
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
千歳船橋で人気を博した「鮨 一喜」さんが渋谷に移転されました。
移転情報は親方のインスタで知り、クラウドファンディングを行うとの談でしたので、公開日にすぐに支援を行いました。
結果的に、脅威の支援を集められて心から驚きました。

クラウドファンディングの実績はさて置き、親方の仕事にはオリジナリティが光ります。
鮨好きならば訪問すべきお店であり、魚の活かし方に個性がある鮨店です!

ちなみに、クラウドファンディングの支援額は利益ではなく売上です。
プラットフォームの手数料も高額なので、「支援額=利益」として見ないようご注意ください笑

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「鮨 一喜」は親方の喜代永 隆文さんが、2020年に開業された鮨店です。
僕は2021年5月に友人のお誘いで初めてお伺いして、2022年4月に再訪したところ魅力をさらに高めておられ、実力派の職人さんだと感じました。
そして、2025年2月に渋谷へ移転された次第ですが、さらに独自の世界を確立されていて、魚の仕入れ先も広げておられ、魅力的な鮨店だと再認識しました。
移転後の「鮨 一喜」さんに訪問して感銘を覚えたポイントは、魚の活かし方です。
長井漁港の長谷川さん、今治の藤本さんなど、有名な漁業関係者から仕入れるだけでなく、魚を活かす手法にセンスが光ります。
例えば、喜代永親方は魚の皮を極薄く引いて鮨種へと昇華されます。
ネガティブな要素は一切なく、魚味を活かすテクニックは素晴らしいと実感しました。
魚の個性は皮目に表れるので、魚好きとしては嬉しい手法であり、他の職人さんにも良い影響があるであろう、鮨業界で意欲的な試みだと感じました。

特に、長谷川さんの金目鯛の活かし方には目を瞠るものがあり、今までに有名店を含む様々なお店でいただいた中でも、トップクラスの使い方だと感じました。
詳しくは後ほどタネごとの解説をご参照ください。
そして、鮨の生命線であるシャリは初期に比べてもはや別物で、全てのタネに抜群に馴染む唯一無二のシャリです。
塩気も酸味も穏やかながら、酸味がふわっと立ち、タネに障らないシャリです。
当初は砂糖不使用で酸味が結構強く、再訪時には酸味を落とされていました。
しかし、時が経ちリニューアル後にいただいたシャリはオールマイティな方向にシフトさせつつ、それでいて「ご飯」ではなく「酢飯」として魚を活かす確かなシャリで、バランス感覚が良いと感じます。

移転リニューアル&クラウドファンディングで新たな客層を獲得された喜代永親方。
人気はうなぎのぼりですが、ブレずに着実にご自身の鮨を高めていかれる職人さんなので、今後が大いに楽しみです。
「鮨 一喜」さんのおまかせコースについては、ランチは12,500円、夜はおまかせ20,000円で、フリーフロー付きが24,000円となっています。
現在の東京の水準からすると破格に近く、フリーフロー付きの価格設定は圧巻です笑

2025年6月の訪問時にいただいた内容です。

神奈川県産。ジュレは金時草の色を抜いて着色しており、梅、きゅうり、ミョウガと合わせている。ジュレには鰹出汁をバシッと効かせつつ、梅の酸味は上品で、清涼感を見た目、香り、味の全てで満喫させてくれる先付だ。

天竜川の鮎と秋田のじゅんさいを使用。あたかも日本料理店のような椀だが、これは喜代永親方が和食でキャリアをスタートされたことが理由か。キリッとした鰹出汁に塩気を上品に効かせて、吸い地と鮎の香りを活かす設計なのが素晴らしい。鮎は肝も使用されているので、満足度が抜群だ。香り良し、味良しの椀。


青森県産。脂がしっかり乗っていて、香りも良い鮃。縁側には驚くほど脂が乗っていて、煎り酒に合う。煎り酒には煎った米も使用されているそうで、これは江戸時代古来に煎り酒を古酒で作っていたことからのインスピレーションか?また、出汁の旨味を強く効かせたタイプなので、縁側との相性が良い次第である。


香ばしく軽い苦味を帯びながら、とろとろと甘い。焦がした蜂蜜が良い相性。


酸味、辛味に旨味もあるシャキシャキ食感のガリ。

塩で脱水してから昆布〆を行い、直前に柑橘酢を使用しているそうだ。バランスが良い〆加減で、食感はねっちりしつつ繊維はしっとりとほどける。春子らしさを活かした〆で、独自性も確立している。

長井漁港の長谷川さん仕入れの伊東産、2キロアップ。薄皮付きの軽い漬けとは素晴らしい仕事だ。脂の甘味にぷっちりした食感に妙があり、さらに香りも楽しめるので良い活かし方だ。加熱せずに金目鯛の持ち味を活かすところも良い。

塩〆を行い、加熱しないスタイルを採用されていて、実に攻めている。かなり独自性が高い。生なので、見た目はやや怖いが、実際にはネガティブな要素は無く、甘味と旨味、食感を楽しませてくれる。加熱の有無による最大の違いは香りだ。噛ませた大葉の使い方も良く、途中から香りが込み上げきて爽快なフィニッシュへと導く設計だ。

北寄貝の後に小鰭とは、よく考えられた構成で感心する(味覚や構成を考慮せず、「すきやばし次郎」が元祖だとも知らずに鮪3連発の後に機械的に出す人が増えていて、危惧している次第だ)。小鰭は比較的クラシックな方向性で脱水させつつ、みちっとしておらず、しっとりしている。時期的に淡い脂を閉じ込めて、旨味を活かす〆加減。塩気は強すぎず、酸味がふわっと広がる。芝海老のオボロも下世話ではない使用量だ。


オランデーズソースをイメージした黄身醤油のタレを使用。鯵の手当てが良く、酸化ゼロで香りと味を楽しませる。鮨店としては非常に変化球的な「料理」であるものの、味わいとしては決して付け焼き刃ではなく、その理由は魚味を意識している為だ。

長谷川さん仕入れのハタで旨い!強い旨味だ!ハタらしいゼラチン質もあるけれど、旨味に感嘆した。真竹は香ばしくて、苦味が極上品で美味い。味付けについても、甘味を使いつつ野暮ッたくない。


鹿児島の松崎さん仕入れとの談。食感を置き去りにする脂で、パンチがめっちゃ凄くて驚いた。甘味が強いけれど、香りが込み上げてきて実に良い。それも、縞鯵らしい雄々しい香りではなくよりグラマラスというか食欲をそそる香りだ。脂と香りの両面で明確な個性を感じる縞鯵!一貫で松崎さんが素晴らしい漁業者であることが分かる。

産地は佐渡ながら、仲卸は愛媛の藤本さん!!冬の凍結ものか?と思うほどに旨味がしっかり乗っていて、身は柔らかくて酸味が穏やかな赤身であった。

訪問2日ほど前の70キロくらいの鮪。脂が乗りつつ酸味と香りが高まるトロ。


〆てから炙っていて抜かり無い。香ばしさと脂を楽しませつつ〆の酸味で後味を抑制する設計だ。気候変動と漁獲量の兼ね合いで東京でも鰊を用いる鮨職人が増えているので、使用する際には明確な個性を意識した仕事が必須となっている。

面白いタイミングでの提供。ばつり、ぱらぱらとほどける。食感と甘味の両方をバランス良く表現されている。

レアな火入れで、しっとりしつつ食感はしゃくしゃくしている。海老味噌のソースを噛ませる創作的な仕事で、香りと旨味として活きている。


藤本さんの紫海胆と北海道のエゾバフン海胆。香りが良く濃密な味わいで、たっぷり。

干瓢巻きを手巻きで出すだけでなく、温かい干瓢と温かいシャリの組み合わせは個性的。かつてよりも一体感が高い印象で、良い。

少量でパンチあるコハク酸を感じる味噌汁!!そして、甘味噌を用いて柔らかな味わいで表現されている。

海老の香りが半端ないハッキリと2層構造の玉子。
「鮨 一喜」さんについては、テーブルチェックよりWEB予約が可能です。
店名:鮨 一喜(すし いっき)
シャリの特徴:塩気も酸味も穏やかながら、酸味がふわっと立ち、タネに障らないシャリ。
予算の目安:ランチは12,500円、夜はおまかせ20,000円で、フリーフロー付きが24,000円
最寄駅:渋谷駅から500m
TEL:03-6413-6168
住所:東京都渋谷区渋谷1-5-9
営業時間:月~金12:00~14:30(L.O. 14:00)、19:00~23:00、土・日・祝日12:00~14:30(L.O. 14:00)、17:30~20:30
定休日:不定休
飛躍する鮨職人に出会うと若返る、すしログ(@sushilog01)でした。
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