こちらは大阪にありながら古い江戸前仕事を継承する鮨店です。
1910年に東京(柳橋)で創業後、1916年に大阪へ移転。
東京を含めても長い歴史を持つ、江戸前の老舗と言えます。
なお冒頭からいきなり余談となりますが、柳橋(現・浅草橋)はかつて存在した花街で、明治時代には新橋と合わせて「柳新二橋」と称されました。
しかも、新橋よりも格上だったそうですが、東京五輪(1964年)後に衰退。
次々と店を閉じ、現在は消滅してしまいました。
現在の新橋とのコントラストがノスタルジーを誘います。
閑話休題。
こちらのお店は外観が極めて重厚です。
外壁には、呉服商のような紋章(※勝手なイメージ)も踊っております。
二階建ての建物なので、暖簾をくぐった後、二階に上がります。
すると、横一列のカウンターが待ち受けており、広々と感じる空間に身を置きます。
こちらは、老舗らしくお好みで注文出来ます。
齢80超の山本寛治さんが握られ、息子さんが切り付けでサポートしておられます。
(ちなみに、お好みの注文には食べる順番など無く、個々人の好きなように食べれば良いと思いますが、今回オーダーした順序は結構一般的なものだと思いますので、もし宜しければ参考にしてください)
シャリは、程良い硬さで、塩気と酢は穏やか。
やや甘めの仕様で、温度は多くの老舗同様に低めです。
また、ご主人が高齢と言う事もあり、握りは緩めです。
頂いた中では、白身魚が白眉でした。
流石、白身には強い自負を持つ大阪だなと感銘を覚えます。
旨味が炸裂し、香りに包まれる。
厚めの切り付けなのに、歯切れも良いです。
鮃
濃厚な旨味が広がった後に、上品な香りが充満します。
白身ながらに勢いが付きます。
鯛
こちらも抜群。力強い甘み。
圧倒的な旨味と香りに、冒頭から幸せになりました。
東京の流行など鼻から関係無く、熟成(寝かせる)期間はかなり短め。
熟成には長短あるかと思いますが、こちらの白身は食感が濃厚な旨味を引き立てるアクセントになっている印象です。
好き嫌いを分けそうなポイントとしては、煮キリがかなり濃いめで、量も多い点です。
古典と言えばそれまでですが、良くも悪くも時代に迎合しない味わいだと感じました。
墨烏賊
非常に分厚い割に歯切れが良い。大葉を挟む。
鱚
鱚にしては珍しく、強めの〆加減で、塩も強め。
鯵
驚くべきことに、オボロを噛ませる仕事です!
小鰭
打って変わって弱めの〆。それにしては食感は引き締まり、香りも強い。
春子
鯛が美味しかったので…と頼んでみたところ、正解。
こちらも強目に〆つつ、皮目の食感も良い塩梅に残している。
鯖
濃厚な香りと脂の旨味。
いかにもな関西の鯖の仕事で面白かった。
穴子
一本丸付けのスペシャリテ。
本当に圧感のビジュアルですが、鮨である必然性は低いように感じました。
ツメは意外にもさっぱり目です。
玉子
こちらも名物。三貫分くらいを一貫で。
握るというよりも、乗せており、一反木綿の様。
蛤
肝のじゅわっとした旨味と食感を残す良い火入れ。
かなり美味しいです。
煮ツメも濃厚で蛤を引き立てます。
11貫とビール(小瓶)を頂き、お会計は15,120円。
大阪でトップレヴェルの格式のお店なので1貫当たり少々お高めですが、白身魚のクオリティを考えると、妥当なラインかと思います。
前もって「かなり高額」と聞いていたのでビクビクしておりましたが、つまみ(刺身)とお酒を頼まなければ抑えられるようですね。
ただ、非常に気になった点として、接客と言うか雰囲気の悪さがありました。
前述の通り空間としては広々としており、高級感もあるのですが、ご主人が注文を聞き取れなかった時に、あろうことかお弟子さんが声高に揶揄、嘲笑される。
常連さんを巻き込み度々繰り返され、悲しくなってお会計を頼んだ次第です。
さらなる歴史を積み重ねようと言うならば、職人的な謙虚さを抱いて欲しいと感じました。
店名:福喜鮨 日本橋本店(ふくきずし にっぽんばしほんてん)
シャリの特長:程良い硬さで、塩気と酢は穏やか、やや甘め。少々緩い。
予算の目安:15,000円~25,000円
最寄り駅: 日本橋駅から95m
TEL: 06-6632-0865
住所: 大阪府大阪市中央区日本橋1-19-6
営業時間:平日・土曜11:00~14:00、17:00~21:00、日曜・祝日17:00~21:00
定休日:水曜
本記事のリンクには広告がふくまれています。