すしログ No. 281 み富@銀座

大正時代からの歴史に終止符を打った新富寿し

こちらは新富寿し出身の親方のお店と聞いて、鮨好きとしては伺わねばと思っておりました。

なにせ新富寿しは新橋新富鮨の流れを汲み、かつての新橋新富は魯山人が激賞した「みっちゃん」こと矢沢貢親方がいた伝説のお店。

新富鮨は現存する鮨店の中でも古い歴史を誇り、仕事もまた「どクラシカル」でした。

「銀座仕様の街場鮨」だなと嫌味なく感じ、昔の鮨店はこうだったのだろうと思いを馳せたものです。

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親方の三橋さんは新富寿しで22年も修行・勤務された後、2018年7月に自分の城を持たれました。

お店は外観と入口こそ古めかしいビルに入っておりますが、店内とカウンターは素晴らしい雰囲気。

大きな窓からは銀座の通りが見え、カウンターはヒノキ製で凛々しい。

そして、驚くべきは営業スタイル。

なんと昼から夜まで通し営業で、年中無休!

さらに、お好みでのオーダーにも対応。

今や若手の新規店でもおまかせ一本となっており、お好みはおろか、お決まりさえ提供しない事が一般的。

お客の方も「鮨屋では、おまかせが当たり前」と思ったり、「おまかせで食べるのが格好良い」と思ったりする風潮がありますが、

個人的には同意しかねる次第です。

本質的に、鮨は食べたい時に食べたいタネを食べるのが理想です。

み富さんの握りの概要

さて、こちらの鮨について。

仕事は流石、新富寿しで高齢の親方に代わって取り仕切っておられただけあり、変わらず古典的な仕事。

特に光物の〆、煮物については古典好きとしては琴線に触れる事間違いなし。

それでいて、三橋親方のセンスで調整されている印象で、決して古臭くない点は新富寿し時代と異なる魅力ではないかと思います。

そして、新富寿しと良い意味で異なる点が2点。

煮キリを塗ってくれる点、シャリの温度が冷たくない点。

シャリは極わずかに甘みを感じ(お米由来の甘みか?)、酢と塩気は控えめ。

粘度は高くなく、親方はテンポの良い立て返しで握られます。

酢てシャリも無く、調味的には古典的ですが、現代でも野暮なところのないシャリだと思います。

(赤酢がバシッと利いた当世流のシャリが好きな人にはヒットしないでしょうが)

いきなりお好みで攻めるのも良いですが、平日ランチのお決まりは一人前3,000円と破格なので、まずはこちらを頂く事にしました。

その後、4貫+印籠詰め1個を追加しました。

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ビールはサッポロ赤星(¥800)です。

み富さんの握り

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ガリ

卓上の壺から自分で取るスタイルは新富寿しと同様。

甘みがしっかりしたガリは昭和的クラシカル感。

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鮪赤身

あっさり味の鮪で、酸味も旨味も軽い。

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タイラギ

生、海苔巻き。

甘みとほの苦味に山葵がキリッと利く。お昼のお決まりでも本山葵であるのが嬉しい。

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さっぱりな脂の初鰹。

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生を酢洗いで。

鯵の脂とシャリの酢が乳化し、旨い。

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生の蛸の艶めかしさを残しつつ、しっとり、さっくりほどけゆく火入れ。

塩味を利かせ、蛸の香りもあり、これは古い仕事で魅力的。

個人的に蛸は煮ツメや煮キリよりも塩で頂く方が蛸の香りを感じやすいと思う。

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いくら軍艦

海苔が美味しく、肉厚ながらバリッと弾け、香る。

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穴子

皮目の香りは強く、この点は好みを分けるかもしれない。

煮ツメは濃厚で大変美味しい。

この後、巻物(半分)と玉子との事だったので、握りを追加。

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小鰭 追加

皮目に甘みのある小鰭(手酢に甘みが?)。

〆加減に対して、身がホロホロ、しっとりとほどけるところは意外。

古い仕事だと、しっかり〆て身もみっちりするものなので。

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春子 追加

皮目をバシッと〆つつ、身の方はしっとり〆。

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鰯 追加

当世の鰯としては珍しく、しっかりと〆ておりこれもまた旨い。

鰯は江戸前鮨の中では新しいタネだが、古典的な仕事で解釈されており面白い。

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蛤 追加

濃密な漬け込みだが大型なので蛤本来の旨味と苦味がジワジワと追いかけてくる。

意外にも火入れは穏やか。

大きな柱がシャクッと反発する点が魅力的な蛤。

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槍烏賊の印籠詰め 追加

身はぷりぷり、パツパツ、子はもっちり、もぎゅもぎゅ、プチッと。

4月下旬であったが運良く頂く事が出来た。

こちらの印籠詰めは大変美味しい。

煮加減、煮ツメの深い味があってこそ。

濃厚な煮ツメはシャリの酸味との相性が抜群だ。

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ひもきゅう巻き(半分)

赤貝の紐、キュウリともに酢洗いしてから巻く。

香りが良い。

爽快。

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玉子

芝海老のみを使用した玉子を、古典らしく鞍掛で。

矢張り、〆ものと煮ものが他店には無い魅力を持っております。

故にお決まりよりも〆ものと煮ものを中心にお好みで頂くのがオススメ。

お会計はお酒を除外すると、税抜き6,800円。

印籠詰めを2貫扱いすると、1貫あたり633円。

銀座でお好みで頂ける鮨としては、破格と言えるのではないでしょうか。

様々な握りが登場し、紛れもなく進化している鮨。

その中で古典を頂く喜びは未だ紛れもなく存在しており、人気店、予約困難店ばかり巡るよりも得るものは多いと感じました。

人気店がストレートに旨さを伝えてくれるのに対して、古典はジワジワと伝えてくれる印象。

咀嚼し味を感じる為には、食べ手の鮨の経験を反映するように思います。

鮨 み富さんのお店の情報と予約方法

WEB予約は一休、食べログ経由で可能です。

鮨 み富(一休のリンク)

鮨 み富(食べログのリンク)

店名:鮨 み富(すし みとみ)

シャリの特徴:酸味、塩気ともに穏やかで、老舗を継ぐお店ながらに温度は低くない。

予算の目安:平日ランチお好み3,000円、おまかせ8,000円

最寄駅:東銀座駅から200m

TEL:03-6263-9889

住所:東京都中央区銀座5-10-11 川島ビル2F

営業時間:11:30~21:30

定休日:年末年始、お盆

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