こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
こちらは、2020年11月にオープンして早々、一躍人気店に躍り出た島津親方のお店です。
すでに予約困難化していて、4月の訪問時点で6月末まで予約満了と言う人気。
この度、親方の修業時代から付き合いのある方にお誘い頂き、訪問しました。
鮨 島津の親方・島津千周さんについて
親方の島津千周氏は弱冠27歳の職人さんです。
貫禄だけでなく物腰や言葉遣いにも洗練が見られ、良い歳の取り方をしていると感じる方です。
すしログ
料理だけでなく、お人柄も味わうのが、「さらしの商売」と言われる鮨店の魅力です。
20代後半で一等地の白金高輪に出店し、すぐさま予約満了となるお店になった職人…と聞くと、順風満帆だったと思われるかもしれません。
僕も訪問前はそう思っていました。
しかし、さにあらず。
同行者の方が昔から島津親方を知る人であったこともあり、苦労話をポロッと伺いましたが、令和の時代に聞く話とは思えませんでした。
島津親方は、故郷の新潟の友人からお金を借りて、徒手空拳で上京したそうです。
そして、がむしゃらに鮨の修行をしながら、弟の学費まで稼がれたとのこと。
鮨一筋で幸せをつかもうとするお姿が頭に浮かび、深く心を動かしました。
しかも、このようなエピソードを「お涙頂戴的」に話されないところに、島津親方の人となりを見ました。
島津親方は2018年2月に「りんだ」の系列である「らんまる」の親方に就任しました。
20代半ばでの親方就任とは凄いですよね。
僕は「らんまる」にはお伺いしませんでしたが、「実力派」と言う噂は聞いていました。
そして、実際に今回訪問して、噂以上だと確信しました。
ちょっと前に「りんだ」を訪問しましたが、方向性は完全に別物で、既に自身の握りを確立しつつあります。
島津親方は見た目こそ豪胆な風貌ですが、物腰は穏やかで、ハキハキとされています。
そして、手が速くて、腕が立つ方なので、今後が楽しみです。
島津親方の仕事について
全体的に現代のトレンドを捉えていて、クロムツやアカムツ(ノドグロ)などの脂が強い魚を用いていますが、あくまでも握りを主役と考えておられます。
その結果、「りんだ」グループとは異なり、酒肴と握りを織りまぜず、握りを主体にコースを組み立てます(トータル14貫!)。
僕は「握り原理主義者」なので、これは嬉しいところです。
握りは一貫一貫に存在感があり、鮨の生命線たるシャリが美味しいです。
酸味が立ち、塩気はそこまで強くなく、大ぶりです。
温度が高めで、使用するタネとの相性が良いです。
お酢は4種類ブレンドしているそうで、ヨコ井の与兵衛ともう一つ加え、ミツカンの米酢も使用。
パンチが強すぎず、しかし味わい深いシャリの味付けだと思います。
炊き加減は硬めですが、浸水も炊飯も良く、もっちりした食感を楽しめます。
最後に、今後の課題としては、古典の表現だと感じました。
しかし、これは僕が言うまでもなく、既に親方の心の中に存在するように察します。
小鰭については「クラシカルな〆方が好み」と伺いましたし、老舗の仕事も大好きだそうです。
しかし、食べ手の需要が「脂の強い魚」なので、表現をためらっているのではないか?と、感じました。
僕としては、親方が思うように振り切ってしまって良いと思います。
理解できないお客は、振り落として構いません。
古典を理解できない食べ手は、どのみち新たな人気店・予約困難店が登場すれば自然にスライドしてしまう浮気性な性質を持ちます。
分かりやすい味や派手なパフォーマンスを求めてホッピングする習性。
よって、ご自身の職人道を見据えるならば、自分がやりたい仕事についてきてくれて、上ッ面ではない仕事のバックボーンの精神性まで理解するお客のアドバイスのみを聞けば良いだけです。
古典を再解釈して鮨の進化に貢献できる方だとお見受けしたので、自信を持って追及して欲しいと感じます。
鮨 島津のおまかせコースの詳細(実際に頂いたもの)と予算
OMAKASEに記載されている通り、おまかせの価格は税込26,700円です。
お酒はメニューに記載の無いものを頂いても、桁外れに高くないのが嬉しいです。
この度頂いたお酒
2合をシェア。
東北泉雄町純米、日高見超辛口純米。
器は瀬戸の作家・片瀬和宏さんのもの。
茶碗蒸し
新潟産のうるい、百合根を使用し、九十九里産蛤の出汁餡を掛けている。
濃厚な蛤の旨味が、たちどころに奥歯の方まで広がる。
甘みと食感が考えられている茶碗蒸しだ。
クロムツ
神津島産、〆て5日寝かせたもの。
脂が濃厚で、みっちりと〆て良い塩梅。
皮を軽く炙っているが、やり過ぎていないので香りが上品。
鰹
銚子産の釣りもの。
爽やかな酸味が実に初鰹らしい!
身はみっちりとしていて、きめ細かいテクスチャー。
塩で〆た後に風に当てているそうだ。
太刀魚
東京産で、筍は京都産!
ホロホロした身は脂が乗っている。
塩で脱水してから焼いているため、ふわふわ且つジューシィ。
筍も香りが良い。
ノドグロ(アカムツ)
対馬産。切り立てのシャリと混ぜる!
肉厚なノドグロは脂が強い。
シャリの酸味と合わさり乳化した味は今の時代らしい味わい。
最後に巻いて頂く海苔との相性が良い。
切り立てのシャリと合わせるプレゼンテーションは魅力的だが、必ず必要な品ではない。
器は静岡の二階堂明弘さんのもの。
ホタルイカ
スチームものを藁で炙って提供。
身はぷりっとしていて、肝はとろっと、足はこりっ。
鮟肝
余市産。スイカの奈良漬けを添えて。
トロトロではなく、みっちりとした食感で濃密な点が魅力の鮟肝。
ただ、奈良漬けは今の時代に必要ではない。
すし匠系列ならばアイコンなので良いが、それ以外の職人さんが使うとコテコテの手法になってしまう。
ノドグロ酢飯とともに初めての人ならば意外性と高い相性に驚くかもしれないが、折角の一品を使ってしまうのは勿体無い気がする。
また、握りの前に味の濃い鮟肝を出さなくても良いとも思う。
この後、握りに移行します。
ガリ
酸味と塩味のあるスッキリ味のガリ。
白イカ
佐世保産。標準和名はケンサキイカ。
酢橘を使用しているが、わずか一滴なので上品。
もぎゅもぎゅっとした食感を楽しませ、柔らかくとろける。
切りつけが良い。
鰯
石川産。軽く火を当てて脂を融解させているのが良い。
その結果、脂をすぐに味わえるとともに、香りが立つ。
それが、実にシャリに合う。
浅葱と生姜の合わせ調味料を噛ませているので、序盤であっても違和感が少ない。
鮪赤身
静岡下田産の延縄で、熟成8日目。
時期を考えると旨味があり、柔らかさも特筆すべき点。
鮪中トロ
甘みが非常に強く、これまた柔らかい。
鮪中トロ
魚体を変えて塩竈産、寝かせて4日目。
熟成を掛けていない割に旨味があり、柔らかい。
下田産よりも香りに野趣がある点が良い。
鮪大トロ
脂がしっかり乗っている。
中トロよりは穏やかだが、大トロとしては香りが良い。
小鰭
オボロを噛ませ、柚子皮を少々使用。
肉厚でみっしりした食感だが、〆時間は8分程度。
酢を割と浸透させて酸味のある小鰭を志向し、オボロで完成させる仕事。
古典寄りの小鰭がお好きであることを体感する。
北寄貝
柔らかく、とろとろ。
柔らかさと甘みを楽しませる火入れ。
カワハギ
大分産。朝〆のぶちっぶちっした身の食感が良い。
カワハギは肝ばかり着目されがちだが、旨さは鉄板なので、着目すべきは身。
それも、食感。
ダレていると一気に無粋になってしまう。
鰆
鴨川産。塩で〆てから昆布〆にしている。
漬けでない点に工夫が感じられ、みっちりした身はすぐにとろりととろけ、鰆と脂を楽しませてくれる。
昆布の香りは最後にふんわりと漂い、上品な使いかた。
ボタン海老
増毛産、血抜きして4日氷温熟成。
シャリを交換し、温度を上げてから握っている点が良い。
冷たいボタン海老と帳尻が合っていて、口の中で違和感の無い温度帯。
最初はボタン海老らしくむちっとしているが、すぐにとろっとろにとろけ、ねっちりと舌に絡むのは寝かせている証。
海胆軍艦
仲卸・希海の海胆。甘みが強い。
椀
ボタン海老の頭と当日使用した魚の出汁。
非常に濃厚で、あたかもつけ麺のつけ汁のよう!
伝助穴子
済州島産。正直に韓国産を明言されるのが好印象。
韓国産を対馬産と思って食べている食べ手は非常に多い。
産地ではなく、味が全てと言う親方のお言葉に完全同意する。
産地で批評して良いのは、ブラインドで当てられる方だけだ。
大型の伝助穴子をふわふわに仕上げている。
穴子の香りも強いので、個人的には好み。
鮪突先のネギトロ巻き
安定感のある味わい。
干瓢巻き
じゃくじゃくと力強い食感の干瓢で、味は濃すぎない。
玉子
非常にしっとりした正にカステラ。
海老も芋も使用しつつ、作ってから3日寝かせるスタイル。
水菓子
スカイベリー
季節を変えてまたお伺いしたいと感じました。
鮨 島津のお店の情報と予約方法
WEB予約と言うか、予約は全てOMAKASE経由となります。
OMAKASEは予約解禁日に争奪戦が繰り広げられるので、解禁日の1日13:00に速い回線のPC前でスタンバることをオススメします。
店名:鮨 島津(すし しまづ)
予算の目安:26,700円(税サ込)
最寄駅:白金高輪駅から170m
TEL:非公開
住所:東京都港区白金1-29-13 白金ヴィレッジ1F
営業時間:2回転制で、18:00〜20:15、20:30〜22:45
定休日:水曜、第2・4火曜
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久々に若手職人さんの高い技術に目を瞠る、すしログ(@sushilog01)でした。