こんにちは、蕎麦の人気を高めたい、すしログ(@sushilog01)です。
蕎麦好きには名の知れた「流浪の蕎麦職人」がいらっしゃいます。
職人のお名前は、石井仁さん。
「凄腕」として知られ、ミシュランの一ツ星まで獲得されたものの、サラッと投げ出して移転されてしまいました。
石井さんが編み出した傑作は【水腰そば】として知られます。
これは多加水の十割蕎麦で、今までにない世界を開いてくれる爽快な蕎麦です。
本記事では、石井さんとその【蕎麦懐石】の魅力をご紹介します。
すしログ
石井さんを追いかけるファンがいらっしゃることに納得!
蕎麦に興味が無い人にも感動を与えてくれる名店です。
笠間「仁べえ」石井仁さんと蕎麦懐石の魅力とは?
石井仁さんは日本料理の修行経験はあるものの、蕎麦が我流と言う蕎麦職人さんです。
お店の来歴を眺めると、まさに「流浪」の言葉が頭によぎります。
1992年に「いし田(東京・神田)」を開き、1998年に「朴念仁(静岡・修善寺)」で名声を確立。
その頃に「多加水・極細」の蕎麦を実現されました。
その後東京に戻られ、「古拙(銀座)」を開店。
5年後に移転して「仁行(日本橋)」を開きます。
「古拙」では【水腰そば】を編み出し、「仁行」では【蕎麦懐石】を高度に昇華させました。
各々で、開店早々ミシュランの一ツ星を獲得されます。
【水腰そば】の要諦は下記の通りです。
本来、そばというものは香を楽しむものなのかもしれません。
しかし、ぼそぼそとしたそば特有の食感は喉越しが悪く、
それを苦手とする私があえて、喉越しを楽しむために、香を犠牲にしても構わない。
それでいて、松茸を裂いたようなしなやかな食感、
そばが苦手、という方に是非食べていただきたいと自信を持ってお勧めしたい。
そんな究極の喉越しを目指した十割そば、それが、「水腰そば」です。
しかし、2016年に東京のお店を閉じて、「蕎麦食堂 仁べえ(群馬・富岡)」を開店。
さらに、お店を閉じられ、2019年に「仁べえ荘(茨城・笠間)※」を開きます。
※現在の店名は「仁べえ」
そして、また年内に移転予定との事です(移転先は未定)。
ファン泣かせな職人さんですが、追いかける喜びがあるとも言えます(笑)
石井仁さんの【蕎麦懐石】の魅力とは?
石井さんのお店を特徴づけるものは【蕎麦懐石】です。
一般的に【蕎麦懐石】と言うとその名前とは裏腹に、蕎麦に和食をくっつけただけの【蕎麦+懐石】もしくは【懐石+蕎麦】のようなものも散見される状況。
蕎麦をコースに有機的に組み合わせなければ、【蕎麦懐石】を名乗るべきではない、と僕は思います。
【蕎麦懐石】として感銘を覚えたお店は、月島の「由庵 矢もり」、松本市の「滿(mitsu)」、篠山の「ろあん松田」など。
石井さんの【蕎麦懐石】には今までのキャリアが集約されているように感じます。
御料理と蕎麦を有機的に組み合わせておられ、噂以上の手練れだと感じました。
蕎麦を一品料理の中に組み込んで、調理の面でも調味の面でも独自のレヴェルまで引き上げています。
そして、同時に、気取ったところが無いところが最大の魅力。
誰もが美味しい、と感じる反面、凄さを実感しづらいほどに技術とセンスを上品に落とし込んでおられます。
あまりにも自然に。
蕎麦と言うある意味「渋い」料理を活かすために、研ぎ澄まされたコースが石井さんの【蕎麦懐石】だと感じました。
今回は「蕎麦旅行」と銘打って2日で蕎麦を食べ歩いたのですが、石井さんの蕎麦を頂き、「蕎麦は人が出るなあ!」と痛感しました。
技術はもちろん、考えや人生が表れやすい料理ジャンルかもしれない、と感じさせて頂いたのが、石井さんの蕎麦です。
「仁べえ」の蕎麦懐石の詳細
「仁べえ」の【蕎麦懐石】は6,600円で、お酒は1合1,000円です。
【蕎麦懐石】の内容
- ほうれん草とキノコのお浸し
- 蕎麦の実粥
- ヒラメと新わかめのポン酢和え
- 蕎麦寿司
- ポテトサラダとヤリイカ
- 蕎麦サラダ
- 車海老の天麩羅
- もずく蕎麦
- 水腰蕎麦
- 水菓子(プリン)
ほうれん草とキノコのお浸し
キノコはナメコ、エノキ、椎茸。
鰹出汁がしっかりと利いていて、冷たい。
エノキから自然なとろみが滲んでいる。
暖かい日に清涼感ある先付けだ。
腕が容易に分かる先付けに頬がほころぶ。
蕎麦の実粥
黒胡椒を使用。あんかけ
塩気が絶妙な塩梅。
穏やかでありながら、蕎麦の甘みを活かす。
蕎麦の実は食感がホロッとして、粒感がある。
蕎麦の実の輪郭も感じられるところがユーモラスだ。
ヒラメと新わかめのポン酢和え
お蕎麦屋さんで生魚を出すことには賛否あるかと思うが、仕事が施されていたり、コースの中で味覚的に意義があったりするならば良いと思う。
ヒラメは脱水していて、みっちり、しっとりで、香りをしっかり感じられる。
旨味もバッチリあり、ポン酢の酸味が軽いので合っている。
新わかめはじゃくじゃくした食感と香りが良い。
蕎麦寿司
海苔の香りが芳醇に広がり、玉子の甘み、アナゴの風味、干瓢の食感、キュウリ、炊いたお揚げが見事に一体化。
バランスが絶妙な【蕎麦寿司】の傑作であるが、何よりも素晴らしいのは蕎麦の存在感だ。
石井さんの【蕎麦寿司】は、蕎麦の舌触りや食感が活きている。
味の面では一体感が高く、同時に蕎麦の存在感を常に感じさせ続ける見事な仕事だ。
付け合わせの山葵の甘酢漬けも良い組み合わせ!
ポテトサラダとヤリイカ
トマトと面白い組み合わせ。
ヤリイカは蕎麦つゆで炊いている模様。
ポテトサラダには極細切りのリンゴが使用されていて、繊細な配慮を感じさせる。
蕎麦サラダ
極細で食感豊かな蕎麦を活かしきる、繊細な味付けだ。
ゴマやミョウガの香りも程良い。
胡麻に含まれている油分を活用して、上品に食欲を刺激してくる。
お酢のごくごく軽い酸味や、甘みも含めて、味覚的なバランスが良い。
さらには食感の一体感も高い。
「蕎麦をパスタとして考える」発想が活きている。
これもまた創作蕎麦の傑作だ。
車海老の天麩羅
肉厚な車海老で、ぷりぷりした食感が気持ち良く、甘い。
衣はきめ細かく、しっとりと溶ける。
尾まで頂ける揚げ方で、尾は香ばしい。
もずく蕎麦
もずくの食感と蕎麦の食感の二重奏が心地良い。
蕎麦は極細で食感がハードなので、もずくのくにゅプチ食感と面白いコントラストだ。
鰹が利いた出汁も美味しく、爽快そのもの!
この清涼感はうどんやラーメンでは体感出来ない蕎麦の魅力だと痛感する。
十割の水腰蕎麦
これが、【水腰そば】だ。
通例は蕎麦は蕎麦粉に対して50%の加水率だが、石井さんは65~67%もの加水率で打つ。
当然の事ながら生地は柔らかく、まとまりにくくて切りにくいが、石井さんはなんと1㎜程度の極細な蕎麦に切る。
しかも、切りムラが無いため、食感や口当たりが抜群だ。
石井さんの蕎麦は超極細で、長い。
そして、コシが非常に強い。
同時に、甘みもしっかりあり、余韻で甘みが感じられる。
「喉越しを楽しむために、香を犠牲にしても構わない」とのお言葉とは裏腹に、香りも爽やかに楽しめる。
実に瑞々しい蕎麦だ。
ツユは鰹がバシッと利いていていながら、まろやかな味。
醤油のコクや香ばしさはありつつ、醤油の酸味やエグみは極めて弱い。
このあたりも、蕎麦の長さを考慮して設計されているのだろう。
薬味は辛味大根と本山葵。
蕎麦湯はトロットロタイプで、これは結構意外であった。
水菓子(プリン)
甘みが穏やかで、卵のコクがあるプリン。
柚子を極少量使用している!
それゆえ、どことなく和っぽい印象を与える。
「仁べえ」の立地と雰囲気
「仁べえ」さんは笠間駅から徒歩2分程度の場所にあります。
もとは旅館だったところを改装されています。
部屋からは中庭が見えるので、開放感があります。
決して広くはありませんが、テーブルの間隔は取られているので、ゆったりと頂けます。
店内入口に掲げられた四文字に痺れる。
「仁べえ」のお店情報と予約方法
「仁べえ」の【蕎麦懐石】は6,600円で、2名からの完全予約制となります。
休日は人気が高いようなので、余裕を持って予約するのがベターです。
まさかのインスタアカウントをお持ちなので、チェックしてみてください(笑)
店名:仁べえ(じんべえ)
予算の目安:お昼1,000円~、夜1,000円~ ※お酒と組み立て方次第!
TEL:090-3334-9918
住所:茨城県笠間市下市毛271-1
最寄駅:笠間駅から160m
営業時間:11:30~14:00
定休日:木曜、不定休
※売り切れ仕舞い(電話の蕎麦取り置き予約可)
※17時~(予約営業)
※【蕎麦懐石】含め、予約は必須かと思います
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美味しいお蕎麦に出会うと心が洗われると感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
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