こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
さて、宮城県の内陸部、大崎市の古川にある「寿し扇」さんは昼と夜で全く異なる顔を持つ鮨店です。
2021年頃からお昼限定で息子さんが握られていて、内陸部の当地にあって驚くべき江戸前鮨を頂けます。
この度、お電話で「地魚中心でお願いします」とお伝えしたところ、100%宮城県産の魚介類を仕入れてくださり驚きました。
魚だけでなく、米はもちろん、調味料も県産にこだわる徹底ぷり。
宮城県の鮨好きの方の応援で更に伸びるはずなので、是非とも訪問してみてください!
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お店は仙台から車で50分ほどの大崎市にあります。
歴史を感じる外観から「街場の名店感」を感じます。
そして、内観も同様です。
実に昭和の街場のお店らしい雰囲気で、これは今の時代に逆に貴重です。
テーブル席もあり、そちらはスタイリッシュにまとめられているので、若い方の利用も全く問題ない雰囲気です。
地方の「街場の名店」の場合、激シブで若い人が躊躇するケースが多いので、これは貴重だと思います。
3年前から2代目の室井 政樹さんの昼鮨を始めたそうですが、当時は周囲から「2,000円でも客は来ない」と言われたとの談。
鮨の価値を分かる人であれば現在の5,500円、7,700円、11,000円でもお値打ちだと分かるはずですが、僕も田舎出身なので、極めてチャレンジングな試みだったと推察します。
今回頂いて、よくも腐らずにここまでされた…と称賛を覚えるばかりです。
味の分かるお客さんが訪問するようになれば、仕入の回転率が上がり、親方がやりたいことを出来るようになり、更に美味しくなっていくのは間違いないと確信します。
冒頭に書いたとおり、息子さんはお昼のみ担当されていて、お父様の鮨とは全く変えて精進されています。
シャリ、山葵、醤油の全てが違うそうなので、業態としてユニークです。
醤油はお店から車で20分弱の「鎌田醤油」のものを使用。
そして、お酢は宮城県唯一の醸造蔵である、柴田町の「奥野醸造」さんのものを使用されています。
醤油、お酢ともに、単に「県内産を使いました」ではなく、それぞれの蔵が上質なものを造られているのが素晴らしいです。
お酢は2種類ブレンドされていて、【結び酢】は酒粕が原料の赤酢で木桶仕込み、【純米酢】は無農薬栽培米を使用を原料にどぶろくを作り酢酸発酵を行い、木桶で100~120日間ほど「静置発酵」させている模様。
製法的に全国的に見ても貴重な蔵だと感じます。。
そして、お米は宮城県らしくササニシキを使用されていて、有機栽培。
12時間の低温長期浸漬を行い、羽釜と竈で炊いているそうです。
羽釜と竈は昼営業のために自分で購入されたそうなので、熱意に乾杯です。
このようなこだわりから生み出されるシャリは酢の旨味と香りが上品に活きていて、甘味のある味付け。
最初に酸味がふわっと漂い、塩気は穏やか。
米が粒立ち、もっちりしていて、少しだけ硬めに炊きつつ気にならない範疇にまとめています。
温度や硬さはバッチリで、ぱらりとほどけます。
味付けの面では東京のお店とは全く異なりますが、僕は前々から述べているとおり、シャリには土地の味があって良いと思います。
当地の魚介類の味、仕事、郷土の味覚に合っていれば、あとは食べ手の好みと食の経験の幅に依拠するのみ。
職人さんは自分が美味しいと思う道を歩めば良いと思います。
「寿し扇」さんの息子さんのコースについては、上記の通り3種類。
5,500円、7,700円、11,000円です。
僕は真ん中の7,700円のコースを頂きました。
鮪の眼の下の肉とのことでレア部位だ。
産地は塩竃。
驚きの食感で、ぷるぷる、しっとりしていて、馬刺のようだ。
気になる癖は無し。
産地らしさとサプライズを兼ね揃えた先付である。
ガリはお父様と同様のようで、クラシックタイプ。
石巻産で、塩と酢橘で提供。
むっちり、とろとろした食感と強い甘味を楽しめる。
漁獲量が少なくなっているだけでなく、漁師も少なくなっているそうなので、レアとの事。
むっちりした食感から香りと甘味が広がり、これは旨い。
毛蟹なので県外産だと思ったが、なんと石巻産であった。
提供の流れが良く、香りや旨味の方向性が蝦蛄の後に自然だ。
気仙沼産。
漬けでねっちり、とろりとした食感に。
旨味を楽しませた後に酸味が広がる。
すりおろし生姜はクラシックな方向性で、香りと辛味がハッキリと伝わる。
なんと漬け込みとは嬉しい。
火入れで香りと甘味を引き立てている。
そして、火を加えつつしっとり、ホロホロとほどける食感。
香りが実に良い。
むちむち、プチプチと食感が気持ち良く、旨味と脂が強い!
なので、おろしと合わせても味を楽しめる。
キンキ自体の味が淡いと大根が勝ってしまっただろう。
肉厚で味が濃い太刀魚だ。
これも地物との事だが、人気の産地、千葉県竹岡とも戦えるサイズ感と味だ。
酸味がありつつ旨味も感じる中トロで美味。
シャリはぱらぱらかつ温かい。
トロのタイミングでシャリ交換をされるとは、東京の人気店並の配慮だ。
一線のお店のトレンドを良い意味で採り入れているのは秀逸である(悪い意味で採り入れると、似たりよったりな仕事になる)。
甘味を付けた煮キリも嫌味なく調和している。
ちなみに、塩竈は鮪の名産地であるが、手当に配慮する漁師や仲卸は稀有だそうだ。
「やま幸」さんとも取引のある方が「良い手当を行えば、鮪の質が向上し、高値で買ってもらえる」と啓蒙活動をしても、行動を改善すること無く今まで通りのスタイルで鮪を焼けさせるそうだ。
このようなエピソードは産地のお店に行かないと分かりづらい。
寝かせてしっとりした身質。
真鯛については寝かせず、真鯛の香りを活かす方向が正解だと感じた。
時期的に脂が弱い鯛でもあったので、食感と香りを前面に出した方が印象が残るはずだ。
鯛の最大の妙味は香りと食感にある。
これは秀逸なクオリティ。
頂く前から昆布様の香りが強く、旨味もたっぷり。
噛みしめると粒子が濃密で、旨味が込み上げてくる。
産地は閖上ではなく渡波との事!
出会えて嬉しい、旅する喜びとなる一貫。
大トロ寄りの中トロ。
脂が強すぎずコクが強いトロで、酸味もある。
しっとりジューシィな春子。
お酢に10時間ほど漬けているそうだ。
昆布の香りがふんわりと漂う。
終盤での提供ならばバシッと〆て、身から水分を抜き、春子自体の味を引き出す方法もアリだと思う。
殻付きから剥いて使用!
故にピュアな甘味と爽快な香りが楽しめて、口どけも抜群だ。
甲殻類の香りがしっかり。
海老の甘味とまろやかな味噌の甘味が調和している。
みしっとして、ホロホロとほどける繊維質。
臭みは無く、穴子自体の旨さを伝える仕事が良い!
旨い赤貝を頂くと紐も期待するもの。
その心を理解の上、巻物で提供頂けるのは嬉しい限りだ。
こいつぁあ重畳。
当地で干瓢巻きを出される心意気と共に、醤油を効かせて砂糖のコクを活かす味付けも最後に良い。
雰囲気と相まって実に心穏やかになる出汁巻玉子。
「寿し扇」さんは、お電話にて予約が可能です。
地魚中心でお願いしたい場合には、期間に余裕を持ってお電話のうえ、その旨をお伝えしましょう!
ただ、食材との出会いは自身の食運次第である事をご了承のこと…。
店名:寿し扇(すし せん)
シャリの特徴:地元の食材を用い、都会的な方向性でシャリを切り、ご当地らしく甘味を加えたシャリ。
予算の目安:5,500円、7,700円、11,000円
TEL:0229-23-0411
住所:宮城県大崎市古川東町5-47
最寄駅:古川駅から850m
営業時間:お昼12:00~、17:30~22:00(LO21:30) ※昼はコースのみの予約制で、2名から
定休日:日曜
宮城県で魅力的なお店
すしログ No. 341 氏金寿司@登米市(宮城県) すしログ日本料理編 No. 203 千松しま@塩竃(宮城県) すしログ和菓子編 No. 93 賣茶翁(売茶翁、ばいさおう)@仙台(宮城県)
独自の仕入れと仕事を模索する職人さんが大好きな、すしログ(@sushilog01)でした。
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