こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
今回ご紹介するお店は、「僕のブログらしからぬお店」です。
なにせ麻布十番にあって2024年5月から会員制に移行すると言う鮨店なので。
そのようなお店に訪問した理由は、親方の修行先です。
なんと銀座「ほかけ」さんで6年以上の研鑽を積まれたとの事。
「ほかけ」矢崎親方の薫陶を受けた職人さんのお店は決して多くないので、気になった次第です。
「ほかけ」さんだけでなく、「はっこく」さんにも勤められたと聞いて驚きました。
実に意外な組み合わせですよね。
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「鮨りかく」さんは麻布十番からも赤羽橋からも徒歩5分程度の場所にあります。
有名な「日進ワールドデリカテッセン」の裏手のような場所。
お店の外観には看板こそ掛けられていますが、黒塗り&ミラーガラスなので、どこが入口か分かりません(笑)
他のお客さんも迷っていましたが、時間になるとドアが開くシステムでした(上記写真の真ん中あたりがドアです)。
「Value Asset Office AZABU10」というビルに入っているので、もしかすると店名の「りかく」は「利確」なのか?と推察してしまいました(真偽は不明です)。
店内に入ると、燻し銀の壁に赤いチェア!
「いかにも」なバブルを感じさせる雰囲気ですが、木も効果的に用いカウンターも白木ではなくブラウンの色調なので極端にケバケバしくはなく、社交クラブ的な趣の内装です。
ドリンクメニューはiPadでカウンターに埋め込み式なので、近隣のスタートアップ系、金融系の経営者には受けるのかもしれません。
「鮨りかく」の魅力は、高級食材を多用した酒肴と、王道とモダンを合わせ持つ握りとなります。
酒肴については、虎河豚や鼈などを用い、さらに他の食材の味と旨味を重ねる方向性です。
引き算ではなく、足し算を駆使する調理法。
強烈なパンチがあり、僕の理想である妙味必淡とは別の方向性ですが、確実に多くの人が好きな方向性です。
ただ、味を重ねていながら主役の食材を活かす範疇なのは頂いていて嬉しい限りです。
マーケティングが練られている、と実感しました。
なお、冒頭に記載したとおり、親方は「ほかけ」さんだけでなく、なんと「はっこく」さんにも勤められたそうです。
これらは全く逆のベクトルの鮨店なので驚きました。
そんな経歴の職人さんがいらっしゃるの!?と。
ただ、両方のエッセンスが鮨に活きているので、王道の〆ものの安定感を示しつつ、【半熟のいくら】や【山盛りの海胆】など、これも多くの方が喜ぶ方向性を加えています。
そして、生命線のシャリは赤酢を用いつつ、まろやかな方向性です。
甘味があるので砂糖を使用されていると踏んだところ、正解でした。
モダンな江戸前鮨店としては甘味を効かせている部類ですが、タネとのバランスは良く、全く野暮ッたくありません。
お酢についてはヨコ井の與兵衛と江戸丹念酢のブレンド。
パンチ系2種類のブレンドとなりますが、色も味わいもまろやかです。
硬さ、温度、粘度は全く問題ナシです。
使用されている器の多くは伊万里焼、鍋島焼で非常に華やかです。
現在、大半のお店が唐津焼や有田焼などを使用する事が多いので、あたかも大名になった気分です。
さらに、皮革のような表情を出す「キュイール技法」を用いる器が独特です。
これは畑萬陶苑さんの編み出した技法のようです。
「鮨りかく」さんのおまかせコースについては、税込み27,500円です。
会員制に移行後も同価で提供するとの事なので、会員制のお店としてはリーズナブルな範疇かと思われます。
会員制や予約困難なお店で、ワインを飲ませて6万~10万円も取るお店がありますが、もはや何屋か分かりませんよね。
バランス感覚のある経営者は飲食代も結構シビアに見るものなので、安心感があるのは良いと思いました。
こちらはペアリングも提供されています。
僕は単品で2種類頂きました。
- 八海山 あわ 瓶内二次発酵
- 白糸酒造 田中六十五
素晴らしい1杯目のご提案。
このスパークリング日本酒はシャンパーニュと同じ「瓶内二次発酵」を行っていて、使用する麹はクエン酸を生成する「白麹」。
日本酒らしい甘味と香りを楽しめる上質なスパークリング日本酒で、酸味は効いていながら穏やか。
よって1杯目に最適だ。
1品目の虎河豚の旨味を壊さないし、あん肝とのネガティブな反応も無い。
スパークリング日本酒は発泡性なので管理面でのハードルはあるが、もっと使用するお店が増えるべきだと感じる。
【田中六十五】は定番のお酒だが、改めてじっくりと向き合ってみた。
精米歩合65%の純米酒だが、グレープフルーツ、マスカット的な香りがほのかにある。
醪日数が長い、低温長期発酵のお酒なのだろうか。
酸が立ちキリッとしたアタックで、旨味のある苦味が引き締めていくフィニッシュ。
米の旨味と爽快感を合わせ持つ良き食中酒だと実感する。
産地は豊後水道で、天然モノ。
旨味が強く、これは美味い。
付け合わせの【鮟肝ポン酢】はつけすぎると虎河豚の味と香りが破壊されるので注意が必要だ(自分は箸先2滴程度に留めた)。
ボタン海老は羽幌産、海胆は根室産。
ボタン海老は寝かせてねっちりとした食感で、濃密な甘味。
更に海胆の味を乗せる調理だが、ボタン海老の甘味が強烈なので壊される事は無い。
濃厚な卵黄を使用している事が瞭然だ。
聞けば、大分の蘭王(らんおう)を使用しているそうだ。
鼈の強烈な旨味とゼラチン質が溶け込んだ茶碗蒸し。
そこに、いくらも重ねる方向性。
虎河豚に鮟肝、鼈にいくらと、味を重ねる調理法だ。
実に東京、港区らしい。
濃密な旨味は流石、虎河豚の白子だ。
黄身醤油の量も程良い。
これは白子をストレートに味わわせ、ご自身のシャリを調味料的、副次的に使う調理法なので、個人的に食材を重ねる方向性よりも琴線に触れた次第。
食材や味を重ねると一口目から旨すぎて味がボヤける現象が起きるが、本質的には咀嚼して味わいや香りが重層的に込み上げてくる方が記憶に残るものである。
みんな大好き鮟肝。
定番の調理法で提供。
サッパリな酸味と辛味、そして塩気と旨味を効かせたガリ。
名刺代わりの一貫目は「はっこく」流で提供(「とかみ」さん、「はっこく」さんでは鮪の突先を使用するので、ねぎったトロはアレンジ)。
高温のシャリが良し。
かなり瑞々しく柔らかな仕上げ。
柚子皮の香りが強めに漂う。
「ほかけ」さんの〆をイメージしていたので意表を突かれる。
竹炭塩。
バツバツではなく、プチプチ、とろりな歯切れと食感。
寝かせて包丁を入れている為か。
明石産。
皮付きなのが実に良い。
強い味と香りが広がる。
そして、余韻も良し。
漬け。
酸味は極めて穏やかで、柔らかさと旨味が特徴の個体だ。
〆つつ、身には柔らかさがあり、香りが高まり旨味も楽しませる小鰭の〆だ。
これは「ほかけ」さんの系譜を感じる仕事。
小鰭の旨味を引き出している点において。
ただ、「ほかけ」さんの小鰭は〆の時間が長いものの、こちらは20分程度(伺ったところ19分だった)。
〆の時間よりも寝かせる時間を長く取っている為、小鰭の旨味を引き出しつつ臭いを出していない。
昆布様の香りと旨味が強い美味い赤貝だ。
紐を噛ませて味を強め食感を加えている点が好み。
そして、小鰭、赤貝、この流れが魅力的だ。
半熟の火入れを行い、出汁醤油に漬けている。
卵黄のコクと鰹出汁の香りや旨味がバシッと伝わる。
かなり濃厚濃密ないくらの提供方法だ。
二番手さんが茶釜で茹で上げ。
かなり温かいため、甘味がストレートに伝わる。
伝統的な茹で置きはジワジワ系と込み上げる感じで、茹で上げは初手から甘味が広がる違い。
もっりもりで、甘味たっぷり。
とろとろに柔らかく煮ずに、仕上げで焼き込む仕事。
キリッとした赤出汁。
あまおうと、せとか。
甘味が強いイチゴと柑橘の選択だ。
「鮨りかく」さんの予約については、「一休」経由でWEB予約が可能です。
店名:鮨りかく
シャリの特徴:ヨコ井の與兵衛を江戸丹念酢のブレンドで、砂糖も用いてまろやかな味わい。
予算の目安:おまかせ27,500円 ※お支払いはクレジットカードのみ
TEL:050-5590-6739
住所:東京都港区東麻布2-33-4
最寄駅:麻布十番駅から350m
営業時間:第一部17:00~、第二部19:30~
定休日:日曜、月曜
港区らしい鮨店だと感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
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