すしログ No. 144 あま木@久屋大通(愛知県)

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名古屋の鮨店の中でも気になっていた若手職人さんのお店。

ご主人・天木雅章氏は東京のすし匠まさを経て、2015年の9月にオープンされました。

あくまでも個人的に「匠」スタイルとは相性があまり良くないため、経歴だけだと訪問を先延ばししていたかもしれません。

しかし、ネット上で握りの写真を見たところ、包丁の切り付けが良く、シャリも美味しそうだったので、課題店としておりました。

これはご自身の独創性を表現されている鮨店だろう、と。

 

伺った感想としては、見込みは間違いなく、キラリと光る独自性がありました。

ご主人は手数の少ない小手返しで握られており、大体5~6手と速いです。

速さだけでなく精確性も中々…捨てシャリは殆どされておりません。

シャリは匠スタイルで赤酢と米酢のものを2種類用意されており、硬さやや硬め、酢やや強め、塩やや強めの硬派な味わい。

このシャリは名古屋では貴重だと思います。

全体的に匠出身らしい華やかな仕事が目立ちますが、これは名古屋なので逆にメリットとなるでしょうし、何よりも都内のすし匠系列店よりも遥かに廉価な点は強みです。

 

お店は広々としており、白を基調とした開放的な空間。

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白木のL字カウンター10席にテーブル4席と、都内の鮨店では珍しい贅沢な間取りです。

それでいて、的確に提供されており、ご主人のポテンシャルを感じました。

 

ただ、個人的に改善した方が良いと感じる点も…。

ご主人は握りの技術が高いにも関わらず、握った後に下駄の上で形を整えられたり、握りに対して過剰な「装飾」をされたりしている点が気懸りでした。

形式を気にされている点については、早急に直された方が良いです。

味よりも見た目を気にされているのか、と邪推されてしまいます。

それに、握りは一発で決める事に意味があり、過剰に手を加えてしまうと味が落ち、不恰好になってしまうものなので。

更なる飛躍を楽しみにしつつ、折を見て再訪したいと思います。

頂いた酒肴、握りは下記の通りです。

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ガリ

甘みが先行した後にシャキシャキした食感と共に辛味が到達する。

その後、再び甘みを感じるので、広く受け入れられつつ、個性もある味わい。

 

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白海老

富山で漁が解禁されたばかりの白海老。

これは「おッ」と思わされる一品目。

生だけでなく、焼いたものを供すところも面白く、そちらはスナック的な香ばしさが食欲を刺激する。

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のれそれ

穴子の稚魚ののれそれ。

きしめんをイメージされているの事で、温かいツユで頂く。

ツユの出汁の取り方は正しくきしめん的で面白い。

そして、何よりも素晴らしい点は温度。

のれそれに熱は通っていないので、全く嫌味にならない。 

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真鯛

結構寝かせているようで、食感よりも旨味主体の仕事。

食感が柔らかく、酢橘を使用している点は好みから外れる。 

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赤貝

三河一色の赤貝で、クオリティが非常に高い。

真鯛は関西のお店や東京の一流店には劣るな…と感じた後だったので、目から鱗。

芳醇な磯の香りがしっかりあり、旨味も非常に強い。 

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トリ貝

湯を通しておらず生ゆえに甘みと香りが素晴らしい。

少し塩が多い点がマイナス。

貝は本来の旨味と付着している塩気だけで個人的には十分。

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和歌山。小笹発祥の合わせ調味料の完成度が高い。

もう片方は和芥子で。

 

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蝦蛄とヤリイカの印籠詰め

印籠詰めという古い仕事を酒肴で出してくるのは、センスがある。

イカは柔らかく炊き上げ歯切れが良く、煮ツメには旨味もしっかりある。

シャリの酢とツメの甘みが合致し、僅かに使用した酢橘は嫌みなし。

蝦蛄は出汁で炊いている。 

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烏賊

烏賊云々よりもシャリが美味しいことに安堵する。

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針魚

昆布を強めに利かせた〆加減。

個人的には、昆布〆の時間が長く、グルタミン酸が移り過ぎており、

昆布の香りが針魚の香りを凌駕しているため、針魚の端正な魚味を損ねているように感じる。 

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蟹の蒸し鮨

蟹の甘みとシャリの酸味が良く調和しており、香りも良い。

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針魚の皮焼き

綺麗に焼き上げており、芸が細かい。

生で感じるのとは異なる香りが楽しめる。

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甘鯛

昆布で〆て4日熟成させた甘鯛。

食感はかなりねっとりしており、あたかも甘エビのよう。

旨味がとにかく強く、これは面白い。

熟成タネを多く使われない点は好感が持てる。

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蒸し鮑

三陸。流石に旨味は弱いが、甘いタレと肝のソースの両方で供するところは良い。

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大阪。香りが良く、鯵らしい甘みもある。

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伊勢湾の鰆で、漬けにしているところは珍しい。

鰆の香りが凝縮されており、歯切れはしっとり。

伺ったところ、3日熟成との事だが、強まった旨味と漬けの煮キリの濃度の差が少なく、好印象を頂く。

なお、赤酢のシャリは赤酢を強めに利かせているが、トゲトゲしたところはない。 

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春子

しっとりした〆加減で、黄身酢オボロを使用。 

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太刀魚、マナガツオ、蛍烏賊の焼きもの

マナガツオは西京漬け。

満足度の高いプレート。

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カワハギ

カワハギを余すところ無く楽しませてくれる。

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小鰭

しっかり〆て一日寝かせたもの。

塩分は控えめで良い仕事。

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鮪赤身

湯霜にせず切り身を即席の漬けにしており、

ねっちりとした食感を楽しめる。

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海胆と鮑 

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べったら漬け 

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桜鱒

昆布で〆ているが、これはセンスある塩梅。

途中から昆布の旨味がビリッと伝わり、米酢のシャリと合わせるところも良い。

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コノコ、鮟肝、山葵漬け

あん肝は強めに火入れしてぷりっとした食感。

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鮪中トロ

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車海老

焼いた殻と頭を粉砕して塩と混ぜた粉を掛けて。 

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青柳

青柳に水気が多く、邪魔。

シャリとの一体感がネック。

握ってから形を整えておられたため、シャリのほどけ方が悪い。

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穴子

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火入れは強め。柚子が多い。

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大トロの葱マ

これは嬉しい小鍋。

味付けも良く、鮪の旨味も出ている。

旬が短い花山椒を使うセンスも良い。

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蜆汁

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玉子

芝エビを使用しており、しっとりした食感が良い玉子。

全体的な印象としては、粗削りな部分もあるものの、独自性が奏功している仕事もあり、印象に残りました。

名古屋では貴重なタイプなので人気が出る事は間違いないように感じます。

人気が高まるとしても、ご主人は東京の名店で食べ歩きをされつつ、江戸前の仕事を三河湾、伊勢湾の素材に落とし込まれれば、名古屋を代表するお店になるのではないかと思いました。

酒肴に比べて、握りの安定を当面の課題とされればよろしいかと!

 

日本酒の品揃えも良く、30種類ほどご用意されているとの事です。

総合的に考えて非常に期待が持てるお店だと思います。

 

飲んだ日本酒は福島・からはし純吟、福井・白岳仙中取り純吟奥越五百万石、愛知・長珍祿純米大吟醸、長野・Sogga pere et fils Trois 純吟原酒、岐阜・竹雀山廃純吟、三重・田光純米槽搾り雄町。

お酒の量は調整して注いで頂けるので、あまり飲めないけど色々試してみたい…という方でも安心です!

 

店名:あま木(あまき)

シャリの特徴:甘みを排除し、赤酢と米酢をブレンド。味わいを時間軸でコントロールする。

予算の目安:13,000円~20,000円

最寄駅:久屋大通駅から400m

TEL:052-971-1433

住所:愛知県名古屋市中区丸の内3-16-2

営業時間:18:00~24:00

定休日:不定休

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