こんにちは、山形の食材に魅了される、すしログ(@sushilog01)です。
「大峰山(奈良県)」、「英彦山(福岡県)」とともに「日本三大修験道」とされる聖山「出羽三山」。
その内の一つ、羽黒山には、他のエリアに無い独特の精進料理があると聞いて長らく気になっていました。
その精進料理とは、山形らしく山菜を駆使した精進料理です。
宿坊である「斎館」さんで頂けるため、雰囲気と共に他では味わえない魅力があります!
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すしログの情報リンク【すしログライブラリー】「羽黒山 斎館」の魅力とは?
「羽黒山 斎館」は、かつて「華蔵院」と呼ばれるお寺であり、1697年(元禄10年)の再建である「正穏院」、「智憲院」と共に「三先達寺院」とされました。
格式が高いお寺であったものの、明治政府の「神仏分離令」のために「神社の斎館」として残ったそうです。
江戸時代には羽黒山内に30余坊あったそうですが、全て取り壊されたので、「羽黒山 斎館」は現存する唯一の建物となっています。
周囲の雰囲気は荘厳で、廊下も趣深い。
御料理を頂いた「神前の間」は、山伏が修行の際に祈祷の場として使用する空間です。
扁額の「羽黒三所大権現」には、神仏習合時代の名残を感じます。
※「権現」とは仏教の仏や菩薩が日本の神々の仮の姿で現れたものとする本地垂迹説に基づく神号です
御料理の魅力としては、期待以上…と言っては不遜ですが、実際にイメージ以上に美味しく楽しめます。
そもそも精進料理とは、殺生を伴う食材を用いず、野菜や麩、湯葉や豆腐など、動物性以外の食材を用いる料理を指します。
出汁についても鰹節などの魚介性の出汁(イノシン酸)を使えないため、昆布(グルタミン酸、アスパラギン酸)や干し椎茸(グアニル酸)を活用して調理します。
その上で、個人的に重要と考える要素は、旨味以外に食感、塩味の塩梅、味付けのメリハリ、油の使用、香り、だと考えます。
特に食感は非常に重要で、精進料理の満足度を大きく左右するファクターではないでしょうか。
大豆製品は加工法と調理法で様々な食感になるため、あたかも肉のように使う事が可能です。
制約のある料理ジャンルだからこそ、美味しく作るためには調理センスが問われます。
そこが面白いところです。
これらの前提を踏まえた上で、「羽黒山 斎館」の精進料理の魅力を解説します。
まず、一番の個性となっているのは、言うまでも無く山菜です。
山菜はご存知の通り食感が多様で、シャキシャキ、コリコリ、トロトロなど様々な表情を見せてくれます。
山菜は香り、苦味に加えて、優しい甘味と旨味、快感とも言える食感が魅力です。
「羽黒山 斎館」の精進料理には、京都の精進料理とは全く異なる魅力があります。
さらに、大変興味深いのが仏教の精進料理では禁忌とされる食材、「五葷」を使用するところです。
「五葷」には、葱、浅葱、ニンニク、ニラ、ラッキョウが含まれ、要は香りが強いため僧侶の修行の妨げになるとされています。
しかし、「羽黒山 斎館」では行者ニンニクが使用されていて、驚きました。
この点については、僧侶(仏教)と山伏(修験道)で違いがあるのかもしれません。
では、実際に頂いた御料理の詳細を紹介していきます。
「羽黒山 斎館」のコースの詳細
「羽黒山 斎館」の【精進料理お膳】は、【7品】2,750円と【10品】3,850円の2つが用意されています。
他のお客さんも含めて【10品】を頼む人が大半だったので、悩んだら【10品】がオススメです。
ボリューム的には多すぎず、満足できる内容です。
なお、宿泊については【1泊2食】11,000円との事です。
ちなみに、精進料理を頂く際には、食材や料理を作ってくれた人への感謝の言葉を食事の前に唱える事がルールです。
心の中で感謝の念を唱え、頂ける喜びを噛みしめましょう。
殺伐としたネット社会だからこそ、精神的な感謝の念は大切ですね。
【味噌汁】の椀種は、干しゼンマイとナメコ。
実に山形らしい。
【ウドの味噌和え】にはウドの皮を素揚げにしたものがあしらわれていて、同じ食材で御料理の奥行きを広げる工夫を感じて嬉しくなる。
下段、左から【ワラビと醤油の実】、【赤コゴミの胡麻よごし】、【塩蔵ワラビと油揚げ】
上段、左から【厚揚げ、椎茸、ネマガリダケの煮もの】、【胡麻豆腐】、【イタドリと干し柿の酢のもの】
【厚揚げ、椎茸、ネマガリダケの煮もの】の厚揚げには塩気を含ませていて、力強い味わいに仕上げている。
【胡麻豆腐】は、濃密で滑らかな胡麻豆腐に甘味のある餡を掛ける庄内スタイルだ。
【イタドリと干し柿の酢のもの】は、下ごしらえの手間が光り、イタドリを4週間塩漬けのした後に、塩抜きを行っているそうだ(アク抜きのため)。
右列、上より【山菜の天麩羅】、【素揚げの茄子とフキ味噌】、【アイコの酢醤油】
【山菜の天麩羅】については、ウドの葉、赤コゴミ、ネマガリダケと行者にんにくのかき揚げ。
全般的に、味付けがイメージよりも洗練されていて、現代人も間違い無く楽しめる方向性です。
唯一、【イタドリと干し柿の酢のもの】については、甘味をバシッと効かせていて、お酢の酸味も強く、ミツカンの穀物酢的な強烈な酸味でした。
「羽黒山 斎館」のお店情報と予約方法
「羽黒山 斎館」さんの予約については、お電話のみとなります。
公式サイトをご参照ください。
店名:羽黒山 斎館(はぐろさん さいかん)
予算の目安:7品2,750円、10品3,850円、1泊2食付き11,000円
TEL:0235-62-2357
住所:山形県鶴岡市羽黒町手向7 羽黒山参籠所
最寄駅:なし
営業時間:11:00~午後14:00
定休日:不定休
※完全予約制です
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