こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
先日、久々となる日本酒ペアリング会を開催しました。
「東京すしアカデミー」の福江社長からありがたきお誘いを頂き、二つ返事で快諾!
舞台となるお店は新宿「鮨 たか大」さんです。
参加者の方には経営者、医師、政治家の方もいらっしゃり、鮨って凄いと再認識!
エッジの効いた質問やコメントを頂き、サーブする側としても非常に楽しかったです!
本記事では、ご提供した日本酒とペアリングの狙いを解説します。
なお、コラボして頂ける職人さん、料理人さんがいらっしゃれば、随時ウェルカムです!
日々、お酒を飲んでスキルを磨いていきますので、一緒に日本酒の可能性を試しましょう。
イベントのノウハウは、普段の日本酒の品ぞろえにもご活用頂けると思います。
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それでは、まず、今回の日本酒ペアリングに用意したお酒を紹介します。
そして、ペアリングのイメージをお伝えします。
今回のお酒は、大塚の「地酒屋こだま」さんで仕入れました。
- 山の壽フリークス1 冷酒×ワイングラス
- 仙介 しぼりたて 冷酒×日本酒グラス
- はくろすいしゅ Jelly fish 冷酒×ワイングラス
- 本金 諏訪 常温×日本酒グラス
- 水府自慢 10号 金ラベル 燗酒×猪口
- 楽の世 山廃純米 冷酒×日本酒グラス、燗酒×猪口
「地酒屋こだま」さんは全種類試飲させて頂ける上、アツい情熱を持つ児玉さんが相談乗ってくださるので、並の酒屋とはレベルが違う酒屋さんです。
「有名銘柄を並べて終わり」ではなく、思い入れのある蔵のお酒を仕入れて、「並べてからスタート」される方。
ペアリング会のお酒は「ただ仕入れる」のではなく、僕は酒屋さんとの相乗効果も追求したいと考えています。
参加者さんが気に入ったら買えるお酒を使うことは必須で、酒屋さんを紹介するまでが僕の仕事です。
そして、「鮨 たか大」さんには、ワイングラス、日本酒グラス、猪口の3種類をご用意頂きました。
また、燗酒をつけるべく「ミニかんすけ・匠」を仕入れて頂きました(僕が愛用している器材です)。
ペアリングを行う上で、酒器の形状と提供温度を変える手法は非常に効果的です。
ともにお酒の味や印象を大きく変えられます。
今回のペアリングのイメージとしては、以下のとおりです。
- お店の個性を活かす(酒ありきの味覚調整をなるべく行わない)
- お酒のブランド、産地、酒米よりも純粋に味で選択
- 鮨職人が選ばない酒蔵や銘柄も入れる
酒のための味覚調整をなるべく行わない理由は、開催させて頂くお店の個性を尊重するためです。
ペアリングのためにお酒に合わせた調理を行うお店も多々ありますが、それはお店だから出来る事。
僕のようなフリーランスの日本酒ソムリエの場合、お店の個性を活かすのが使命だと考えます。
よって、お店の世界観の中で合う方向性を探す事を目指します。
(ただ、お店側からむしろ味覚調整を行って新しいチャレンジをしたい!とのご要望がある場合、喜んで協力します)
そして、ペアリングで重視したポイントは、以下のとおりです。
- ネガティブな反応を起こさない
- 全体のリズムを作る
- 味覚的、嗅覚的な調和を目指しマリアージュが1~2つあれば大成功と考える
経験則として、プロのソムリエさんであってもマリアージュが1~2つあれば大成功だと思います。
下手すると、ギリギリ1つ、もしくは無いケースさえありますので。
よって、ワインよりも味覚的な対比を付けにくい日本酒においては、マリアージュが2つあれば相当な腕利きだと考えます。
僕は、そこを目指したい。
それでは、ペアリング会の内容を紹介します。
以下に、選んだお酒ベースで酒肴と握りを紹介していきます。
なお、鮨については、ペアリングの方向性を決めるために訪問した時のものです(僕はサーブに徹しましたので)。
新宿でイチオシ!江戸前鮨をリーズナブルに楽しめる「鮨 たか大(ひろ)」乾杯酒&酒肴の前半に合わせたお酒は、【山の壽フリークス1】です。
・特定名称:普通酒(純米吟醸スペック)
・原料米:非公開
・精米歩合:55%
・アルコール度数:13%
乾杯から先付あたりのお酒は爽快感が必須だと考えます。【フリークス1】のベリーを思わせるフルーティ感に微発泡で爽やかにスタート。
合わせる酒肴については、以下の2品です。
冷製の出汁に微発泡を合わせて爽やかさを強調。強すぎない米の旨味を乗せることが目的で、純米、特別純米酒だと味が重いことを確認済み。出汁だけでなく、桜海老の香りと合うとのご意見も頂きました。
昆布〆、生の唐墨。昆布の旨味や唐墨をマスキングする方向性。珍味には濃い目のお酒を合わせたくなりますが、序盤に苦味=旨味が強いと、少しもたつくためです。これについても狙い通りの好評を頂きました。
酒肴の中盤に合わせたお酒は、【仙介 しぼりたて】です。
・特定名称:特別純米酒
・原料米:山田錦・Hyogo Sake 85
・精米歩合:65%
・アルコール度数:16%
冒頭に純米大吟醸酒を出す人は多いですが、個人的には酒肴の中盤戦においては旨味が重要だと考えます。サラッと綺麗な味わいを提案するのもアリですが、蝦蛄や甘鯛など甘味のあるものには旨味を合わせて同調させたい想いがあります。【仙介】はメロン香、程よい甘味と酸味で料理に寄り添います。
合わせる酒肴については、以下の2品です。
山葵の爽やかな香りにも合わせられる。甲殻類の香りや旨味と酢酸イソアミル系の香りは合い、ネガティブは反応は一切無ありません。
甘鯛の脂とも柑橘ともバッチリ。
酒肴の後半に合わせたお酒は、【はくろすいしゅ Jelly fish】です。
・特定名称:純米大吟醸酒
・原料米:出羽きらり
・精米歩合:50%
・アルコール度数:15.5%
次は稚鮎やトコブシの煮ものなので、案としては純米酒のぬる燗なども選択肢になりますが、「香り」での提案を行いました。甘味を想起させる華やかな香りで合わせるイメージです。そして、このお酒は香り全振りではなく、酵母がNFY1(山形酵母+協会1801号)で、程よいカプロン酸エチル香と甘味、苦味、酸味のバランスが良いです。何よりも独特の香ばしさを持つため選択しました。
合わせる酒肴については、以下の3品です。
稚鮎の山椒煮。お店でお酒の実験を行った際、(お店に置いてある)農口よりも作の方が相性が良く意外ででした。これがペアリングのインスピレーションとなりました。
トコブシは味付けが軽やかで、上品な塩気。肝は味噌漬け焼き。味わいが完全に異なる料理が同居する皿なので、お酒は中庸を狙いました。どちらかに合わせると、確実にギャップが出てしまう組み合わせだからです。
出汁も餡も椀種も鼈の茶碗蒸し。ペアリング会の際には、浅葱を省いて頂きました。
鮨の前半に合わせたお酒は、【本金 諏訪 常温×日本酒グラス】です。
・特定名称:純米吟醸酒
・原料米:美山錦
・精米歩合:55%
・アルコール度数:16%
鮨に入るので、旨味を上げる選択です。鮨に入っても精米歩合が高いお酒を出すお店や、いきなり超辛口を出すお店がありますが、僕は常々疑問を感じます。また、白身魚を出す場合には、カプロン酸エチル系の香りのお酒は完全にアウトです。お酒は事前に開栓の上、常温に近い状態にしておきました。鮨で重要なのはシャリであり、シャリで重要なのは温度なので、お酒も温度を調整するのが正しいと言えるでしょう。
合わせる握りについては、以下の3品です。
甘鯛については旨味と脂が強いので、お酒の旨味を上げて合わせます。【本金 諏訪】は酸味が強めながら甘味があるので、脂を切るマスキングと甘味に調和させる同調となります。
酢橘と塩を使用している墨烏賊なので、お酒の酸味を合わせつつ、徐々に広がるイカの甘味にお酒の甘味を合わせる提案。
山葵だけでなく梅を使用し、清涼感を高めているので、お酒の清涼感を合わせました。
握りの中盤に合わせたお酒は、【水府自慢 10号 金ラベル】です。
・特定名称:純米大吟醸酒(生酛)
・原料米:五百万石
・精米歩合:50%
・アルコール度数:16%
鮪などの脂や旨味が強いタネには生酛造りのぬる燗が個人的な好み。酸味と旨味のある生酛を燗にすると親和性が向上します。酸味とヨーグルト感、旨味を持つ生酛原酒を燗酒にする楽しみを伝えたいというメッセージを込めています。
合わせる握りについては、以下の4品です。
宇和島の養殖物であるが、脂の質が良いので、ぬる燗で脂を溶かすイメージです。脂のある魚と合わせる場合、本来であれば温度は常温以上であるのが望ましいです。
中トロの次に鯵とは、少しトリッキーな流れで、鯵の香りにネガティブな反応を起こさない配慮が必須です。このような時も燗酒はバッファがあるので頼れます。それでいて味が重たいと鯵の清涼感を殺すので、軽めの味のお酒を合わせました(なお、イベント時には葱の微塵切りは無しでした)。
イベント時にはミル貝ではなくトリ貝でした。「磯臭さがネガティブな反応を示さないか?」と少し不安を抱きましたが、杞憂に終わりました。
酸味があり、旨味もある赤身なので、燗に合う。酸味と鉄分が強すぎる夏鮪だと、燗酒だとミスマッチになる可能性があるので、ギリギリのところで合ったと感じます。季節に伴う魚の味の変化も考慮しながら行う必要があるのが、難しくも面白い…と言うのが今回最大の学びでした。
握りの最後に合わせたお酒は、【楽の世 山廃純米】です。
・特定名称:純米酒(山廃・もち米熱掛四段)
・原料米:山田錦+フクノハナ
・精米歩合:70%
・アルコール度数:18%
最後の銘柄なので、しっかりと重みのあるお酒を選択しました。しかし、油脂を用いない鮨と言うジャンルでは重たすぎてはダメです。この【楽の世 山廃純米】は熟したトロピカル系フルーツの香りとコクがあります。よって冷酒で前半の甘味の強いタネに同調させ、燗酒で旨味と酸味を活用しながら後半の煮ものの甘味を切りつつ、味を調和させるイメージです。
合わせる握りについては、以下の3貫です。
甘味が強い縞海老なので、山廃の酸味、旨味だけでなく、高アルコールで味を切ります。
夏場の紫海胆なので、燗酒だとお酒が勝ちます。パッションフルーツ的な香りも合わせる提案です。
煮穴子は燗酒でドンピシャ。ただ、お酒の酸味が無いと重たくなる可能性があるので、甘味と酸味、旨味のバランスを考える必要はあります。
アオサの赤出汁。
以上でペアリング会のご紹介を終えます。
「鮨 たか大」さんの予約については、お電話もしくは「一休」経由でWEB予約が可能です。
店名:鮨 たか大(すし たかひろ)
シャリの特徴:ヨコ井醸造のお酢をブレンドして酸味が少し強めで、塩気は穏やかな、良いバランスのシャリ。
予算の目安:おまかせ16,500円
TEL:03-5937-3080
住所:東京都新宿区西新宿7-8-11 中川ビル1F
最寄駅:西武新宿駅から200m
営業時間:月・火・木・金12:00~15:00、17:30~22:30、土・祝日12:00~15:00、16:00~22:00
定休日:水曜、日曜
ペアリングについての解説記事です。
【料理がさらに美味しくなる】日本酒ペアリングの基本理論からマリアージュを目指す!
日本酒のペアリングは本当に奥深いので、これからも追求していきます!
すしログ(@sushilog01)でした。
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