いち伍さんに初めてお伺いしたのは2015年の8月です。
当時はweb上の情報が非常に少なかった(食べログではスコア無しだった!)のですが、今や確かな人気を確立されているようです。
ただ、Googleで「千歳烏山 隠れた名店」と言う検索ワードも出てくるくらいなので、過剰に賑わっている程ではない様子。
個人的には、これくらいがベストです。
有名店から鳴り物入りでデビューした方のお店は、スタンプラリー的な加熱を示すので、個人的には苦手です。
何が苦手と言えば、もちろん親方ではなく客層が。
鮨に留まらず〇〇に行った自慢の応酬が聞こえてくると、食好きとして残念な気持ちになりますね。
本当に食が好きな人間にとって、行った自慢や他店の噂話なんてどーーでも良いですもんね。
「何が”フーディー”じゃい!」と。
まあ、それはさて置き、久々に「いち伍」さんをお伺いしたところ、相変わらず高い満足度を誇っておりました。
鮨いち伍さんのシャリについて
個性があり美味しいシャリ、確かな仕事、個性的な仕事と三拍子が揃い、他店には無い魅力があります。
さらに、初めて酒肴も頂きましたが、気が利いています。
詳細は後述するとして、調理が行き過ぎておらず、それでいて手が込んでいて、鮨店の美味しい魚を活かす調理法で大満足。
シャリは大きめのサイズで硬めに炊き上げていて、はらりとほどける良いシャリです。
酸味の印象や香りが特徴的で、今の時代の赤酢のシャリと異なる気がしたのでメーカーを伺ってみたところ、ミツカンでした。
なるほどなと感じました(今はヨコ井醸造の酢を使用するお店多いので)。
銘柄は優選。
特醸優選も試してみたそうですが、優選の方が親方の仕事に合っているようです。
気鋭の若手職人とは異なる魅力の赤酢のシャリの味を実感しました。
酒肴が美味しくとも「飲み寿司」になっていませんし、あくまでも握り主体の鮨店である点が素晴らしく好みに合います。
なお、コロナ対策としては席の間隔を空けると同時に、おしぼりの前に除菌タオルを置かれていました。
気になる人でも安心ですね。
この度頂いた日本酒
土田酒造・生もと仕込み純米吟醸、日高見・純米吟醸弥助、亀の井酒造くどき上手・辛口純米吟醸
鮨いち伍さんのおまかせの詳細
先付
水茄子の漬物だが、素晴らしい事に自家製!
水茄子は夏に嬉しい漬物だが、市販品を使われる事が多い。
フルーティな香りを楽しませてくれ、旨味は昆布由来の自然なグルタミン酸。
鮃
大間産。モチモチした食感を楽しんでため刺身で…とのご配慮。
僕は握れる魚ならば刺身ではなく握りで頂くものだと考えているので、嬉しいご配慮である。
食感に加えて、香りが良く、甘みがどんどん高まる。
真子鰈
道明寺をシャリ玉のように丸めて蒸して、魚の出汁の餡を掛けたもの。
餡掛けはシャリ玉で作られる方も多いので、これは独創性が高く、それでいて上品にまとめられている。
蒸してふっくらした道明寺にホロッとした真子鰈の身が繊細に寄り添う。
餡は魚の旨味が力強い。
真子鰈の香りを殺していない調理なのが鮨職人らしいと感じた。
ガリ
甘みがありながら、辛みが持続するガリ。
少量で味をリセットしてくれるような存在。
アカイカ
とろりとした身は瞬時に甘みを横溢させ、間髪入れずにシャリが存在感を示してくれる。
酸味とほどけ加減においてマイルドな赤イカを抑制し、リズムを与えるパーカッション的な役割。
アラ
脂がしっかり乗っており、噛み締めるごとに味わいが高まる。
これは噛まない事には真骨頂を味わえない。
ビシリビシリと雄々しい食感と共に旨味が込み上げる。
鱚
昆布〆で旨味をしっかりと乗せていて、食感も凝縮している。
肉厚な鱚なので、その仕事が嫌味にならない。
クロムツ
皮目を藁で炙り、漬けにしたもの。
食感はねっちりとしていて、香り、味わい共にパンチがある。
鮪赤身
舌にねっちりと絡む赤身。
そして、酸味に加えて旨味があり、爽やか。
これは夏場の国産クロマグロならでは!
産地は塩竃との事であった。
鮪中トロ
旨味がしっかりした中トロだが、脂は爽やか。
赤身とともに夏らしい美味しさがある。
赤貝
まさかの握る直前に剥きたて!
産地は初めて頂く大阪湾。
これが、味が良くてビックリ。
香りが十分にあり、気になる旨味もバッチリ。
赤貝らしいスッキリした香りが広がり、きめ細かい旨味のエキスが舌に絡む。
閖上のピンに比べるのは可哀そうだが、かなり魅力的。
北寄貝
酒蒸し。みしっと繊維質がよじれ、しっとりほどけた後、トロトロととろける。
軽い苦みの後に甘みがしっかり感じられ、香りも満喫。
身と肝の魅力を引き出した仕事。
車海老
茹で上げ。肝の軽い苦みの後に力強い甘みが込み上げてくる。
レア過ぎず、しかし十分にしっとりした火入れ。
香りが余韻として残るのは、火入れのお陰だろう。
新イカ
柔らかいが最初にパツッ!と弾けるところは墨烏賊らしい。
そして、その後も数回弾ける。
毎年感じるが、これぞ新イカの魅力であり、墨烏賊の魅力と鮨における重要性を感じさせてくれる。
鯵
脂こそ真骨頂ではないが、旨い鯵。
新子
4枚づけ。3枚未満は旨味よりも香りを食べさせるもの。
そして、親方の矜持を。
小鰭の価格を知っていると信じられない価格であるが、見栄や意地、仕事が乗っているタネである点に江戸前らしさを感じさせる。
牡蠣
夏なのに!?と驚いたところ、長崎産の岩牡蠣であった。
改めて、凄い仕事!
親方のスペシャリテの一つであり、牡蠣の漬け込みを相当早い段階で行われただけある。
漬け込みだが、とろーんと溶けるような食感、火入れは独自性を確立した仕事!
漬け地の味に牡蠣の味と香りが一体化し、シャリが味わいを引き締める。
牡蠣は様々な調理法があるが、鮨は矢張り唯一無二。
夏に岩牡蠣を仕入れてでも出そうと言う親方の気持ちが分かる味。
海胆
小川の利尻。夏らしく、甘みは濃厚。
鰯棒寿司
鰯で棒寿司とは珍しい。
しっかりと〆て鰯を用いる棒寿司は新しい。
椀
濃厚な海老出汁で、香りも旨味も強く滲み出ている。
穴子
小柴産の江戸前!
身がしっとり、ほろりと繊維質を感じさせながらほどけゆき、媚びるような脂は皆無。
対馬産(と言う名の韓国産)も魅力があるが、鮨に合うのは脂が多すぎない穴子だと再認識する。
これは天麩羅についても同様だろう。
玉子
香ばしい甘い香り、そして、とろりと溶ける。
大和芋、芝海老に加えて鱧も使用した、デザート志向の美味しい玉子。
鮨 いち伍のお店情報
店名:鮨 いち伍(すし いちご)
シャリの特徴:赤酢の旨味を上品に用い酸味を利かせた、硬めのシャリ。
予算の目安:13,000円〜16,000円
最寄駅:千歳烏山駅から500m
TEL:03-3307-5591
住所:東京都世田谷区粕谷4-18-7
営業時間:18:00~21:30
定休日:月曜