今年の5月にお伺いした無苦庵さん。
この度、季節を変えて再訪しました。
食材に富む秋まっさかりの時期、そして、移転開店から約10か月経過したタイミングであるため、ご主人は紀伊田辺でどのような食材に巡り合えたか?
新たなる食材との出会いを非常に楽しみに訪問しました。
料理を頂いた印象としては、料理の前に先ず、ご主人・雲井さんの笑顔が印象に残りました。
前よりも希望に満ちた笑顔でしたので、新天地で確実な前進をされているのだろう…と安堵しました。
そして、希望は具体的な形で食材の仕入や扱い方に現れており、前よりも紀伊田辺と言う「土地」を感じさせる内容だと感じました。
「土地」に息づく食材を用い、個性を与えられた料理は、「ここでしか頂けない魅力」に満ちており、旅して食べる喜びがあります。
食材のバリエーションは1年を経過すれば更に広がるかと思いますので、季節を変えて足を運び続けたいお店だと思いました。
その後の再訪記事もございます。
この度頂いた料理は、下記の通りです。
八寸
揚げ栗、金時豆のみぞれ和え、柿甘酢、秋刀魚の燻製、カボチャの金団とむかご、落花生、舞茸の舞茸幽庵焼き。
相変わらず瞬時に目を奪う八寸。
日本の秋を象徴する食材たちが共演し、小さな秋を堪能出来る秀逸な八寸だった。
秋刀魚は肝醤油を塗って燻しているのだろうか。
揚げ栗の香ばしい甘さ、カボチャの豊かな甘みに、秋刀魚のビターネスが好対照。
舞茸の幽庵焼きは後から柚子がふわりと香り、実に上品。
お造り
地物のヒョウダイ(標準和名ヘダイ)。
ぷりぷりと滑らかにほどける繊維が魅力的で、真鯛とは異なる香りが楽しい。
僕は白身魚の刺身はあまり醤油を付けないが、ヒョウダイは醤油を付けた方が旨い。
醤油のグルタミン酸がイノシン酸を活性化させ、ふくよかな甘みが増す。
また、ご主人が準備してくれた地物の本山葵が泣かせる。
混ぜ山葵を憎む同行者の依頼に基づき、何とか見つけてくださったそう。
その心意気もさる事ながら、パンチ有る辛味も涙を誘う(笑)
しかし、それでいて甘みも感じる山葵であった。
落ち鮎の焼きもの
これはエクセレント!焼きの技術が素晴らしい…
串打ちも非常に精確。
落ち鮎で卵を抱いているため、腹に包丁を入れてからの焼きとなるが、旨味をこぼす事無く、火を入れ過ぎる事無く、
しっとり、ふっくらと焼き上げている。
鮎はクオリティも然る事ながら、やはり火入れが全てを決める。
なお、今回の鮎は富田川(とんだがわ)産。
頭寄りの香りが強く、ボディは穏やかな香りで、落ち鮎といえども香りと旨味を楽しませて頂いた。
落ち鮎には秋なのに夏の魚を頂く、少しせつない喜びがある。
椀
椀種は蓮根餅。出汁はアカハタで取っているそう。
中華では高級魚として知られ、清蒸(チンジョン)で使用されるアカハタ。
旨味が強い魚だが、出汁は柔らかく、自然な旨味を活かしており、媚びたところが無い。
塩気も丁度良い。
また、あしらいが空芯菜と言う点も尚更中華っぽく、面白い。
鯖寿司
優しい〆加減で、しっとりとした食感。
酢飯は甘みを用いているが嫌味ではない。
手前の野菜はサツマイモのつる。
サツマイモらしい甘みがあり、結構びっくり。
きぬかつぎと鮪の酒盗、トリ貝
これについては少し疑問を抱く。
酒盗自体はとても美味しいのだが、塩気がきぬかつぎの甘みをやや超えている印象。
誤差だと思うが、きぬかつぎの優しくふくよかな甘みが活きていれば尚美味しい。
炊合せ
蒟蒻、椎茸、生麩、茄子。
生麩の甘みが印象深い。
お食事
マツタケモドキを用いたご飯。
香りは弱いものの、甘みはそれなりにある。
なお、器は江戸時代の織部。
非常に状態が良く、時代を伺い驚いた。
水もの
果物はホワイトサポテ。
初めて出会ったが、生産量、流通量が少なく、稀少性が高い果物である模様。
味わいとしては、メチャクチャ甘く、濃厚かつ芳醇なコクが魅力的。
細やかな粒子とごく僅かな酸味がラ・フランスっぽくもある。
一週間熟させているとの事。
未知の食材と出会う喜びは、地方を旅する喜びに等しい。
店名:召膳 無苦庵(しぜん むくあん)
食べるべき逸品:知られざる紀州食材を活かす唯一無二の雲井料理
予算の目安:昼1,200円、1,500円、夜・要相談
当ブログの内容は15,000円となり、県外から訪問される方は1万円以上がベターかと!
最寄駅:紀伊田辺駅から500m
TEL:0739-26-5600
住所:和歌山県田辺市高雄2-16-30
営業時間:昼11:30~、夜17:30~ ※昼は廉価なランチメニューを提供されておりますが、真骨頂は夜
定休日:不定休
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