
こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
大阪で絶大な人気を誇る鮨店、「鮨 髙橋謙太郎」さん。
かなり斬新な試みをされていて、昨今は限りなく塩分を削ぎ落とされているとか…
予約困難店として知られるお店ですが、ありがたいお誘いをいただいて訪問しました。
結果的に、大阪の江戸前鮨の中では筆頭の技量とセンスを持つ方で大満足。
「硬派なイノベーティブ」を志向する職人さんです。


江戸前鮨の王道の仕事に向き合いつつ、東京で試されていない仕事を志向されている点が素晴らしいです!
さらに大阪鮓のエッセンスも採り入れているので、関西随一だと感じました。
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「鮨 髙橋謙太郎」は2014年11月に北新地でオープンされて、2024年2月に西天満へ移転された鮨店です。
ビルに入っていますが、店構えから期待を大きく高めてくれる素敵な意匠です。

さらに店内は幽玄な印象を与える設えで、鮨店としては珍しく陰影のコントラストが付けられていて、一発で記憶に残ります。

仕事については、率直に申し上げて、全体的に非常に面白いと感じました。
「調味をミニマムにしながら味を決める」という通好みの試みをされながら現時点で既に完成度が高いのは否応なしに将来が楽しみになります。
確実に、ご自身の仕事をアップデートし続けて、他の誰もが真似出来ない仕事を生み出す職人さんだと感じました。
個人的に印象的だったのが、【太刀魚】や【鰻】など一般的には強めの味付けにしがちなタネでも塩を大幅に削減したり、不使用だったりと驚きがありました。
かたや、オリーブオイルや黒胡椒を使っても下品でないところも魅力的です。
鮪を中心としたタネの温度調整も非常に高いレベルにあります。

また、個々の仕事だけでなく構成も魅力的で、関西らしく【琵琶鱒の箱寿司】を加えたり、【唐墨】を握りにして鮨だけのコースながら起伏を付けてお酒に合うよう調整されたりと、センスと工夫を感じます。
生命線のシャリについては、塩味を落としながらお酢の酸味を上品に感じさせるバランスで見事だと感じました。
上品な味にしつつ物足りない範疇の味覚に収めようとすると、高度なシャリ切りの技術が必要ですので。
そして、上品な味付けに反して赤酢の香りはふわっと広がるので、強い赤酢を求めがちな大阪の鮨好きにも訴求する要素を加えているようにも感じます(大阪の江戸前鮨店は赤酢と塩の塩梅が「こてこて」なお店が主流である由)。
明らかに意識的に志向されているシャリの粘度を下げる試みについては、間違いなく成功していて、パラパラであっても芯を感じるような硬めの炊き加減ではない点は大きな強みです。
パラパラを意識しすぎると、一般的に「アルデンテ」になってしまいがちなので…。
また、タネによって表情を変える点も魅力と言えます。
例えば、旨味が強い【赤貝】でお米の甘味がアシストする点や、熟成をかけた【アオリイカ】でオリーブオイル一滴と黒胡椒を合わせつつシャリが上品に一体化する点などは印象に残りました。
温度管理については独特の手法で、木桶・銅鍋・木桶を重ねて、銅鍋に湯を入れてシャリ櫃を保温されているように見受けました。
その試みは奏功しています。

そして、シャリだけでなくガリも印象的です。
塩気を抑えて酸味と辛味でスッキリ感を感じさせるガリなので、これは広まって欲しいガリの方向性です。

…ただ、まだ発展の段階にあるタネもあり、【小鰭】の〆が弱すぎる点は江戸前鮨店として大きな改善点だと感じました。
食べ慣れていない方は「小鰭とは思えないほど滑らかな食感で、臭みが無い!」と感じるかもしれませんが、実態としては東京で言う「なまくら」でした。
小鰭の脂をピュアに楽しめる点は魅力なのですが、いかんせん骨が溶けておらずシャリシャリした食感が食味を大きく邪魔してしまいます。
さらに、〆た光物の塩気と酸味までギリギリまで落とすのは個人的に悪手だと思います。
流石に小鰭については、脱水を効果的に行い、酢〆を強めてから寝かせの日数を延ばした方がバランスが向上するのは間違いありません(なお、脱水に関しては塩分濃度を下げるべく塩から砂糖に置換するだけでは江戸前鮨として満足しうる脱水になりづらいところが難しい)。
他に【車海老】と【穴子】という江戸前鮨を代表するタネにも思うところがあったので、これらについては後述します。
…とは言え、誰もやっていない試みをすると改善点が出てこない方がおかしいものです。
僕は誰もしていないチャレンジをされている人を凝り固まったセオリーで否定するつもりなど毛頭なく、洗練された手法で個性を強烈に表現しようとする人は大好きです。
故に、個人的には上記の改善点を補って余りある魅力とポテンシャルがあると感じました。
改良を重ねてこられた職人さんで、素晴らしい技術と発想をお持ちの方とお見受けしたので、またお伺いしたいと強く思います。
「鮨 髙橋謙太郎」さんのおまかせコースは、訪問時点で33,000円です。
お伺いした際は、実験的に握りだけのコースをご提供されていました(個人的には嬉しすぎ)。
2026年3月にいただいた内容を紹介します。

塩分濃度0.4%。旨味も濃密で驚嘆するが、香りも濃密だ。ネガティブな臭いは一切無く、コハク酸の余韻が長い。

しっとりしつつ軽くねっちりした食感がある。かなりピュアな春子な仕事だ。江戸前鮨伝統の〆方で一貫目を展開するよりも口の状態を整えるうえで有効な〆加減だと感じた。また、ガリなしスタートは痺れる。
一杯目の日本酒は「勝山 戦勝政宗」。吟醸香は強すぎず、磨いていても旨味と甘味が程よくあり良いご提案。

琵琶鱒のとろけるようなテクスチャーと脂をストレートに表現している。これも塩気が穏やかで好印象。鱒類は漬けの仕事が多く、しかも煮キリの塩味とコク、香りを強めに乗せることが多いので、琵琶鱒の脂の甘さと香りを楽しめる仕事は嬉しい限り。

艶めかしく、しっとり、とろりとした独特の食感。ただ、上述のとおり骨がかなり強い存在感を示す。そして、小鰭の脂をピュアに楽しめるものの、味覚の広がりに乏しい。咀嚼した時に味わいが瞬間、瞬間で変わるのが美味しい小鰭だ。酢〆と寝かせる期間のバランスが取れると良いかな…と感じた。

薄切りにして握りにする面白い試み。チーズ様の香りと旨味を立てる。握りのみのコースで巧みに表現されていて好印象である。ただ、お弟子さんの握りが甘く、パラパラではなくボロボロと崩れる点はネックであった。それだけ難しいシャリを親方は巧みに握られていることが分かったが。

寝かせることでねっちりとペースト方向のテクスチャーにしつつ、香りは十分に広がり、唐墨からの連続性がある。ただ旨味のために寝かせているわけではないのがセンス。

酢飯と合わせるこの仕立てでも強気に塩気を落とすとは驚いた。太刀魚の甘味と香りを楽しませる。木ノ芽を混ぜているが、使用量が上品だ。絶妙。

香りは穏やかながら甘味が高まる赤貝。そして、香りがじんわりと広がる。シャリのお米の甘味が味覚をアシストするのが面白い。
二杯目の日本酒は、「飛露喜 純米吟醸」。なるほど。

塩気を抑えて酸味と辛味でスッキリ感を感じさせるガリ。上述のとおり、これは広まって欲しいガリの方向性だ。

赤身に塩!旨味が広がりながら甘味もじんわりと舌に伝わり、酸味がキリッと引き締める。柔らかくて旨い赤身だ。

提供温度が抜群。黒胡椒の香りがじわじわと高まり、脂の甘味と合いながら上品なピリ辛が持続する。変則的な仕事を行いつつ、味覚は高い次元でまとめている。

白焼きながら塩は不使用。海苔の塩味と旨味で食べさせるアグレッシヴな手法だ!当初は薄味好きな僕であっても味が薄いのではないかと不安であったが、実際には鰻の脂と海苔の融合が実に魅力的!シャリの酸味も調味料として活きる。新たな扉を開いてくれた。

とろんとろんになるまで寝かせて、オリーブオイル一滴と黒胡椒を合わせる。この使い方が実に上品である。シャリの味付けが上品なので絶妙なバランスが取れている。
三杯目の日本酒は「磯自慢 大吟醸」。磯自慢は中盤から後半にかけてのユーティリティプレイヤー。

とろけながら脂の甘味が広がる。余韻は良い意味で軽い。鯵でネガティブを感じさせずにこの表現は面白い。産地は「鹿児島のある場所」とのこと。

漬け込み地が出汁なので、旨味が高まる魅力的な設計。タネと合わさることでシャリの酸味と塩味をきっちりと感じる。繊細な方向性の蛤の仕事としてはかなりのものだ。甘味の塩梅が攻めている点は琴線に触れる!

天草、先週(3月第2週)出始めとの談。香りがフルーティかつ甘味が強い紫海胆で美味!

茹で上げで、やや強めの火入れながら割としっとりした食感。甘味が広がり初速は旨いが、味噌の軽い苦味と僅かなオフフレイバーがある。調味を上品にした結果、ネガティブな要素が浮き彫りになっている次第だ。伝統的な茹で置きを超える茹で上げになっていないので、髙橋大将の方向性と構成を考慮すると、火入れを優しくして繊維質をしっとり仕上げるとともに、味噌は落として握った方が確実に良い。

脂の甘味を上品に楽しませる仕事。ただ、金目鯛自体の味わい以上に食感が抜群だ。加熱してとろとろに持っていくのではなく、しっとりしつつ周辺部が軽くホロリとほどけるグラデーションのある食感に仕上げていて、これは見事だ。

丁寧に掃除した若芽。驚くほどにトロットロ!しかし、芯には海苔的な繊維質があり面白い。若芽の香りも楽しめる。塩分濃度0.5%とのこと。

ホロッホロな食感。トロトロではなく穴子の香りと脂や旨味を楽しませる食感が自身の琴線に触れる。また、甘味のコントロールが秀逸だ。しかしながら、骨が非常に気になった。大型の穴子を使う場合には特に注意して骨を除去する必要性を感じた。

海苔のパリパリ感は着目に値する。ひもきゅうは終盤ながらブレずに煮キリを効かせない。トロたくはバランス良い設計。干瓢の食感はコリッコリで、干瓢の味付けよりもシャリの酸味が心地良く広がる干瓢は初めて。干瓢巻きは一般的に、干瓢の味→海苔の風味と味→シャリの味の順で味覚が広がることが通例なので。巻物をいただくとお店のシャリの真価が分かる、と考えているが、奥深いシャリだと実感した。

握りのみのコース故にデザート志向とのこと。しかし、東京で「デザート志向」と言われる玉子焼きよりも江戸前鮨のカステラ玉子に近く、食感はしっとりしていて、極めてきめ細かい。ただ、クリームチーズかな?乳製品も併用されている気がした。
「鮨 髙橋謙太郎」さんについては、予約が埋まっている状況ですが、OMAKASEでアラート設定を掛けておくと予約を取れることもあるようです。
店名:鮨 髙橋謙太郎(すし たかはしけんたろう)
シャリの特徴:塩味を落としながらお酢の酸味を上品に感じさせるバランスで秀逸、赤酢の香りはやや強め。
予算の目安:おまかせ33,000円~
最寄駅:なにわ橋駅から550m
TEL:090-4695-6361
住所:大阪府大阪市北区西天満4-7-7 サン・システム西天満ガストロプラザ 2F
営業時間:月~金17:45~22:30、土15:00~22:30、日・祝15:00~21:00
定休日:不定休
硬派なイノベーティブに感嘆を覚える、すしログ(@sushilog01)でした。
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