青山で復活!「すきやばし次郎」出身で独自路線を貫く「鮨 ます田」

鮨ます田暖簾

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。

鮨好きなら誰もが知る「鮨 ます田」。

一流の江戸前鮨不毛地帯であった青山にお店を出し、早々にミシュラン二ツ星を獲得されました。

しかし、テナントの都合で2019年9月末に閉店されてしまい、台湾店を拠点としていました。

 

しかし、この度、2022年1月に見事復活!

敬愛する「鮨みずかみ」の水上親方から「ぜひ行ってください」とのお言葉を頂いたため、OMAKASEで予約してお伺いしました。

 

頂いた感想として、「すきやばし 次郎」の系譜でありながら同門の他の職人さんとは大きく異なり、驚きました。

極めて独自路線を行く職人さんです。

ます田中巻

握りもさることながら、特に酒肴のクオリティが群を抜いている鮨店です。

すしログ

トータルで、東京でしか味わえない鮨だと感じました!
すしログについて

★全国6,000軒以上を食べ歩く食好き
☆鮨の食べ歩きは15年以上のキャリア
Twitterでは幅広く、インスタでは鮨・魚介料理日本酒
☆「すしログ鮨会」のご案内は、すしログの公式LINEにて
★noteに、各種グルメマガジンを連載しています!
Substackでは、英語で鮨の魅力を発信中!

「鮨ます田」と増田親方について

「鮨ます田」の親方である増田 れいさんは1980年、福岡県小倉市生まれの職人さんです。

もともとは小倉を代表する鮨店の「天寿し」で修業されました。

 

しかし、「天寿し」の天野親方自らから「東京に出るべき」とアドバイスをされて、「すきやばし次郎」に修行に入ります。

9年間の修行を積み、2014年1月に青山で独立を果たされました。

そして、開店から10ヶ月でミシュラン一ツ星を獲得し、その後ミシュラン二ツ星を連続で獲得されて、地歩を固められました。

 

その後、ザ・ペニンシュラ東京とフォーシーズンズ京都に「鮨 和魂」をプロデュースされつつ、テナントの都合で2019年9月末に一時閉店。

2020年には台湾のマンダリンオリエンタル台北に「鮨 増田」をオープンされました。

しかし、この度、鮨店のプロデュース業から完全に手を引き、自らつけ場に立つことに。

独自のキャリアを持つ職人さんなので、期待して訪問しました。

 

頂いた感想としては、数多ある鮨店の中でも独自のスタンスを確立されていて、「いかにも東京の一流店」と言う印象を覚えました。

握りのタネについてはクオリティが価格に対して落ちるものもありましたが、酒肴のクオリティが圧巻です。

 

また、名刺代わりの一貫目は当日決めるというスタンスが格好良い。

訪問当時は何と鮪で意表をつかれました。

ます田鮪赤身

「すきやばし次郎」では、一貫目は白身魚を出すことが一般的。

さらに、鮪は赤身、中トロ、大トロと3貫連続で出し、その後に小鰭を出すのがセオリーとなっています。

よって、それを崩している増田親方の考え方が気になってお伺いしました。

 

すると、「鮪が3貫連続だと疲れちゃうんですよね、自分が(笑)」とのことで、一本筋の通った職人らしい職人さんだなあ!と感じました。

賛否両論、好みなどがあるでしょうが、自身の美学を持っている職人さんこそ職人です。

 

また、当日仕入れても使わないタネもあるそうです。

訪問当日は、海胆のクオリティが低かったので使うのを止めたとのこと。

「ます田の味」を明確に持つ姿勢には、賛同を覚えました。

ます田虎河豚

増田親方のシャリは酸味がキリッと利いていますが、塩気はそこまで強くありません。

お酢の酸味も「すきやばし次郎」「青空」「鮨みずかみ」「常盤鮨」よりも穏やかです。

何よりも、お酢はミツカンを使わず、他の醸造蔵のものを3種類ブレンドされている点は独自路線です。

「もう1種類加えようと思ったけれど、多すぎると意味を失うので…」との談。

 

また、味付けのみならず、温度が低めな点には意表をつかれました。

これは意図的に低い温度のシャリを選択されているのだと推察します。

お米の粘度もある方ですが、ほどけ加減は良好です。

 

最後に、少々余談となりますが、「すきやばし次郎」の系譜でも、鮪の仕入れ(仲卸)がバラバラなのが面白いと感じています。

「すきやばし次郎」では長らくフジタ水産の鮪を使用されていますが、現在使用しているのは「鮨 あお」岡﨑亮親方のみです。

「すきやばし次郎」出身で名実ともに一流の「青空」高橋青空親方と今回の「ます田」増田励親方はやま幸の鮪。

僕が通っている「鮨みずかみ」と、「水谷(旧・次郎よこはま店)」の二番手であった「常盤鮨」は結乃花の鮪を使用しています。

孫弟子まで追いかけると、「青空」出身の「鮨祥」三井祥親方と、「こはる」栗田寿之親方もやま幸の鮪です。

「鮨ます田」のおまかせの詳細

「鮨ます田」さんのおまかせは、親方と二番手で価格を分ける、当世流行りのスタイルです。

価格設定は、親方35,200円、二番手30,800円。

二番手さんは台湾で親方として握られていたはずなので、「ます田」の味を確かにお持ちの職人さんだと思います。

ます田酒器

この度頂いたお酒

  • 常陸野ネストホワイトエール
  • 上川大雪、特別純米酒 彗星
  • 水芭蕉、純米大吟醸 翠
  • 天武、純米吟醸

なお、お酒の値付けは非常に良心的です。

ビールも黒ラベル、常陸野ネストホワイトエール、ライディーンヴァイツェンが全て同じ価格で、日本酒も1合1,000円と驚くばかりです。

 

鼈のスープ

ます田鼈のスープ

鼈を2日間じっくりと煮て抽出したスープ。

1日のお客さん20杯分に10匹使用しているそうで驚きだ。

その結果、濃密ながらクリアな極上のスープが生まれる。

旨味とゼラチン質が濃縮されているが、臭みや雑味は皆無だ。

 

虎河豚

ます田虎河豚

鮟肝ポン酢で頂くという、悶絶ものの食べ方。

六本木の「味満ん」で名物となっている提供方法だ。

虎河豚の旨味と鮟肝の脂が絡み合い、それでいて鮟肝が河豚を殺さない点は見事。

虎河豚の食感はもちろん香りも活きていて秀逸だ。

これは凄い。

54℃の低温調理で作られた鮟肝や、出汁が強めのポン酢などのバランスが良い。

葱は極細で、流石に抜かりなし。

 

鰻の白焼き

ます田鰻の白焼き

なんと、宍道湖産の天然モノ。

しかも2キロアップの大型サイズ。

今の時期(3月頭)に非常に珍しい。

肉厚で香りが強いところが紛れも無い天然モノの妙味。

香りが強いと言っても、野趣を香りとして楽しませ、強すぎない。

皮はバリバリ、身はホロホロ、とろりと地焼きで巧みに焼き上げている。

同時に、脂を程良く落としているため、鮨のコースで頂いても下世話にならない仕事だ。

 

冬しらすと蕗の茶碗蒸し

冬しらすと蕗の茶碗蒸し01

和歌山産のしらすと、泉州の蕗とは、素晴らしく魅力的な組み合わせだ!

冬しらすと蕗の茶碗蒸し02

蕗は香り良く、苦味が無い。

しらすは大きく、ほろりとほどけ、馴染む。

全てのバランスが実に良い。

茶碗蒸しは、二番手さんが、なんと月代わりで作られているそうだ。

素材選びにセンスを感じる。

 

唐墨餅

ます田唐墨餅

ねっちりした食感が餅と合うのは言わずもがな。

肉厚で食べ応えと喜びがある唐墨。

 

中巻き

ます田中巻

甘み、香り、食感が印象深いバランスで一体化。

オボロが美味しい。

紫蘇と胡麻の香りがアクセントになり、酒肴の合間に出てくる巻物だが、全く野暮ッたくなく馴染む。

 

シラカワの酒蒸し

ます田シラカワの酒蒸し

塩して3日寝かせてから使用。

ゼラチン質が非常に濃密で、2.5キロアップとの事であった。

しかも、とろりとした脂だけでなく、むっちりした繊維質も楽しませてくれる点が好み。

葱で作った調味料の味も良い。

 

ガリ

ます田ガリ

旨味が強く、酸味が軽やかなガリ。

 

鮪赤身

ます田鮪赤身

「すきやばし次郎」の系譜で1貫目が鮪とは、心から驚いた。

147キロの山口産の釣りモノで、仕事は漬け。

繊維のほどけ方が良い赤身だ。

しっとり、ホロッとほどけ、とろりと馴染む。

酸味が穏やかで、旨味と脂がある赤身だ。

そして、香りが優雅にこみあがり、ほのかに血の香りを残す。

 

ます田鯖

脂こそ少し弱いが、〆加減はタイプであった。

脂を封印し、身はみしっとした〆方。

柔らかとろりな鯖も、ぷるぷるな鯖も鮨には合わない。

 

針魚

ます田針魚

カンヌキサイズ。

ばつりと力強い食感を示し、しっとり、ほろりとほどける。

旨味と香りを最後に漂わせ、これは旨い。

 

鮪中トロ

ます田鮪中トロ

きめ細かくほどけつつ、繊維が微粒子となってとろける。

脂が広がり、酸味と香りが強く走る。

バランスが魅力的な中トロ。

 

墨烏賊

ます田墨烏賊

バツバツした食感が最後まで続く、硬派な墨烏賊。

これもタイプの包丁仕事。

 

鮪大トロ

ます田鮪大トロ

中トロと同じく柔らかい。

脂がストレートに広がるが、重くない。

 

小鰭

ます田小鰭

小ぶりの小鰭で、なかなかの旨味。

しっとり、ホロホロとほどける。

と、これまでの流れは赤身→鯖→針魚→中トロ→墨烏賊→大トロ→小鰭と、実に自由な構成だ。

「セオリー無し」と言うメッセージが込められている気すらする。

 

赤貝

ます田赤貝

産地は閖上。

旨味は途中から高まるが、弱い。

 

車海老

ます田車海老

中型ながら甘みが強い車海老。

 

ます田鰹

脂が強いと言うよりも、脂が回っているような印象の迷い鰹。

脂が滲んだ後、酸味が引き締め、燻香が高まる。

 

穴子

ます田穴子

トロトロと柔らかく煮ているが、臭いが気になった(香りではなく)。

これは高級価格の鮨店としては無念。

 

干瓢巻き

ます田干瓢巻き

当日頂いた中で一番シャリの温度が高かった。

温か目のシャリに食感を程良くごわりと残し、甘みのある干瓢を合わせる。

 

ます田椀

力強い味わいの潮ベースの味噌汁。

甘鯛も使用しているのか、ゼラチン質が多く滲んでいる。

 

玉子

ます田玉子

しっとりした口当たりで、とろりととろける。

甘みがやや強めと思いきや、ギリギリのところで留めていて、この塩梅は良い。

また、海老の香りがふんわりと漂う。

「すきやばし次郎」の系譜の中でも、玉子も独自性を確立していると感じる。

「鮨ます田」の立地と雰囲気

ます田外観

お店は青山の超一等地にあり、外観、内観ともにゴージャスです。

コンクリート打ち放しのビルの名が「IJK南青山れい」ビルだったので、「まさか持ちビルですか!?」と伺いましたが、それは異なり偶然のようです。

 

店内のカウンターは桧の一枚板で、柾目で分厚いです。

妙に温かいと感じたところ、なんとヒーター入りで、これにはビックリ!

桧の一枚板をくりぬいて中にヒーターを入れて繋ぎ合わせる施工なんて、凄すぎです。

依頼された職人さんは度肝を抜かれたことでしょう(笑)

「鮨ます田」お店情報と予約方法

WEB予約については、OMAKASE経由で可能です。

鮨ます田(OMAKASEのリンク)

 

鮨ます田(食べログのリンク)

店名:鮨 ます田(すし ますだ)

シャリの特徴:「すきやばし次郎」出身としては異例のブレンドを行い、温度が低いシャリ。

予算の目安:親方35,200円、二番手30,800円

TEL:03-6438-9179

住所:東京都港区南青山3-14-27 IJK南青山れい 1F

最寄駅:表参道駅から200m

営業時間:1回転目17:00、2回転目20:00

定休日:日曜、祝日

関連する記事

すきやばし次郎の系譜のお店

水谷(次郎よこはま店)出身職人さんのお店

 

すきやばし次郎系譜のお店の広がりにワクワクする、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

▲目次へ戻る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA