すしログ:「太華」から「江戸前芝浜」へ!深化する江戸料理

こんにちは、江戸料理が再評価される日を心待ちにしている、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

僕が「東京で訪問すべき日本料理店」の筆頭として挙げるお店、太華。

この度、2021年6月に移転され、屋号を改めリニューアルオープンされました。

江戸前芝浜外観

新しいお店の名前は「江戸前芝浜」。

さらにシンプルで渋い名前に変えられて、驚きました。

しかし、何度か足を運んでいる人間には納得のネーミング。

落語の演目であることに加えて、ご主人の海原大さんは大の芝海老好きなので。

江戸前芝浜芝煮

江戸料理愛と芝海老愛を抱く海原さんは、芝の地で如何なる世界を表現するのか?今後が大いに楽しみです!

「江戸前芝浜」のどこが凄いのか?その魅力に迫る

「江戸前芝浜」の凄さは、ご主人である海原大かいばらひろしさんが江戸時代の文献を読んで江戸料理を研究されているところです。

しかも、現代人の味覚で美味しいと感じる御料理に仕上げられている点が凄い!

 

江戸料理は京料理を中心とした関西料理(上方料理)が席巻した都合上、絶滅危惧の状態に陥って久しい料理ジャンルです。

江戸料理を謳い、コースに仕上げているお店は、ほぼありません。

今残る江戸料理は鮨、鰻、天婦羅、蕎麦など単一の調理に集約され、一品料理をコースとして構成するお店は無くなっています。

 

江戸料理をコースで供するお店としては、かつて大塚に「なべ家」と言う名店がありましたが、2016年に閉店してしまいました。

ご主人の福田浩さんは『豆腐百珍』や『完本大江戸料理帖』という名著を上梓された江戸料理の大家です。

料理好き、和食好きであれば、これらの著書は本当に必読です!

このような名著をしるされた福田さんは今もご健在で、海原さんを始めとする中堅の料理人の方と親交を深められています。

文化が死滅せずに継承されているのは本当に嬉しい事ですね。

すしログ

僕個人としては、キャヴィアやトリュフを用いる節操ナシの日本料理よりも、温故知新による革新を試みる料理の方が好みに合い、江戸時代の書物をひもとき自身の世界観を模索する海原さんにこそ、未来の可能性を感じる次第です!

「江戸前芝浜」のご主人・海原大さんについて

ご主人・海原さんの探求心と表現力には目をみはるものがあります。

料理や食材を本当に愛している人には響くはず…

本質を求めるグルメな方は是非とも訪問してください!

ただ、現在の東京の和食のトレンドである脂の使用は限りなく抑えられていて、高級食材が出てくるわけでもないので、ミシュランや食べログの上位店を巡る「フーディー」は訪問しない方がベターです。

 

海原さんは25歳の頃に料理の道に入られたので、料理人としては遅いスタートです。

そのために「京都での修行は気が引けて止めた」との事で、奥ゆかしい。

葉山の名店・日影茶屋(江戸時代中期1700年~1750年頃に創業)を経て、白金・心米や上野松坂屋の銀座鳴門(鰻屋さん)などで修業されました。

ただ、料理人を志すきっかけはイタリアンレストランであったところは意外なところです。

 

そして、奇しくも「なべ家」が閉じられた2016年に「太華」をオープン。

現在、ご自身の城を構えられて5年ほどですが、明確な存在感のある御料理を作られています。

ご主人は「修行・研究の毎日」だと控えめに仰りますが、僕は既に完成の型を見出しておられると感じます。

 

海原さんは、『料理物語』などの江戸時代の名著をひもといたり、福田浩さんの薫陶を受けたりされながら、ご自身が考える江戸料理を作られています。

僕も江戸時代の文献を読むことがありますが、読んだところで美味しい料理を作れるわけでは決してありません。

海原さんは探求心や熱意があるばかりでなく、想像力と調理技術に長けた方であるからこそ、江戸料理の美味しい再構築が奏功しているのです。

 

「江戸前芝浜」海原大さんの御料理の特徴

僕は通常コース以外に【広島県・安芸高田産の猪と鹿を用いたコース】や【タイラガイ(タイラギ)のコース】なども頂いたことがあります。

その上で感じている特徴は以下の通りです。

  • 江戸料理らしく昆布を用いず鰹のみで巧みに出汁を引く
  • 食材の持ち味に寄り添う出汁と塩の使い方
  • 誰もが知っている食材に秘められた、誰もが知らない魅力を引き出すセンス
  • 〆の土鍋炊きの白ご飯が抜群に美味しい

海原さんの鰹出汁の美味しさについては、日本トップクラスです。

僕が「お店のスペシャリテ」と考える【芝海老真薯の椀】は本当に素晴らしい椀です。

芝海老と鰹出汁を調和させ、他に無い表現で食べ手を感動に導いてくれます。

 

御料理の全体的な特徴としては、いわゆる「引き算」ですが、伝統調味料や薬味を効果的に足す事もされます。

薄味志向ではありますが、物足りなさはありません。

 

「誰もが知っている食材に秘められた、誰もが知らない魅力を引き出すセンス」とは、ちょっと抽象的な表現ですが、具体例を挙げると芝海老が分かりやすいです。

芝海老は江戸前鮨の玉子の原料に使われたり、安価なものが居酒屋の揚げ物で出てきたりするイメージだと思います。

 

しかし、海原さんが仕入れる芝海老は状態が非常に良く、サイズも大きくて、味わい深いです。

それを幾つもの調理法で出されるので、サプライズがあるわけです。

なんと小鰭を天麩羅で出されたのには、心から驚きました!

 

最後に、〆のお食事は土鍋炊きの白ご飯とストイックです。

お米の甘みと香りが引き出され、瑞々しさを感じるお米は、それだけで贅沢。

ご多分に漏れず東京では脂過多なハラスご飯やトリュフ卵かけご飯などが持てはやされますが、それらはお米を炊く技術が無いと公言しているに等しい行為です。

 

僕もかつては南部鉄器の羽釜で炊き、今は一志郎窯の土鍋で炊いていますが、お米を炊く行為は、それだけで一つの料理を作る程に技術が必要なもの。

ある意味、魚の焼きものや炊き合わせよりも難しいのが、炊飯だと思います。

足し算すれば誰もがマスキングできるので、白ご飯で出す方は完全におとこです。

なお、一志郎窯の「味事飯鍋」は技術不要で美味しく炊けるチート土鍋なので、土鍋に興味のある人に超超オススメしています。

▶ご参考記事:すしログ御馳走帖 味事飯鍋の記事

 

「江戸前芝浜」の立地と雰囲気

港区の芝公園駅が最寄りです。

芝公園と聞くと、東京タワーや増上寺のイメージで、超ハイソなエリアだと思われるかもしれません。

しかし、「江戸前芝浜」のあるエリアは落ち着いた昔ながらの商店街のある住宅地です。

気を張る事無く伺えます。

 

とは言え、リニューアル後のお店は外観も内装も大変スタイリッシュです。

江戸前芝浜外観

暖簾は福田浩さんの奥様が作られたとか。

素敵ですね。

 

店内はカウンター7席、4人掛けテーブル2台で、広々としています。

江戸前芝浜内観

さらには2階に大座敷もあるそうで、驚きました。

「太華」の頃はこじんまりしていたので。

 

聞けば、もともとは昔ながらの街場中華だったそうですが、コロナでお店を畳まれたため、物件が出たとのこと。

一等地で優雅な間取りなので、海原さんに天が味方したように思います。

江戸前芝浜内観02

店内奥には「江戸料理番付」が貼られています。

江戸前芝浜江戸料理番付

なかなか読みづらいとは思いますが、ご関心のある方は必見です!

この中からも御料理が登場するので、歴食好きには堪らないかと思います(笑)

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「江戸前芝浜」のコースの詳細

コースは2つで、お任せ10,000円と、ご飯ものなしの8,800円とシンプルです。

食材やテーマを相談して、独自のコースを組み立てて頂くことも可能です。

「江戸前芝浜」のお酒

この度頂いたお酒

江戸前芝浜酒器

  • 石川酒造、多満自慢 純米大吟醸
  • 豊島屋本店、金婚 しぼりたて無濾過生原酒
  • 石川酒造、多満自慢 ササニシキ熟成古酒

お酒は1合1,000円と良心的な価格設定です。

いや、価格以上に面白いのが、品揃え。

東京の酒蔵の日本酒を集めています。

江戸前芝浜お酒

思えば、各県にはお国自慢の日本酒を揃えるお店が多々ありますが、東京は東京の酒蔵に絞るお店が極端に少ないですよね。

これは東京は全国の逸品が集う場所であることと、江戸時代には東京のお酒が低品質だとみなされていたことが理由と思われます。

江戸時代には、大坂や京都などの「上方」からの「下り酒」」こそが最上とされていました。

しかし、時は流れ、酒造の技術は変わりましたし、何よりも消費者の味覚の幅が広がりました。

よって、基本的に「〇〇県の酒は美味い」と表現するのはナンセンスになっています。

「〇〇県の酒は自分の腑に落ちる」くらい粋に言うべきですね。

結論としては、今の東京のお酒はスッキリしていて美味しいと言うことです。

 

ちなみに、ワインも白、赤、スパークリングを用意されていますが、全て日本ワインであるのも好印象です。

日本料理店でフランスワインばかりなお店は、日本人はおろかフランス人に笑われても致し方ありませんね。

テロワールと味覚を考慮したお酒の選択が重要です。

2021年6月下旬に頂いた御料理

  • 先付:むきみ切り干し、煮豆、瓜の糠漬け
  • サザエの梅肉和え
  • サザエの肝
  • 椀:芝海老真薯
  • 鰹の下駄造り(タタキ)
  • 白鱚と芝海老の薬味和え、小茄子、芝海老の玉子焼き
  • 芝海老の肝
  • 小鰭の天麩羅
  • 白鱚の天麩羅
  • 芝煮
  • お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ
  • 水菓子:山桃、白玉

 

むきみ切り干し、煮豆、瓜の糠漬け

江戸前芝浜むきみ切り干し、煮豆、瓜の糠漬け

【むきみ切り干し】は貝の出汁で炊く切り干し大根。

前述の「江戸料理番付」では、「関取」だ。

この度は浅蜊の出汁で炊かれている。

頂くと、歯ごたえと香りが良く、確かにコハク酸特有の旨味を感じる。

煮豆は大きな大豆が嬉しく、甘くて香りが良い。

糠漬けも爽やかな香りで、美味しい。

実に嬉しくなる先付。

派手な先付よりも、一見すると地味ながら工夫が感じられる先付の方が格好良いものだ。

 

サザエの梅肉和え

江戸前芝浜サザエの梅肉和えサザエは食感がゴリッゴリ!なところと柔らかいところがあり、頂いていて飽きが来ない。

柔らかい部位は甘みが強い。

磯の香りは上品。

梅肉と針生姜が涼を誘う。

 

サザエの肝

江戸前芝浜サザエの肝

肝はバッチリ火を入れていないところが洒脱で、軽くトロトロして滑らか。

そして、香りが良く、苦味はごく軽い。

山葵はもちろん抜かりなく本山葵なので、甘みと香りを楽しめる。

 

椀:芝海老真薯

江戸前芝浜椀:芝海老真薯01

目が覚めて、優しい気持ちが満ち溢れる、そんな椀だ。

江戸前芝浜椀:芝海老真薯02

鰹出汁の吸い地は旨味、香り、塩気が全く行き過ぎることなく穏やかにピタッと調和している。

それ故に淡くとも鮮烈な印象を抱き、深い満足感に耽溺する。

椀種も潔い。

芝海老真薯のみで、椀妻も吸い口も不使用だ。

よって、芝海老の味わいに浸る事が出来る。

芝海老の甘みと香りに陶然となり、心地良い弾力を楽しませる。

これぞ、足すものも引くものも無い、完成された椀ではないだろうか?

 

鰹の下駄造り(タタキ)

江戸前芝浜鰹の下駄造り(タタキ)

大根おろし、大葉、白髪ネギで和えた鰹のタタキ。

鰹は随分と脂が乗っており、驚いた。

鰹の脂と香りと酸味を全て楽しめる調理法。

皮なしなので炙りの香りは穏やか。

柑橘を用いずにお酢で酸味を加えている点が江戸料理らしい気がする。

 

白鱚と芝海老の薬味和え、小茄子、芝海老の玉子焼き

江戸前芝浜白鱚と芝海老の薬味和え、小茄子、芝海老の玉子焼き

白鱚と芝海老を交互に味わう楽しみがある。

白鱚はみっしりしっとりした食感で、芝海老も大変良い食感。

決してトロトロではなく、むちっむちっとろり。

実に甘い。

また、鰹出汁と茗荷の香りも魅力的。。

芝海老の玉子焼きは卵の甘みと芝海老のホロ苦味が面白いバランス。

 

芝海老の肝

江戸前芝浜芝海老の肝

鮮度が高い日しか頂けない、ラッキーアイテム。

臭みは全くなく、甘みすら感じる肝だ。

 

小鰭の天麩羅

江戸前芝浜小鰭の天麩羅

非常に珍しい、サプライズ料理!

小鰭は鮨の花形だが、天麩羅も一興。

しっとりホロホロした繊維質で、香りは鮨よりも穏やかながら楽しませてくれる。

当然〆ていないので瑞々しさがあり、それを天麩羅で閉じ込めている。

 

白鱚の天麩羅

江戸前芝浜白鱚の天麩羅

肉厚で、ホロホロ。

小鰭とのコントラストが良く、全体的に構成の妙を感じる。

 

芝煮

江戸前芝浜芝煮

芝の郷土料理である【雑魚鍋】を上品にアレンジ。

海原さんが「5年の集大成」と表現する御料理だが、そのお言葉は過言ではない。

芝海老、白鱚、三ツ葉が絶妙な相性。

芝海老の甘みと白鱚の上品な味わいをともに楽しませてくれる秀逸な鍋に仕上げられている。

江戸前芝浜芝煮02

これまた吸い地が良く、まろやかでありながら端正。

芝海老と白鱚の知られざる表情を見せてくれる【芝煮】に身も心も満たされる。

 

お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ

江戸前芝浜お食事:ご飯、芝煮の吸い地、芝海老おぼろ

本当に美味しい白ご飯である。

江戸前芝浜白ごはん

香りに心奪われ、甘みに陶然…

味付け無しでもご馳走になってしまう。

江戸前芝浜芝海老おぼろ

とは言え、付け合わせの芝海老おぼろが嬉しい。

芝海老で固めているところが徹底していて心ニクい。

芝海老づくしのコースを頂けるお店なんて、そうそう無い。

 

水菓子:山桃、白玉

江戸前芝浜水菓子:山桃、白玉

白玉は粉の品質が良く香り高い。

山桃の味付けも控えめで、水菓子ですらギリギリを狙っているところがストイック(笑)

 

「江戸前芝浜」のお店情報と予約方法

予約については、今のところ、お電話のみです。

 

江戸前芝浜(ヒトサラのリンク)

江戸前芝浜(食べログのリンク)

店名:江戸前芝浜(えどまえしばはま)

予算の目安:おまかせコース11,000円、ご飯ものなしのコース8,800円

TEL:03-3453-6888

住所:東京都港区芝2-22-23

最寄駅:芝公園駅から200m

営業時間:17:00~24:00 ※平常時の予定営業時間です

定休日:木曜

 

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【江戸料理に関するオススメの書籍】

文中でご紹介した福田さんの2冊

 

また、江戸料理や江戸の食文化に関心のある方には、下記の本も非常にオススメです。

 

江戸料理好きと繋がりたい、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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