すしログ:青森県むつ市で頂く下北半島の幸!珍しい江戸前鮨「東寿し」

東寿し暖簾

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

この度、「ニッポンごはん旅」さん経由で青森県の仕事を頂き、取材に行ってきました。

僕は過去に八戸、むつ、大間に2回行ったことがあるので、自身の担当エリアが八戸~下北半島エリアと聞いて小躍りしました(笑)

取材の中のハイライト店は、むつ市の「東寿し」さんです。

▶ニッポンごはん旅さんの記事:青森県の魚を使った鮨が堪能できる『東寿し』

 

青森県のご要望が八戸市ではなく下北半島だったので、目を皿にして探しました。

「下北半島に江戸前鮨はあるのだろうか…?」と思いながら。

写真をスクリーニングしまくった果てに、「東寿し」さんを発見。

 

結果的に期待を超える満足度のお店で、青森市、弘前市はもちろん、県外の方にも訪問して欲しいお店だと感じました。

風間浦の漁師・木下さんや、青森の神経〆師・塩谷さんの魚を入れられていて、青森県らしい酒肴と握りを頂けます。

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むつ市「東寿し」の魅力と柿本親方の仕事

親方の柿本泰平たいへいさんは二代目で、現在はお母様とお店を切り盛りされています。

東京で修行された経歴を持ち、むつ市に戻ってから既に10年が経過しているそうです。

柿本親方は、東京築地(現在は豊洲)とは全く異なる仕入れに苦労されながら、独自の鮨を模索されています。

 

魚が多そうに見える下北半島ですが、地元の市場に揚がる魚種は少ないそうです。

これは、漁師さんが狙う魚種が多くないためでしょうか?

市場には「売れ筋の魚種」が中心になり、幅広く手に入れる場合、青森の市場も使わないと厳しいとの談。

 

そのような中、出会った心強いパートナーが、2人いらっしゃるようです。

一人は風間浦で神経〆を行う漁師、木下清さん。

もう一人は、青森市の神経〆の名手、塩谷魚店の塩谷孝さん。

僕はお二人とも現地に見学に行ったことがあるので、思わぬ出会いに「おお!」と驚き、感銘を覚えました。

 

柿本親方は、お二人の魚をメインに使いつつ、さらに自分で津本式を行って、魚を調達されています。

神経〆の魚を仕入れるだけにとどまらず、津本式の血抜き・熟成を併用されているとは凄い。

都会ならいざ知らず、下北半島のむつ市で実践するなんて、孤高の試みです。

お客さんにできる限り美味しいものを食べて欲しいと言う願いが込められているように感じます。

 

そして、もう一つ「東寿し」さんで特筆すべき点は、シャリです。

お店に伝わる伝統的な「蒸しかまど」でお米を炊き、シャリ切りの後は、熱湯を入れて保温されています。

結果的に生み出されるシャリは、美味。

パラっとほどけ、温かく、粘度は良好です。

 

酸味や塩気は穏やかで、お米の甘みを感じさせる味付け。

ミツカンの米酢(白菊?)に少量の赤酢(山吹)をブレンドしているそうで、野心的です。

当初は赤酢の量が多く、色も茶色がかっていたそうですが、地元であまりにも不評だったので、徐々にブレンド比を増やしているそうです。

 

東京らしい赤酢に慣れた都市部の人や食好きならいざ知らず、長きにわたる「昭和のシャリ」に馴れている人にとっては、パンチの強い赤酢のシャリは口に入る前に違和感を覚えるのも仕方ありません。

かつて京都の「鮨まつもと」さんでも、同じようなエピソードを伺いました。

京都市民もむつ市民も、親しみのない酢飯に対する感性には違いが無いようです。

 

今後も親方ならではなシャリを追求し続けて頂ければ、さらに良いお店になるのは間違いありません。

シャリは鮨の生命線ですので。

 

ただ、個人的に感じた改良点は以下の2点です。

  • おまかせだけでも山葵は本山葵を使用して欲しい
  • 握りの数を増やし、仕事系のタネを増やすと尚良い

山葵については、仕方ないのかもしれません。

指摘する人が少ないので…。

世間で「グルメ」と言われている人であっても、80%~90%くらいが山葵の質に無頓着であることは長いレビュアー人生で実感しています。

ただ、本山葵であることは上を目指すならば必須の条件。

是非とも改良頂ければ幸いです。

 

また、おまかせコースは酒肴の品数を抑え、握りを増やして頂けると何よりです。

そして、せっかく東京で修業されたのなら、〆る、煮る、と言った仕事系のタネを増やすと良い気がします。

今回頂いた握りの数は5貫+巻物2種類で、全てが生系でした。

仕事系があると鮨の印象が更に強まります。

 

地元では、握りといえば最後にちょちょっと食べるだけで、酒肴主体の方が喜ばれるのかもしれません。

とは言え、鮨店で食べるべきは鮨です。

現在の内容でも十分に楽しませて頂きましたが、仕事系が増えると更に良くなるのは確実です。

 

「握りが多めのコース」を作られるのでも構わないので、鮨好き向けのコースがあると県外から伺う人が増えるでしょう!

 

むつ市「東寿し」のおまかせコースの詳細

それでは、実際に頂いたおまかせの詳細をご紹介します。

「東寿し」さんは、5,500円から【おまかせコース】をご用意されています。

そして、【握り寿し】は1,200円から、【晩酌セット】は2,700円など、幅広いニーズに対応されています。

 

また、揃えている日本酒は都会の一流店と遜色なく、しかもリーズナブルです。

東寿し日本酒01

東寿し日本酒02

 

この度頂いたお酒

  • 北勇、純米「純」750円
  • 祈水、特別純米 800円
  • 八仙赤ラベル

東寿し酒器01

【北勇】の純米酒は、非常に力強い味わい!

青森県はクリアなお酒が多いイメージでしたが、純米と言っても雄々しい味わいです。

原料米は「まっしぐら」、精米歩合は60%とのことで、中々に意外性のある日本酒です。

東寿し酒器02

酒器や器が良い点に、地域の雄たる証を感じます。

 

鮫鰈

東寿し鮫鰈

情報が非常に限られているお店なので不安交じりの一品目であったが、そもそも包丁が良い。

包丁の入射角と速度など切り付けを見て、杞憂であったと安堵する。

鮫鰈はしっとりした身質で、脂が驚くほどに乗っている。

塩を頂いてみて、調味料にも配慮されている事が分かる。

伺ったところ、かつての兄弟子さんから入手している沖縄海塩との事であった。

 

唐墨餅

東寿し唐墨餅

厚みがあり、満足度が高い唐墨。

ただ、炙りの仕事は不要だと感じた。

バーナーによる局所的な高温の炙りの為、焦げの臭いが味に影響を及ぼすためだ。

こちらに限った話ではないが、小型の魚介系食材を炙る場合にバーナーはリスクが大きい。

 

帆立

東寿し帆立

みちっとしていて甘味が強く、流石産地だと感じる。

子も濃密だ。

 

鮟鱇の出汁しゃぶしゃぶ

東寿し鮟鱇の出汁しゃぶしゃぶ01

これは魅力的!

東寿し鮟鱇の出汁しゃぶしゃぶ02

たっぷりの薬味とともに、アンコウの繊細な旨味を楽しませてくれる調理法だ。

東寿し鮟鱇の出汁しゃぶしゃぶ03

生姜、葱、大葉、水菜など爽やかに演出する。

シンプルな調理法でも臭みなどなく、ただ純粋に鮟鱇の美点を伝えてくれるのは、仕事だけでなく鮟鱇自体も良いからだろう。

風間浦の漁師、木下清さんの仕事も活きている。

アンコウと言えば濃厚で甘みのある味付けの鍋が一般的だが、魚本来の美味しさを味わうにはしゃぶしゃぶが上を行くと感じた。

 

鮟鱇の唐揚げ

東寿し鮟鱇の唐揚げ

サッパリ味の出汁しゃぶしゃぶの後に、魅力的な構成。

鮟鱇の印象が一変する。

実に力強い味わいで、身はむっちりしていて、ゼラチン質がとろけ出る。

 

水貝

東寿し水貝

まさかの江戸料理とは素晴らしい!

また、唐揚げの後に清涼感を与えてくれる構成にセンスを感じる。

生でも旨味を堪能することが出来、香りも十分楽しめる。

江戸前鮨では蒸し鮑が一般的だが、生の水貝は構成次第で多大な魅力がある。

 

鮟肝

東寿し鮟肝

とろっとろで、柔らかく滑らか。

脂が乗っていて、香りも良い鮟肝だ。

味付けは穏やかで、ポン酢と合わせているため、鮟肝自体の脂と甘みを楽しませてくれる。

 

鰻蒲焼き

東寿し鰻蒲焼き

これは水貝とは逆の意味で、まさかの鰻!

みんな嬉しがるものを詰め込んだ感じになるので、敢えて引き算することをご提案する。

今までの構成が勿体無いと感じた次第だ。

特に県外の方には、県内の食材や調理で固める方が絶対に良い。

この点については、親方にお伝えさせて頂いた。

 

蒸し鮑

東寿し蒸し鮑

生の水貝だけでなく蒸し鮑も出される点に、分かっている、と感じた。

ソースは個性的で、卵黄と海胆を溶いて裏ごししたもの。

むっちり柔らかい鮑はゼラチン質がたっぷり。

海胆は臭くなく、それでいて海胆の香りを楽しませてくれて、魅力的だ。

 

この後、握りに移行します。

 

ガリ

東寿しガリ

これは標準的な市販品か。

 

メジナ

東寿しメジナ

むちっむちで旨味が強い。

ただ、混ぜ山葵の香りが非常に気になる。

土地柄なのかもしれないが、是非とも本山葵を使用して頂きたい。

山葵は「グルメ」と呼ばれる人でも気にしていないケースが多いが、鮨において極めて重要である。

混ぜ山葵ならば使用しない方が良い。

香りが強すぎて、魚味を損ねるためだ。

 

鮪赤身

東寿し鮪赤身

旨味がある赤身で、酸味はスッキリしていて、香りも良い。

正直なところ意外にも旨くて、望外の喜びだ。

美味しさの理由は次のトロを頂いて判明する。

 

鮪トロ

東寿しトロ

柔らかく、脂がしっかりしていて、香ばしい。

思わず産地を伺ったところ、地物であった!

豊洲に流れないものを確保しているそうで、納得する。

 

石鯛

東寿し石鯛

濃密な脂!

そして、香りも楽しめる。

 

東寿し鮑

コリッコリで香りの良い生の鮑。

包丁を効果的に入れているため、ゴリゴリと強すぎない食感が素敵。

江戸前鮨では蒸し鮑(煮鮑)で握るのが一般的だが、このコースの流れだと生が良いと感じた。

生の鮑が良いと思ったのは初めてかもしれない。

 

ホタテの巻物

東寿しホタテの巻物

これまた青森県らしいタネの巻物で、甘い。

 

海胆軍艦

東寿し海胆軍艦

甘みが強い海胆。

1回分ずつパッキングされた海胆を初めて見た。

 

筋子の巻物

東寿し筋子の巻物

青森県では定番の巻物のタネらしい、筋子。

土地の味として

 

 

むつ市「東寿し」の立地と雰囲気

東寿し外観

お店は市内の落ち着いた一角にあり、アプローチが素晴らしいです。

重厚な建物の前には小川が流れ、橋を渡ってお店に入ります。

東寿し橋

なんて風情があることか。

 

店内も二重扉になっていて、入店するまでに期待を高めてくれます。

東寿し暖簾

店内に入るよ、漬け場の奥には巨大なステンドグラスが飾られていて、荘厳です。

これは女将さん(親方のお母様)が作られたステンドグラスとの事で、あまりの大作に驚きました。

東寿し内観

しかし、テレビが付いているところは、なんとも庶民的です。

八戸市の「鮨瑞穂」さんもアットホームな雰囲気でしたが、青森県の鮨店は街場寿司的な穏やかな雰囲気が残っているようです。

 

むつ市「東寿し」のお店情報と予約方法

お店はお電話予約のみとなります。

県外から訪問する場合は、その旨をお伝えして、特別にコースを組み立てて頂くのがベターです。

 

東寿し(食べログのリンク)

店名:東寿し(あずまずし)

シャリの特徴:米酢主体ながら赤酢を少量用いたシャリ。温度管理が素晴らしい。

予算の目安:おまかせ5,500円〜

TEL:0175-22-2031

住所:青森県むつ市横迎町1-2-40

最寄駅:むつ駅から2,700m

営業時間:17:30~24:00

定休日:日曜、不定休

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伺って印象深かった代替わり江戸前鮨店

北海道・旭川の「鮨みなと」

オオスケ すしログ No. 293 鮨みなと@旭川(北海道)

新潟県・新発田の「登喜和」

登喜和イシモチ すしログ No. 282 登喜和@新発田市(新潟県)

新潟県・新潟市の「兄弟寿し」

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福井県・福井市の十兵衛

鮨十兵衛甘海老 すしログ No. 203 十兵衛@福井市(福井県)

 

眼力で良店を発見すると、この上ない幸せを感じる、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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