
こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
かつて2018年の秋に訪問して心が震えた名料理店、大阪日本橋の「梅市」さん。
大将の奥田高光さんは食材の魅力を引き出し、秀逸な出汁を引くレジェンド料理人です。
この度、時を経て2026年の初夏に訪問したところ、今の時代だからこそ響く調理法が多く、大変刺激になりました。

初めて訪問した時は食べログ3.3を切っており、現在も3.5。
ゆえにスタンプラリー系の半可通客に荒らされていないので、大阪の「聖域」と言える日本料理店です。

通好みでありながら味覚と想像力を刺激してくれるお料理。
料理人ではなく、いち食べ手の自分としても、食に向き合う上でのヒントやインスピレーションを多々与えていただきました!
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「梅市」奥田大将の魅力とは、【生成り料理】に尽きます。
【生成り料理】とは元来存在した関西料理、大阪料理を指し、今や絶滅危惧となっています。
そして、その真髄とは「材料の良さを活かすこと」と、「うまい出汁を取ること」、「素材の持ち味以上の味をつけないこと」。
言葉にするとあまりにも簡潔に響きますが、奥田大将は高いレヴェルで志向、表現されており、実践するのは非常に難しい感覚知に基づく仕事だと実感します。

【生成り料理】の味については通好みのところがありますが、和食を食べこんでいる方ならば発見が多々あるはずです。
僕が初めて訪問した際は30代半ばでしたが、圧倒的な凄味に驚きました。
特に椀の吸い地には度肝を抜かれました。
旨味と塩味の決め方には目をみはるものがあり、濃口の料理が全国的に席巻する今だからこそ味わう価値がある吸い地だと確信します。
シンプルに表現すると、椀の魅力は滋味であり余韻に尽きます。
味のみならず香りが強すぎる椀は良き余韻へ繋がりません。

全ての日本料理は余韻と食後感が全てだと再認識しました。
それでは、「梅市」さんのお料理の詳細を紹介します。
2026年6月にいただいたお料理については、こちらのとおりです。
お酒は、最初にアサヒの瓶ビールをいただき、日本酒に移行。
女将さんいわく、佐浦の「浦霞 禅」が最もご主人の料理に合うと感じて使い続けている銘柄だそうだ。

すっきりとした辛口の日本酒で、お米の旨味も上品に楽しめるため、食中酒として万能タイプと言える。

一瞥して「季節外れのイクラ!?」と意表を突かれるものの、口に運ぶとあくまでもずいきが主役であることに驚かされる。しっかりと酢を効かせており、すっきりとした酸味が暑い日に爽快だ。ずいきはシャキシャキと繊細に弾けるような食感に仕上げられている。

空豆、煮蛸と蓮根、茗荷の甘酢漬け、鯛の身の酒盗和え。

甘味を付けた空豆とは初めての新鮮な体験だ。煮蛸は5時間炊いているそうで、噛みしめると繊維質がホロホロとほどけてゆく恐るべき柔らかさ。クラシックな煮方であるが、奥深い複雑な香りが広がる点に妙がある。

鯛の酒盗は、鯛の身を昆布〆にすることで酒盗の力強い味わいと調和させている。調理の方向性としては正に酒肴であり八寸の存在意義に適っている。煮蛸に添えられた蓮根には酢をバシッと効かせており、味覚のメリハリを生む。

冬瓜に葛打ちを施した合鴨を合わせた椀。吸い地は極めてまろやかで、昆布の使い方が実に秀逸。昆布のほんのりとした心地良い香りと、まろやかな旨味が調和している。塩味は抑えていて生成り料理の真骨頂を見る。冬瓜は格子状に細かく包丁が入れられており、出汁の含ませ方が魅力的だ。野菜を仕立てる際の包丁仕事は奥田大将の技が遺憾無く発揮される見どころだ。また、時間経過によって合鴨の香りがお椀全体に滲み出てゆくところが心ニクい調理設計だと実感する。

鯛は腹側で脂が乗っており、香りも楽しませてくれる。身はしっとりであるものの皮目にコリッとした歯ごたえがあり、コントラストが愉しい。鱧はこの時期ならではの脂の乗りを感じさせ、噛みしめる中盤から甘味が伸び、余韻まで持続する。鰹は血合いを丁寧に落としており、コクの強い酢味噌と合わさることで濃厚な味わいを生み出す。

鱧にお合わせる梅肉餡も「これぞ塩梅」と言うべきもので、鱧のポテンシャルを綺麗に活かしきる。酸味は軽やかで、甘味の効かせ方が効果的だ。

きめ細かい食感の鯛の子。出汁がちょうど良い加減で浸透している。ウスイエンドウのしっとりとした食感に、優しい豆の味がきれいに馴染む。

浪花酒造の「さか松」。阪南市にある浪花酒造は1716年(享保元年)創業の酒蔵で、大阪で最も古い現存蔵元だ。味わいが濃い純米酒である。

奥田大将は四万十川の上流で獲れた天然もののみを使用する。よって、入荷が無い日も多く、ありつけた場合には僥倖と言える。香りが実に鮮烈で、鮎らしい青々とした苔の香りを感じさせる。肝の苦味はやや強めであるが、噛みしめるうちに身の持つ甘味と旨味が調和してゆく。振り塩はクラシックな方向性であるが、身はしっとりと焼き上げられている。添えられた蓼酢(たです)は心地良い清涼感があり、酸味は上品で、軽いホロ苦さが鮎の味を引き立てる。
僕は蓼酢が必ずしも鮎に必要ないと思っている人間であるが、蓼酢も美味しく作られていると鮎を活かすものだ。使用する鮎の味わいと自らの調理を考えて調整する必要性、重要性を実感する。

ジュンサイに車海老を合わせる口直し。風味には梅酒のような甘味と香りが利き、面白い驚きがある。ジュンサイ自体のクオリティが高く、周囲をまとうヌル(ゼリー質)が大ぶりで瑞々しい。

文句なしの素晴らしい棒寿司。シャリは甘味をしっかりと抑制しており、鱧本来の味を綺麗に活かしている。鱧自体の味付けも実に配慮されていて、余計な甘味を排除している。鱧の香りと味わいに安らぎを覚える。

2018年10月にいただいたお料理の内容です。

浪花酒造・さか松特別純米超辛口。
「まずは冷酒をお願いします」、と頼むと四合瓶が一本ドン!と置かれ、ぐい呑で頂きます(笑)

お揚げが非常に良い仕事をするぬた(酢味噌和え)。
初手から琴線に触れる。

舞茸は味わいから天然モノを使用している事が明白。
軽く酢を含ませている。

奥は銀杏。

前述の通り、吸い地が白眉!
一言で、端正。
まろみ、艶、塩、甘がもの凄いバランスで調和している。
椀種は岩茸の真薯、松茸、海老。
久々に魂を揺さぶられる椀に出会った。

真鯛が特に印象深く、噛みしめる毎に旨味が奥歯に広がる。

訪問したタイミングは非常にラッキーで、各地の天然モノのキノコが目白押し!
産地は山形、信州、甲州、宮城。
キノコはフウセンタケ、ショウゲンジ、ムキタケ、ハタケシメジなど。
これは椀に続いて素晴らしい味わい!
キノコの旨味、風味がとめどなく溢れ、出汁が緊密に味を繋ぐ!
家庭では出せない味のキノコ鍋に大満足。

舞茸はサッと炙り、ポン酢にくぐらせている。
上等な鮃を焼くとは何て豪勢な!

胡麻が極めて香ばしくて、うっとり。

穴子はしっとり仕上げられ、香りは野趣があり良い。
恐らく瀬戸内のモノを使用されている。
香茸は天麩羅で頂く事が意外にも少ないキノコだが、香りが封印されており、衣が弾けた瞬間に笑顔になる。

身は薄めだが、脂はしっかり!
香りの野趣もある。

抹茶のシャーベットなので、軽やかな食後感。
餡が美味しい。
それなりのお会計になりますが、不思議と高いと感じさせないのが凄いです。
説得力があり、文字通り腑に落ちる料理だと思いました。
「梅市」さんは完全予約制で、下記の食べログよりWEB予約が可能です。
店名:梅市(うめいち)
予算の目安:おまかせコース25,000円〜
最寄駅:長堀橋駅から220m、近鉄日本橋駅から700m
TEL:06-6241-0576
住所:大阪府大阪市中央区東心斎橋1-6-3 ハイツ千年町2F
営業時間:17:00 ~ 22:00
定休日:日曜、祝日
大阪らしい料理店
大阪の和食の真骨頂に惚れ惚れする、すしログ(@sushilog01)でした。
※本記事は「日本料理編 No. 150」に加筆を行い公開しました。
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