江戸前の仕事を満喫できる町の名店!椎名町「松野寿司」

松野寿司外観

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。

2017年3月にお伺いした時は「知る人ぞ知るお店」であった、椎名町の「松野寿司」さん。

訪問後に知名度が一気に上がり、記事を書いた2年半後にミシュランのビブグルマンを獲得されました。

そして、今や各地にファンがいる人気店です。

 

当時から僕は高騰する鮨業界を憂い、その状況を「鮨バブル」と呼んで、下記のようなコメントを残しています。

本質的にはリーズナブルに美味しく頂けるお店を探しており、どんどん高額化する東京の鮨業界(=鮨バブル)へ極めて冷静な目を向けている事も事実です。

もともと江戸前鮨は「仕事で魚を旨くするもの」なので、僕はタネの力よりも仕事の力を信じて、江戸前鮨の底力を追求したい次第です。

「松野寿司」さんは一般的な街場寿司のレヴェルを凌駕し、江戸前鮨の底力を感じさせてくれる隠れた名店だと感じたものです。

そして、そのように感じた5年後でも状況は変わらず、むしろ余計に貴重さを実感しました。

すしログ

リーズナブルなのに山葵は本山葵を使用されていて、ガリも手作り。

鮨職人としての矜持を感じさせます!

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椎名町「松野寿司」の魅力とは?

椎名町にある「松野寿司」さんは1969年創業の鮨店で、二代目の野呂敏充親方が暖簾を守っておられます。

魅力を一言で述べると、誰もが安心できる価格で、江戸前仕事を楽しませてくれる点です。

現在はありませんが、かつては「出前迅速」の看板があり、ノスタルジックな風貌の店構えでした。

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お店はかのトキワ荘跡地からほど近い場所にあります(トキワ荘は手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫など、巨匠漫画家たちが住んでいたアパートです)。

 

店内で真っ先に目に入るのは、ありふれたガラスのタネケースとカウンター。

都心の鮨店とは全く異なります。

しかし、店内の空気、訪問に合わせたシャリ切り、「仕事」と「鮮度」を両立しているタネケースなどは、気概のある鮨店のそれ。

 

そして、野呂親方は捨てシャリをする事も、手を打ち鳴らす事もせず、淡々と流れるような小手返しで握ります。

しかも左手の親指を的確に利かせておられ、技術が分かります。

 

シャリは一見すると米酢ですが、赤酢と半々でブレンドしているとの事です。

味付けとしては、クラシカルなお店としては珍しく酢を立たせています。

ただ、時間の経過に伴い酸味、香りともに落ち着き、バランスの良い味わいになります。

塩気は穏やかで、砂糖を僅かに用いほんのりとした甘みを持っています。

硬さについては比較的硬めで、粒が立っており、ほどけ加減は中々です。

 

そして、シャリに関して再訪時に感じたことは下記のとおりです。

旨味と香りは穏やかで、赤酢は恐らく三ツ判山吹か?

お酢がしっかり利いていて、お酢の香りと酸味が広がる点は前回同様。

温度は人肌から少し低めだが、温か目の範疇。

お米はパラッとほどけ、頂いていて心地良い。

 

つまり、時を経て訪問してもブレがないシャリでした。

「松野寿司」のおまかせの詳細

現在のおまかせの価格は握り10貫で4,500円です。

おこのみも可能で、1貫300円からとリーズナブル。

お酒も【地酒】1合800円と、極めて良心的です。

繰り返しになりますが、この価格でも本山葵を使用されているのには頭が下がります。

お酒を3合頂き、4貫追加して2人で15,800でした。

実に腑に落ちる内容の価格設定です。

松野寿司酒器

2022年5月訪問時の記事

2022年5月訪問時に頂いたものは、下記のとおりです。

 

この度頂いたお酒

  • 飛良泉本舗、飛良泉
  • 西田酒造店、田酒
  • 宮泉銘醸、會津宮泉

 

ホタルイカ

松野寿司ホタルイカ

スチームではなく、生から茹でているのかもしれない。

とろ~んととろける肝が美味。

 

ガリ

松野寿司ガリ

酸っぱくて辛味が立つ。

甘みが無く、口直しとしてのガリだ。

 

墨烏賊

松野寿司墨烏賊

お店の雰囲気を裏切らず、もちろんバツバツした食感だ。

歯ごたえが良く、甘みは穏やかな墨烏賊。

 

松野寿司鮃

昆布〆ながら、ねっちり、しっとりした食感。

強めの〆加減なのに、なまめかしい印象を与える。

昆布の香りと旨味の浸透はクラシカル寄りだが、テクスチャーは全く古臭くない。

 

車海老

松野寿司車海老

茹で置きで冷ためだが、繊維は凝縮しておらず、しっとりとほどける。

オボロの甘みが強めで、お酢が利いたシャリとのコントラストが楽しめる。

 

北寄貝

松野寿司北寄貝

柔らかく、トロトロで、甘みがある北寄貝。

こちらも冷ためで温度管理についてはクラシカルだが、この価格帯でこのクオリティとは頭が下がる。

 

針魚

松野寿司針魚

ねっちり、とろりとほどける。

ばっつりした食感とは異なり、滑らかなテクスチャーが魅力。

 

真梶木

松野寿司真梶木

これは時期的に予想外で嬉しい!!

脂が乗っていながらサラリとしている。

香りも鮪よりも穏やかで、特に血の香りは決定的に異なる。

いやあ、嬉しい出会いだ。

 

赤貝

松野寿司赤貝

香とり旨味が途中から高まる。

今年は厳しいが、赤貝らしさを伝えてくれるクオリティだ。

 

松野寿司鮪

蛇腹の湯霜漬け。

マカジキとの香りのコントラストが実に良い!

脂は強くない、トロながら香りと酸味がある。

これまた仕事が良い。

古典の魅力を伝えてくれる仕事だ。

全体的にタネが冷ためなのはご愛嬌と感じる。

 

小鰭

松野寿司小鰭

みしっと凝縮した身は、ホロホロとほどける。

お酢の酸味はしっかりと浸透させている。

小鰭自体の旨味と脂は弱く、香り立つ小鰭であり、これは時期も大きく影響している。

 

穴子

松野寿司穴子

ホロホロな煮加減に、強い煮ツメを合わせる。

煮ツメにはほのかな苦味があり、味を引き締める。

 

干瓢巻き

松野寿司干瓢巻き

海苔は紺飛びのようで、香りが良い。

干瓢は甘みがありつつ穏やかで、醤油は強くない。

山葵無しの昔ながらの粋なスタイルで巻いている。

(現在は山葵ありが主流だが、かつては山葵入りは無粋とされた)

 

玉子

松野寿司玉子

しっとりしていて、香りが良い玉子。

シャリの酸味が絶妙に支える!

 

鯛 追加

松野寿司鯛

昆布〆で、みっちり〆ているが、脂があるので乳化する。

〆の仕事の素晴らしさを実感する。

鯛を〆ることが少なくなった現在だからこそ魅力を再認識。

 

鰯 追加

松野寿司鰯

〆が抜群に利いていて、脂が封印されている。

 

鰹 追加

松野寿司鰹

とろりと艶めかしい口当たりで、穏やかな旨味があり、鉄分が引き締める。

みっちりなめらかで旨い初鰹だ。

調味料は江戸前らしく和芥子。

 

蛤 追加

松野寿司蛤

しゃくしゃくと食感が豊かだが、決して硬すぎない火入れ。

強い味わいの煮ツメも相まって、噛み締める喜びがある。

 

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2017年3月訪問時の記事

2017年3月訪問時に頂いたものは、下記のとおりです。

 

ガリ

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そして、ガリについても一般的な街場寿司とは一線を画し、

シャープな辛味があり、食感はシャキシャキ。

甘みがかなり抑えられており、赤酢の香りがするガリです。

街場のお店は甘酢でベッタリ甘い事が多いので、これは嬉しい。

前置きが長くなってしまいましたが、以下に詳細をお伝えします。

おまかせを頼み、仕事中心のタネで…とお願いしました。

 

先付

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北寄貝は特有の甘みと香りがあり、本山葵を使用されており、期待が高まる。

 

墨烏賊

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一貫目に江戸前を代表する墨烏賊とは、粋。

厚みがあるのでファーストバイトはゴワッとしつつ、直ぐにパツパツと切れる。

 

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しっかりと昆布で〆る古典的な仕事。

食感はみっちりとしており、グルタミン酸も強めに浸透。

 

車海老

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海老は甘酢に漬け、オボロを噛ませている。

オボロと海老の甘みに対して酢の酸味が合わさり相乗効果を発揮。

海老がピンでなかった為…との事だが、これこそが江戸前の仕事也。

 

鮪中トロ

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クロマグロではなくメバチマグロとの事だが、実に香ばしく美味。

漬けに妙が有る。

旨味も凝縮されており、脂も程良く楽しめる。

 

小鰭

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しっかりと〆ており、酢も強めに浸透している。

クラシカルな仕事で旨味を封印する。

 

真梶木

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千葉県勝浦産で、旨味と酸味のノリが良い。

一般的に、2月中旬~3月はクロマグロよりも真梶木の方が良い。

カジキと言えばスーパーで売っている安い切り身のイメージが強いだろうが、あれは「メカジキ」で別種となり、冷凍モノが多い。

真梶木は江戸を代表するタネで、比べ物にならない程、旨い。

これを出しているお店は古い仕事を継承しているお店か、江戸前と向き合っている職人さんのお店である事が多い。

シーズンオフでもクロマグロを追いかける自称食通とは、実は半可通である次第。

 

ヤイト

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標準和名はスマ。

高知県や九州で食される美味しい魚。

脂がありつつサラリと酸味が引き締めてくれる。

東京ではあまり流通していないタネを交える点は、ストーリーに起伏が付いて魅力的。

 

煮蛸

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波打たせて切り付けた後に、丁寧に細かく包丁を入れる。

そして、温めてから提供。

しっかりと香りを楽しめ、蛸らしい食感が残されている。

噛みしめると旨味が立つ。

良き煮仕事。

 

春子

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小鰭とは対照的にしっとり、ふんわり優しい〆。

 

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まず、煮ツメの見た目に歓喜!

濃厚である事が瞭然であり、実際に口に触れた途端に旨味と香りが横溢する。

昨今流行の薄い煮ツメとは雲泥の差。

聞けば、穴子の煮汁に加えて、烏賊の煮汁も用いているそう。

蛤もしっかりと漬け込んでおり、クラシカルな仕事。

 

穴子 追加

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柔らかくも食感を残しており、これは良い!

穴子の香りも残っている。

柔らかく炊けば良い風潮が無きにしも非ずだが、穴子の魅力である野趣に富む香りを消してしまっては本末転倒。

食感、香り、旨味を両立させる穴子こそが美味である。

こちらのみ産地を伺ったが、やはり対馬との事。

脂の含有量が多い穴子を巧く煮ており、尚更嬉しい。

本日は煮仕事が特に印象深かった。

 

カジキ巻きと干瓢巻き

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カジキ巻きとは珍しい…と言うか、初めて頂いた。

真梶木の爽快な旨味と海苔の風味が合う。

干瓢は濃いめの味付けで甘みを利かせ、食感は柔らかと言うクラシカル仕様。

 

玉子

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芝海老を用い芋は不使用。オボロを挟み鞍掛に!

この価格帯のお店でここまで古典的な玉子は初めて。

「松野寿司」さんのお店情報と予約方法

「松野寿司」さんの予約はお電話のみとなります。

 

店名:松野寿司(まつのすし)

シャリの特徴:硬めに炊き、米酢と赤酢を半々でブレンドしたシャリ。

予算の目安:おまかせ4,500円、お好み300円〜

TEL:03-3951-3588

住所:東京都豊島区南長崎2-16-12

最寄駅:椎名町駅から450m、落合南長崎駅から950m

営業時間:17:00~21:00、日・祝12:00~13:30、17:00~21:00

定休日:水曜

 

町の名店には銀座の名店とは異なる味があるとしみじみ思う、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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すしログ No. 185を大幅リライトしました。

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