鮨が10倍楽しくなる旬魚の世界 No. 29~夏~アユ(鮎)

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こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。

本記事は「旬の魚」をご紹介する「旬魚の世界シリーズ」です。

当シリーズでは、旬の魚の魅力を鮨ブロガーならではな目線で解説していきます。

今回は「アユ(鮎)」についてご紹介します。

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魚の旬についての記事はたくさんありますが、鮨マニアが解説している記事は唯一無二かと!

楽しんで頂ければ幸いです。

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▼シリーズのまとめ記事はこちらです

アユ(鮎)の基本情報

標準和名:アユ(鮎)

通称・別称:香魚、年魚、若鮎、小鮎など

英語名:Ayu, sweetfish

旬:6月~8月

アユ(鮎)についてのすしログ的コメント

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東京の江戸前鮨としては滅多に見ないタネですが、古来の「鮓」としては非常に古いタネです。

奈良県吉野のつるべすし弥助は文治年間(1185年〜1189年)に創業された老舗中の老舗で、当時、鮎は乳酸発酵を伴う釣瓶鮓(つるべすし)に使われていました。

また、食材としては古事記・日本書紀に登場するくらいなので、日本人にとって鮎は切っても切り離せない仲にあると言えます(鮎が魚へんに占うなのは、『日本書紀』で神功皇后が新羅征伐の前に鮎釣りで占いをした事が語源です)。

 

ただ、鮎の調理は日本料理の独壇場なので、当コラムでは敢えて「スシにとっての鮎」に絞って考察したいと思います。

 

鮎は別名「香魚」と呼ばれるだけあり、爽やかな香りが持ち味です。

主なエサは岩に生えるコケなので、川ごとに香りを変える魚として知られます。

鮎の香りの重要性を伝える話として有名なところでは、グルメ漫画の『美味しんぼ』が挙げられます。

四万十出身の京極さんが、海原雄山の持ってきた自分の故郷である四万十産の鮎を食べ、唐突に公衆の面前で号泣(しかも鮎の尾を口から出しながら)するだけに留まらず、雄山よりも先に好意で提供した山岡士郎の鮎を「これに比べると山岡さんの鮎はカスや。」と唾棄する、あまりにも衝撃的なシーンがあります(笑)

読んだ方の大半が「こりゃひどい…」「そんな大げさな…」と思ったことでしょう(→知っている人だけ爆笑するネタを見つけました。破壊力のあるネタなので要注意)。

しかし、実際に鮎は川によって味が異なる上、年(気候、天候)によっても味が変わるので、そこが魅力であり厄介でもある魚だと思います。

 

日本人が慣れ親しんだ魚でありながら、まだまだ掘り下げられる魚、それが鮎だと思います。

 

ただ、スシにおいてメジャーなものは現在でもやはり姿寿司や棒寿司となります。

前述のつるべすし弥助でも現在は発酵させない姿寿司で提供されています。

つまり、【鮎の姿寿司】は関西鮓となるため、関東で頂けるお店は多くありません。

 

古くは江戸前鮨の開祖とされる両国の華屋與兵衛(はなやよへえ)でも出されていたので、時代とともに廃れてしまったのだと推測されます。

下記の画像の右上に注目!

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画像出典:『すし技術教科書』(旭屋出版)より「明治初期のにぎりずし」

 

そして、【鮎の握り】に関して言うと、出されているお店は更に少ないです。

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自身が知るところでは、西大島の與兵衛さん浅草の一新さん、そして四谷三丁目ののがみさん

しかも、一新さんでは親方のお眼鏡に適った鮎しか使われないため、握りで頂けるのは運次第。

僕もトライしましたが振られてしまい、一夜干しを頂いて涙を拭いました(笑)

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江戸前鮨の鮨種として着目されていない理由は、恐らく鮎が淡水魚だからでしょう。

しかし、今や鱒などの降海型(川→海→川)の淡水魚も使用される時代なので、個人的には鮨種として大いに魅力があると思います!

しかも、握り鮨では肝を抜いた状態で供する事が一般的です。

鮎の香りの主要因は肝となるので、肝を巧く用いて握りに使うと新しい仕事になると思います。

これは面白いんじゃあないですか!?

カワハギのようにペーストにしても良いですし、塩辛である【うるか】を用いるのも手です。

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握りに限らなければ、最近は酒肴として出される鮨店が増えていますね。

 

日本料理における【塩焼き】と【背ごし】などは完成された調理法ですが、鮨らしい仕事の可能性は大いにあると感じます。

我こそは!と思う気鋭の職人さん、握りで試されては如何でしょうか?

ご一報頂ければ喜んで食べに伺いますので(笑)

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富山では鱒寿司のアレンジで鱒寿司風の鮎寿司を作られているお店があります。

 

【2021年9月追記】

その後、東京の2軒のお店で鮎の鮨を頂きました!

鮨処やまだ鮎

鮨處やまださんでは、郡上八幡の天然モノを姿寿司で。

すしふくづか鮎

鮨ふくづかさんでは独創的な調理を施し、握りで提供。

アユ(鮎)の鮨における仕事(調理法)

アユ(鮎)の鮨における仕事(調理法)は以下の通りです。

鮨においては圧倒的に〆の仕事が一般的です。

繊細な身がしっとりと引き締まり、日本料理とは異なる楽しみが生まれます。

知らずに食べたら「えっ、これが淡水魚!?」と驚く人が多いのではないでしょうか。

 

ただ、〆については、風味や旨味の強い昆布で長時間〆る事は避けた方がベターです。

上記の通り鮎は香りを楽しむものなので、香りや旨味が強い昆布だと、鮎である必然性を失ってしまいます。

昆布を使用する場合、日高や羅臼ではなく利尻か真昆布、ベストは真昆布ではないかと思います。

 

たて塩(塩水)で〆て昆布のペーストを噛ませるならば、鮎の香りを殺さずに昆布の魅力を付加出来るかと思います。

〆よりも難易度は上がりますが、漬けや焼き霜なども気になる仕事です。

大切な事は鮨の仕事を用い、日本料理に無い魅力を創出する事かと思います。

食べる時はここに注目!

鮨で鮎を食べる時に注目するポイントはこちら!

  • 香り
  • 旨味
  • 他の調理法に無い食感、酢飯との融合

鮎は香りを楽しむもの。

まずは香りに集中するのが楽しみ方です。

 

そして、ぐいぐいと広がる旨味や、時期・気候による脂の乗り具合も吟味すると、鮎の楽しみ方が広がります。

鮨における一般的な仕事である〆と酢飯の融合は日本料理には無い魅力です。

しっとり食感を主体とした「鮨ならではの美味しさ」を噛みしめれば、希少な鮎の握りを最大限楽しむ事が出来ると思います。

掲載した写真のお店

御鮓所醍醐(東京都)

魚石(滋賀県)

すし処のがみ(東京都)

鮨一新(東京都)

御料理ふじ居(富山県)

鮨處やまだ(東京都)

鮨ふくづか(東京都)

 

その他、オススメの関連記事はこちらです!

 

東京で入手出来る関西寿司について

島根県にある鮎料理の名店、美加登家

岐阜県にある鮎料理の名店、川原町泉屋

 

▼シリーズのまとめ記事はこちらです

 

鮨と魚をこよなく愛する、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)でした。

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