こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
2022年に関わらせて頂いた広島県を挙げてのプロジェクトが2023年も実施されることになりました。
名称を「瀬戸内じざかな日和」から「瀬戸内さかな」に変えての実施です。
そして、「すしログ」運営者の大谷は「鮨のアドバイザー」として引き続き協力いたします。
当プロジェクトの取り組みとして行われたのが、今回ご紹介する「瀬戸内さかな魅力体験会」です。
これは鮨・魚好きの一般の方にご参加頂き、鮨店で鮨職人、漁業者、そして大谷が「瀬戸内海の地魚を使った鮨の魅力」を伝えるイベントです。
要は「料理人」、「生産者」、「消費者目線で食を解説できる人間」が食の魅力を共同で伝えるコンセプト。
行政主導で行われるイベントとしては、全国的にも珍しい試みだと思います。
是非とも継続的に実施して頂きたい志の高いイベントです。
他県でも実施して頂ければ、日本の食文化が更に深化するのは間違いありません。
結果的にイベントは成功裏に終わりました。
参加者の方々に楽しんで頂き、僕自身、広島の地魚のポテンシャルを実感した次第です!
本記事では、「瀬戸内さかな」プロジェクトの概要と、「瀬戸内さかな魅力体験会」ならびに会場となった「鮨 稲穂」さんの魅力をお伝えします。
ちなみに、本記事の前半部分は少し硬い内容ですが、後半は食レポです(笑)
硬いのが苦手な方は、後半からどうぞ!
※本記事は「瀬戸内さかな」プロジェクトのPR記事となります!
「瀬戸内さかな」プロジェクトには、以下の4つで構成されています。
- 「瀬戸内さかな日和フェア」(一般向け)
- 「瀬戸内さかな魅力体験会」(一般向け) ※今回のようなイベント
- 「#瀬戸内さかな フォトコンテスト」(一般向け)
- 「瀬戸内さかな普及促進協議会」(料理人・市場関係者・漁業者向け)
それぞれについて、簡潔にご紹介します。
「瀬戸内さかな日和フェア」の概要については、以下のとおりです。
- コンセプト:特別なコース料理を期間限定で提供する
- コースについて:旬の「瀬戸内さかな」を4種類以上使ったコース料理
- 実施期間:2023年10月21日(土)~2024年2月29日(木)
- 参加店舗:県内17店舗
そして、「瀬戸内さかな」に協力している店舗は、以下の17軒です。
- 日本料理:白鷹(創業1959年)、喜多丘(創業1974年)、日本料理高山(創業2010年)、季節料理ながせ(創業2013年)
- 鮨:鮨 稲穂、鮨 なか、鮨広島あじろや本店
- 割烹・居酒屋:居酒屋 かめ福、稲茶、海鮮酒場 番屋七宝丸 八丁堀店、かき船 かなわ、正弁丹吾、雑草庵 安芸、日本料理 魚池、半べえ、ひろしま旬彩鶴乃や本店、ホテル広島サンプラザ
着目すべき点は、実力派の個人店も参加されている点です。
行政や◯◯組合が主導のプロジェクトとなると「御用店」ばかりになって消費者(特にグルメ層)のニーズと乖離するケースが多々ありますので、これは素晴らしいと感じます。
温泉街の旅館、ホテルに置いてあるグルメガイドなんて、魅力的である事が稀有ですもんね。
消費者のニーズに合致しなければ文化的隆盛は有り得ず、有るのは現状維持の皮を被った衰退のみです。
実力派の個人店、特に若手から中堅料理人のお店を更に増やして頂きたい、と県にお伝えしました。
美味しい個人店がもっと増える事を願っています!
そして、実力派の個人店の料理人が参加するインセンティブは食材に尽きます。
上質な地魚の入手ルート及び情報流通のルートが確立されれば三方良しとなる筈です。
この点については、後述する「瀬戸内さかな普及促進協議会」が有機的に機能する事を期待しています。
そして、一般の方向けのキャンペーンとして、「#瀬戸内さかな フォトコンテスト」と言う面白い取り組みをされています。
内容については、以下のとおりです。
- 【内容】
指定の「#(ハッシュタグ)」をつけて「対象の飲食店で撮影された瀬戸内さかな料理コースの写真」を投稿、
抽選で毎回1名様、 合計5名様に「瀬戸内さかな詰め合わせBOX」 をプレゼント - 実施期間:2023年10月21日(土)~2024年2月29日(木)
- 応募方法
①瀬戸内さかなの公式インスタアカウント(@setouchi_sakana)をフォロー
②対象店舗で撮影した瀬戸内さかな料理の写真に、
瀬戸内さかなの公式インスタアカウントをタグ付け
③最後に「#瀬戸内さかな」 「#瀬戸内さかな料理」「#撮影した店舗名」 のハッシュタグをつけて投稿 - 応募締切:2023年11月13日、12月14日、2024年1月9日、1月31日、2月29日
次に、「瀬戸内さかな普及促進協議会」について、ご紹介します。
「瀬戸内さかな普及促進協議会」は広島県、料理人、漁業者が意見交換を行い、「鮮度を保つための処置」とともに「新鮮な漁獲物の流通確保」を目指す有識者会議です。
「第1回 瀬戸内さかな普及促進協議会」は既に2023年10月12日に開催されて、第2回は12月8日に開催予定です(次回は、すしログ大谷も参加します)。
参加する漁協は4団体で、漁協の中から10名の漁業者が参加されています。
第1回会議の後、料理人、漁業者の方々は意気投合されて、LINEグループで情報交換を行っていると伺いました。
漁業者と料理人の連携が取れているお店は飛躍的に伸びる事が多々あります。
広島では「広島の地魚は弱い」と思われている状況なので、試みに光明を感じます。
それでは、本記事のメインとなる「瀬戸内さかな魅力体験会」のレポートをご紹介します。
まずは、「瀬戸内さかな魅力体験会」に参加した専門家のご紹介です。
筆者の大谷については割愛しますので、詳細はプロフィールをご参照ください。
鮨職人の三原親方は広島県江田島市のご出身です。
『ミシュランガイド広島・愛媛2018』では「ミシュランプレート」を獲得されました(「ミシュランプレート」とは、星獲得まではいかなかったもののミシュランの基準を満たしている飲食店)。
その後、『ゴ・エ・ミ・ヨ2020』で3トック(15/20)を獲得し、「G7広島サミット2023」においては、県産食材の試食調理(メインシェフ)を担当されました。
三原親方は広島、大阪で和食と鮨の修行を経て、2014年3月に独立された方です。
2017年3月に移転し、さらに2022年11月に再び移転されました。
僕が最初に訪問したのは2021年9月ですが、そこから考えても飛躍が目覚ましい方です。
鹿川漁協の漁師、野村 幸太さんは、三原親方と同じく江田島市のご出身です。
底びき網漁をされています。
もともとは会社員だったそうですが、お子さんが5人いるため、稼ぐために漁師に転身されたそうです。
30代前半で転身し、現在38歳。
各地で漁師の高齢化、引退問題を伺うので、頼もしい限りです。
会社員で疲弊している若い方に希望を与えてくれる漁師さんではないでしょうか?
そして、ゲストスピーカーとして参加されたのが、食材生産者「勝梅園」の中田 勝元さんです。
中田さんの本業は鉄鋼業ですが、大変ユニークな事にバナナの生産や、鰻と海老の養殖をされています。
僕はかつて見学に伺った事がありますが、規模の大きさに驚いたものです。
それでは、「瀬戸内さかな魅力体験会」で頂いた「鮨 稲穂」さんの「広島鮨コース」について、ご紹介します。
驚くべき事に、三原親方はカウンター+個室の合計17名を一人で回されていて、圧巻でした。
素直に驚きました(笑)
なお、鮨の生命線であるシャリについては、過去から大きく改良されています。
初訪問時には、お酢は4種類ブレンドで、後藤商店、ヨコ井の輿兵衛、米酢、穀物酢と伺いましたが、現在は2種ブレンドに絞り、後藤商店と尾道造酢のみ。
さらに、砂糖の使用量を大幅に減らされつつ、広島らしくまろやかな味わいのシャリを切られています。
今回は17名と言う大人数だったので、切り付けや握りの形状が不安定でしたが、味のレヴェルでは問題無し。
通常営業時に、より美しい切り付けとシャリの温度管理の精度を上げられると、さらに美味しいお店となる筈です。
三原親方は改善されて今に至るので、間違い無く今後も伸ばされると思い、敢えて記載いたします。
この度頂いたお酒
- 賀茂鶴酒造 大吟醸 双鶴賀茂鶴(山田錦・32%)
- 天寶一 広系酒45号 純米(広系酒45号・麹60%・掛70%)
- 木屋正酒造 而今
- 亀齢 辛口純米
広島県産のわけぎを使用した、広島の郷土料理【ぬた】のアレンジだ。
使用している魚が非常に魅力的で、メンパチ(ヌブト)とヨリエビ。
一品目から広島瀬戸内らしい先付は嬉しい。
これらは漁師・野村さんの底引き漁による。
ぬたに混ぜられている焼き茄子のスモーキーフレーバーが素敵なアクセント。
味付けも甘味が控えめで、海老自体の甘味を楽しませる良き設計だ。
野村さんの鱧。
時期的に世間では「名残」とされるものの、実に旨い!
吸い地は鯛と鱸のアラと昆布。
鱧は宮島沖の水深60~70メートルで獲ったもの。
とにかく鱧が印象深く、喉で旨いと感じる程だ。
吸い地は一口目では昆布が強めに感じたものの、魚介の旨味と共に味わいが高まり最後にしっくりした印象に落ち着く。
これは鱧の味わい深さ故だろう。
蕪も柔らかく、吸い地に調和する下味が付けられている。
次の刺身の醤油皿には宮島大鳥居の模様が映える。
上がさっき〆の魚体で、下には朝から寝かせた別の魚体のもの。
非常に魅力的な食べ比べだ。
〆たばかりでも凄いパンチがあり、味わい強い。
むしろ、寝かせたものはこなれている。
嬉しい食べ比べだ。
イベントの直前に搬入された。
この鯛は鱸と同じく、開店直前に〆たもの。
とにかく香りが素晴らしい。
歯ごたえも良い。
三原親方は熟成も駆使される職人さんだが、この鯛には敢えて熟成を行わない選択を採られている。
この試みは素晴らしい。
産地のアドバンテージを最大限活かし、純然たる「生」でも十分に美味しく、むしろ東京では味わえない楽しさを与えてくれる選択だ。
違いが分かる人間ならば口に運んだ瞬間に笑顔となるだろう。
何も奇抜な調理や調味を行わずとも、本質的な美点は人に伝わるものなので、時代の流行りに流される必要は皆無だ。
穴子も広島県産で非常に嬉しい。
なにせ広島県は穴子が大漁で、過去には羽田の江戸前穴子の代わりとなる存在として助けていた事さえあるが、今や大不漁となっており、東京と同じく対馬産と韓国産が主流となっている由。
強い甘味が舌を喜ばせる。
薄切りの穴子刺しとは全く異なる妙味がある。
さらに、皮目の臭みが無く、それでいて穴子の香りを引き出す調理が魅力的だ。
300~400グラムの大型の穴子ながら骨切りが奏功していて、強い甘味を楽しませつつ骨が障る事が無い。
これは三原親方ならではな逸品だ。
「勝梅園」さんの250~300グラムの鰻を使用。
これは調理法が実に良い。
「あて」もしくは「焼き魚」をイメージして、地焼きにする選択だ。
脂と香りを楽しませ、バリバリ食感の皮も参加者を魅了した。
また、食欲が高まる提供方法とタイミングであるのも心ニクい。
島根県産で、口直し的な存在。
極細の針生姜を加えている点が嬉しい。
味付けは甘味が極弱く、酸味も良い塩梅。
飲めるように調整されているそうだ。
出世魚である鰤の広島での呼び名で、ヤズと呼ばれるサイズは30~40cm程だ。
中国地方の郷土寿司である【うの花きずし】のように〆ているが、酸味は無く、むっちりした食感から旨味と脂が広がりつつ、魚自体の酸味が後味を引き締める。
酢は洗いのみとの事だ(サッと酢にくぐらせる意)。
野村さんの広島県産。
江戸前鮨の定番鮨種「春子(カスゴ)」と思って口に運ぶと、予想外に濃厚な味わいの鯛だ。
…と思いきや、魚体が800グラム。
ベタ塩で10分〆て味わいを凝縮している。
広島県産。
プリプリ、パツパツの食感を楽しませる嬉しいアタックから、脂よりも上品ながら広がる旨味を楽しませる鯵だ。
山口県産のブランド鰆の「サワライダー」、広島でも非常に有名な鰆だ。
脂がノリノリの鰆で、炙ってパンチ力を上げている。
鮪が獲れない海域の江戸前鮨店は、何が何でも鮪を使う必要は無く、あくまでもコースの味覚的構成を意識してタネを選択すれば鮪が無くても満足度は高まるものである。
特に一番の悪手が、地方の江戸前鮨店で豊洲の高級仲卸から鮪を引っ張るケースだ。
「結乃花」さんのように地方の鮨店とも公平な取引をされている仲卸ならば話は別だが、クオリティが低い鮪を高値で流す仲卸ならば敢えて引かず、他の地魚にコストを回した方が圧倒的に正しい。
職人さんも消費者も双方嬉しい結果となる。
広島県産。
北九州の某店を意識し過ぎたフォルムだが、味わいは完全に異なる。
アオリイカを用いつつパツパツした食感を冒頭に配置したかと思えば、パツパツした反発がほぐれ、甘味と共にとろとろな方向性にシフトする。
アオリイカの表現としては非常に面白い。
だからこそ、某店を意識せずとも良い。
せめて錦胡麻ではなく金胡麻など、見た目が異なり、それでいて更に美味しい胡麻に変える事でイメージが良くなるはずだ。
広島県産。昆布〆にしつつ、食感をみっちりさせ過ぎず、旨味を強く乗せている。
ただ、昆布の香りはそこまで強くなく、ホウボウの味を破壊していない。
1時間ほどの〆。
「鮪の大トロ代わりのタネ」との事で納得だ。
親方の試みも、筆者が鰆で実感した事に等しい。
とは言え、肝の脂がガッツリ来ない点が良い。
白身の味わいの後に脂が調和していく塩梅だ。
「マヨネーズご飯」のように脂過多なカワハギの仕事は、江戸前鮨においては無粋と言わざるを得ない。
仕事は漬け(煮キリに漬け込む江戸前仕事)。
産地は萩沖。
漬けで食感をねっちりさせて、さらに鰹の脂を封じ込めている。
噛み締めると味わいが変化し、旨く、それでいてサッパリと食後の余韻を楽しませる。
呉市下蒲刈産の養殖バナメイエビ。
食感がぷりぷりしていて、甘い。
バナメイで生とは面白い。
アラ汁に江田島の味噌を使用した味噌汁。
椀種は、ナメコ、わかめ。
東京の江戸前鮨の椀は潮汁、吸い物、赤出汁が主流だが、地方では地元の味噌を味わわせる「お国自慢」が楽しいと感じる昨今。
その上で重視して欲しいのがベースの魚介の旨味および香りと味噌のバランス。
三原親方は甘味がある味噌とアラを用いて濃密な味わいにまとめている。
広島県産の穴子と三國屋の最高級海苔の組み合わせ。
穴子はホロホロで下味が穏やかな点が特徴的。
江戸前鮨が長い筆者は穴子に海苔を合わせて成功しているケースの方が少ないと実感しているが、三原親方のものはバランスが良い。
穴子の甘味が低いところに海苔の香りとパリパリ感を加え、穴子の味わいをじんわりと長く楽しませる。
甘味がある出汁巻き玉子で、ほっこりする味わい。
会場となった「鮨 稲穂」さんのお店情報は以下のとおりです。
WEB予約については、ぐるなび経由で可能です。
店名:鮨 稲穂(すし いなほ)
シャリの特徴:広島の赤酢2種類をベースにしたブレンドで、まろやかな味わいを志向するシャリ。
予算の目安:ランチ6,600円、おまかせ14,300円
TEL:082-545-5458
住所:広島県広島市中区胡町5-7 ウィンザービル 2F
最寄駅:胡町駅から85m
営業時間:火18:00~23:00(L.O.22:00)、水~日12:00~14:00、18:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:月曜
本記事に関連する記事については、以下のとおりです。
「鮨 稲穂」さんについては、個別記事も書いています。
いざ、広島を代表する江戸前鮨店へ!「広島鮨」を目指す「鮨 稲穂」「瀬戸内じざかな日和」レポートNo. 1:「瀬戸内じざかな日和」とは?「鮨 広島あじろや」のレポート 「瀬戸内じざかな日和」レポートNo. 2:市場見学・座談会・パネルディスカッションのレポート 「瀬戸内じざかな日和」レポートNo. 3:広島の江戸前鮨の現状と地域グルメを活性化する方法
ほぼ独学で人気店を築いた功労者「壮士」さん
広島で最高の人気を誇る広島流の江戸前鮨!「壮士」オープン直後に広島の食通から愛される「京橋 鮨 松」さん
広島の鮨シーンを盛り上げる気鋭の職人!「京橋 鮨 松」鮨のことを考えるのが大好きな、すしログ(@sushilog01)でした。