こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
この度、2024年10月11日(金)に「鮨と日本酒のペアリング会」を開催しました(参加者様9名)。
開催店舗は横浜時代から応援している鮨店「鮨ゆうき」さんです。
横浜から飛躍する俊英職人!独自の境地を拓く広尾「鮨ゆうき」本記事では、「鮨ゆうき」さんの魅力と「鮨と日本酒のペアリング」の魅力をお伝えします!
林ノ内親方のご協力のおかげで、大盛況に終わりました!
自分自身、今回のイベントと準備で「鮨と日本酒のペアリング」のポテンシャルを再確認しました!
コラボして頂ける職人さん、料理人さんがいらっしゃれば、随時ウェルカムです。
一緒に新しいフィールドを開拓しましょう。
それでは、今回の日本酒ペアリングで用意したお酒を紹介します。
そして、ペアリングのイメージをお伝えします。
今回のお酒は、3つの酒屋さんと酒蔵直販ルートで仕入れました。
お酒の購入店舗については、未来日本酒店(渋谷)さん、山内屋(日暮里)さん、ひろしまブランドショップTAU(銀座)です。
- 賀茂鶴酒造(広島県):賀茂鶴 光壽 Sparkling Sake 冷酒×シャンパーニュグラス
- 今西酒造(奈良県):みむろ杉 Dio Abita 冷酒×ワイングラス
- 吉川醸造(神奈川県):雨降 杉山流 雄町 Dr.Sugiyama ぬる燗×猪口
- 千代むすび酒造(鳥取県):こなき純米(赤) 山田錦辛口 常温×酒杯グラス
- 朝日酒造(新潟県):久保田 雪峰 ぬる燗×猪口
- 今田酒造本店(広島県):富久長 海風土 Seafood 冷酒×ワイングラス
- あさ開(岩手県):純米原酒 秋あがり うまKoi 燗冷まし×酒杯グラス
- 平六醸造(岩手県):layer 洋ナシ 冷酒×ワイングラス
「未来日本酒店」さんは時間制で有料テイスティングが可能です。
今回、店長のスイさんに相談しながら、ご提案を頂きつつ銘柄を決めました(上記4,5,7)。
お陰様で選択肢の幅が広がり、面白い提案ができました。
過去に何度か仕入れさせて頂いた大塚の「地酒屋こだま」さんも同様ですが、僕は酒屋さんに相談させて頂きつつ、酒屋さんの色も出していきたいと考えています。
なぜなら素晴らしい酒屋さんは魅力的なセレクトショップのような存在なので、訪問して相談させて頂く楽しさがあり、その楽しさを参加者さんや読者の方に伝えたいためです。
そして、僕のペアリングイベントでは基本的にプレミアム銘柄は使わない方針です。
参加者の方が入手できる銘柄で構成した方が、イベント後さらに楽しんで頂けると考えるためです。
お酒の希少性で特別感を出すよりも、あくまでも味覚と嗅覚に基づくペアリングの方が粋だと確信しています。
まず、僕のペアリングの基本的な方向性は以下のとおりです。
- お店の個性を活かす(お酒ありきの味覚調整をなるべく行わない)
- お酒のブランドや産地、酒米よりも純粋に味で選択
- 鮨職人が選ばない酒蔵や銘柄も積極的に使用する
お酒のための味覚調整をなるべく行わない理由は、開催させて頂くお店の個性を尊重するためです。
ペアリングのために「お酒に合わせた調理」を行うお店も多々ありますが、それは自分の店舗だから出来る事。
僕のようなフリーランスのサケディプロマの場合、お店の個性を活かすのが使命だと考えます。
(ただ、お店側から味覚調整を行って新しいチャレンジをしてみたい!とのご要望がある場合には、喜んで協力します)
そして、ペアリングで重視しているポイントは以下のとおりです。
- ネガティブな反応を起こさない
- 全体のリズムを作る
- 味覚的、嗅覚的な調和を目指しマリアージュが1~2つあれば大成功と考える
経験則として、プロのソムリエであってもマリアージュが1~2つあれば大成功だと思います。
下手すると1つも無いケースさえありますので(セオリー通り無難に選択する方はその傾向があります)。
よって、ワインよりも味覚的な対比を付けにくい日本酒においては、マリアージュが2つあれば相当な腕利きだと考えます。
そして、今回「鮨ゆうき」さんで意識したポイントは下記のとおりです。
- 林ノ内親方のシャリに味覚的同調を試みる
- 親方のシャリと鮨種の基本的な味覚の相乗効果とお酒の相性を想像する
今回は過去よりも一歩先に進め、シャリとの相性を一層重視しました。
林ノ内親方が使用されている米酢でシャリを切りつつ、同じメーカーの赤酢のシャリも切って、タイプの異なるお酒2種類と実験を行い、基本的な味覚の方向性をインプットします。
そして、上野の吉池で刺盛りを調達して、全て仕事を施してシャリと合わせてみました。
その上で、タイプ違いのお酒4種類と味覚的、嗅覚的な検証を行い、先に紹介したお酒選びのプロセスに移りました。
鮨の食べ歩きの経験とサケディプロマとしての知見を組み合わせて、味覚と嗅覚を総動員すると非常に面白い化学変化が起きる事を実感しました。
これは関心のある鮨職人さん、ソムリエ、食べ手の方に伝えていきたい!と感じた次第です。
それでは、今回のペアリング会のレポートを行います。
当日僕はサーブを行ったので、料理写真は事前に検証のために訪問した際のものです。
調理面は基本的にお店のデフォルトでお願いしており、一部の構成や使用する薬味のみ指定させて頂きました。
流れについては通常時と異なる点をご了承ください。
また、お酒のコメントについてもイベントでお伝えしたことの極一部となることをご了承ください。
乾杯酒&酒肴の前半に合わせたお酒は、【賀茂鶴 光壽】です。
・特定名称:純米大吟醸スペック(瓶内二次発酵スパークリング)
・原料米:山田錦(広島県産)
・精米歩合:28%
・アルコール度数:10〜11%
僕はペアリングの最初は発泡性のお酒が良いと考えています(日本人は泡のお酒が大好き)。
そして、これは「シャンパーニュキラー」の高級スパークリング日本酒です。技術力と資本力を持つ蔵が本気で作ったらこうなるのか!と驚くほどの美味しさです。
シャンパーニュやスパークリングワインは発泡性と酸味で切るマスキングペアリングが主眼となります。スパークリング日本酒は発泡性については同様ですが、甘味で味覚を補足することが可能です。
酒肴の中盤に合わせたお酒は、【みむろ杉 Dio Abita】です。
・特定名称:非公開
・原料米:山田錦
・精米歩合:60%
・アルコール度数:13%
爽快感のある吟醸香でスパークリング日本酒から接続しつつ、酒肴の味わいを盛り上げていきます。
この銘柄は白身魚の旨味や香りを邪魔しない方向性。そして、甘酸っぱさがあるので少し濃いめの味付けや脂にも合います。
鰻には酒の甘味が味付けの甘味を補足するように合わさり、フルーティー香でお洒落な印象になります。クロムツは脂の甘味があるので酒の旨味が伸びます。青柚子の香りとこのお酒の香りは相性が良く、しかもベースの出汁とも調和します。
当日の仕入れで追加頂いた一品。味見の上で提供順を決めました。
酒肴の後半に合わせたお酒は、【雨降 杉山流 雄町 Dr.Sugiyama】です。
・特定名称:純米酒(山廃)
・原料米:雄町(岡山県産)
・精米歩合:60%
・アルコール度数:16%
一躍有名になった雨降(吉川醸造)。超硬水(150~160、平均48.9)で造るのでキリッとしたお酒になるところ、個性的な造りで他にない味を表現されています。
この銘柄は冷酒だと甘味や酸味は軽やかで旨味を強く感じます。そこで燗をつけると、酸味が広がります!あたかもブドウのような印象になり、旨味と甘味が寄り添い酸味でスッキリさせる方向性。燗酒なので脂を流す効果もあります。いくらなどは冷酒だと後味がもたつくので、燗酒がベストです(味覚的にもお酒の良さが消えます)。
握りの前半(淡白系)に合わせたお酒は、【こなき純米 山田錦辛口】です。
・特定名称:純米酒
・原料米:山田錦
・精米歩合:55%
・アルコール度数:16%
ここから握りに入ります。林ノ内親方のシャリは酸味が強めですが、お米は甘い食材なので、お酒はギアチェンする必要があります。甘味や旨味が強いお酒だと、握りのコースを邪魔します。
よって選んだのが、酒米は山田錦で旨味が強いものの、キレがある銘柄です。ふんわりと極軽いリンゴ香がある純米酒で、辛口方向でありながら山田錦らしい旨味があるのでシャリに合わせられます。
辛口、あるいは超辛口のお酒を握りの冒頭に出されるお店もありますが、旨味も意識した方が相性が向上します(味覚的に分かりづらい部分ではありますが)。
次の握り(鮪)に合わせたお酒は、【久保田 雪峰】です。
・特定名称:純米大吟醸(山廃)
・原料米:山田錦(広島県産)
・精米歩合:麹米50%、掛米33%
・アルコール度数:16%
言わずと知れた久保田のスノーピークとのコラボ酒です。冷酒だとキレがあり味が薄くて「本当に山廃!?」と思うところ、燗酒で爆変してマグロに合う酒となります。こちらの銘柄は自分ひとりでは思い浮かばなかったので、ご提案頂いた「未来日本酒店」のスイさんに多謝です。
赤身については、お酒がマグロの酸味と同調しながら血の香りを切り、マグロの香ばしさを余韻として残す点が面白いペアリングです。トロは相性がさらに向上!お酒の苦味のキレでマスキングしつつ、甘味部分が同調します。
なお、トロの魅力である脂の甘味や旨味を引き出しつつ、口や鼻に残りやすい要素を流し去るためには加温が必須だと再認識しました。
次の握り(主に光物)に合わせたお酒は、【富久長 海風土】です。
・特定名称:純米酒
・原料米:広島県産米
・精米歩合:麹米 : 60% 掛米 : 70%
・アルコール度数:13%
白麹を使ったお酒なので、クエン酸の酸味が特徴になります。白麹のお酒は最近増えていますが、今田酒造本店の今田美穂さんはパイオニア。造りのレベルが違います!
酸味がある〆ものに合う銘柄で、酸味を酢に合わせ、お米の甘味をそろえる意図があります。どうやらドンピシャだったようで、参加者さんの多くが驚き、喜んでおられました。
この銘柄は愛着が強いので、今後も使い続けたいと思います。
握りの後半に合わせたお酒は、【あさ開 純米原酒 秋あがり うまKoi】です。
・特定名称:純米酒
・原料米:銀河のしずく
・精米歩合:65%
・アルコール度数:17%
きっちり寝かせた、「なんちゃって」ではない秋あがりのお酒です。酵母は香り酵母系で、カプロン酸エチルの香りが強めです。そして、甘味があり、アルコール度数も高め。コースの終盤なので、最も重みのあるお酒を配置しました。
そして、燗をつけることで味わい深いお酒になり、甘味が嫌み無く広がりつつ旨味が乗っていて、酸味によるキレもある飲み口となります。甘味が強い構成の中に鰯が入るのはペアリング的にはトリッキーですが、お店の個性を活かすため敢えてそのままでお酒を合わせました。鰯は強い〆なのでお米の甘味、旨味を与える酒が良く、燗酒で甘味を高めて脂を溶かす方向性を目指しました。
玉子焼き&追加のアディショナルタイムに合わせたお酒は、【layer 洋ナシ】です。
・特定名称:クラフトサケ(その他の醸造酒)
・原料米:岩手県産米、発芽玄米
・精米歩合:麹米50%、掛米90% *原料米
・アルコール度数:14%
「平六醸造」さんは、2023年に誕生したクラフトサケの酒蔵です。発芽玄米を微妙使用されるところが特徴で、独特の香ばしさがあります。
layer 洋ナシは副原料に洋ナシを用いたクラフトサケ。梅酒から甘味を取り除いた印象なので、最後にちょうど良いと選びました。リキュールではないお米のコクが魅力で、自然な香りを上品に楽しめます。
玉子の後は、各自お腹の具合を見つつ追加注文されました。
従来のセオリーだとペアリングは重くしていく方向性ですが、鮨においては軽さを残しながらフィニッシュした方がベターだと感じています。
参加者様には喜んで頂けたので、今後も自分ならではなペアリングを探求してまいります!
「鮨ゆうき」さんの予約については、OMAKASE経由で可能です。
予約システムについては、完全に回転制にされていないのが良いです。
17時以降に予約を取り、19時半~20時までなら大丈夫というスタンス。
17時や17時半スタートは厳しいので、これは助かります。
店名:鮨ゆうき(すしゆうき)
シャリの特徴:酸味、塩気、温度、粘度の全てがバランス良く、ミツカンの白菊を使用する米酢のシャリとしてはトップクラス
予算の目安:ランチおまかせ握り17,600円、ランチ/ディナーおまかせコース28,600円
TEL:03-6277-0468
住所:東京都渋谷区広尾5-17-4 1F
最寄駅:広尾駅から300m
営業時間:ランチ(火・土・日・祝のみ)12:00~、夜17:00~
定休日:不定休
ペアリングについての解説記事です。
【料理がさらに美味しくなる】日本酒ペアリングの基本理論からマリアージュを目指す!
日本酒のペアリングは本当に奥深いので、これからも追求していきます!
すしログ(@sushilog01)でした。
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