新潟の米の聖地から繰り出される「ワクワクする鮨」南魚沼「龍寿し」

龍寿し外観

こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。

今回ご紹介する南魚沼の「龍寿し」さんは、過去に新発田「登喜和鮨」の小林親方よりオススメ頂き、その後、「里山十帖」で有名な岩佐十良さんの著書『新潟美食手帖』を読み、訪問意欲が高まっていたお店です。

すしログ
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親方のWEBの挨拶の第一声「ワクワクしてもらいたい!」に集約されている鮨店です。

創作的な方向性に全振りされていて、唯一無二の世界観を構築されています。

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南魚沼「龍寿し」の魅力とは?

「龍寿し」さんの魅力については、「ローカルガストロノミー」と、佐藤 正幸親方が自ら仰る「ワクワクする体験」に尽きます。

市街地から10km以上離れた山間部にあるため、もともとは集客に苦労されたそうです。

それ故に編み出された創作鮨こそが「龍寿し」さんの最大の特徴です。


自分で言うのはなんですが、僕は「創作寿司」についてはシビアな眼を向けています。

理由は単純明快で、多くの「創作寿司」の職人さんは江戸前鮨の基礎の仕事が出来ておらず、安易な味や香りの足し算に陥った「創作寿司」は味わいに奥深さが無い為です。

いわば付け焼き刃。

実は積極的に開拓しているものの、当ブログに書けるレヴェルに達している「創作鮨」は滅多にありません。

しかし、「龍寿し」さんは非常に創作的ながらに説得力がある味わいなので、江戸前鮨原理主義ではなく創作鮨も楽しめるマインドの方ならば一食の価値があると感じます。


まず、お店に入るや否や驚くのが、親方の所作。

なんと、親方はIHクッキングヒーターで舞茸を炒め始めます。

不安になる瞬間!!

しかも、いざ頂く段になると、見た目からは「えっ、これは鮨!?」と思うものも登場します。

ただ、自身の感想としては「創作鮨」の料理店としては十分な魅力を有していると感じました。

酒肴に関しては洋食に寄っているので好みが分かれる可能性がありますが、スシについては「寿司」ではなく「鮨」。

「創作寿司」ではなく「創作鮨」たらしめている理由は、親方の仕入れ力とシャリのお陰だと実感しました。

親方は産直を駆使して「豊洲に集まるような一級品」を仕入れる事に成功しているそうです。


そして、お店を特徴付けている要素が野菜の使用。

春は山菜、夏は地元の伝統野菜、秋から冬は当地名産の椎茸を握るそうです。


握りについては手数が少なく、4手の小手返しで握られます。

握りづらく、下手な職人さんは手数が増えてしまう南蛮海老なども手早く正確に握られていました。


そして、シャリはぱらりとしていて、もっちりしている点が特徴。

もちもちした食感から甘味が広がる点はコシヒカリを使用されている証左。

お米由来の甘味を引き出し、米酢の酸味を効かせつつ、味が強いタネの時は穏やかに調和させる甘味と酸味のバランスです。

聞くところによると、お米は南魚沼の減農薬・減化学肥料栽培のコシヒカリとコシイブキを50%ずつブレンドしているそうで、しかもお米は8ヶ月寝かせたものを使用されているそうです。

そして、有機コシヒカリは表面に粘りが出にくいそうで、これには目からウロコ!

シャリは一見すると無個性に感じる人もいるかもしれませんが、実際にはお米の活かし方としては他に無いバランスで、結構個性的だと実感しました。

温度管理の面でも、きめ細かくて良いです。


なお、使用されているお酢はマルカン酢の【花生】で、山葵は糸魚川産との事です。

「龍寿し」のおまかせコースの詳細

おまかせについては、2種類ご用意されていて、【握り11カン程度+季節の料理5品程度】14,300円と【握り12カン程度+季節の料理5品程度】16,500円の2本です。

価格差がほとんど無いので、上のコースを予約しました(結果的に大正解でした)。

ただ、訪問前にお電話を頂き、17,600円で季節ならではなコースが出来るとの事でしたので、切り替えて頂きました。

以下はその内容となります。


なお、僕は車だったので飲めませんでしたが、お酒の値付けは良心的です。

土地柄、八海醸造(八海山)のラインナップが充実しており、稀少なものも頂けるようです。

親方の鮨の方向性的に、新潟らしい淡麗辛口のお酒は合うように感じます。

枝豆

枝豆

地元の「おつな姫」と言う品種。

初めて頂いたが、香ばしく甘い。塩気はかなり控えめで好印象だ。

ガリ

ガリ

甘味がありつつ、加減はクラシック志向とは異なり、酸味と辛味も広がるガリ。

鯵

新潟県産。

脂が乗っていて、香りもしっかり楽しめる。

さらに軽い酸味もある。

晩夏も晩夏とは言え、夏らしい名刺代わりの一貫目を山間部で頂き、妙な感慨を覚える。

穴子

穴子

淡路島、由良産。

2貫目に穴子とは意外に思うが、終盤で伏線が回収される。

穴子はふわんふわん且つしっとりと繊維のほどけを感じさせる煮加減。

ベタにトロトロではないのが魅力的。

直前までIHヒーターで保温されている理由に納得の食感だ。

甘味を抑えた煮加減で、柚子皮と塩でスッキリと提供。

鮪大トロと黒舞茸

鮪大トロ

インパクト抜群な見た目!

炒った黒舞茸をトロの上に暫く置き、温度を落ち着かせつつ、香りと熱をじんわり移す仕事。

その黒舞茸を噛ませつつ、表面にはカリカリに炒って水分飛ばしたものを乗せる。

何よりも印象的だったのが、大トロと黒舞茸の香りが合う点だ。

「江戸前鮨」ではなく、「創作鮨」として魅力がある。

なお、黒舞茸などのキノコ類は「雪国まいたけ」創業者の「大平きのこ研究所」産だそう。

トウモロコシのすりながし

トウモロコシのすりながし

ゴールドラッシュの強い甘味と香り。

芯も出汁に使用しているそう。

また、お餅も加えているそうだが、もったりはしない。

乳脂肪も用いつつ下世話にならない範疇で、柚子皮も馴染んでいる。

鮪赤身の漬けとつるむらさき

鮪赤身

鮪は漬けにして、つるむらさき、胡麻油で和える。

つるむらさきの香りと粘りが漬けの赤身と相性良し。

天恵菇

天恵菇

浦佐の天恵菇。

旨味と香りが強い!

凝縮感がある。

佐藤親方は傘が開いておらず太いもののみを厳選し、70℃で1時間コンフィにしているそう。

天恵菇の中でも貴重で、1週間に10個くらいしか収穫できないそうだ。

天恵菇の器

器は稀少なヤマモミジにプラスチックの溶剤を浸透させて作った皿との事。

鮪の赤身と八色スイカのガスパチョ仕立て

鮪の赤身と八色スイカのガスパチョ仕立て

「えっ、お鮨屋さんで!?」と、驚きの一品。

しかし、香りが合っているため一体感があり、清涼感を楽しませてくれる。

ドレッシングに赤酢を使用している点も奏功か。

なお、スプーンはコシヒカリの屑米を利用したバイオプラスチック製との事。

和風アクアパッツァ

和風アクアパッツァ

これまた驚きの一品。

淡路島の鯛と夏野菜、蛤出汁。

太白胡麻油や少量の黒胡椒の使い方が上品。

鯛の火入れはしっかり目で不思議な感覚を覚えるものの、強烈な蛤出汁と鯛の旨味と野菜の味わいが合う。

各野菜の風味や味覚で一口一口違う味。

蛸

淡路産で、4日寝かせた後に茹で上げ。

くにゅくにゅしつつ柔らかくジューシィな仕事。

そして、しっとり、さくりと切れるところが魅力だ。


この後は、まさかの海胆3種連発。

海胆3種

この立地でビックリである。

しかも、産地の組み合わせ方も面白い。

青森今別、淡路由良、礼文島。

礼文島以外は直取りとの事。

海胆(淡路島由良)

淡路島由良の海胆

ライチのようなパパイヤのような南国的な香りが印象深い。

海胆は室温に馴染ませ、シャリ温が低温のものと合わせていて、細やかな配慮を感じさせる。

バフン海胆軍艦(礼文島)

バフン海胆軍艦(礼文島)

軍艦であってもシャリ玉を握り込まず、空気を入れている点が印象的だ。

濃密な味わいで、由良の後だとオイリーな印象となる。苦味もキリリと効いている。

紫海胆(青森今別)軍艦

紫海胆(青森今別)軍艦

これは素晴らしい味わい。

漁師一人で獲っていて、漁師→魚屋→親方のルートで運ばれるそうだ。

濃密な甘味と深い香りが抜群に旨い。

煮キリ醤油無しで甘味を炸裂させる提供方法。

ノドグロ

ノドグロ

糸魚川産。

柚子胡椒とともに。

安定感ある脂。

鮪中トロと生キクラゲ

鮪中トロと生キクラゲ

地物の生キクラゲを干瓢のように煮たものが面白い。

食感はコリコリした後に、とろりととろける。

キクラゲ自体が特注品で、水分量少な目で作ってもらっているそうだ。

鮪との相性が意外にも良く、それは食感の調和がありつつアクセントにもなる点であると感じる。

また、鮪がコクだけでなく酸味もある夏鮪である点も奏功している。

鮑の煮汁

鮑の煮汁

次に登場する鮑の煮汁で、糸魚川産。

江戸前鮨らしく酒と水のみで煮ているそうで、濃密な旨味と香りがある。

鮑の煮汁

切り身によって調味料を変えている点が面白い。

手前から煮キリ醤油、真ん中がGWに摘んだ花山椒の佃煮、奥が裏漉しした肝。

鮑自体、食感が良くて旨い。

個人的には花山椒の香りで頂くのが琴線に触れた。

南蛮海老

南蛮海老

佐渡赤泊産。

マイナス2℃で1日寝かせているそう。

ぷちりとした食感から、トロトロととろけ濃密な甘味。

鮪中トロと糸瓜の太巻き

鮪中トロと糸瓜の太巻き

中トロと、糸瓜(金糸瓜、そうめん南瓜)の中巻き。

これは魅力的な組み合わせで、食感が快感だ。

中トロの酸味をより爽やかに、軽やかに感じさせる。

鰹

皮付きを藁で炙っている模様。

むっちり且つなめらかな食感から鰹の酸味とスモーキーフレーバーが広がる。

調味料は玉ねぎ醤油。

力強い味わいだ。

???

???

これは敢えてサプライズのためタネ名を伏せる。

濃密な甘味と香ばしさがあり、面白い締めの一貫だ。

穴子を冒頭に出す理由に納得する。


ただ、少し残念な点としては、親方はタネ名を伏せてサプライズで出したかったようだが、過去に訪問済みの小学生男子が最初に食べて答えをドヤ顔&大声で連呼して、親方が苦笑されていた点だ(笑)

椀

南蛮海老の出汁で、椀種は布海苔、椀妻はネギ。

玉子焼き

玉子焼き

椀だけでなく玉子焼きも南蛮海老入りなのが新潟らしい。

みっちりと焼き込み、伊達巻きに近い密度、テクスチャーだ。

「龍寿し」の立地と雰囲気

「龍寿し」さんは前述の通り市街地から10km以上離れた場所にあるので、車で伺うほかありません。

お店の横に屋根付きの駐車スペースがあるので、流石、豪雪地帯だと感じます。

店内は客席間にゆとりがあり、清潔感はバッチリ。

率直に申し上げて、立地から想像できないほどに落ち着いた上品な空間です。

「龍寿し」のお店情報と予約方法

「龍寿し」さんの予約については、お電話にて可能です。


龍寿し(食べログのリンク)

店名:龍寿し(りゅうずし)

シャリの特徴:米酢を用い味付けはオーソドックスだが、お米の美味しさを実感させる新潟らしく個性的なシャリ。

予算の目安:【握り11カン程度+季節の料理5品程度】14,300円、【握り12カン程度+季節の料理5品程度】16,500円

最寄駅:五日町駅から4.6km

TEL:025-779-2169

住所:新潟県南魚沼市大崎1838-1

営業時間:昼12:00~、夜 18:00~もしくは19:30~(日曜祝日の夜は18:00~のみ)

定休日:水曜、木曜昼、不定休

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