こちらは大正時代から現存する老舗の鮨店。
池波正太郎が幼少から晩年まで通い続けたという逸話があるそうです。
お店の外観は当世風のお洒落さや高級感はありませんが、銀座の一角では寧ろ個性を放っております。
暖簾のくたびれ加減に屋台の名残を感じ、鮨好きとしてはグッときます。
暖簾をくぐって入ると、静謐な時間が流れておりました。
先客三名はカウンターで淡々と鮨をつまんでおります。
各々が一人客で、休日のため皆お酒を飲んでいる。
自分は先ずは一人前とお茶をオーダー。
ガリが卓上にあり、セルフサービスで取るところは面白いです。
味付けは甘めで、食感は少し柔らかめ。
シャリについては、特に尖ったところのない、オーソドックスな味わい。
赤酢と塩のみの味付けながらに、赤酢特有の香りは弱く、塩気も低いです。
魚沼産のコシヒカリを使用しているとの事ですが、粘度はそこまで高くない。
温度は予想した通り、老舗にありがちな低温です。
仕事としては煮ものに妙があり、タネとしては墨烏賊、玉子、春子、煮蛤が特に美味。
槍烏賊の印籠詰めは、特筆すべきものがありました。
そして、特徴的な仕事としては、〆ものを浅く、甘く仕上げる点。
この〆は非常に特徴的で、シャリに合っております。
鮪赤身
墨烏賊
包丁をあまり入れていないが、歯切れ良く、味わいも強い。
鰹 前掲
縞鯵
鯵
穴子
玉子
ふんわり柔らかで、甘みが漂う。適度な海老の味もあり、美味しい。
合羽巻き
春子 以下、追加
浅い〆が印象的で、本日頂いた光物の中ではベスト。軽やかな食感と滲むような香り。
小鰭
身がか細く、甘い味付け。
槍烏賊の印籠詰め
白眉。シャリとの合一感や、味わいの繋ぎ(薬味の妙)には欠けますが、
槍烏賊の子をレアに仕上げる火入れと、煮ツメとの調和には目を瞠るものがあります。
煮蛤
追加。やや強めの火入れですが、ツメが蛤の香りと旨味を活かします。
一人前に幾つか追加して、約5,500円。
追加は一貫当たり大体500~600円と、銀座では極めてリーズナブルです。
雰囲気、接客、コストパフォーマンスを考慮すると、こちらは銀座でありながらふらりと寄れる、いわば「銀座仕様の街場寿司」だと感じました。
正直なところお決まりに過度な期待は禁物ですが、煮ものと〆ものをお好みで頂けば、安く満喫できるかと思います。
店名:新富寿し
シャリの特長:赤酢と塩のみの味付けながらに、赤酢特有の香りは弱く、塩気も低く、万人に受ける。
予算の目安:4,000円~9,000円
最寄り駅:銀座駅から260m、東銀座駅から350m
TEL: 03-3571-3456
住所: 東京都中央区銀座5-9-17
営業時間:11:00〜~21:30
定休日:火曜日
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