ながら工夫が感じられる先付の方が格好良いものだ。

 

サザエの梅肉和え

江戸前芝浜サザエの梅肉和えサザエは食感がゴリッゴリ!なところと柔らかいところがあり、頂いていて飽きが来ない。

柔らかい部位は甘みが強い。

磯の香りは上品。

梅肉と針生姜が涼を誘う。

 

サザエの肝

江戸前芝浜サザエの肝

肝はバッチリ火を入れていないところが洒脱で、軽くトロトロして滑らか。

そして、香りが良く、苦味はごく軽い。

山葵はもちろん抜かりなく本山葵なので、甘みと香りを楽しめる。

 

椀:芝海老真薯

江戸前芝浜椀:芝海老真薯01

目が覚めて、優しい気持ちが満ち溢れる、そんな椀だ。

江戸前芝浜椀:芝海老真薯02

鰹出汁の吸い地は旨味、香り、塩気が全く行き過ぎることなく穏やかにピタッと調和している。

それ故に淡くとも鮮烈な印象を抱き、深い満足感に耽溺する。

椀種も潔い。

芝海老真薯のみで、椀妻も吸い口も不使用だ。

よって、芝海老の味わいに浸る事が出来る。

芝海老の甘みと香りに陶然となり、心地良い弾力を楽しませる。

これぞ、足すものも引くものも無い、完成された椀ではないだろうか?

 

鰹の下駄造り(タタキ)

江戸前芝浜鰹の下駄造り(タタキ)

大根おろし、大葉、白髪ネギで和えた鰹のタタキ。

鰹は随分と脂が乗っており、驚いた。

鰹の脂と香りと酸味を全て楽しめる調理法。

皮なしなので炙りの香りは穏やか。

柑橘を用いずにお酢で酸味を加えている点が江戸料理らしい気がする。

 

白鱚と芝海老の薬味和え、小茄子、芝海老の玉子焼き

江戸前芝浜白鱚と芝海老の薬味和え、小茄子、芝海老の玉子焼き

白鱚と芝海老を交互に味わう楽しみがある。

白鱚はみっしりしっとりした食感で、芝海老も大変良い食感。

決してトロトロではなく、むちっむちっとろり。

実に甘い。

また、鰹出汁と茗荷の香りも魅力的。。

芝海老の玉子焼きは卵の甘みと芝海老のホロ苦味が面白いバランス。

 

芝海老の肝

江戸前芝浜芝海老の肝

鮮度が高い日しか頂けない、ラッキーアイテム。

臭みは全くなく、甘みすら感じる肝だ。

 

小鰭の天麩羅

江戸前芝浜小鰭の天麩羅

非常に珍しい、サプライズ料理!

小鰭は鮨の花形だが、天麩羅も一興。

しっとりホロホロした繊維質で、香りは鮨よりも穏やかながら楽しませてくれる。

当然〆ていないので瑞々しさがあり、それを天麩羅で閉じ込めている。

 

白鱚の天麩羅

江戸前芝浜白鱚の天麩羅

肉厚で、ホロホロ。

小鰭とのコントラストが良く、全体的に構成の妙を感じる。

 

芝煮

江戸前芝浜芝煮

芝の郷土料理である【雑魚鍋】を上品にアレンジ。

海原さんが「5年の集大成」と表現する御料理だが、そのお言葉は過言ではない。

芝海老、白鱚、三ツ葉が絶妙な相性。

芝海老の甘みと白鱚の上品な味わいをともに楽しませてくれる秀逸な鍋に仕上げられている。

江戸前芝浜芝煮02

これまた吸い地が良く、まろやかでありながら端正。

芝海老と白鱚の知られざる表情を見せてくれる【芝煮】に身も心も満たされる。

 

お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ

江戸前芝浜お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ

本当に美味しい白ご飯である。

江戸前芝浜白ごはん

香りに心奪われ、甘みに陶然…

味付け無しでもご馳走になってしまう。

江戸前芝浜芝海老おぼろ

とは言え、付け合わせの芝海老おぼろが嬉しい。

芝海老で固めているところが徹底していて心ニクい。

芝海老づくしのコースを頂けるお店なんて、そうそう無い。

 

水菓子:山桃、白玉

江戸前芝浜水菓子:山桃、白玉

白玉は粉の品質が良く香り高い。

山桃の味付けも控えめで、水菓子ですらギリギリを狙っているところがストイック(笑)

 

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「江戸前料理 芝浜」の立地と雰囲気

港区の芝公園駅が最寄りです。

芝公園と聞くと、東京タワーや増上寺のイメージで、超ハイソなエリアだと思われるかもしれません。

しかし、「江戸前芝浜」のあるエリアは落ち着いた昔ながらの商店街のある住宅地です。

気を張る事無く伺えます。

 

とは言え、リニューアル後のお店は外観も内装も大変スタイリッシュです。

江戸前芝浜外観

暖簾は福田浩さんの奥様が作られたとか。

素敵ですね。

 

店内はカウンター7席、4人掛けテーブル2台で、広々としています。

江戸前芝浜内観

さらには2階に大座敷もあるそうで、驚きました。

「太華」の頃はこじんまりしていたので。

 

聞けば、もともとは昔ながらの街場中華だったそうですが、コロナでお店を畳まれたため、物件が出たとのこと。

一等地で優雅な間取りなので、海原さんに天が味方したように思います。

江戸前芝浜内観02

店内奥には「江戸料理番付」が貼られています。

江戸前芝浜江戸料理番付

なかなか読みづらいとは思いますが、ご関心のある方は必見です!

この中からも御料理が登場するので、歴食好きには堪らないかと思います(笑)

「江戸前料理 芝浜」のお店情報と予約方法

WEB予約については、ヒトサラ経由で可能です。

江戸前芝浜(ヒトサラのリンク)

 

江戸前芝浜(食べログのリンク)

店名:江戸前料理 芝浜(えどまえりょうり しばはま)

予算の目安:芝浜コース15,000円(税込)

TEL:03-3453-6888

住所:東京都港区芝2-22-23

最寄駅:芝公園駅から200m

営業時間:17:00~23:30 (L.O.21:00)、お昼は2営業日前まで予約制で可能:火・土・日・祝12:00~15:00(L.O.13:00)

定休日:木曜

 

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【江戸料理に関するオススメの書籍】

文中でご紹介した福田さんの3冊

 

また、江戸料理や江戸の食文化に関心のある方には、下記の本も非常にオススメです。

 

江戸料理好きを増やしたい、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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