こんにちは、本当に美味しいタケノコは会席料理店で食べるべしと思う、すしログ(@sushilog01)です。
さて、僕が星野さんを初めて訪問したのは、2016年4月です。
当時も予約を取るのが難しいお店でしたが、2018年8月に移転されてから更にハードルが上がったようで中々再訪出来ませんでした。
そして、この度、非常にありがたいお誘いを頂き、再訪が叶いました。
すしログ
2021年10月の時点で2022年の予約がほぼ埋まったと聞いた時は驚きました。
しかし、それ以上に驚いたのが、6年前に訪問した事と自身の顔を覚えてくださっていたことです。
「新ばし 星野」の魅力とは?
「新ばし 星野」は星野芳明さんが2012年に開いた日本料理店です。
東京屈指の和食の名店とされた「京味」で10年以上修行されて独立されました。
「京味」の系譜にあるお店は押しなべて予約を取りづらくなりますが、「新ばし 星野」は突出した予約難易度になっています。
詳細は今さら自分が書いても仕方ないので割愛するとして、今回伺って感じた魅力をご紹介します。
この度改めて御料理を頂き、特に凄いと思ったことは甘みの使い方です。
全体的に甘みが強めの構成なのですが、それが全く重たくなく、絶妙な塩梅だと感じました。
もちろん「甘みが強め」と言っても会席料理として相対的な強さなので、漁港の定食のように甘みを前面に出すような甘みの使い方では決してありませんが、頂いていて確かに甘みを感じる御料理が複数あります。
この点に、星野さんの非凡を見ます。
技術が無ければ調和しづらい味覚が甘みなので、巧みに調整されて独自の味に仕上げていて、さらには単発ではなくコースとして組み立てるセンスには、脱帽しました。
繊細でありながら甘みを用い、明確な自身の味として感じさせる点は凄い。
そして、もう一点素晴らしいと感じたのが、食材の選択です。
星野さんは星野さんでしか仕入れられない食材に加えて、誰でも入手できる食材も使用されています。
それを高い技術で逸品に仕上げられます。
高級食材の多用に加えて油脂と塩気に頼る方とは一線を画し、技で魅せる点が最高にエキサイティングです。
僕は初訪問時に、以下のように感じました。
ご主人・星野氏は修業先の京味、西健一郎氏の味だけでなく、ご自身が食べ歩かれて覚えた味を組み合わせて、独自の味わいを構築されているように感じます。
再訪してこの想いは強まり、星野さんだけの味を堪能させて頂き、忘れられない食事となりました。
かつて頂いたのと同じ御料理もありましたが、全てが数段階レベルアップされていて、非の打ち所がありません。
下記の御料理とお酒で42,600円でしたが、高いとは感じませんでした。
「新ばし 星野」の御料理の詳細
「新ばし 星野」さんで頂いた御料理をご紹介します。
2022年4月の訪問時に頂いたもの
2022年4月の訪問時に頂いた御料理は、以下のとおりです。
この度頂いた御料理
- 蕗の薹の小吸い物
- 鰻の蒸し寿司
- タケノコの焼きもの
- うすい豆
- 紫海胆
- 根芋の吉野煮
- ぐじとタラノメの天麩羅
- 鯛の刺身
- 椀
- サクラマスの漬け焼き
- タケノコの直炊き
- 炊き合わせ:鯛の子、蕗
- 酢のもの:ホタルイカ、車海老、菜の花、うるい
- タケノコご飯
- お食事:ご飯、留め椀、香の物
- 水菓子:わらび餅、黄な粉
この度頂いたお酒
- 伯楽星、特別純米
- 〆張鶴。純 純米吟醸
蕗の薹の小吸い物
蕗の薹の香ばしさに鰹の香ばしさ加わり旨い。
スッと切れるような爽快感が持ち味だが、同時にまろやかさも楽しめる。
実に気の利いた一品目から始まる。
鰻の蒸し寿司
鰻は少量であっても炭火で焼かれている。
燻蒸香と卵の甘み、お酢の酸味が強さと優しさを合わせ持つ。
冒頭で蒸し寿司とは、良いなあ…と心から感じた。
タケノコの焼きもの
藤枝産のタケノコで、2時間もかけて焼いている。
出汁醤油に木ノ芽と王道の食べ方。
そもそも頂く前から香りが良い!
いざ頂いてみれば、とにかくジューシィ。
そして、歯ごたえが良く、瞬時に甘みが広がり、喉で旨味を感じる点が印象的だ。
グルタミン酸よりもアスパラギン酸が遥かに多い野菜なので、意外な発見であった。
頂く間も頂いた後も、心地良い香りに包まれる。
うすい豆
紀州産のうすい豆(碓井えんどう)で、強い甘みを付けた調理だが、豆の香りと豆の甘みと合わさると調和する。
うすい豆はグリーンピースを品種改良した豆で、春が旬。
紫海胆
大間産の海胆で、鯛の中骨の出汁ジュレと合わせた冷製の酒肴。
海胆の甘みに鯛のゼラチン質が合わさり、上品な塩気。
バランスが綺麗だと実感する。
海胆にキャヴィアや牛肉を合わせる料理の対極にある爽快感と素材の活かし方である。
根芋の吉野煮
定番のズイキの根芋バージョン。
これまた素晴らしい!
トロッととろけつつ、繊維質がしゃくっ!と弾ける。
食感のコントラストと、とろける意外性が面白い。
最後まで音が良いところが実に魅力的な、食感と音を楽しむ料理だ。
これも調理には甘みがつけられているが、実に考えられている。
このような御料理は、表層的な味覚のみで考えて、「甘みが特徴」と表現する方が多いかもしれないが、御料理としての本質は他のところにある。
その本質を理解しようと努める事こそが、食べ歩きの本質でもあろう。
ぐじとタラノメの天麩羅
薄衣なので軽やかで、サクサク、カリサクな天麩羅。
高温で焼き上げるような脱水を採り入れている。
「みかわ是山居」の早乙女親方の仕事を日本料理に落とし込んでいるように感じる。
ただ、天麩羅職人とは異なる仕事であるところが良い。
それは即ち、ぐじ(甘鯛)にひとしおしているところ。
ひとしおとは、言わずもがな伝統的な【若狭焼き】に用いる調理法だ。
京料理の古典技術を江戸料理の天麩羅に応用している文化的試みに加えて、脱水と寝かせにより味を高める味覚的試みも素晴らしい。
鯛の刺身
産地は明石。
奧が背中側で、手前が腹側とのこと。
背中側でも脂が乗っていて、香りは春らしい。
旨味があり、やはり脂が強い点が特徴であった。
椀
馥郁たる昆布の香り!
これは旨い。
塩気は完璧と言え、甘みと旨味に包み込まれる吸い地だ。
アイナメの火入れが抜群で、骨切りや葛打ちの高い技術も相まって、とろけるようだ。
梅肉の香り、酸味、塩気なども全く障らない。
これは素晴らしい椀。
洗練されているけれど、誰もを包み込む包容力がある。
サクラマスの漬け焼き
北海道の「桜寿」というブランドサクラマスを使用。
皮はバリッバリで、身はジューシィ。
焼き込んでいるが全く焦げていない皮は見事だ。
漬け地の塩梅も良い。
味付けが強く、水分が抜けた焼きものもあるところ、
タケノコの直炊き
星野さんが最も好きなのが炊いたもの。
こちらは穂先だけを使用しているそうだ。
じゃくっ!と多数の層がリズミカルに切れてゆく食感が魅力的で、あたかもパイナップルのような気持ちの良い食感だ。
甘みも強く感じられる。
タケノコは、「香りの焼き、甘みの炊き」だと感じる。
食感は各々異なり、それぞれが楽しい。
炊き合わせ:鯛の子、蕗
甘みを付け、もっちりした食感に仕上げた鯛の子。
蕗の鮮烈な香りとの相性が良い。
酢のもの
ホタルイカ、車海老、菜の花、うるい。
タケノコご飯
ご飯の40~50%くらいの量のタケノコが使用されていて、嬉しすぎる。
お食事:ご飯、留め椀、香の物
長めのお米を使用していて、もっちり且つほんのり柔らかく炊かれていて、米の甘みと香りを実感する。
留め椀はしっかりと出汁が利いた赤出汁。
付け合わせのおかずは、超しっとりな食感のちりめん山椒が最も印象的であった。
水菓子:わらび餅、黄な粉
実にクリアな味わいで美味しいわらび餅。
黄な粉も豆の風味があり、甘みが控えめで美味しい。
2016年4月の訪問時に頂いたもの
初訪問である2016年4月の訪問時に頂いたものは下記のとおりです。
鯛鮨
鯛は昆布で〆ており、昆布の香りを強く残さず、旨味を付加している。
食感は凝縮されており、「鮨職人」の仕事ではなく「料理人」の仕事だなと感じさせる。
酢飯は硬めで酢をそれなりに利かせている。
桜の葉の香りはほどほどにしており、嫌味でない。
穏やかな幕開けでしたが、春の到来を感じさせてくれる上品な先付となる。
なお、桜の葉をめくり、鮨が現れた瞬間、「鮨!」とつぶやき、ついつい写真をもう一枚撮ってしまいました(笑)
椀
淡路の鯛の潮汁。
お頭を用い、水、昆布、塩だけで調理されたと言うだけあり、実直且つ清廉な旨味を楽しませてくれる。
塩加減が良い。
鯛の鰭の肉を少し使用されており、みっちりとした身を噛みしめると強い旨味が滲む。
鯛のイノシン酸、昆布のグルタミン酸、塩気のバランスに特筆すべきところがあるが、
薬味の白髪葱がやや強過ぎるように感じた点はいささかマイナス(個人的な好みです)。
焼きもの
京都の物集女産の筍。
最上級の筍を一時間転がしながら、じっくりと焼き上げたもの。
惜しげもなく大胆にカットされた雄々しい筍を、ひとたびガブッと噛み締めれば、竹林に吹く一陣の風が土の香りを纏いながら鼻孔をくすぐる。
そして直ぐ様、柔らかな酸味と芳醇な甘みが横溢する。
繊維はシャクッと心地良く弾け、圧倒的に瑞々しい。
かなり上質な味わいだったので伺ったところ、朝採りではなく1日タイムラグがあるそうだ。
しかし、むしろ素材の持つ力を引き出す火入れにただただ感服した。
うすい豆の翡翠煮
紀州産のうすい豆。
ツユに甘みがあり、それでいて、鰹出汁を利かせているところが面白い。
ただ、個人的には紀州うすいには甘みを付加しない方が風味を楽しめるように感じる。
海胆と鯛の出汁ジュレ
海胆は本鮪で有名な大間産。
鯛の中骨で取った出汁のジュレで海胆を固めており、海胆一粒あたりが巨大で驚く。
噛みしめると圧倒的な甘みで苦味は無く、ジュレの旨味と適度な酢橘の酸味が支える。
海胆の口溶けとジュレの口溶けも誤差が少なく、快感とも言える逸品。
揚げもの
グジ(赤甘鯛)とコシアブラの天麩羅。
揚げ方に妙があり、グジはさらりとほどけ、コシアブラはサクッと切れる。
グジは軽く塩を振って脱水した後に揚げているのか?香りや旨味の伝わり方が絶妙。
コシアブラも野趣を感じる上質な香りを楽しませてくれる。
余談となるが、僕はかつて山に山菜採りに行っていた時期が数年あるため、コシアブラの香りはその頃の良き記憶を蘇らせてくれる。
天麩羅は小麦粉のみを用い、油は揚げる分だけ使用されているそう。
ひとえに「腕」による味わいだ。
お造り
淡路(由良)産の鯛と、愛知県産のトリ貝。
鯛は塩を振り半日寝かしたもの。
舌に触れた瞬間に甘みが伝わり、驚くべきもの。
鯛らしい歯ごたえもしっかりあり、頂いた後の余韻が上質。
東京でここまでの鯛と鯛の仕事を楽しめるのは嬉しい。
トリ貝も香りが強く、旨味もたっぷり。
付け合せはウド、山葵は天城のもので辛味が鋭く香りも上々。
椀
この季節の定番、鮎魚女(アイナメ)を用いた腕。
京味出身のお店としては意外なまでに出汁が澄みきっており、塩分も極限まで控えめ。
葛打ちした鮎魚女の、凛々しく自然な甘みと淡くも強い香りがじんわりと広がる。
焼きもの
山形産の桜鱒。
山形産の桜鱒。
昨今、脂が強くパンチのある魚が使われがちだが、桜鱒とは逆に嬉しい。
清廉な酸味に桜鱒特有の淡い香りが混じり、脂も多過ぎず少な過ぎず。
料理の流れに合致していると感じた。
前の椀の余韻を維持する。
土佐酢を掛けた大根おろしで頂くと、桜鱒の旨味の輪郭が引き立つ。
炊き合わせ
筍、鯛の子、蕗に花山椒と、実に4月らしい炊き合わせ。
各々の食材が明確に異なる味わい(出汁)で、非常に楽しい。
花山椒も塩気を強く利かせて炊いており、鯛の子の甘めの出汁と良い相性。
蕗に染み込んだ出汁も滋味深く印象に残った。
お食事
お米は山形産の合鴨農法によるコシヒカリ。
ここに、香の物、ちりめん山椒、松阪牛の時雨煮、途中に鰯の醤油煮。
お米は硬めに炊き、口の中でのほどけ加減が良く、炊きたてのお米特有の匂いが少なく、甘みが強く、粘り無し。
最後に頂き、するすると入ってしまう実に美味しいご飯。
ちりめん山椒はしっとり柔らかく炊いているところが印象的。
松阪牛の時雨煮は肉の脂が強く、甘い。
少量で満足出来、行き過ぎるところが無い。
鰯の醤油煮もピリッと生姜を利かせ、脂が乗り始めた鰯の魅力を感じさせてくれる。
と言うか、押しなべてご飯に合い過ぎるので、お替り必至である。
誰しも避け難い欲求を喚起する。
出汁を強く利かせた赤出汁も力強いお米に合う。
最後にはおこげを。
わらび餅
モチモチと瑞々しいわらび餅。
以上の尾料理に加えて、頂いた日本酒は、岐阜・天領純米大吟醸、石川・加賀鶴純吟加賀藩、新潟・麒麟山純辛をシェア。
価格はそれなりの価格になりますが、全く以て割高感は無し。
こちらよりも安くても高くても腑に落ちないお店はザラに在る。
自分の理想の日本料理に非常に近く、また、ご主人がお若いところは着目すべきところです。
将来の進化が心から楽しみになりました。
再訪のハードルもまた高いですが、何とか努力し伺いたいところです。
「新ばし星野」のお店情報と予約方法
予約は取れないため、予約方法については書けません(笑)
僕と同じく、予約権を持つ常連さんの友達を作る方法しかありません!
店名:新ばし星野(しんばしほしの)
予算の目安:20,000円~30,000円 →40,000円〜50,000円
TEL:03-6450-1818
住所:東京都港区西新橋1-18-8 →東京都港区新橋5-31-3
最寄駅:御成門駅から400m
営業時間:18:00~23:00
定休日:日曜、祝日
※完全予約制です
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※日本料理編 No. 27に大幅加筆し、最新情報を盛り込みました
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