すしログ:独学で新たな鮨を生み出す俊英!沼里親方の大宮「いしまる」

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

こちらは2020年にリニューアルオープンされた時より、長らく伺いたかった鮨店です。

大宮は自分の生活圏から離れているため訪問まで時間が掛かってしまいましたが、結論から言うと、「いしまる」さんのために大宮に行く理由がある!と感じました。

 

親方の沼里さんは居酒屋としてキャリアをスタートされ、独学で鮨を体得されています。

そして、その握りには明らかな個性が宿っています。

遠くても、定期的に足を運んで進化を見届けたいと思った次第です。

いしまる小鰭

大宮「いしまる」の親方・沼里裕幸さんについて

いしまる看板

「いしまる」の親方のお名前は沼里裕幸ぬまりひろゆきさん。

お名前を聞いて、「えっ、石丸さんじゃないの?」と思う人が大半でしょう。

実は店名の由来は、大宮にある地酒酒屋の石丸酒店さんの横で角打ちをされていたことにちなみます。

角打ちを3年営んだ後に独立され、「たちのみいしまる」として10年。

そして、2020年8月に鮨店「いしまる」としてリニューアルオープン。

独立されても屋号を変えずに10数年とは、大変おおらかな方ですね…(笑)

 

なお、「たちのみいしまる」は「立ち飲み屋」と言っても、10,000円のおまかせコースを用意していた模様です。

よって、リニューアルオープン前から鮨店並の仕入れをされていたことが推測できます。

その結果、「たちのみいしまる 高い」などと言うGoogleの予測ワードが現在も表示されます。

このような情報を見ただけで、僕は沼里親方が鮨店としてリニューアルされて本当に良かったと感じます。

その理由は、以下の3つ。

  1. 立ち飲み時代の鮨を見ても完成度が高い点
  2. 魚料理の価値を理解してもらうには鮨は最適である点
  3. 鮨と言うジャンルは「基準」になるので仕事の本質が可視化される点

僕は居酒屋も好きで、特に魚介に強い居酒屋は大好きです。

ただ、世間一般的に「居酒屋」だと、仕入れが強くとも高価な場合には不当に評価されてしまう可能性があります(それがGoogleの予測ワードに反映されているのでしょう)。

 

恐らく未だに「高い」と言う人はいるのだと思いますが、僕は頂いてみて、むしろ「安い」と感じました。

真っ当に鮨を食べ込んでいる鮨好きならば、感想は僕と同じになる筈です。

すしログ

なにはともあれ、沼里親方の才能が埋没しなくて良かった!

鮨職人として今後どのように化けられるのか、本当に楽しみです。

 

沼里親方は前述の通り独学で鮨を学ばれた方です。

魚介酒場を営みながら、YouTubeと食べ歩きで鮨を学び、魚河岸で魚を知ったそうです。

これは超有名店で短期間の修行を積み、開店と同時に予約が殺到する東京鮨バブルの真逆を行きますね。

 

鮨に限らず「独学」の場合、一般的にイマイチの確率の方が圧倒的に高く、その理由はひとえに基礎が無いことに起因します(カフェ飯をイメージして頂ければ分かりやすいでしょう)。

基礎が無いのにアレンジ(自己表現)を行うことで、創作は失敗に陥ります。

しかし、「独学」が奏功した際、異常なまでの完成度を示します。

沼里親方は言わずもがな、後者のタイプです。

 

また、修行していないからこそ独特のバランス感覚があります。

シャリ、魚の手当て、仕事のバランスに個性があり、つまり頂いていてワクワクする鮨です。

人気店・有名店と言っても同じ仲卸から同じような魚種を揃えることが多いため、内容が似てきてしまっているのが、東京鮨バブル。

その点において、沼里親方は修行経験のある人気店の職人さんにも決して負けないセンスとポテンシャルをお持ちだと感じました。

 

使用するタネの選択だけでなく、コースの組み立て方についても型にはまったところが無く、かなり個性的な流れです。

常に次の一貫が気になる構成なので、これは鮨通であればあるほど楽しみが増幅されるシステムだと感じます(笑)

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大人気の魚、ノドグロで分かる沼里親方のセンス

今や流行りの鮨種であるノドグロ(標準和名アカムツ)。

沼里親方は流行りを意識しないアプローチをされています。

いしまるノドグロ

ノドグロは「脂が多く、香りが弱い魚」です。

よって、炙ることで脂が溶け、香ばしさが付加されるため、「魚の本質的な美味しさ」とは異なる要素でマスキングされます。

鮨は「魚の本質的な美味しさ」を引き出すことが最大の目的である料理。

実は、ノドグロと言う魚は、鮨において扱いづらい魚だと個人的に考えています。

 

それを知っている職人さんは鮨で出す時は炙らないか、あるいは焼きものとして酒肴で出すことが多いと感じます。

このようなノドグロに対する意識的なアプローチは職人さんとしての「センス」に依存するところが大きいので、昨今ノドグロと言う魚は鮨職人としてのセンスを冷酷に表す魚だと思います。

 

沼里親方は脱水、寝かせ、炙りの使い方が非常に意識的で、「シャリとの調和」を意識されているのは間違いありません。

まず、炙りの香りが穏やかで、脂についてもテラテラになるほど溶かしていません。

なので、ノドグロらしい脂を唇ではなく口内で感じながら、シャリとじっくりと一体化していくプロセスを楽しめます。

すしログ

ノドグロを通して、親方の魚の知識と鮨愛を感じることができました。

もちろん他の魚についても同様なので、後述する詳細をお楽しみください!

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「いしまる」のシャリについて

赤酢100%のシャリですが、強すぎないバランスです。

使用しているお酢は私市(キサイチ)醸造の赤酢とのことですが、恐らくヨコ井の珠玉か琥珀をブレンドされているように感じました。
→後ほど親方からご連絡を頂き、琥珀をブレンドされているとのことでした。

私市の赤酢はコクがしっかりとあり、ブレンドして威力を発揮する赤酢だと実証実験より確信しました。

これはご連絡を頂いたメーカーの方も仰っています。

すしログ:前代未聞!?鮨ブロガーが鮨向けの赤酢を飲み比べ!

 

「いしまる」のシャリは赤酢の色合いこそ穏やかで、コクのパンチも穏やかですが、酸味はキレッキレです。

塩気を利かせているようですが、さして気にならない塩梅です。

これは砂糖を用いてカドを取っていることが理由かと思います。

 

お米の炊き加減も特徴的で、硬くなく、トレンドからすると少し柔らかめかもしれません。

しかし、ぱらりとほどけます。

これは良いですね。

極硬めのシャリに慣れている人は「もっと硬い方が良い」と言うかもしれませんが、それは単なる慣れの問題です。

本質的に、昔は硬すぎるシャリは失敗作とみなされました。

硬いとお米の甘みが活きませんので。

硬く炊かずにパラッとほどけるシャリが理想であり、シャリ切りと握りの技術が試される次第です。

ちなみに、お米の品種は「笑みの絆」。

鮨専用品種のお米で、使用するお店がぽつぽつ増えています。

 

沼里親方とシャリについてお話すると、試行錯誤されてきた足跡がしのばれます。

今後の伸びしろを十分に感じる考えられたシャリです。

 

「いしまる」の立地と雰囲気

「いしまる」は大宮駅から少し離れた、繁華街を抜けた先にあります。

立地は飲み屋街の一角の雑居ビルの2階。

いしまる外観

知らなければフラッと入ることはないでしょう。

ただ、昔は看板も出していなかったそうなので、少し入りやすくなった模様です(笑)

 

しかし、店内の雰囲気は外観から想起されるイメージを裏切ります。

急峻な階段を上がると現れる板目の木扉。

扉の先に広がる、上質な空間!

真新しいヒノキのカウンターが美しく、広々した店内は瞬時にリラックスさせてくれます。

リニューアル前の写真を見ると、気合いを入れて内装工事をされたことが分かります。

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「いしまる」のおまかせの詳細

緊急事態宣言下で「禁酒法」の影響もあり、【握りのみのコース】11,000円を頂きました。

これは現在限定の特別コースなのですが、握り15貫+巻物、玉子、椀で構成されていて、満足度が非常に高い。

親方いわく、「コロナ協力金は、お客さんに還元してナンボ」

すしログ

親方の男気にシビれました。

今だけ原価率60%強らしいので、褒め言葉でクレイジーな職人さんです(笑)

2021年5月下旬訪問時の記事

春から初夏に入る時期に訪問した際に頂いたものです。

 

水茄子

いしまる水茄子

檸檬で色止めを行っているようで、サッパリ味。

爽やかで甘い。

季節を野菜の先付で楽しませてくれるのは嬉しい。

 

ガリ

いしまるガリ

塩気を利かせ、ほのかな甘みがあり、酸味は穏やか。

新生姜なので辛くない。

食感はシャキシャキ。

 

イサキ

いしまるイサキ

熟成で旨味を引き出している。

旨味と脂にシャリの酸味が調和して、多層的な味わいで魅せる一貫目。

 

カマス

いしまるカマス

塩を利かせた〆にオボロの甘みを合わせる。

これはカマスを用いつつクラシカルな仕事を採り入れる、硬派な仕事。

※王道の江戸前鮨ではカマスは使用しないため

 

ノドグロ

いしまるノドグロ

前述の通りであるが、一般的なノドグロのようにトロトロとろけることはない。

ムチムチした身はホロリとほどけ、炙りの香りをふんわりと残す。

前半に出す必然性を感じるノドグロである。

 

鮪赤身

いしまる鮪赤身

酸味があり、血の香りもふんわりと楽しめる赤身。

食感は非常に柔らかい。

この時期に凄いな…と思っていたら、後に昨年9月の水揚げのもので、仲卸のフジタ水産の方で冷凍保存していたものであることが判明。

なるほど!

フジタ水産らしい味わいの赤身で、納得した。

 

鮪中トロ手巻き

いしまる鮪中トロ手巻き

感想メモをそのまま書くと「うーむ、旨い!」である(笑)

鮪の旨さとシャリの味わい、海苔の香りと食感の全てのバランスが良い手巻き。

 

小鰭

いしまる小鰭

クラシカルな〆加減で、みしっとした後にホロッホロとほどけ、その課程で旨味と香りが広がる。

オボロも噛ませているが、秀逸な塩梅だ。

きめ細かいペースト状にしているので、甘みと香りが後からふわりと追いかける。

今までに頂いたオボロを用いる小鰭の中でもトップクラスに旨い。

 

春子

いしまる春子

しっとりした食感で、非常に軽やかな〆加減。

塩〆後に酢で〆るのではなく、提供前に酢で軽く洗っているのか?

生のように柔らかく感じるが、決して生ではなく「なまくら」ではない。

柚子皮をごく少量使用して爽やかに。

クラシカルな小鰭の後に、優しい味わいのモダンな春子を繋ぐ。

ストーリーテリングが素晴らしいセンスである。

 

いしまる鯵

提供前に「酢洗い」ではなく、お酢に短時間さらす仕事。

脂のノリについては旬の走りなので弱めだが、サイズが大きいことに加えてお酢の仕事が奏功しているため、本来の魚以上の味に昇華させている。

産地自体ブランドの出水だが、仕事が良い。

魚を旨くする仕事、これぞ鮨の醍醐味!

小笹寿し(下北沢)の岡田周三氏が生み出した浅葱と生姜を合わせた調味料を噛ませている模様。

 

墨烏賊

いしまる墨烏賊

アオリイカの時期に墨烏賊を使用されている点が粋。

個人的に鮨に最も合うイカは墨烏賊だと確信している由。

分厚いので、ぶちりぶちりと墨烏賊らしい力強さがあり、次第にとろりととろける。

 

タイラギ

いしまるタイラギ

海苔で巻くのではなく噛ませている点が粋だ

しかも、炙らずに生。

よって、タイラギの甘みをストレートに楽しめる。

噛み締めていると貝類らしいコハク酸と軽い苦味が口の奥でジワッと滲む。

墨烏賊とトリ貝の間に配置している点も心ニクい。

※なぜ粋かと言うと、貝類や玉子を海苔で巻くのは基本的に「握れない」方が行うものであるから。握れる職人さんであれば、巻かずとも良いもの。味覚的に海苔を使いたい場合は話が別だが、それでも沼里親方は巻かずに噛ませる選択肢をチョイスしている。

 

トリ貝

いしまるトリ貝

非常に甘く、分厚いのでシャックシャクな心地良い食感。

香りも良い。

 

海胆

いしまる海胆

「まるひろ」の海胆で、甘い!

この後に某高級ブランドの海胆も一粒頂いたが、ミョウバンの収斂味(苦味)が強すぎてビックリ。

海胆=ブランド&価格だと思われがちだが、そうではないことを舌で実感した。

 

車海老

いしまる車海老

徳島産の天然モノ。

茹で置きを提供直前に蒸し器で温めてから握っている。

みっちりと引き締まった身質だが、繊維はしっとりとほどけ、甘みは上品。

 

いしまる蛤

しっとりと柔らかな火入れとしっかりした漬け込みのバランスが良い。

また、煮ツメも旨い。

古典的な濃口の煮ツメだが、穴子の旨味を活かしつつ糖分による甘みを制御した味わいの穴ツメ(穴子の煮ツメ)である。

 

いしまる椀

ナメコと三ツ葉のホッとする味わいの味噌汁。

 

穴子

いしまる穴子

食感はふわとろで、煮る際の下味は穏やか。

上品にまとめで、濃口の煮ツメと合わせる。

 

干瓢巻き

いしまる干瓢巻

食感がかなり強めで、味付けもしっかり。

さらに、山葵無しのクラシカルな干瓢!

山葵入りの干瓢巻き=「鉄砲」は後に生み出された仕事。

僕は鮪モリモリの太巻きよりも干瓢巻きで締める方が粋だと思う人間だが、さらに味付けと山葵無しとは大変硬派で好印象。

本来であれば、このような巻物こそが鮨。

世間には鮪モリモリの太巻きを動画で撮ってウェーイ!する自称「鮨通」が増殖しているのが嘆かわしい限りだ(お客のせいでお店が風潮に乗っかっているのは間違いない)。

 

玉子

いしまる玉子

食感はふわんふわんで、スポンジっぽい低反発が面白い玉子焼き。

思うに大和芋を用いつつ、同時に卵白をメレンゲに立てて作られていると見た。

最後に独特の旨味が残り、これは海老ではなく(貝類でもなく)白身魚かと思われる。

 

「いしまる」のお店の情報と予約方法

お店の予約についてお電話のみとなります。

コロナの影響で変則的な営業なので、ご注意ください。

 

いしまる(食べログのリンク)

店名:いしまる

予算の目安:おまかせ11,000円(緊急事態宣言下限定コースの価格です)

最寄駅:大宮駅から550m

TEL:048-871-7244

住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-305

営業時間:お昼(土・日)13:00~、夜18:00~ ※一斉スタートのため遅刻厳禁

定休日:不定休

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大宮と言えば「さいたまスーパーアリーナ」でしたが、今後は「いしまる」さんだと感じる、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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