こちらは滋賀県、東近江市五箇荘にある日本料理店です。
オープンは2017年6月ですが未だにweb上の情報は少なく、リサーチして魅力を感じたため訪問しました。
その魅力とは即ち、滋賀県食材の多用と繊細な調理技術、そしてアレンジ性。
料理写真を見てそれらが一体化していると感じて、心を惹かれました。
お店は築180年超の商家をリニューアルしており、雰囲気があります。
元々は茅葺き屋根だったそうですが、近年増加する強烈な台風を慮り補強加工されたそう。
お部屋は個室、半個室、広間があり、今回は半個室で頂きました。
目の前には庭が眺められ、風にそよぐ葉は爽やかで、葉脈は輝きの軌跡を魅せてくれる。
親方の杉本宏樹さんは近江八幡生まれで、京都の嵐山で修行されたそうです。
近江八幡と東近江は隣接しており、戦国時代に栄えた商人の街となります。
観光エリアも大変落ち着いているので、僕は滋賀の中でも好きなエリア。
湖香六根さんの御料理の概観
御料理を頂いた感想としては、地場食材を駆使した創作的な和食が魅力的だと感じました。
そして、「創作的」と言っても洋食材を多用するなど下品な創作和食に陥っていない点が素晴らしい。
和食で創作性や個性を高めるために香りや油脂の強い食材を足してゆくのは極めて凡庸な発想だと思いますので、
こちらはあくまでも日本料理の範疇で表現されている点が魅力です。
魚、肉、野菜も滋賀県産を使用されており、野菜については東近江と安土の野菜を主に使用されているそう。
もともと滋賀は京都の台所として機能した、秀逸な食材の宝庫と言える場所です。
戦国時代、江戸時代から気候は大きく変わったとは言え、滋賀の食材に向き合っておられるのは応援したくなります。
表現に荒削りなところも感じましたが、今後飛躍される事は間違い無いと感じました。
この度頂いたコースの内容
・先付:自家製チーズ豆腐
・八寸
・アメノウオ(ビワマス)、桃味噌、ビワマスの子の塩漬け
・アメノウオの冷製薬膳スープ
・口直し:黒米のうどん、永源寺の鹿のスジ肉
・鼈の春巻き
・永源寺の鹿肉のソテー
・近江牛糠漬けのおにぎり茶漬け
・水菓子:焙じ茶プリンと甘夏ジャム、無花果・梨・葡萄・白玉に発酵カボチャペースト
上記コースはお昼の5,000円のものとなります。
自家製すだちサワー500円
湖香六根さんの御料理の詳細
先付
「胃を動かす一品」との事で、自家製チーズ豆腐。
いきなり変化球が登場して、期待が高まる。
素麺カボチャにはぶどう黒酢を使用し、リンゴを混ぜ、スベリヒユをあしらう。
黒酢の塩梅が少し強めながらに、リンゴの甘みがバランサーとして機能。
残暑の残る秋なので、爽やかに頂いた。
八寸
枝豆、黄色ズッキーニ、琵琶湖産小鮎、茎セロリ、赤蒟蒻、自家製梅味噌、近江牛生ハム、無花果と梨のジャム挟み、イサザ佃煮、ピクルス。
小鮎が大変面白く、陳皮や丁字などの中国系スパイス7種類で香りが付けられている。
同時に肝の香りと旨味を殺さぬ塩梅。
ピクルス類は酢の当て方が上品。
自家製の近江牛生ハムは持ち味の強い旨味とジャムの香りや甘みが合う。
大変個性的な八寸なので、いっそのこと枝豆は除いてしまって良いかと思う。
見た目的にも大衆的な印象を与えてしまうので…(味としては大好きですが)。
創作的な現代日本料理における八寸は「ここでしか頂けないもの」が集まっていればいるほど面白い。
アメノウオ(ビワマス)、桃味噌、ビワマスの子の塩漬け
「アメノウオ」とは滋賀におけるビワマスの古い名前。
野菜はターサイ、つるむらさき、オクラの花、ダビデの星(オクラ)、太キュウリの昆布〆、ビワマスの下には茄子。
桃味噌とは魅力的な自家製調味料。
単体で頂くと風味が強く、ビワマスと合うか不安になるが、杞憂に終わる。
ビワマスの香りと脂が超えてきて、桃味噌がビワマスに異なる魅力を与えてくれる。
個々の野菜も仕事が施されており美味しい。
はじかみは新生姜を用いており、酢漬けではなく生なのが良い。
辛味がキリッ!と引き締める。
まぶされたトマトパウダーも一興。
桃味噌と良い、調味料を自作される料理人こそ、今後新たな料理を創り出す方だろう。
アメノウオの冷製薬膳スープ
ビワマスの骨出汁のスープで、他に鼈、高麗人参、野ナツメなど20種類以上の薬膳食材を使用。
さらっとマニアックなものを出され素敵(笑)
口直し
黒米のうどん、永源寺の鹿のスジ肉、白黒キクラゲ。
料理、食材ともに意表を突いてくれる。
甘みのあるツユに、むっちり且つつるるんとした食感のうどん。
鹿スジ肉はホロホロに炊いている。
鼈の春巻き
野菜は万願寺、カボチャ、シャドークイーン、空芯菜。
春巻きには2ヶ月発酵させた白菜を使用されているそう。
中華の知識がある方ならば、そろそろ「あれ?」と思われるかも知れない。
僕自身、もしかして中華の勉強をされているのか?と感じたのだが、実際に定期的に聘珍樓で勉強されているそうであった。
冒頭の小鮎の仕事に始まり、今回の発酵白菜は中国では北京から東北にかけて好まれている「酸菜(スァンツァイ)」だ。
しっかりと発酵の旨味と酸味が利いており、完成度が高い。
クロアワビタケの食感、赤山椒の香りを付けたチーズなど、脇を固める素材にも配慮、工夫が見られる。
しかも、トマトを使用したピリ辛サンバルソースを使用されている。
和食としては創作性が非常に高いが、コースの中でバッチリ美味しい仕上げ。
永源寺の鹿肉のソテー
野菜は黄色ズッキーニ、大黒ホンシメジ。
鹿肉はしっかりした火入れで、噛みしめると旨味と香りが高まる。
美味しいのだが、美味しいだけに、火入れはもっと軽めで良いと感じる。
鹿肉の火入れについては、日本伝統のマタギ料理よりもフランスのジビエ料理の方が一日の長がある。
また、中華においてもフランスの火入れが勝る。
調理法として採り入れてみても良いかと感じた次第である。
近江牛糠漬けのおにぎり茶漬け
おにぎりのサイズは大・中・小から選べ、中が「コンビニサイズ」との事だったので、大を選択。
結構なサイズ感だったので中がバランス的には良いかも(笑)
お米はミルキークイーンの赤米、緑米、黒米。
近江牛の糠漬けは旨味が凝縮されており、脂が多い近江牛であってもサッパリと頂ける良き調理。
お米の炊き加減は柔らかめで、恐らくお茶漬け用かと思われ、出汁に馴染む。
香の物はキュウリの佃煮、大根の醤油漬け、昆布。
水菓子
焙じ茶プリンと甘夏ジャム、無花果・梨・葡萄・白玉に発酵カボチャペースト。
プリンには無農薬の焙じ茶を使用。
発酵カボチャペーストが秀逸で、発酵による酸味が生の甘い果物に、あくまでも爽やかに寄り添い、引き立てる。
軽いシナモンの香りを付けている点がお洒落。
夏場には鰻料理を提供されているとの事。
また時期を見て再訪したいと思います。
湖香六根さんのお店の情報
WEB予約はヒトサラより可能です。
店名:湖香六根(うかろっこん)
食べるべき逸品:滋賀食材を駆使した創作和食
予算の目安:コースは昼3,800円、5,000円、夜6,000円、10,000円で、昼に夜のコースも予約可能
最寄駅:五箇荘駅から3,000m
TEL:0748-43-0642
住所:滋賀県東近江市五個荘川並町713
営業時間:お昼11:30〜16:00 (LO 14:30)、夜18:00(要予約)
定休日:火曜、水曜