「和菓子編」の第一回は、京都随一とされる和菓子屋さん。
和菓子の根幹をなす餡の美味しさが卓越しているため、最初のお店に選びました。
こちらの創業は1916年(大正5年)で、店名は、虎屋で修行された初代が、「月夜に遠吠する虎」という意味を持つ「嘯月」とされたそうです。
なんとも、切なく凛々しい店名です。
ちなみに、虎屋と言えば一般的には、「東京の高級羊羹メーカー」というイメージが強いかもしれませんが、実は室町時代に京都で創業された、500年近い歴史を持つ老舗中の老舗です。
1700年代に尾形光琳が虎屋の御菓子をパトロンに贈ったという記録が残されている等、興味深いエピソードが多い。
東京に移ったのは明治期なので、嘯月さんの初代が修行されたのは京都時代となります。
こちらの代名詞となっている御菓子は、金団(きんとん)。
カラフルな餡のそぼろが外を覆った和菓子ですね。
見た目に美しく、噛みしめると上質な餡の美味しさに圧倒される季節のきんとんは人を魅了してやみません。
僕も初めて写真を見た時に、いつか頂きたいと強く思ったものです。
また、嘯月さんは「美味しんぼ」でも取り上げられており、「日本で最高峰の和菓子屋さん」と評されています。
こちらは「完全予約制、要訪問時間指定」なので、京都を訪れる数日前にやや緊張しつつ電話をしたのですが、応対は優しく、ホッと安心しました。
「その日に作られるものを全種類、一つずつお願いします」とお願いし、受け取りの予定時間もお伝えして予約完了。
実にシンプルなので、ハードルが高いと思わずともよろしいかと思います。
当日は大徳寺一久で精進料理を頂いたのち、歩いて向かいました。
お店は住宅地の一角にあり、入りにくさはありません。
なお、京都の和菓子屋さんは明確な線引がされており、宮中、公家、茶家に献上する技術を要する御菓子を「上菓子」と呼ばれます。
こちらはその「上菓子」を提供するお店ですが、ハードルが高くないところが魅力です。
京都の和菓子店では一見客を断るお店もあるので、嬉しい限りです。
この度、弥生某日に頂いた御菓子は下記の通りです。
みちとせ
上品で、それでいてコクのある餡。
噛みしめると餡はサラッと溶け、舌の上に清々しい甘みを残します。
美しい見た目と繊細な味わいが同居した傑作です。
わらびもち
みちとせ(金団)に負けないインパクトを受けたわらび餅。
圧倒的な柔らかさ、軽やかさで、わらび餅と餡が一体化しております。
わらび餅の滑らかさ、餡と清々しさに加えて、黄粉も調和しており、驚きました。
草餅
自然の力強さを感じさせる草餅。
土を想起させる味わいで、噛みしめる度に香りに包まれます。
あこや
現代アートのような芸術的なフォルムで、食感の二重奏が面白いです。
餅と餡で作られ、「引千切」とも呼ばれるあこやは、京都の雛祭りの定番御菓子。
女子でなくとも魅了される柔らかな味わいです。
早わらび
芽吹いたばかりの蕨の焼き印が可愛らしい、薯蕷饅頭。
薯蕷とは芋を指し、皮に芋(大和芋、つくね芋など)を混ぜた饅頭が薯蕷饅頭となります。
「上用」とも表記されますが、和菓子の原料である上用粉(上質な米粉)とは異なるので、ちょっとややこしいですね。
嘯月さんのさわらびは、中に薄緑色の餡が使われており、目がさめるように爽やか。
皮の食感はふわっと柔らかで、野暮ッたさが皆無です。
店内には「菓道一筋」との額縁が。
まさしく職人の技を伝えてくれる和菓子で、感銘を覚えました。
和菓子に苦手意識を持っている方は是非とも訪問されてみてください。
「美味しんぼ」もそのようなストーリーでしたが、確実にイメージが変わるだろうと思います。
店名:嘯月(しょうげつ)
予算の目安:1つ430円〜
最寄駅:北大路駅から550m
TEL:075-491-2464
住所:京都府京都市北区紫野上柳町6
営業時間:9:00~17:00
定休日:日曜、祝日
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