こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
神楽坂の路地にある鮨ふくづかさん。
こちらは「鮨のラボラトリー」と形容したくなる鮨店です。
なにせ、シャリを3種類使い分けるに留まらず、ガリと山葵も3種使い分ける変態職人さんなので!
すしログ
福塚親方は古典的な仕事を採り入れつつ、調理科学を踏まえたモダンな鮨に仕上げる名手です!
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「すしふくづか」の魅力について
前回はマニアックな「山葵の食べ比べイベント」でお伺いしたのですが、今回は自身の「すしログ鮨会」で訪問しました。
以前から福塚親方に【鮎の握り】と【夏の鮪】を楽しめる時期を伺っていて、重なるタイミングでイベントを企画した次第です。
結果的に、想像を遥かに超える内容になり、企画者の自分としても驚きました。
全国の中でも、最先端の仕事を生み出す鮨店だと確信しました。
福塚親方が並々ならぬ仕入れを行って頂き、あの「やま幸」の山口幸隆社長もイベント用に鮪をご用意して頂いたとの事で、語弊なく感動しました。
ご参加頂いた皆さまに喜んで頂けたのも感慨無量です。
また、もう一つ自分にとっての新たな発見だったのが、鮨とワインのマリアージュです。
「鮨とワインのマリアージュ」と書くとバブリーな感じがしますが、然るべきお店でセンスのあるソムリエさんにご提案頂けば、奏功するものだと体感しました。
「鮨にワインを合わせるお店は、なぜフランスワインばかりなんだろうか?」、「本当にマリアージュを考えているのだろうか?」などと思っていたので、これには蒙を啓かれました。
ソムリエの藤森さんは効果的にマリアージュをされていて、日本ワインも使用している点が好感でした。
ふくづかさんはコースだけで32,000円かかりペアリングで8,000円~12,000円プラスになるため、価格としては「鮨バブル」なお店です。
しかし、実際には価値ある内容で、軽薄な「鮨バブル」とは一線を画します。
食材の質、仕事、創造性の面において、日本で訪問すべきモダンな鮨店の一つだと感じました。
なお、今回の記事は特別コースの内容ですが、普通に訪問しても福塚親方の比類ない魅力を感じることは出来ますので、ご安心ください。
鮨の生命線である「シャリ」と「仕事」はタネが変わってもかるものではありませんし、それらの根底にあるのは福塚親方のセンスですので。
ユニークなおまかせとシャリについて
「すしふくづか」がユニークな点は下記のとおりです。
- シャリを3種類使い分け
- 山葵を3種類使い分け
- ガリを3種類使い分け
- 握り方を3種類使い分け
- シャリとタネの温度を徹底的にコントロール
自分は、1種類のシャリで全てのタネに合わせる職人さんに職人の粋を感じる人間ですが、福塚親方のレヴェルまで高められると、亜流も王道に比肩すると実感します。
温度管理や硬さなどが高位安定しているので、シャリを変えても不自然な印象が皆無です。
温度を1℃単位で細かく管理するお店もありますが、設定温度と提供温度の誤差が生じるので、個人的には虚勢のように感じます。
福塚親方は設定温度が小刻みではなく、さらに厨房での準備温度と提供時の温度の誤差も計算して設定しているので、理にかなっていると感じました。
▲ふくづかさんのメニュー。異常な情報量だ。
使用するお米は三重県産の「関取米」で、炊飯はバーミキュラとガス釜を併用されています。
「関取米」とは現在は耳慣れない品種ですが、明治時代に東京で人気を誇ったそうです。
江戸時代に生まれた江戸前鮨がさらなる進歩を遂げたのが、明治時代。
その明治時代の人気米を現代に用いるセンスが良いですよね
また、諸々を使い分けている中で、お酢の醸造会社については1社である点に哲学を感じます。
他社ブレンドでシャリを増やしていない点は極めて硬派ですね。
京都宮津の飯尾醸造のお酢3種(富士酢、富士酢プレミアム、赤酢プレミアム)を適宜ブレンドされ、タネごとの魅力を引き出す事に徹底されています。
また、福塚親方はタネによって握り方を変えられます。
現在主流の小手返しに加えて、鮪などは本手返し、さらには立て返しも混ぜられます。
すしふくづかの3種類の山葵について
今回食べ比べした山葵は、左から奥多摩産(実生)、安曇野産(鬼緑・極早生)、伊豆天城産(真妻・晩生)の3種です。
安曇野産は1年もの、伊豆天城産は2年半ものとの事。
さらに、おろし金(銅板)、鮫皮、鋼鮫の、3種類のおろし器を用いて頂きました。
おろし器によって山葵の辛み、甘み、香りの感じ方が異なってくるのは、僕も自身で実験した際に体感しました。
福塚親方は通常は銅板を使用されておらず、理由は鮨においては雑味が混じるためとの事です。
銅板を用いると辛味と苦味が甘みを超えるケースがあるので、これには納得しました。
まずは、真鯛を用いて山葵の食べ比べをスタート!
真鯛は徳島の著名漁師である村公一さんのものです。
村さんは漁師として初めて「情熱大陸」に出演した方ではないかと思います。
ミシュラン3ツ星のカンテサンス岸田周三シェフも初期から使用されていることで知られます。
僕が実感した山葵ごとの違いについては、以下の通りです。
なお、甘みと辛味は全て兼ね揃えた良質な山葵なので、以下の感想は比較の上での特徴となる事をご了解ください。
- 安曇野産(実生):さっぱり味
- 奥多摩産(実生):辛味が強めでスッキリ
- 伊豆天城産(真妻):バランスタイプで、辛味と甘みが両方強い、鮪にピッタリ
そして、次に、鮪の赤身の握りで食べ比べを深めました。
青森県大畑町で揚がった139.6キロの背中の赤身(延縄)。
一体感を高めるため細かく包丁を入れている点が印象的です。
「すしふくづか」のおまかせコースの詳細
情報量が多いお店なので、記事の情報量も増えてしまいました(笑)
遂に、頂いたコースの詳細をご紹介します!
2021年7月すしログ鮨会のコース内容
2021年7月に開催した「すしログ鮨会」のコース内容をご紹介します。
ガリ
ガリは手前から砂糖入り、砂糖なし、奥は生姜ではなく青リンゴ。
このあたりを違和感なく合わせる点で既に福塚親方の非凡なセンスを感じる。
まずは、シャンパーニュ、HENRIOT BLANC DE BLANCS。
ねぎトロ手巻き
ねぎったトロと切り立てのシャリ、直前に炭火で炙った海苔を合わせる。
プレゼンテーションだけでなく、味としてもテンションを上げてくれる良き導入。
スズキ
徳島の有名漁師、村公一さんの代名詞のスズキ。
山葵と塩だけで供する潔さ。
そして、山葵は天城産と奥多摩産のブレンド。
次は白ワイン、SAINTSBURY CHARDONNAY BROWN RANCH 2006。
ボタン海老
増毛産の超巨大なボタン海老!
このサイズのものは北海道でも見たことが無い…
口の中に放り込み、噛み締めても「巨大な感覚」がある(笑)
ぶちり!と弾けて、トロトロとろけ、非常に強い甘みが口に満ち溢れる。
通常、トロッとなったボタン海老はとろけるのみであるが、今回頂いたものはブチブチした食感が維持され、食感が絶妙であった。
山葵は奥多摩産。
辛味が強いが、甘みを巧く引き立ててくれる。
そして、シャルドネは華やかさに加えて樽香があるものなので、海老でも生臭みを感じる事が無い。
長期熟成による旨味もあるので、ボタン海老の濃密な甘みに流されない力強さもあり、良きマリアージュ。
鰯の磯部巻き
銚子産の大型の鰯を、塩のみで〆ている(酢には漬けていない)。
塩のみなので鰯の香りをストレートに楽しませてくれる。
山葵は安曇野産。
こちらもシャルドネとも合っていて、イメージするワインによって強調される臭みが皆無。
ボタン海老以上にマリアージュの面白さを感じた。
次は、Domaine de la Bongran、ヴィンテージ未確認(すみません)。
白甘鯛
炭火で皮を炙り、皮パリパリに。
そして、身はみちっと肉感を示した後に、ホロホロとほどけてゆく。
シラカワ(白甘鯛)のクリアな香りと強い余韻のギャップが印象深い。
上品なのに力強い味わいだ。
山葵は奥多摩産。
鮑
佐渡ヶ島産で、18年モノの鮑。
それを4時間蒸している。
香り、柔らかくもむっちりした食感、皿に張りつくほどのゼラチン質と、三拍子が揃っている。
山葵は天城産で、塩は藻塩。
使用する山葵にも塩にも必然性があると、噛み締めて味覚を感じて実感した。
握りのタイミングで日本酒が登場し、會津宮泉の純米酒。
ワインの後に頂いて全く違和感が無い。
それでいて媚びるようなフルーティな芳香があると言うわけでもない。
この後、握りに移行するが、お酒もソフトランディングで日本酒にシフト。
煮烏賊
名刺代わりの1貫目が煮烏賊とは渋くて通好み。
食感はむちむち、モチモチしていて快感。
甘みを穏やかに付けて、シャリの酸味をスッキリと感じさせるスタート。
煮烏賊は73℃10分で調理。
春子
極めて柔らかく、しっとりしているが、春子の香りも楽しめる。
黄身酢オボロのバランス感覚も良い。
鯖
まさかの「掃除」を施した鯖。
鯖の血合いなどを落とし、野趣を取り除くことで鯖をピュアに表現している。
これは未体験!
みしっとした身を噛みしめる程に香りが高まり、鯖らしい脂が滲み、徐々に鯖らしさが顕在化する感じだ。
間に噛ませた極薄の白板昆布が奏功している。
イノベーティブな鯖として完成度が高い。
浅蜊
創作性の高い仕事の後に、まさかのクラシカルな仕事!
この緩急の付け方は、もはやドラマティック。
シャクシャクと小さな浅蜊を噛みしめると、芳醇な旨味と香りが高まり、小さいのに力強さを感じさせ、鮨の偉大さを実感する。
【浅蜊のつかみ漬け】と言えば日本橋の老舗、吉野鮨さんのお家芸だが、福塚親方は自家薬籠中の物としている。
合わせる調味料は江戸料理の伝統である【煮抜き】で、八丁味噌と鰹出汁で仕上げている。
50℃で15分ほど砂抜きした後、80℃で煮る。
そして、砂は全て「触診」して確認しているそうだ。
鮎
ここで待望の鮎が登場!
しっとりホロホロの鮎で、あたかも繊維質が溶けるかのよう。
その過程で苦味と香りを存分に放ち、鮎の妙味を最大限楽しませてくれる。
肝は別に炊いて噛ましているので、鮎の魅力である香りも加えている。
紫蘇〆で爽やかに表現されるところも粋だ。
鮎のお後に、Gruss Cremant d’Alsace Brut Rosé
飛び魚
鮎の後にアゴとは面白過ぎる。
仕事は昆布〆。
むちっとした食感で、昆布〆は良い塩梅で香りも旨味も程良い。
飛び魚自体の旨味も感じさせてくれる
産地は八丈島。
蛸
佐島産。
香りが抜群なのに、ひたすらホロホロ。
これまたムチャクチャな仕事…と軽く、語彙力が崩壊しかけた。
この後、鮪が登場する。
なんと産地は2ヶ所で、塩釜の巻き網203kgと、沖縄の延縄184kg。
しかも5貫連続でのご登場だ。
鮪中トロ
まずは沖縄産。
夏の中トロらしい赤身的な香りや酸味もありつつ、旨味が強い!!
鮪中トロ
塩釜産で、腹カミの中トロ。
柔らかい上に鮪らしい香りが強い。
沖縄産よりも強めに握っている点に福塚親方のスキルを感じる。
力加減もコントロールするとは、手練れだ。
中トロの後に日本ワインが登場し、ドメーヌ・ミエ・イケノのメルロー2019。
鮪赤身
沖縄産、漬け。
非常に柔らかい赤身で、海苔を噛ませているのに野暮ッたくない。
酸味に海苔の香ばしさを加え、さらに芥子を合わせている。
バランスが良い。
鮪トロ
腹カミの血合いギシ。
旨味に加えて香りも強く、とろけるような食感。
シャリ温を高めているところが流石。
よって、脂の口どけのみならず、頂いた後も香りが残り、清々しさすら感じる。
鮪大トロ
シャリ温を60℃に調整。
とろっとろで濃厚な脂だが、これまた香りがある。
鮪の美味しさもさることながら、温度調整の精度とセンスが振り切っていて、凄い。
澤屋まつもとKocon(ココン)
なんと2019ビンテージ。
つまり、2020年にお家騒動で退社された松本日出彦氏が造ったお酒だ。
ボタン海老の頭
七味も配慮されていて素晴らしい。
小鰭
天草産。
福塚流で皮をはぐスタイル。
それに伴い、小鰭の香りと旨味をピュアに感じることが出来て、斬新な食体験だ。
皮も小鰭の個性のうちであり、皮の食感の表現も一つの仕事なので、人によっては物足りなさを抱くかもしれない。
しかし、「灯台もと暗し」とも言える逆転の仕事を発想した福塚親方は料理人としての功績が大きいであろう。
他の職人さんがパクったら軽薄そのものだが…。
海胆
岩手産の殻付き生海胆とは衝撃的。
甘みも香りも純粋無垢ながらに鮮烈だ。
旨味の余韻は透明感がありつつ長い。
口直し
桃!!
桃自体の甘みと香りが強い甘露煮。
鯵
浜田のどんちっち鯵。
もはや、脂が強いのは言わずもがなのブランド。
とりわけ香りの引き立て方が巧く、雑な香りが無い。
塩水で洗い臭みを除去し、塩と酢ともに軽く〆ている。
〆によるむっちりした食感も魅力だ。
蛤
柔らかくて、シャクシャク。
いや、それよりも感動的だったのが、香りだ。
香りが突出している。
今までに頂いた蛤の握りで最も香りが強く、驚いた。
海老のオボロ
茶巾絞り。
非常にきめ細かいオボロ。
芝海老を使用し、甘みがシャリにピッタリ合っている。
あたかも上質な上生菓子のようだ。
そこに、奈良県の三諸杉を合わせるとは、センスが素晴らしくはないか?
あたかも上質な生菓子を頂いているかのような感覚を抱く。
煮帆立
もちもちっ、むぎゅっと気持ち良い食感で、繊維がホロリとほどけゆく。
そして、次第に香りが高まる。
これは温度帯がなせる技で、タネもシャリも50℃に調整されている。
穴子
ウエケンSP。
トロトロに炊いた穴子を炙って香ばしく仕上げている。
穴子自体は脂が過多であるので、これは穴子自体よりも仕事が良いと感じた。
べったら漬け
干瓢の手巻き
食感は柔らかい干瓢だが、決してダレていない。
海苔の香りと食感と合わせ、最後までシャリの酸味を感じさせる塩梅なのは良い。
椀
まさかの鼈出汁の贅沢な吸い物で驚く。
青森で天然温泉を利用してスッポン養殖を行う東北すっぽんファームの【兜すっぽん】を丸からさばいて調理している。
濃密なゼラチン質に舌が喜ぶ。
トロ鉄火巻
これだけ頂いているのに、名残惜しさを感じる。
完成度の高いコースとペアリングがなせる技だろう。
玉子
3層構造の玉子焼き。
なんと、卵を使い分けていて、奥久慈軍鶏、群馬若鶏、鶉の卵を使用。
3層は古典的な玉子焼き、デザート志向のモダンな玉子焼き、出汁を含めたソースで構成されている。
古典部分の食感も独特で、最後まで変態的に攻める心意気を感じる玉子だ。
水菓子
液体窒素で固めたアイスクリーム最中。
最中は炭火で炙って香ばしく。
アイス最中は鮨店、日本料理店でも昨今頻出する水菓子だが、今までに頂いた中で一番美味しかった。
山葵の食べ比べイベントのコース内容
通常はガリ3種類のところ、今回は2種類プラス山葵漬け。
ガリは上品な甘みを付けたものと、辛味が強いダイスカットもの。
山葵漬けは仙禽の酒粕を用いた自家製で、甘みが自然で大変美味。
仙禽はお酒もあると聞き、迷わずオーダー。
同席されていた他の方も皆オーダーされ、素晴らしい!と心から実感(笑)
鮪中トロ
使用する山葵は天城。
高めの温度のシャリが実に奏功し、トロの脂と乳化する。
これは精度が高いシャリ温の仕事。
天城の山葵は鮪の風味と味わいを殺さず、それでいて山葵の甘みと辛味を楽しませてくれるので、鮪との相性が良い。
小鰭
使用する山葵は安曇野。小鰭の産地は天草。
面白いことに皮を剥いで握る仕事。
小鰭は皮目の食感が好きな人がいるのも事実なので、リスクを負いつつ新しい仕事に挑戦されている姿が素晴らしいと感じる。
気になる結果としては、成功。
小鰭の香りと瑞々しさ、旨味をストレートに表現する仕事。
粗めのオボロも相性が良く、〆も含めて考えられた仕事だ。
春子
使用する山葵は安曇野。
食感はしっとり、ふんわりと柔らかく、モダンな方向性の〆加減。
槍烏賊
使用する山葵は天城。産地は青森。
コリコリ感を演出し、その後、とろっととろける食感を活かす包丁仕事。
鮹
使用する山葵は奥多摩。産地は神奈川県佐島。
食感はホロホロになるまで柔らかく煮ていて煮ツメも濃厚だが、香りも楽しめる点にセンスを感じる。
香りを失ってしまった蛸は作り手のエゴで蹂躙された蛸だ。
辛味ある奥多摩の山葵が相性良し!
白海老
使用する山葵は奥多摩。
昆布〆でしっかりと脱水していて、これは巧みな白海老の仕事。
昆布は一年寝かせたものを使用しているそう。
これも奥多摩の辛味がアクセントになり、奥多摩の山葵は甘みの強いタネとの相性が良い事を知る。
帆立
クラシカルな煮帆立は硬く煮るものだが、柔らかく仕上げて古典を再解釈。
しっとり、ホロホロ、しかしシャクシャクな食感。
煮ツメが濃厚である点も魅力的。
海胆
海胆2種類をブレンドして使用。
山葵は選択制で、奥多摩をチョイス。
穴子
豊洲の有名な仲卸ウエケンのSP穴子。
しっとり、ホロホロと繊維がほどけ、トロトロ過ぎない点が魅力。
漬物
干瓢巻き
甘みのある干瓢に山葵はピッタリ。
昔は干瓢巻に山葵を入れるのは無粋とされた時代があったそうなので、トレンドや文化というものが嗜好に基づき変化し続ける事を体感する。
椀
想像以上に面白い鮨店です。
イベントでお伺いしましたが、今後折を見て足を運び、福塚親方の進化を見届けたいと感じました。
「すし ふくづか」の独創性を鮨史(スシヒストリー)から読み解く
本項目はマニア向けの「おまけ」的な文章です。
マニアックなので興味のない方は飛ばしてください(笑)
「すしふくづか」の通好みな特徴としては、昨今の鮨のトレンドを押さえつつ、独自のアレンジを加えている点です。
主に以下を挙げることが出来ます。
- 高温度帯のシャリ
- シャリとタネの温度管理の徹底
- 鮪に入れる包丁の数の多さ
- 古典的な仕事の再解釈
お客さんの入店後にシャリを切り、高温度帯のシャリを使い始めた職人さんは、初音鮨の中治勝親方。
今のように有名になる前から駆使されていて、初めて頂いた時は驚嘆を覚えました。
念のため説明しておくと、これは完全に鮨のセオリーを無視した手法です。
シャリはシャリ切りした後に落ち着かせ、人肌の温度(35~37℃)で握る事がセオリーであったところ、高温度帯で始めて、次第に温度を下げる手法は極めて画期的でした。
その後、鮨處やまだの山田裕介親方もタネごとに温度を合わせる手法を取られ、コースの途中に温度を上げたり下げたりされました。
そして、現在は一時閉店してしまったすし佐竹(2021年に「佐たけ」として復活)の佐竹大親方は、更に高温のシャリを脂の乗ったタネに合わせたり、怒涛の如く熱いシャリを3貫連続で出されたりされる手法を発明。
上記の皆さまは、常識やセオリーよりも自らの直観に基づいて鮨と向き合った結果、新たな技を編み出したのだと思います。
福塚親方はタネごとの温度調整は頻繁にされませんが、基本的に50℃のシャリを使用されます。
これは既存のセオリー(人肌温度)+15℃の高温度帯のシャリです。
高温すぎるのでは??と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、以外にも違和感は皆無で、しっかりとタネと調和します。
最初に切りたてのシャリを提供するスタイルは、初音鮨へのオマージュと見た。
そして、「鮪に入れる包丁の数の多さ」については、かつて六本木の「すし通」に在籍されていた藤永大介親方が編み出された手法。
表面に50カ所以上の包丁を入れて繊維を断ち切る仕事ですが、福塚親方は更に部位ごとに複数の包丁技を使い分けておられます。
柔らかい鮪にはそのような仕事は不要!と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、鮪の異なる楽しみ方を提案する手法として考えると、僕は不要とは断じません。
最後に、「モダンな鮨」や「ガストロノミックな鮨」を実現する上で重要なファクターは、古典的仕事への造詣だと思います。
新しい仕事だけでは、一時的にメディアは食いつくでしょうが、普遍性に欠けてしまいます。
古典的な仕事を再解釈する事で、新たな文化を生み出すのではないでしょうか。
福塚親方は煮帆立や煮蛸などの古典的な仕事も押さえておられ、それらを独特の味に仕上げている点が美点だと感じました。
よって、以上のような特長をお持ちの方なので、西洋料理の高級食材は使わない方が良いとお伝えしました。
キャヴィアやトリュフなどは日本の自然に無いので、無粋な存在です。
和食は食材で季節を表現出来る点に美しさがある料理です。
半可通はキャヴィアやトリュフでコロッと転がりますが、本当に食べ込んでいる人間は逆に辟易してしまいます。
百譲って国産のキャヴィアなら許容範囲内ですが、それをやって良いのは生産地のみだと思います。
和食の神髄は身土不二。
季節のもの、土地のものを食すことが日本人の幸せに繋がり、周囲三里(約12km)内の旬の食材を頂く事が身を作る…と言われていて、僕はこの言葉が大好きです。
都会に住んでいる現在人として実践は不可能に近く、都会の料理店の魅力としては全国のみならず全世界の料理・食材を頂ける事だと認識していますが、料理の根底にある精神として大切にしたいと個人的に感じています。
日本人が和食に期待するのは和の食材であり、各地の名生産者さんのストーリーを頂きたい次第です。
「すし ふくづか」の立地と雰囲気
お店は「まさに神楽坂」と言うべき、奥まった場所の路地にあります。
僕は学生の頃から神楽坂の雰囲気が好きでしたが、昨今は資本系の開発が進み、神楽坂通りは賑やかになっています。
しかし、未だに道を曲がるとしっとりした影が落ちる路地があり、石畳の風情を楽しませてくれるのが神楽坂。
鮨ふくづかさんは静かな一角にある建物の2階に入っていて、アプローチから素敵です。
黒く大きな暖簾がはためき、中が分からない意匠なので、初めて訪問すると期待を高めてくれます。
そして、店内に入ると期待が更に高めてくれる雰囲気があります。
白木のカウンターは控えめな照明で穏やかな光を帯びる。
壁は光を吸収し、席に着くとすぐに寛ぎを与えてくれる空間設計です。
いかにも東京カレンダーに登場しそうな雰囲気ですが、決してゴージャスではなく、幽玄さを含んだ上質な意匠。
寛ぎと共に五感が刺激され、漬け場の親方の一挙手一投足を眺めながら、鮨に没頭できます。
「すし ふくづか」のお店の情報と予約方法
各種WEBサービスで予約が可能です。
店名:すし ふくづか
シャリの特徴:飯尾醸造のお酢を3種類用い、ブレンド比を変えて3種類のシャリを使い分ける。硬さや温度管理は申し分なし。
予算の目安:おまかせ29,700円、おまかせ&ペアリング38,500円
最寄駅:飯田橋駅から400m、神楽坂駅から600m
TEL:03-5579-2860
住所:東京都新宿区津久戸町3-5-2F
営業時間:お昼12:00~13:50(L.O.13:30)、ディナー(三部制)、14:00、18:00、20:30
定休日:月曜
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自身で行った山葵の食べ比べ記事です。
姉妹ブログに鋼鮫と伊豆のお取り寄せ山葵の記事を書いています。
https://sushi-blog.com/feast/haganezame/
https://sushi-blog.com/feast/izu-wasabi/
鮨の進化に感動する、すしログ(@sushilog01)でした。
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